AIで作った作品を、販売サイトに出す前に何を確かめる?研究では「AI」と表示すると作り手の手間が低く見積もられ、人の作品と並べると選ばれにくかった。規約・似ていないか・表示の書き方を先に決める

AIを使って描いたイラストや、デザインしたグッズを、ハンドメイドやダウンロード販売のサイトに出してみたい。でも、そもそも出品していいのか、AIを使ったと書くべきか、書いたら売れなくなるのか、わからない。出品の前に確かめることは、大きく3つにしぼれます。販売サイトの規約、既存の作品に似ていないか、そしてAIの使い方の書き方です。表示が買い手の見方にどう影響するかは、まだ研究が少ないものの、いくつかの実験で手がかりが出ています。
3行でわかる
- 出品できるか、AIの表示が必要かは、まず販売サイトの規約で決まります。既存の作品やキャラクターに似ていないかも、出品の前に確かめます。
- 韓国の618人の実験では、「AI生成」と表示した動画は、表示なしより作り手の手間が低く見積もられました。米国の102人の実験では、同じ絵でも「人」と表示したほうが「AI」より選ばれやすくなっていました。
- 表示するなら、AIに任せた部分と自分でした部分を具体的に書き、制作の記録を残しておくと、あとで聞かれたときに答えられます。
01 結論から言うとAIで作った作品、売る前に何を確かめる?
確かめるのは、販売サイトの規約、既存の作品に似ていないか、AIの使い方の表示の3つです。研究では「AI」と表示すると手間が低く見積もられやすいため、AIに任せた部分と自分でした部分を具体的に書く準備をしておきます。
販売サイトによって、AIで作った作品の扱いは違います。出品そのものを認めていないところ、表示を求めるところ、特に決まりがないところがあります。規約は変わることもあるので、出品する直前に、そのサイトのヘルプや規約で現在の決まりを確かめます。
次に、既存の作品やキャラクターに似ていないかの確認です。AIで作った文章や画像を仕事やお金のやりとりに使うときの考え方は、AIで作ったものを仕事で使うときの記事で、文化庁の考え方をもとに整理しています。似ていると指摘されたときの対応は他人の作品に似ていると言われたときの記事にあります。
3つめが表示です。ここで気になるのが「AIと書いたら売れなくなるのでは」という心配でしょう。この点は、研究でわかっていることとまだわかっていないことを分けて見ていきます。
02 研究とデータでわかっていること「AI」と表示すると、買い手の見方は変わる?
実験では、「AI」と表示すると作り手の手間が低く見積もられ、人の作品と並べて選ばせると人の作品が選ばれやすくなりました。一方、1枚ずつ点数で評価したときは差が見られず、商品の種類によっても影響は変わっていました。
Jacobsら(2025, Empirical Studies of the Arts)[1]
同じ絵に「人が描いた」「AIが描いた」などの表示をつけて評価してもらう実験を2つ行いました。1つめの実験では、絵を1枚ずつ見て、好みと「いくら払いたいか」を5段階で答えてもらうと、表示による差は見られませんでした。2つめの実験では、同じ絵を「人」と「AI」の表示で2枚並べ、どちらが好きか・どちらに価値があるかを選んでもらうと、「人」と表示した絵が選ばれやすくなりました。
対象: 米国からオンラインで参加した大人(実験1は250人、実験2は102人で平均33.7歳) / 限界: 実験の中での選択で、実際にお金を払った結果ではありません。題材は絵画に限られます。
著者らは、2枚を並べて選ぶ形のほうが、ギャラリーで作品を見比べる買い手の状況に近いと述べています。販売サイトでも、作品は一覧で並んで比べられます。表示の影響は、こうした比べられ方によって変わりうるということです。
Limら(2026, Frontiers in Psychology)[2]
短い動画に「人が制作」「AI生成」の表示をつけるか、表示なしで見せる実験です。「AI生成」と表示した動画は、表示なしより作り手の手間が低く見積もられました(平均3.48対4.19)。一方、「人が制作」と表示しても、表示なしとの差ははっきりしませんでした(4.40)。見る人は、表示がなければ人が作ったものと考えている、と著者らは解釈しています。
対象: 韓国の短い動画サービスの利用者618人 / 限界: 短い動画での実験で、手の込んだ作品では結果が違う可能性があると著者ら自身が述べています。販売や購入は測っていません。
ChengとNam(2026, Frontiers in Psychology)[3]
ネットで服を買う場面を想定し、商品写真のモデルに「AI生成」または「人」の表示をつけて見せました。ワンピースでは、「AI生成」の表示が不気味さを強め、自分らしさを表す買い物になりにくいという反応につながっていました。一方、Tシャツでは、この悪い影響は見られませんでした。
対象: 米国の大人200人(7割が女性、30代が約7割) / 限界: 想定した場面での実験で、実際の購入ではありません。ワンピースとTシャツは、楽しさや改まった感じなど、ほかの点でも違いうると著者ら自身が述べています。
3つの実験をまとめると、「AI」の表示は、作り手の手間や、その作品に込められた価値の見積もりを下げうる、ということです。ただし影響の大きさは、比べ方や商品の種類によって変わっていました。自分を表すための作品(服やアクセサリー、飾る絵など)ほど、影響を受けやすい可能性があります。
03 まだわかっていないこと表示しても売れる工夫は、わかっている?
まだわかっていません。紹介した研究はどれも実験の中での評価で、実際の販売サイトで、表示が売り上げや評価にどう影響するかを調べた研究は、今回の調査では見つかりませんでした。
- 実際の販売サイトで、AIの表示が売り上げや評価に与える影響。
- 「線画は自分、色の案はAI」のように、使い方を具体的に書くと、手間の見積もりの下がり方が小さくなるか。
- 日本の買い手で、同じ傾向が見られるか。紹介した研究は、米国と韓国の参加者です。
- AIで作った作品が増え、見慣れてきたとき、表示の影響が弱まるか。
04 今日からできること出品の前に、何をどの順で準備する?
規約を確かめ、似ていないかを確かめ、表示の文を作り、制作の記録を保存します。どれも無料で、1作品につき30分ほどで準備できます。
次の手順は、出品後に「出品できない作品だった」「似ていると言われた」「隠していたと思われた」というつまずきを避ける順に並べました。表示の書き方は、研究で効果を確かめた方法ではない点に注意してください。
販売サイトの規約で、AI作品の扱いを確かめる
ヘルプや規約で「AI」「生成」と検索し、出品できるか、表示の決まりがあるか、禁止されていることは何かを確かめます。見つけたページは、確認した日付と一緒に保存しておきます。
目安 1つのサイトにつき10分
既存の作品やキャラクターに似ていないかを確かめる
特定の作家名や作品名、キャラクター名を入れて作ったものは、出品を見送ります。画像なら、似た作品がないかを画像検索で確かめます。
目安 1作品につき5〜10分
表示は「AIに任せた部分」と「自分でした部分」を分けて書く
「AI生成」とだけ書くより、「背景の案はAI、人物と仕上げは手描き」のように具体的に書きます。研究では「AI」の表示が手間の見積もりを下げていたため、自分の手間がどこにあるかを読み手に伝える書き方です。
目安 1〜2文、5分
制作の記録を残しておく
使ったAIの指示の文、途中の画像、自分で手を加えた段階のファイルを、作品ごとのフォルダに保存します。買い手や運営者に聞かれたとき、説明の材料になります。疑われたときの答え方はAIだと疑われたときの記事にまとめています。
目安 制作中に保存するだけ。1作品5分
AIの利用を伏せていたことが知られたときの対応はAIを使ったことを伏せた作品が批判されたときの記事に、コンテストや公募に出すときの確認はAIを使った作品で応募するときの記事にあります。
05よくある質問
AIで作った作品を販売サイトで売ってもいい?
売れるかどうかは、まず販売サイトの規約で決まります。AIで作った作品の出品を認めているか、表示のしかたに決まりがあるかを、出品の前に確かめます。あわせて、既存の作品やキャラクターに似ていないかの確認も必要です。
AIを使ったことは、商品ページに書いたほうがいい?
規約で表示が求められていれば書きます。研究では「AI」と表示すると作り手の手間が低く見積もられやすくなっていました。書くなら、AIに任せた部分と自分でした部分を具体的に書く方法があります。
「AI」と表示すると、売れなくなる?
実際の売り上げを調べた研究は、今回の調査では見つかりませんでした。実験では、絵を1枚ずつ点数で評価すると表示による差は見られず、人の作品と2枚並べて選ばせると人の作品が選ばれやすくなっていました。並べ方や比べられ方で、表示の影響は変わりうるといえます。
一部だけAIを使った作品も、表示が必要?
どこから表示が必要になるかは、販売サイトの規約によって違います。規約に例が書かれていなければ、運営者の問い合わせ窓口に聞いて、回答を保存しておくと安心です。
出典
- Jacobs O, Pazhoohi F, Mullen G, Kingstone A (2025). Comparative Designs Reveal Preferences for Human-Generated Rather Than AI-Generated art. Empirical Studies of the Arts, 44(2), 729–743. https://doi.org/10.1177/02762374251360129
- Lim HS, Lee BG, Sung YH, Jung CW (2026). Human-made vs. AI-generated: how provenance labels drive strategic curation via perceived effort. Frontiers in Psychology, 17, 1840483. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1840483
- Cheng X, Nam I (2026). Understanding the influence of AI labels on consumer psychology: the moderating role of product type. Frontiers in Psychology, 17, 1878095. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1878095


