AIを使った作品を、コンテストや公募に出してもいい?使えるかは応募要項で決まり、研究では「AIを使った」と知ると評価が下がりやすかった

AIに手伝わせて描いた絵や書いた小説を、コンテストや公募に出していいのか迷う人は少なくありません。AIを使えるかどうかは、法律で一律に決まるのではなく、コンテストごとの応募要項で決まります。研究では、同じ作品でも「AIを使った」と知ると評価が下がりやすいことがわかっています。応募の前に、要項と自分の制作の記録を確かめておくのが備えになります。
3行でわかる
- AIを使った作品を出せるかは、コンテストごとの応募要項で決まります。まず要項のAIに関する記述を探します。
- 米国の実験では、同じ絵でも「AIが作った」と表示されると評価が下がり、人とAIの共同制作と表示した場合も、人だけの作品より低く見られていました。
- 応募前にできる備えは、要項の確認、わからない点の問い合わせ、制作の途中経過の保存の3つです。
01 結論から言うとAIを使った作品は、公募に出してもいい?
AIを使った作品を出せるかどうかは、コンテストごとの応募要項で決まります。禁止、補助としてなら可、申告すれば可など、扱いは主催者によって違うため、応募の前に要項を確かめるのが出発点です。
コンテストや公募の多くは、応募要項に「応募できる作品」の条件を書いています。AIの使い方についても、ここに書かれることが多くなっています。
注意したいのは、AIの扱いが「AIの利用」という見出しの下だけにあるとは限らない点です。「自作であること」「未発表であること」「第三者の権利を侵害していないこと」といった別の条件にも、AIを使った作品が関わってきます。
もう1つ知っておきたいのが、評価への影響です。審査をするのは人です。研究では、作品そのものが同じでも「AIが作った」と知らされると、人はその作品を低く評価しやすいことが、くり返し確かめられています[1][2]。
だからといって、隠して出すのは勧められません。要項が申告を求めているのに書かなかった場合、あとで説明に困るのは自分です。AIを使った部分と自分で作った部分を、自分の言葉で説明できるようにしておくことが、いちばんの備えになります。
02 研究とデータでわかっていること「AIを使った」と知られると、作品の評価は変わる?
変わりやすいことがわかっています。複数の実験で、同じ絵に「AIが作った」と表示すると、好みや価値の評価が下がりました。人とAIの共同制作と表示した場合も、人だけの作品より低く評価されていました。
Bellaicheら(2023, Cognitive Research: Principles and Implications)[1]
実際にはすべてAIが作った絵30枚に、「人が作った」か「AIが作った」かのラベルをランダムに付けて見せました。「人が作った」と表示された絵のほうが、好み・美しさ・深み・値打ちのすべてで高く評価されました。
2つ目の実験でも同じ結果がくり返されました。物語性や「手間がかかっていそうか」の感じ方が、好みや美しさの評価の差に関わっていました。
対象: オンライン調査(Amazon Mechanical Turk)の参加者149人(実験1)と、英語を母語とする参加者148人(実験2) / 限界: 審査員や専門家ではなく、一般の参加者の評価です。ラベルをどこまで信じたかは確かめきれていないと著者は書いています。
Hortonら(2023, Scientific Reports)[2]
6つの実験で、「AIが作った」と表示された絵は、人が作った絵と見分けがつかない場合でも低く評価されました。絵や技術に詳しい経歴の人でも、この傾向は変わりませんでした。
6つ目の実験では、「人の画家がAIと一緒に作った」と表示した絵を調べました。共同制作の絵は、平均すると「人が作った」より低く、「AIが作った」より高く評価されました。一方で、AIだけで作った絵と並べて見せると、共同制作の中の人の貢献は高く見られていました。
対象: 米国の参加者、6実験の合計2,965人(共同制作を調べた実験6は527人) / 限界: 使った絵の多くは、人の作品と見分けがつかないように選ばれたもので、実際のコンテストの審査を調べたものではありません。
Doshi & Hauser(2024, Science Advances)[3]
短い物語を書く実験で、生成AIの案を5つまで見られた人の作品は、AIなしの人より「新しい」と評価され、その差は8.1%でした。ただし、AIの案を見られた人どうしの物語は、互いに似る傾向がありました。
AIを使ったことを後から知らされた読み手は、書き手の「持ち分」を少なくとも25%差し引きました。この点は、あらかじめ決めた主な分析ではなく、探索的な分析の結果です。
対象: 英国の書き手293人と、別の読み手600人 / 限界: 8文の短い物語という限られた課題で、プロの書き手は対象にしていません。
応募の前に、要項のどこを見ればよいかを整理すると次のとおりです。要項の言い方はコンテストごとに違うため、ここでは確かめる場所の目安として使ってください。
| 確かめる場所 | 見るポイント |
|---|---|
| AIの利用 | 禁止か、補助なら可か、申告すれば可か。どの作業までが「利用」に入るか |
| 申告の方法 | 応募フォームの欄、作品の説明文、別紙など。何を書くか(使った場面・範囲) |
| 応募資格 | 「自作」「オリジナル」「未発表」の条件。AIで作った部分がどう扱われるか |
| 権利と保証 | 応募作品の権利の扱い、他人の権利を侵害していないことの保証を求める文 |
| 違反したとき | 規定に反した場合の扱い(受賞の取り消しなど)が書かれていないか |
03 まだわかっていないことコンテストの審査員も、同じように評価する?
まだわかっていません。ここで紹介した研究は、一般の参加者が実験の中で評価したもので、実際のコンテストの審査員や、審査の結果を調べた研究は、今回の調査では見つかりませんでした。
- 実際の公募で、AIを申告した作品の入選率が変わるかを調べた研究は見つかりませんでした。
- 研究の多くは絵の評価で、小説・写真・音楽のコンテストでも同じ差が出るかは確かめられていません。
- 「誤字の直しだけ」「アイデア出しだけ」のように、AIに任せた範囲の違いで評価がどう変わるかは、ほとんど調べられていません。
- 研究はいずれも米国や英国の参加者で、日本の審査や読者にそのまま当てはまるかはわかりません。
04 今日からできることAIを使った作品を応募する前に、何を準備する?
応募要項のAIに関する記述を探し、わからない点は主催者に問い合わせ、制作の途中経過と使ったAIの記録を残します。どれも無料で、応募1件につき30分ほどで始められます。
要項をページ内検索して、AIの記述を探す
「AI」「生成」「人工知能」で検索し、上の表の5か所も読みます。「自作」「未発表」の条件も、AIを使った部分に関わります。
目安 10分
はっきりしない点は、締め切り前に主催者へ問い合わせる
「アイデア出しにAIを使い、文章はすべて自分で書いた」のように、使った場面を具体的に書いて聞きます。返事はメールなどで残します。
目安 15分(返事待ちの日数も見込む)
制作の途中経過と、AIの使い方を記録しておく
下書き・ラフ・途中のファイルを日付つきで保存し、使ったAIの名前と指示(プロンプト)をメモします。申告するときも、疑われたときも説明の材料になります。
目安 作業のたびに2〜3分
AIの案をそのまま使わず、自分の案を足す
研究では、AIの案を見られた人どうしの物語は似やすい傾向がありました。AIの案は比べる材料にとどめ、題材や結末は自分で決めます(詳しくはAIでアイデアを出すと、みんな似た案になる?)。
目安 構想の段階で1回
作品が「自分のもの」と思えなくなる使い方の違いはAIに手伝わせた作品が、自分の作品だと思えないに、他人の作品に似ていないかの確かめ方はAIで作った文章や画像を仕事で使っても大丈夫?にまとめています。自分で描いたのにAIだと疑われたときの対応は自分で描いた絵を「AIだ」と疑われたが参考になります。
05よくある質問
応募要項にAIのことが何も書かれていないときは、使ってもいいの?
書かれていないことが、使ってよいという意味だとは限りません。何にどの程度AIを使ったかを短く書いて、締め切りより前に主催者へ問い合わせるのが確実です。返事はメールなどで残しておきます。
AIを使ったと正直に書くと、落とされやすくなる?
一般の人を対象にした実験では、同じ絵でも「AIが作った」と表示されると評価が下がりやすい結果が出ています。ただ、コンテストの審査員を調べた研究ではありません。要項が申告を求めているなら、隠すより、AIを使った部分と自分で作った部分を分けて書くほうが説明しやすくなります。
誤字の直しやタイトル決めにAIを使っただけでも、申告が必要?
申告が必要な範囲は、コンテストごとに違います。「作品の制作にAIを使ったもの」とだけ書かれていて範囲がはっきりしない場合は、使った場面を具体的に書いて主催者に確かめます。
AIで作った作品に著作権はあるの?
自分の作品といえるかどうかの考え方は、別の記事「AIで作った画像を『自分の作品』として投稿してもいい?」で整理しています。個別のケースの判断が必要なときは、弁護士などの専門家に相談します。
出典
- Bellaiche, L., Shahi, R., Turpin, M. H., et al. (2023). Humans versus AI: whether and why we prefer human-created compared to AI-created artwork. Cognitive Research: Principles and Implications, 8, 42. https://doi.org/10.1186/s41235-023-00499-6
- Horton, C. B., Jr., White, M. W., & Iyengar, S. S. (2023). Bias against AI art can enhance perceptions of human creativity. Scientific Reports, 13, 19001. https://doi.org/10.1038/s41598-023-45202-3
- Doshi, A. R., & Hauser, O. P. (2024). Generative AI enhances individual creativity but reduces the collective diversity of novel content. Science Advances, 10(28), eadn5290. https://doi.org/10.1126/sciadv.adn5290


