オンライン試験のAI監視で、不正を疑われないか不安。研究では、ソフトが「疑わしい」とした受験者は物音が原因で、録画を人が見直すと不正ではなかった

自宅のパソコンで受けるオンライン試験で、カメラとマイクを通してAIが様子を見ている。目をそらしたら、家族の声が入ったら、不正と判定されるのでは。研究では、この不安を持つ学生は多く、AIが「疑わしい」と印をつけた場面の多くは物音などで、録画を人が見直すと不正ではなかった例が報告されています。受ける前に仕組みを確かめ、環境を整えておくことが、いちばんの備えになります。
3行でわかる
- オランダの医学生597人の調査では、69.3%が「不正をしていなくても試験が無効にされるのでは」と心配していました。心配の中身は、カメラから目をそらすこと、周りの物音、ネットの切断が多くを占めていました。
- ベルギーの472人の試験では、ソフトが「疑わしい」とした22人(4%)はすべて物音がきっかけで、録画を見直すと不正の目的は見つかりませんでした。AIの印は不正の証拠ではなく、人が確かめるための目印です。
- 研究者がすすめているのは、印がついたら何が起きるかを受験者に知らせること、本番前に試せる機会をつくること、静かな場所とネット環境を確保できるようにすることです。
01 結論から言うとAI監視のオンライン試験で、目をそらしたら不正になる?
目をそらしただけで不正と決まるわけではありません。AIは「いつもと違う動きや音」に印をつけるだけで、不正かどうかは人が録画を見て判断する仕組みが基本です。ただ、その仕組みが受験者に十分に説明されていないことが、不安のもとになっています。
自宅での試験を見守るソフトは、カメラ・マイク・画面の記録から、顔が映っていない、別の声がする、別のページを開いた、といった場面を自動で拾います。研究者はこれを「不正そのものではなく、ふるまいを検出するもの」と説明しています。[5]
倫理の面からこの仕組みを検討した論文は、AIの判定は100%正確ではなく、人が確かめることが欠かせないとしています。[5]
この記事は、受ける前の備えを整理したものです。レポートが「AIが書いた」と判定されたときの対応は自分で書いたのに、AI判定ツールで「AIが書いた」と言われたに、学校で生成AIを使う前の基本は学校で生成AIを使う前に、生徒が知っておきたいことにまとめています。
02 研究とデータでわかっていることAIの監視で、不正でない人が疑われることはある?
あります。ただし調べた試験では、ソフトが拾った場面を人が見直し、不正ではないと確かめられていました。点数も、会場で受けた人と大きな差はありませんでした。心配の多くは、仕組みや手順がわからないことから来ていました。
Meulmeesterら(2021年、Medical Science Educator)[1]
監視ソフトつきのオンライン試験について、69.3%の学生が「不正をしていなくても無効にされるのでは」と心配していた。一方で、59.5%は「自分の試験は無効にされない」と考え、47.4%は録画の確認のしかたを信頼していた。
自由記述で多かった心配は、カメラから目をそらすこと(371人、62.1%)、同居の家族や近所の物音(325人、54.4%)、ネットの不安定さ(235人、39.4%)、カメラの不具合(136人、22.8%)でした。プライバシーの侵害を挙げた学生も68人いました。留年などの遅れを防げるなら監視を認める、と答えた人は77.1%でした。
対象: オランダのライデン大学医療センターの医学生597人(回答率35.0%、2020年9月) / 限界: 監視なしの練習試験の直後に「監視つきだったら」と想像して答えてもらった調査で、実際の監視つき試験の直後の気持ちとは違う可能性がある。
Andreouら(2021年、BMC Medical Education)[2]
ソフトが「疑わしい」とした22人(4%)は、全員が物音をきっかけにしたもので、試験中の見守りと試験後の録画の見直しでは、不正の目的はないと判断された。自宅で受けた人と会場で受けた人の平均点にも差はなかった。
ほかに見守り役の人が気にかけた2人は、選択式の試験なのに文字を打つ回数が多かった受験者で、録画を確かめると、問題文の中の言葉を検索する機能を使っていただけでした。自宅受験では、ネットの切断やカメラの停止など15件の機械のトラブルがあり、2件は試験に影響しました。
対象: ベルギーのフランドル地方4大学で、一般医の専門課程に出願した593人(自宅472人、会場121人) / 限界: 研究チームが自分たちで作ったソフトでの結果で、ほかの監視ソフトにそのまま当てはまるとは限らない。
Hallら(2022年、Pharmacy)/Raveslootら(2026年、Perspectives on Medical Education)[3][4]
自宅での監視つき試験に切り替えたあと、点数がそろって上がったり下がったりはしなかった。オランダの医学部の全国試験の分析では、自宅での監視は会場の見守りと同じくらい不正を防げていたと結論づけている。
米国の薬学生384人の研究では、1年生は点数が下がり、2年生は上がりました。[3]
対象: 米国の薬学生384人/オランダの5つの医学部の1万人超 / 限界: どちらも新型コロナの流行中の、大学の医療系の試験での結果。
Coghlanら(2021年、Philosophy & Technology)/Leeら(2023年、Canadian Medical Education Journal)[5][6]
AIの監視には、誤って印がつく問題に加えて、肌の色が濃い人の顔を認識しにくいという報告がある、障害や発達の特性によるふるまいが「疑わしい」とされうる、といった公平さの課題が指摘されている。受験者には、印がついたらどうなるか、どう異議を申し立てられるかを知らせる必要があるとしている。
カナダの医学部でAI監視を使った教員らは、学生に「印がついたらどうなるのか」「静かな場所がない」「ネットが心配」といった不安があったと報告しています。そのうえで、印がついた後の扱いを事前に伝えること、本番前に試せる機会をつくることをすすめています。[6] 別の論文も、練習の機会があるだけで受験者の不安が下がるという報告を紹介しています。[7]
対象: 倫理の検討論文と、教員による経験の報告・提言 / 限界: 測定した研究の結果ではなく、研究者の考えと経験をまとめたもの。
| よくある心配 | 研究でわかっていること |
|---|---|
| 目をそらしたら不正にされる | AIはふるまいに印をつけるだけで、判断は人が行う形が基本[5] |
| 家族の声や物音が入る | ベルギーの試験では印の22人すべてが物音がきっかけで、見直すと不正ではなかった[2] |
| ネットが切れたら失格 | 切断は実際に起きる。扱いは試験ごとに違うため、事前に確かめる[2][6] |
| 見張られて実力が出ない | 点数がそろって下がるという結果は出ていない。ただし強い緊張を感じる人はいる[2][3] |
03 まだわかっていないこと日本の中高生や大学生でも同じ?
まだわかりません。今回調べた研究は、海外の大学の医療系の試験が中心で、日本の中高生や大学生、資格試験を対象にした査読済みの研究は見つかりませんでした。使われるソフトや判定のしかたも試験ごとに違います。
- 日本の学校や資格試験で、AIの監視がどのくらい使われ、どのくらいの人に印がついているか
- 監視ソフトの種類ごとに、誤って印がつく割合がどのくらい違うか(どの研究も、使ったソフト1種類での結果)
- 顔の認識や障害の特性による不公平が、実際の試験でどのくらい起きているか(倫理の論文は指摘しているが、測った研究はまだ少ない)[5]
04 今日からできることAI監視のオンライン試験の前に、何を準備する?
まず、何が記録され、印がついたら誰がどう確かめるかを試験の案内で確認します。次に、本番と同じ機材で試し、音と通信の準備をします。配慮が必要な人や環境が整わない人は、早めに申し出ます。
「記録されるもの」と「印がついた後の流れ」を確かめる
受験案内や授業の説明で、カメラ・マイク・画面のどれが記録されるか、AIの印を人が見直すか、異議を伝える方法があるかを確かめます。書かれていなければ、担当の先生や試験の窓口に聞いてかまいません。研究者も、受験者に知らせるべき情報だとしています。[5][6]
目安 試験の1週間前までに15分
本番と同じ機材と場所で試す
練習受験や動作確認の機会があれば、本番と同じパソコン・カメラ・場所で使います。練習の機会があるだけで不安が下がるという報告があります。[7]カメラの角度、明るさ、通信の速さもここで見ておきます。
目安 本番の数日前に30分
音と通知を減らす準備をする
同居の家族に試験の時間を伝え、ドアに「試験中」と貼り、通知も切ります。研究で印のきっかけになっていたのは物音でした。[2]
目安 前日に5分、当日に5分
配慮が必要なら、本番前に申し出る
考えるときに目線が動きやすい、体を動かすくせがある、静かな部屋やネットが確保できない、といった事情があれば、事前に先生や窓口へ相談します。特別な配慮が必要な受験者には別の受け方が用意されることもある、と研究でも紹介されています。[5]
目安 わかった時点ですぐ
トラブルは、その場で記録して連絡する
ネットが切れた、家族に話しかけられた、といったことが起きたら、時刻と何が起きたかをメモし、終わったらすぐ担当に伝えます。後から聞かれたときに、落ち着いて説明できます。
目安 試験直後に5分
まずは、試験を行った学校の担当の先生や教務の窓口に、何が記録され、どう判断されたのかを聞きます。在学中の学生なら、大学の学生相談の窓口にも相談できます。
05よくある質問
オンライン試験のAI監視で、目をそらしたら不正になる?
目をそらしただけで不正と決まるわけではありません。AIは、いつもと違う動きや音に印をつけるだけで、不正かどうかは人が録画を見て判断する仕組みが基本です。心配な場合は、印がついた後の流れを事前に確かめておきます。
自宅受験で家族の声や物音が入ったらどうなる?
ソフトが「疑わしい」と印をつけることはあります。ベルギーの試験では、印がついた22人すべてが物音をきっかけにしたもので、録画を見直すと不正の目的はないと判断されていました。事前に家族に時間を伝え、起きたらメモして担当に伝えます。
監視されると緊張して点数が下がる?
自宅での監視つき試験に切り替えて、点数がそろって下がるという結果は出ていません。ただ、見張られている感じがして緊張したという声は多く、本番前の練習受験で慣れておくと不安が下がるという報告があります。
出典
- Meulmeester FL, Dubois EA, Krommenhoek-van Es CT, de Jong PGM, Langers AMJ (2021). Medical Students’ Perspectives on Online Proctoring During Remote Digital Progress Test. Medical Science Educator, 31(6), 1773-1777. https://doi.org/10.1007/s40670-021-01420-w
- Andreou V, Peters S, Eggermont J, Wens J, Schoenmakers B (2021). Remote versus on-site proctored exam: comparing student results in a cross-sectional study. BMC Medical Education, 21, 624. https://doi.org/10.1186/s12909-021-03068-x
- Hall EA, Roberts MB, Taylor KA, Havrda DE (2022). Changes in Academic Performance after Transitioning to Remote Proctoring: A Before-After Evaluation. Pharmacy, 10(4), 92. https://doi.org/10.3390/pharmacy10040092
- Ravesloot JH, Donkers J, Meiboom AA, Langers AMJ, Jacobs B, Tio R, van der Vleuten C, Bremers AJA (2026). Computer Testing, Formative or Summative, and Proctoring: Does it Matter? Lessons Learned From the Dutch Interuniversity Progress Test of Medicine During the Corona Pandemic. Perspectives on Medical Education, 15(1), 122-133. https://doi.org/10.5334/pme.1771
- Coghlan S, Miller T, Paterson J (2021). Good Proctor or “Big Brother”? Ethics of Online Exam Supervision Technologies. Philosophy & Technology, 34(4), 1581-1606. https://doi.org/10.1007/s13347-021-00476-1
- Lee AS, Babenko O, George M, Daniels V (2023). The promises and perils of remote proctoring using artificial intelligence. Canadian Medical Education Journal, 14(2), 173-174. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10254105/
- St-Onge C (2022). Eleven ways to get a grip on the implementation of remote administration of high-stakes assessments. Canadian Medical Education Journal, 13(4), 3-7. https://doi.org/10.36834/cmej.73734


