ナビに頼りきりで、道を覚えられない。研究では、頼る人ほど道の記憶が弱かった。慣れた道ではナビを切り、案内は音声にする

スマホの地図アプリや車のナビが、道順も到着時刻も決めてくれる。便利な一方で、何度も通った道なのに、ナビなしでは思い出せない。そんな自分に不安を感じる人は少なくありません。研究では、ナビに頼る度合いが高い人ほど、ナビなしで道を覚える成績が低い傾向がありました。ただ、使うのをやめる必要はなく、場面ごとに頼り方を決めておくことで備えられます。
3行でわかる
- カナダの研究では、ナビを使ってきた量が多い人ほど、ナビなしで道を覚える成績が低い傾向がありました。
- 一方、米国の研究では、人は慣れた場所ほどナビを使う量が少ないと答え、主に渋滞や到着時刻を知るために使っていました。
- 慣れた道ではナビを切る、案内は音声で聞く、着いたら道を思い出す、の3つで備えます。
01 結論から言うとナビに頼ると、道を覚える力は落ちる?
ナビに頼る度合いが高い人ほど、ナビなしで道を覚える成績が低い傾向が、複数の研究で見られています。ただし多くは関連を見た研究で、ナビが原因とまでは言い切れません。
ナビは、曲がる場所を一つずつ教えてくれます。そのぶん、自分で周りの景色や目印を見て、頭の中に地図を作る機会が減ります。研究では、この「自分で道を組み立てる」機会の少なさが、道の覚えにくさと関わっていると考えられています。
とはいえ、ナビそのものが悪いわけではありません。使う場面と使い方を選ぶことが、便利さを保ちながら備える手がかりになります。AIの答えに頼りすぎない考え方は、検索結果の上に出るAIの要約は信じていい?の記事でも整理しています。
02 研究とデータでわかっていることナビに頼る人と、道を覚えられる人の違いは?
ナビを多く使う人や、ナビが手放せないと感じる人ほど、ナビなしで道を覚える成績が低い傾向がありました。一方で、人は慣れた場所ほどナビを使う量が少ないと答えており、使い分けていました。
Dahmaniら(2020)[1]
ふだん車を運転する若い成人に、これまでナビをどれだけ使ってきたかを聞き、仮想の街で道を覚える課題に取り組んでもらいました。ナビを使ってきた量が多い人ほど、ナビなしで道を覚える成績が低くなっていました。3年後に再検査した13人では、その間にナビを多く使った人ほど、道の記憶の成績が大きく下がっていました。方向感覚に自信がない人がナビを多く使っていた、という関係は見られませんでした。
対象: カナダの19〜35歳の運転者50人、うち3年後の再検査は13人 / 限界: 3年後の追跡は人数が少なく、ナビが原因と言い切るには、より大きな研究が必要。
Topeteら(2024)[2]
ナビが手放せないと感じる度合いが高い人ほど、新しい場所の配置を覚える課題の成績が低く、方向感覚の自信も低く、道に迷う不安も強い傾向がありました。一方で、多くの人がナビを最もよく使うのは、到着時刻や渋滞を知るためでした。また、能力の高さにかかわらず、慣れた場所ほどナビを使う量が少ないと答えていました。
対象: 米国の大学生249人(事前登録した2つの研究。配置を覚える課題は、うち対面の研究の61人) / 限界: 関連を見た研究で、ナビが道の記憶を弱めたのか、もともと苦手な人がナビに頼るのかは区別できない。
Yingら(2024)[3]
道に詳しいはずのタクシー運転手に、知らない街の道を動画で覚えてもらい、脳波と視線を測りました。車のナビに長く頼ってきた人も、景色への目の向け方は変わりませんでした。しかし、見た景色を記憶に残す力が弱く、そのぶん頭の負担が大きくなっていました。ナビへの依存が強い人ほど、道の知識のテストの成績も低くなっていました。
対象: 北京の男性タクシー運転手24人 / 限界: 人数が少なく、動画で道をたどる実験のため、実際の運転とは条件が異なる。
Liuら(2025)[4]
運転シミュレーターで、画面の地図だけ、音声だけ、画面と音声の両方、の3つの案内のどれかで道をたどってもらいました。画面の地図だけの案内に比べ、音声のある案内(音声だけ、または画面と音声の両方)のほうが、曲がる交差点を覚える成績が良い結果でした。景色の順番を思い出す課題では、音声だけの案内が最も良い成績でした。方向感覚の得意・不得意にかかわらず、同じ傾向でした。
対象: 中国の大学生75人(ランダムに3つの案内に割り当て) / 限界: 仮想の運転での1回の実験で、長く使い続けたときの効果はわからない。
Benge・Scullin(2025)[5]
50歳以上の人のデジタル機器の利用と、認知機能の関係を調べた研究をまとめました。デジタル機器を使う人のほうが、認知機能障害のリスクが低く(オッズ比0.42)、認知機能が下がる速さもゆるやかな傾向がありました。機器を使うことが脳に悪いとする説とは逆の結果で、ナビの話とは分けて考える必要があります。
対象: 57件の研究、411,430人(平均68.7歳。メタ分析) / 限界: 観察研究のまとめで、元気な人ほど機器を使う、という逆向きの関係は否定しきれない。
03 まだわかっていないことナビをやめれば、道を覚える力は戻る?
ナビの使い方を変えた人の道の記憶が、どのくらい戻るのかを確かめた研究は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。研究の多くは人数が少なく、若い人が対象です。
- ナビを減らしたり、音声だけに変えたりした人を長く追い、道の記憶が戻るかを確かめた研究は少ない。
- 出発前に地図を見るだけで道を覚えやすくなるかは、今回調べた範囲でははっきりしない。
- AIが道順や乗り換えまで提案する新しいナビで、同じことが起きるのかは、まだ調べられていない。
04 今日からできることナビに頼りすぎないために、決めておくことは?
慣れた道ではナビを切る、案内は音声で聞く、着いたら通った道を思い出す。この3つを先に決めておくと、ナビの便利さを残しながら、自分で道を覚える機会を作れます。
慣れた道・近所では、ナビを切る
通勤路や近所の買い物など、迷っても困らない道ではナビを開かずに移動します。研究では、ナビを多く使ってきた人ほど、ナビなしで道を覚える成績が低い傾向がありました。
目安 週2〜3回の慣れた移動から
案内は、画面だけに頼らず音声で聞く
歩くときはスマホをポケットに入れ、音声の案内だけで進みます。大学生の実験では、画面の地図だけより音声のある案内のほうが曲がる交差点を覚える成績が良く、景色の順番は音声だけの案内で最もよく覚えていました。運転中は画面を操作せず、出発前に設定を済ませます。
目安 出発前の設定・1分
着いたら、通った道を思い出してみる
目的地に着いたら、曲がった角と目印を3つ思い出します。タクシー運転手の研究では、ナビに頼ってきた人は、見た景色を記憶に残す力が弱い傾向がありました。目印を意識して見る機会を、自分で作る工夫です。
目安 到着後・30秒
初めての場所や急ぐ日は、遠慮なく使う
初めての場所、時間に余裕がない日、夜道などは、ナビを使ってかまいません。米国の研究では、ナビは到着時刻や渋滞を知るために最もよく使われていました。安全と時間を優先する場面と、自分で覚える場面を分けます。
目安 出かける前に決める
道に限らず、AIやアプリに任せきりで自分の力が落ちないか心配なときは、AIに頼りすぎて、文章が書けなくならないか心配の記事で、力を残す使い方を整理しています。AIなしで手が止まる場面への備えは、AIなしだと、考えたり書いたりする手が止まるにまとめています。
05よくある質問
ナビを使うと方向音痴になるの?
そう言い切れるほどの証拠はまだありません。ただ、カナダの若い成人の研究では、ナビを使ってきた量が多い人ほど、ナビなしで道を覚える成績が低い傾向がありました。3年後に再検査した13人では、その間にナビを多く使った人ほど、道の記憶の成績が大きく下がっていました。
ナビを使うのをやめたほうがいい?
やめる必要はありません。米国の研究では、ナビは渋滞や到着時刻を知るために最もよく使われ、慣れた場所ほど使う量が少ないと答えていました。初めての場所や時間に余裕がないときは使い、慣れた道では切るなど、場面で使い分けるのが現実的です。
画面の地図と音声案内、道を覚えやすいのはどっち?
中国の大学生75人の運転シミュレーターの実験では、画面の地図だけの案内より、音声のある案内のほうが曲がる交差点を覚える成績が良く、景色の順番は音声だけの案内で最もよく覚えていました。著者らは、音声案内では画面に目を取られにくくなるためではないかと考えています。
スマホやネットを使うと、年をとってから物忘れしやすくなる?
研究のまとめでは、逆の結果が出ています。50歳以上の41万人分の研究をまとめた分析では、デジタル機器を使う人のほうが、認知機能障害のリスクが低い傾向がありました。ナビの使い方の話と、デジタル機器全般の話は分けて考える必要があります。
出典
- Dahmani L, Bohbot VD (2020). Habitual use of GPS negatively impacts spatial memory during self-guided navigation. Scientific Reports, 10, 6310. https://doi.org/10.1038/s41598-020-62877-0
- Topete A, He C, Protzko J, Schooler J, Hegarty M (2024). How is GPS used? Understanding navigation system use and its relation to spatial ability. Cognitive Research: Principles and Implications, 9, 16. https://doi.org/10.1186/s41235-024-00545-x
- Ying Q, Dong W, Fabrikant SI (2024). How Do In-Car Navigation Aids Impair Expert Navigators' Spatial Learning Ability? Annals of the American Association of Geographers, 114(7), 1483-1504. https://doi.org/10.1080/24694452.2024.2356858
- Liu X, Zhang Y, Sun B (2025). Navigating by Design: Effects of Individual Differences and Navigation Modality on Spatial Memory Acquisition. Behavioral Sciences, 15(7), 959. https://doi.org/10.3390/bs15070959
- Benge JF, Scullin MK (2025). A meta-analysis of technology use and cognitive aging. Nature Human Behaviour, 9(7), 1405-1419. https://doi.org/10.1038/s41562-025-02159-9


