AIのアプリで「食べられる」と出たキノコを食べてしまった。研究では、いちばん正確なアプリでも約15%は正しく答えられず、症状がなくても早めに医療機関へ相談する

山や公園で見つけたキノコや野草を、スマホのAIアプリで撮ったら「食べられる」と出た。それを信じて食べたあとで、「本当に大丈夫だったのか」と不安になった。そんなときは、元気でも、何のキノコか確かでないなら早めに医療機関に相談してください。研究では、写真で見分けるAIアプリは、いちばん成績のよいものでも約15%は正しい答えを出せませんでした。
3行でわかる
- 12のAIツールを103枚の写真で試した研究では、いちばん成績のよいアプリでも約15%で正しい答えを出せず、成績の低い3つでは誤りが8割を超えていました。
- 毒の強いキノコには、食べてしばらく症状が出ない時期や、いったん良くなったように見える時期があり、症状がないことは安全の証明になりません。
- 食べてしまったら、元気でも早めに医療機関に相談し、食べ残し・写真・アプリの画面・食べた時刻と量を持っていきます。
01 結論から言うとアプリを信じて食べてしまったら、どうする?
何のキノコか確かでないなら、症状がなくても早めに医療機関に相談します。具合が悪いときは、迷わず救急車を呼びます。食べ残しや写真、アプリの画面は捨てずに持っていきます。
「アプリが食べられると言ったのだから大丈夫」と考えたくなります。でも、研究者たちは、写真で見分けるAIアプリの答えを、食べるかどうかの判断に使うことを勧めていません。
毒キノコの中毒をまとめた研究では、症状がないことは毒が体に入っていないことを意味しないとされ、治療は早いほど効きやすいと書かれています。[3] 「様子を見てから」より「先に相談」が、この場面の基本です。
この記事は、食べてしまった「あと」のことを書きます。詳しくない分野でAIの説明を信じやすくなる理由は、詳しくない分野ほど、AIの説明を信じすぎてしまう?にまとめています。
02 研究とデータでわかっていることキノコのAIアプリはどのくらい当たる?
実際の写真で試した研究では、いちばん成績のよいアプリでも約15%は正しい答えを出せず、ツールによって誤りは2割から8割超までばらつきました。答えを1つだけ正しく示せたのは、最も成績のよいアプリで6.8%でした。
Kuznetsovら(2026)[1]
スマホアプリ6つとパソコンで使えるサービス6つ、あわせて12のAIツールに、森などで撮ったキノコの写真103枚(60種近く・40属)を見せました。いちばん成績のよいアプリでも約15%で正しい答えを出せず、続く4つの誤りは平均で約20%、その次の4つは約40%、最も低い3つは80%を超えていました。毒のあるベニテングタケは、育ったものなら12のうち10のツールが最初の候補に挙げましたが、まだ小さな「つぼみ」の時期の写真では3つだけでした。
対象: 著者らが2009〜2024年にヨーロッパとアジアで撮り、ネットに公開していなかった写真。3人の研究者がそれぞれの端末で試した / 限界: 1つの研究チームの写真で、日本のキノコを中心に調べたものではない。ツールは更新されるため、今の版にそのまま当てはまるとは限らない。
Hodgsonら(2023)[2]
オーストラリアのビクトリア州の中毒情報センターと植物園に2020〜2021年に届いた、78件のキノコの写真を、3つのアプリで調べました。正しく見分けられた割合は49%、35%、35%で、毒キノコに限ると44%、30%、40%でした。研究者たちは、アプリで食べられると誤って見分けたあとの中毒が増えていると感じたことが、研究のきっかけだったと書いています。結論は、アプリだけでは毒キノコを食べた可能性を否定できない、というものでした。
対象: 実際に中毒相談などで届いた写真。種類は専門家が確かめた / 限界: アプリは3つだけで、一つの地域のキノコ。要旨で確認できた数字のみを載せている。
Dimitrovaら(2026)[3]
毒キノコの中毒の見分け方と治療をまとめたレビューです。肝臓を傷つける毒をもつキノコでは、食べてから症状のない時期があり、その後に吐き気や下痢が出て、いったん良くなったように見える時期のあいだにも肝臓や腎臓への害が進むことがあると説明しています。症状がなくても毒が吸収されていないとは言えず、治療は早いほど効果が出やすいとしています。見分けるアプリは、安全を確かめたと誤って受け取られると、相談を遅らせるおそれがあると指摘していました。
対象: これまでの研究のまとめ(レビュー) / 限界: 主に医療者向けの内容で、元になった研究の多くは観察研究。
野草も同じです。毒のある植物17種を3つの植物アプリで調べた研究では、どの写真でも正しく見分けられた種は、最も成績のよいアプリで17種中10種、最も低いアプリでは1種でした。[4]
03 まだわかっていないこと日本のキノコでもアプリは間違える?
日本に生えるキノコや野草で、AIアプリの正確さを調べた研究は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。研究の多くはヨーロッパやオーストラリア、アメリカのものです。
- 今回見つかった研究は、海外のキノコや植物の写真を使ったものでした。日本で採れるキノコや野草で、どのくらい誤るかはわかっていません。
- 研究の多くは、写真を見分ける専用のアプリを調べたものです。会話型のAIに写真を見せて聞いた場合の正確さは、まだ研究が少ない状況です。
- アプリが原因の中毒がどのくらい起きているかを、きちんと数えた統計は見つかりませんでした。
- アプリは頻繁に更新されます。研究の結果が、今使っているアプリにそのまま当てはまるとは限りません。
04 今日からできること食べたあと、何から手をつける?
まず医療機関に相談し、食べ残し・写真・アプリの画面・食べた時刻と量をまとめて伝えます。一緒に食べた人にも知らせます。次からは、アプリの答えを食べるかどうかの判断に使いません。
元気でも、早めに医療機関に相談する
何のキノコか確かでないなら、症状が出る前に相談します。吐き気・下痢・腹痛などが出ているとき、ぐったりしているときは、迷わず救急車を呼びます。いったん良くなったように見えても、自己判断で相談をやめないでください。
目安 気づいたらすぐ
食べ残し・写真・アプリの画面を捨てずにまとめる
調理前の残りや食べ残しは袋に入れて持っていきます。採った場所の写真、アプリが出した結果の画面も残します。何時にどのくらい食べたか、どう調理したかをメモします。
目安 5分
一緒に食べた人、分けた人に知らせる
家族や知人に分けていたら、すぐに連絡し、同じように相談するよう伝えます。症状の出方は人によって違うことがあるため、1人が元気でも安心材料にはなりません。
目安 10分
次からは、アプリの答えを「候補」として扱う
アプリが出すのは確率の高い順の候補です。名前を調べて楽しむのには使えても、食べるかどうかを決める材料にはしません。研究のまとめでも、アプリは専門家の確認の代わりにならないとされていました。
目安 次に使うとき
AIの言葉で「大丈夫」と言われたあとも不安が残るときの考え方は、AIに症状を相談したら「様子を見て大丈夫」と言われたにもまとめています。AIの答えの確かめ方全般は、AIの答えが間違っていた。ハルシネーションはどのくらい起きる?が参考になります。
05よくある質問
AIアプリで食べられると出たキノコを食べてしまった。元気なら様子を見ていい?
研究のまとめでは、毒の強いキノコの中には、食べてしばらく症状が出ない時期があるものがあり、症状がないことは毒が入っていないことの証明にならないとされています。何のキノコか確かでないなら、元気でも早めに医療機関に相談してください。
受診するとき、何を持っていけばいい?
食べ残しや、調理前のキノコの残り、採った場所で撮った写真、アプリが出した結果の画面です。食べた時刻と量、一緒に食べた人のこともメモしておくと、医療者に伝わりやすくなります。
アプリで何度調べても同じ答えなら、正しいと考えていい?
そうとは言えません。研究では、いちばん成績のよいアプリでも、正しい答えを1つだけはっきり示せたのは6.8%でした。同じ写真で同じ答えが出るのは、同じ間違いがくり返されているだけのこともあります。
キノコの見分け方のアプリは使わないほうがいい?
名前を調べて楽しむ、図鑑で調べる手がかりにする、といった使い方はできます。研究者たちが勧めていないのは、アプリの答えだけで「食べられる」と決めることです。食べるかどうかは、アプリの結果とは切り離して考えます。
出典
- Kuznetsov NV, Xia Y, Kuznetsov S, King FC, Ljubisavljevic M (2026). AI-mediated risks and real-life challenges in mushroom foraging. npj Science of Food, 10, 121. https://doi.org/10.1038/s41538-026-00752-4
- Hodgson SE, McKenzie C, May TW, Greene SL (2023). A comparison of the accuracy of mushroom identification applications using digital photographs. Clinical Toxicology, 61(3), 166-172. https://doi.org/10.1080/15563650.2022.2162917
- Dimitrova T, Cherneva D, Mihalev K, Iliev I, Yaneva G, Georgieva S (2026). Amatoxin Intoxication and Wild Mushroom Poisoning: Current Advances in Diagnosis, Risk Stratification, and Clinical Management. Toxins, 18(5), 216. https://doi.org/10.3390/toxins18050216
- Otter J, Mayer S, Tomaszewski CA (2021). Swipe Right: a Comparison of Accuracy of Plant Identification Apps for Toxic Plants. Journal of Medical Toxicology, 17(1), 42-47. https://doi.org/10.1007/s13181-020-00803-6


