AIに直してもらううちに、自分の文章らしさが消えた気がする。研究では、AIの書き直しで文章の複雑さのばらつきが21〜50%小さくなっていた

ブログや小説、SNSの文章をAIに整えてもらううちに、読み返しても自分の声に聞こえなくなった。そんな違和感を持つ人は少なくありません。気のせいではなく、研究でも、AIが文章を書き直すと内容は残る一方で、文体がそろいやすいことがわかってきました。自分の文章らしさは、AIへの頼み方を変えることで取り戻しにいけます。
3行でわかる
- 88万件を超える文章を使った研究では、AIに文章を整えさせると、内容は保たれたまま、文章の複雑さのばらつきが21〜50%小さくなりました。文体がそろう方向です。
- 実際の論文でも、AIが好む言い回しが2024年に急に増え、医学・生物学系の論文の要旨の少なくとも13.5%がAIを通したと推定されています。
- 仕事の文章を書く実験では、先に自分で下書きしてからAIで直した人は、作品を「自分のもの」と感じる度合いが、AIを使わない場合とほぼ同じでした。AIには直しの指摘だけを頼むと、自分の言い回しを残しやすくなります。
01 結論から言うとAIに直してもらうと、文章の個性は消える?
消えるとまでは言えませんが、薄まりやすいことは研究で示されています。AIに文章を整えさせると、言いたい内容は残る一方で、言い回しや文の組み立てが多くの人と似た方向にそろいやすくなります。
文章の個性は、言葉の選び方、文の長さ、くせのある言い回しなどに表れます。AIは大量の文章から「よくある書き方」を学んでいるため、整えるほど、その「よくある書き方」に近づきやすくなります。
この記事で扱うのは、文章の文体(書きぶり)です。AIを使った作品を自分のものと感じられないという悩みはAIに手伝わせた作品が自分の作品だと思えないときの記事、文章を書く力そのものが落ちないかという心配は書く力を残すAIの使い方の記事で扱っています。
02 研究とデータでわかっていることAIで整えた文章は、どのくらい似てくる?
AIに書き直させた実験では、文章の複雑さのばらつきが21〜50%小さくなりました。実際の論文の要旨でも、AIが好む言い回しが2024年に急に増えています。
Souratiら(2026, Nature Human Behaviour)[1]
さまざまな分野の文章を、文章作成を手伝うAIに整えさせたり書き直させたりして、元の文章と比べました。言いたい内容は保たれていましたが、文体はそろい、文章の複雑さのばらつきは、データとAIの種類によって21〜50%小さくなりました。多数派に多い特徴が強まり、それ以外の特徴は弱まる傾向もありました。この傾向は、AIの種類や頼み方、文章の場面を変えても見られました。
対象: 7つのデータ(分野の異なる文章)、合わせて88万件を超える文章で3つの研究 / 限界: AIが書き直した文章を調べたもので、人がAIを使い続けたときに本人の書きぶりがどう変わるかを追ったものではありません。
Kobakら(2025, Science Advances)[3]
2010〜2024年にPubMedに載った1,500万件を超える医学・生物学系の論文の要旨で、言葉の使われ方の変化を調べました。2024年には、内容ではなく書きぶりに関わる言葉が急に増えていました。たとえば「delves(掘り下げる)」は、それまでの傾向から予想される回数の28倍使われていました。こうした言葉から、2024年の要旨の少なくとも13.5%がAIを通したと推定され、分野や国、雑誌によっては40%に達していました。
対象: PubMedに収録された英語の論文要旨 / 限界: 言葉の増え方からの推定で、個々の論文がAIを使ったかどうかはわかりません。研究者は、この数字を「少なくとも」の下限としています。
DoshiとHauser(2024, Science Advances)[4]
オンラインで集めた293人に8文の短い物語を書いてもらい、一部の人にはAIが出した書き出しのアイデアを使えるようにしました。アイデアを使えた人の物語は、別の600人から、より創造的で、よく書けていると評価されました。その一方で、AIのアイデアを使えた人どうしの物語は、AIなしの人どうしより互いに似ていました。
対象: オンライン調査サービスで集めた参加者293人(書き手)と600人(評価者) / 限界: 短い物語1本の実験です。似ている度合いは、文章の意味の近さを機械で測ったもので、文体だけを測ったものではありません。
心理学や言語学などの研究をまとめた総説でも、同じAIを多くの人が使うほど、言葉や考え方の多様さが失われるおそれがあると指摘されています[2]。一人ひとりの文章は読みやすくなっても、集まると似た文章が増える、というのが今わかっていることです。
03 まだわかっていないこと一度AIに慣れた書きぶりは、元に戻る?
まだわかっていません。研究が調べたのは、AIが書き直した文章や、たくさんの論文の言葉の傾向です。一人の書き手がAIを使い続け、やめたときに書きぶりがどう戻るかを追った研究は、今回の調査では見つかりませんでした。
- 日本語の文章で同じ傾向が出るか。紹介した研究は、主に英語の文章を調べています。
- AIで文章を整え続けた人の書きぶりが、AIなしで書くときにも変わってしまうのか。
- AIに「自分の文体を残して」と頼むことで、そろいやすさをどこまで防げるか。
- 小説や詩のように、書きぶりそのものが作品の価値になる文章で、影響がどのくらい大きいか。
04 今日からできること自分の文章らしさを取り戻すには、何から始める?
AIを使う前に書いた自分の文章を見本として手元に置き、下書きは自分で書きます。AIには書き直しではなく、誤りや分かりにくい箇所の指摘だけを頼み、直すのは自分の手で行います。どれもお金はかかりません。
次の工夫は、研究で文体がそろいやすかった使い方(AIに整えさせる・書き直させる)を避け、自分の書きぶりが残っていた使い方(先に自分で書く)に近づける方向で選びました。工夫そのものの効果を試した研究ではない点に注意してください。
| AIへの頼み方 | 文体への影響(研究から) | おすすめの使い方 |
|---|---|---|
| 全文を整えて・書き直して | そろいやすい | 大事な文章では避ける |
| 書き出しのアイデアをもらう | 作品どうしが似やすい | 案は見比べるだけにする |
| 誤字や事実の誤りを指摘して | 直すのは自分なので残りやすい | いちばん使いやすい |
AIを使う前の自分の文章を1本、見本として保存する
AIを使い始める前に書いたブログや日記、作品を1本選び、すぐ開ける場所に置きます。読み返して、よく使う言葉や文の長さ、好きな言い回しを3つメモします。
目安 15分
下書きは、雑でも自分で最後まで書く
箇条書きでもかまいません。文章の実験では、先に自分で下書きしてからAIで直した人は、AIの文章を写して使った人より、作品を自分のものと感じる度合いが高く、AIを使わない人とほぼ同じでした[5]。
目安 文章1本につき10〜20分
AIには「書き直さずに、指摘だけして」と頼む
誤字、事実の誤り、分かりにくい箇所を挙げてもらい、どう直すかは自分で決めます。AIの直し案が出てきたら、そのまま貼らずに自分の言葉で書き直します。
目安 文章1本につき5分
自分らしくない言い回しに印をつけて戻す
読み返して、自分なら使わない言葉や、どこかで見たような締めの一文に印をつけます。ステップ1のメモと見比べて、自分の言い方に戻します。
目安 文章1本につき5〜10分
週に1本、AIを通さずに書く
短い日記や感想でかまいません。文章の実験では、AIの文章を写して使った人は、そのあとAIなしで書く作業に戻っても、AIなしでできるという自信の低さが残っていました[5]。AIなしで書く場を残しておくと、自分の書きぶりを確かめる機会になります。
目安 週1回・15分
アイデアを出す場面でも、AIを使うと案どうしが似やすくなります。使う前に決めておくことはAIでアイデアを出すとみんな似た案になるかの記事にまとめています。
05よくある質問
AIに文章を直してもらうのは、やめたほうがいい?
やめる必要はありません。研究で文体がそろいやすかったのは、AIに文章を整えさせたり書き直させたりした場合です。誤字や事実の確認など「指摘だけ」をAIに頼み、直すのは自分の手で行えば、自分の言い回しを残しやすくなります。
日本語の文章でも、同じことが起きる?
まだはっきりしていません。紹介した研究は主に英語の文章を調べたものです。ただ、AIの書き直しで文体がそろう傾向は、使ったAIや頼み方、文章の種類を変えても見られたと報告されています。
自分の文章らしさは、どのくらいで戻る?
戻るまでの期間を調べた研究は、今回の調査では見つかりませんでした。AIを使う前に書いた自分の文章を見本として手元に置き、AIを通さずに書く機会をつくると、何が自分らしさだったかを確かめやすくなります。
「AIが書いたみたい」と言われて傷ついた。
AIで文章を整えると、特定の言い回しが増えやすいことは研究でも確かめられています。自分で書いたのにAIの文章だと疑われたときは、書いた過程の記録が説明の材料になります(AI判定ツールで「AIが書いた」と言われたときの記事)。
出典
- Sourati Z, Karimi-Malekabadi F, Ozcan M, McDaniel C, Ziabari A, Trager J, Tak AN, Chen M, Morstatter F, Dehghani M (2026). The shrinking landscape of linguistic diversity in the age of large language models. Nature Human Behaviour. https://doi.org/10.1038/s41562-026-02550-0
- Sourati Z, Ziabari AS, Dehghani M (2026). The homogenizing effect of large language models on human expression and thought. Trends in Cognitive Sciences, 30, 805-816. https://doi.org/10.1016/j.tics.2026.01.003
- Kobak D, González-Márquez R, Horvát EÁ, Lause J (2025). Delving into LLM-assisted writing in biomedical publications through excess vocabulary. Science Advances, 11, eadt3813. https://doi.org/10.1126/sciadv.adt3813
- Doshi AR, Hauser OP (2024). Generative AI enhances individual creativity but reduces the collective diversity of novel content. Science Advances, 10, eadn5290. https://doi.org/10.1126/sciadv.adn5290
- Lee EH, Yin Y, Jia N, Wakslak CJ (2026). Relying on AI at work reduces self-efficacy, ownership, and meaning while active collaboration mitigates the effects. Scientific Reports, 16, 13583. https://doi.org/10.1038/s41598-026-42312-6


