AIの導入で仕事がつらく、休みたい。休職は会社の規則で決まり、休む間の収入は傷病手当金か労災で支える

会社にAIが入り、仕事の進め方も速さも変わった。朝起きるのがつらく、もう休みたい。そう感じても、「休んだら収入はどうなるのか」「会社に何と言えばいいのか」がわからず、踏み出せない人は少なくありません。休むための仕組みは、休職・傷病手当金・労災の3つに分けると整理できます。それぞれの条件と相談先を、法律と公的資料から順にまとめます。
3行でわかる
- 休職は法律ではなく、会社の就業規則で決まる制度です。休める期間や給与の有無は会社ごとに違うため、まず規則を読みます。
- 業務外の病気で休み、給与が出ないときは、健康保険の傷病手当金が4日目から出ます。額は標準報酬日額の3分の2で、期間は通算1年6か月です。
- 仕事が原因の心の病気は、労災の対象になりえます。認定するのは労働基準監督署で、2025年度の精神障害の労災請求は4,958件でした。
01 結論から言うと仕事がつらくて休みたいとき、最初に何をする?
医療機関を受診し、休む必要があるかを医師に相談することが入口です。厚生労働省の手引きでは休業は主治医の診断書から始まるとされ、傷病手当金の申請書にも医師が書く欄があります。
厚生労働省の職場復帰支援の手引きは、心の不調で休んでから戻るまでを5つのステップに分けています。第1ステップは「病気休業開始及び休業中のケア」です。主治医の診断書(病気休業診断書)を管理監督者に出すと、休業が始まると書かれています[6]。
お金の面でも同じです。傷病手当金の申請書には、医師が「労務不能と認めた期間」を書く欄があります[3]。
「AIについていけない自分が悪い」と考えて、受診をためらう人もいます。けれど、制度の条件に「AIが原因かどうか」はありません。見られるのは、働けない状態か、原因が仕事か仕事以外かです。休むことへの後ろめたさは、姉妹メディアの休むことに罪悪感があるで扱っています。ここでは、3つの仕組みを表にまとめます。
| 仕組み | 何が決まるか | どこで決まっているか | 主な窓口 |
|---|---|---|---|
| 休職 | 籍を置いたまま休めるか、休める期間、その間の給与 | 会社の就業規則(労働基準法に定めはない) | 人事・上司 |
| 傷病手当金 | 業務外の病気で、給与が出ない日の収入 | 健康保険法第99条 | 加入している健康保険 |
| 労災の休業補償 | 仕事が原因と認められた病気で休む日の収入 | 労災保険(認定は労働基準監督署) | 労働基準監督署 |
02 研究とデータでわかっていること休職中の収入は、どの制度で支えられる?
業務外の病気なら健康保険の傷病手当金、仕事が原因と認められれば労災保険の休業補償給付です。休める期間や給与は、法律ではなく会社の就業規則で決まります。
休職は、会社の就業規則で決まる
厚生労働省のモデル就業規則(2025年12月版)は、休職を、身分を保ったまま一定期間、働く義務を免除する「特別な扱い」と説明しています。そのうえで、休職の定義、期間の制限、復職などは「労基法に定めはありません」と書いています[4]。
つまり、何か月休めるか、その間に給与が出るかは会社ごとに違います。モデル就業規則の例文では、休職期間が満了しても治らず働けないときは、満了をもって退職とする書き方も示されています[4]。就業規則は、労働基準法第106条で、会社が働く人に周知しなければならないものとされています[5]。
傷病手当金は、業務外の病気で給与が出ない日の支え
協会けんぽは、傷病手当金の条件を4つ挙げています[2]。
- 業務外の病気やけがの療養のための休業であること
- 仕事に就くことができないこと
- 連続する3日間を含み、4日以上仕事に就けなかったこと
- 休業した期間に給与の支払いがないこと
最初の連続3日間は「待期」と呼ばれ、有給休暇や土日・祝日も含まれます。4日目以降の働けなかった日に支給されます[2]。額は、健康保険法第99条で、支給を始める月以前の直近12か月の標準報酬月額の平均の30分の1の、3分の2と決まっています[1]。たとえば平均が17万円なら、30で割った額(10円未満は四捨五入で5,670円)の3分の2で、1日あたり3,780円になります[1]。
給与が一部出ていて、その額が傷病手当金より少ないときは、差額が支給されます(同法第108条)[1]。申請は、働けなかった日ごとに、その翌日から2年で時効になります[3]。
労災は、仕事が原因の病気かどうかを監督署が調べる
精神障害の労災認定には、3つの要件があります[7]。
- 認定基準の対象となる精神障害を発病していること
- 発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
- 業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと
負荷の強さは、本人がどう受け止めたかではなく、職種や立場、経験が似た「同種の労働者」が一般的にどう受け止めるかで評価されます[7]。基準は2023年9月に改正されました。いわゆるカスタマーハラスメントが出来事に加わり、医師の意見の集め方も効率化されています[8]。
厚生労働省が2026年7月に公表した2025年度の集計では、精神障害の請求は4,958件で、前年度より1,178件増えました。支給決定は1,082件です。支給決定を出来事別に見ると、パワーハラスメントの222件が最多で、「仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事」も113件ありました[9]。支給決定には前年度以前の請求も含まれるため、請求件数で割った値は認定率にはなりません。
労災と認められると、休業4日目から給付基礎日額の80%が支給されます[10]。労働基準法第19条は、仕事が原因の病気で療養のため休む期間とその後30日間の解雇を、原則として禁じています[5]。
Nieuwenhuijsen ら(2020、コクラン・レビュー)[15]
うつの状態で働く人について、職場に向けた取り組みと医療の取り組みを組み合わせると、1年以内の病気休業の日数がおそらく減ると結論づけています。1年あたりに直すと約25日少ない計算です。ただし1年以上たった時点で、仕事に就いていない人の割合に差は見られませんでした。
対象: 45件の試験(ランダム化比較試験など)、12,109人(大うつ病、または抑うつ症状が強い人) / 限界: AI導入で休んだ人を調べたものではなく、日本の休職制度の下での結果でもありません。
03 まだわかっていないことAI導入のつらさは、労災で認められる?
まだわかりません。AI導入そのものを出来事として扱う基準や統計は、今回調べた公的資料には見当たりませんでした。判断は個別の調査で行われます。
- 労災の評価表には「AI」という言葉はありません。近い出来事として「仕事内容・仕事量の大きな変化」や、「新規事業や、大型プロジェクト(情報システム構築等を含む)などの担当になった」があります。ただ、当てはまるかどうかは、出来事と後の状況の全体から労働基準監督署が判断します[7]。
- 2025年度の労災の集計に、AI導入という分類はありません。AIが関わる請求や認定の数はわかりません。
- コクラン・レビューの対象は、うつの状態にある人への取り組みです。AI導入で休んだ人に同じ結果が出るか、日本の制度の下で同じになるかは調べられていません。
このメディアは、あなたの状況が労災に当たるかどうかは判断できません。迷うときは、04の相談先で一般的な扱いを聞くのが近道です。
04 今日からできること休む前に、何を確かめておけばいい?
受診の予約、就業規則の休職の項目、加入している健康保険、つらさの経過のメモの4つです。どれも無料で今日から始められ、相談するときの材料になります。
医療機関を予約し、仕事の状況も伝える
いつから、どんな仕事の変化があり、何がつらいかを医師に話します。休む必要があるか、診断書が要るかは、その場で相談できます。
目安 予約の電話5分
就業規則の「休職」の項目を読む
休職できる条件、休める期間、給与の有無、期間が満了したときの扱い、復職の手続きを確かめます。見つからなければ、人事に見せてほしいと頼めます。
目安 15分
加入している健康保険を確かめる
協会けんぽの場合、申請書は加入している支部に出し、本人・会社・医師の3者が書く形です。会社の健康保険組合に入っている人は、組合の案内を確かめます。
目安 5分
仕事の変化とつらさの経過をメモする
AIの導入で何が変わったか、残業時間、体調の変化を日付つきで残します。労災では発病前おおむね6か月の出来事が見られるため、記録が説明の助けになります。
目安 1日5分
こころの耳 電話相談(0120-565-455): 働く人と家族の心の悩み。平日17時〜22時、土日10時〜16時(祝日・年末年始は休み)。発信者番号の通知が必要です[11]。
総合労働相談コーナー: 配置転換や賃金の引下げ、いじめ・嫌がらせなど、あらゆる分野の労働問題を、無料・予約不要で面談か電話で相談できます。全国378か所です[12]。
労災保険相談ダイヤル(0570-006031): 労災保険の制度や請求手続きの一般的な相談です[14]。
まだ休むほどではないときに使える仕組みは、職場のAI導入でしんどくなる前にで、職場の支えについては会社にAIが入ってきて、しんどくなりそうで整理しています。
05よくある質問
休職中に給料はもらえる?
会社の就業規則しだいです。休職中の給与について労働基準法に定めはなく、厚生労働省のモデル就業規則も「原則として賃金を支給しない」とし、一定期間は一部を支給する書き方を空欄つきで示しています。給与が出ない日、または傷病手当金より少ない日は、条件を満たせば傷病手当金が出ます。
有給休暇を使ってから、傷病手当金に切り替えられる?
協会けんぽによると、最初の連続3日間の待期には有給休暇も含まれます。ただし有給休暇で給与が出た日は、傷病手当金は支給されません。給与が傷病手当金より少ない場合は、その差額が支給されます。
会社を辞めたら、傷病手当金はもらえなくなる?
協会けんぽでは、退職日までに継続して1年以上の被保険者期間があり、退職日(資格を失う日の前日)に傷病手当金を受けているか、受けられる状態であれば、退職後も引き続き受けられます。いったん働ける状態になった後は、再び働けなくなっても支給されません。
会社が労災の手続きに協力してくれないときは?
厚生労働省の労災保険Q&Aでは、会社が事業主の証明を拒んだ場合など、証明が得られなくても労災の請求はできるとしています。労働基準監督署に相談するよう案内されています。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます[13]。
出典
- 健康保険法(大正11年法律第70号)第99条・第108条. e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/211AC0000000070
- 全国健康保険協会(協会けんぽ). 病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金). https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/sb3040/r139/
- 全国健康保険協会(協会けんぽ). 健康保険傷病手当金支給申請書. https://www.kyoukaikenpo.or.jp/application_form/benefit/001/index.html
- 厚生労働省. モデル就業規則(2025年12月版)第9条(休職). https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/model/index.html
- 労働基準法(昭和22年法律第49号)第19条・第106条. e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
- 厚生労働省 こころの耳. 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援(e-ラーニング). https://kokoro.mhlw.go.jp/return-to-work/
- 厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署. 精神障害の労災認定(2024年10月版、石川労働局掲載). https://jsite.mhlw.go.jp/ishikawa-roudoukyoku/content/contents/002349453.pdf
- 厚生労働省. 心理的負荷による精神障害の労災認定基準の改正概要(令和5年9月1日付け基発0901第2号). https://www.mhlw.go.jp/content/11201000/001140928.pdf
- 厚生労働省. 令和7年度「過労死等の労災補償状況」を公表します(2026年7月15日). https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_74476.html
- 厚生労働省. 労災保険に関するQ&A 3-5 休業(補償)等給付の計算方法を教えてください. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000154476.html
- 厚生労働省 こころの耳. 働く人の「こころの耳電話相談」. https://kokoro.mhlw.go.jp/tel-soudan/
- 厚生労働省. 総合労働相談コーナーのご案内. https://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html
- 厚生労働省 まもろうよ こころ. 電話相談. https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/soudan/tel/
- 厚生労働省. お問合せ窓口. https://www.mhlw.go.jp/otoiawase/index.html
- Nieuwenhuijsen K, Verbeek JH, Neumeyer-Gromen A, Verhoeven AC, Bültmann U, Faber B (2020). Interventions to improve return to work in depressed people. Cochrane Database of Systematic Reviews, CD006237. https://doi.org/10.1002/14651858.CD006237.pub4
- 厚生労働省. 労災保険に関するQ&A 1-5 労働者が業務中に傷病を負いましたが、会社(事業主)が責任を認めません。労災保険の給付は受けられるのでしょうか. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000154453.html


