心の疲れ・比べて落ち込む

会社にAIが入ってきて、しんどくなりそう。研究では、学ぶ機会・聞ける人・使い方のルールがある職場ほど負担がやわらいでいた

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わかっている度 ★★☆ 中研究6本を整理出典照合済み(2026-10-09)
壁一面に貼られた色とりどりの付箋
Photo: ProjectManhattan / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

「来月から全員AIを使うように」と言われて、気が重くなっている。覚えることが増えそう、ついていけなかったらどうしよう。そう感じるのは、あなたが変化に弱いからではありません。新しい技術による負担は「テクノストレス」と呼ばれ、長く研究されてきました。研究では、負担の大きさは本人の力だけでなく、職場の支えで変わっていました。

3行でわかる

  1. 新しい技術による負担(テクノストレス)は、21本の研究をまとめたレビューで、心身の不調や仕事の不満と一貫して関連していました。
  2. 一方で、銀行や工場の調査では、使い方を学ぶ機会や困ったときに聞ける人といった職場の支えがあると、その悪影響がやわらいでいました。
  3. 導入の前に「自分の負担の種類」を書き出し、「研修・聞ける人・使い方のルール」の3つを職場に確かめておくのが備えになります。

01結論から言うと

AIの導入でしんどくなるかどうかは、本人の慣れだけで決まりません。研究では、学ぶ機会があり聞ける人がいる職場ほど、負担による悪影響が小さくなっていました。使い方のルールづくりは、予防策の研究で挙げられています。

研究では、新しい技術による負担を大きく5つに分けて調べてきました。仕事が増えて急かされる「過負荷」、勤務時間外にも追われる「私生活への侵入」、使い方が難しい「複雑さ」、仕事を失う不安の「不安定さ」、変化が速すぎる「不確かさ」です。

生成AIでは、これに加えて新しい負担も報告されています。社内のルールがはっきりしない、入力してよい情報がわからない、AIの答えをどこまで信じていいか迷う、といったものです。

どれも、一人で頑張って解決するには限界があります。だからこそ、導入の前に「何がしんどくなりそうか」と「職場にどんな支えがあるか」を確かめておくことが、いちばん現実的な備えになります。

02研究とデータでわかっていること

テクノストレスは心身の不調と一貫して関連していました。ただし、学ぶ機会や技術的な支え、上司の支えといった職場の資源があると、その悪影響がやわらいでいました。

21本職場のテクノストレスと健康・仕事への影響を調べた研究のまとめ(2021年のレビュー)。負担は不調と一貫して関連
15通り中6通り銀行員355人の調査で、学ぶ機会や技術的な支えが負担の悪影響をやわらげていた組み合わせ(2021年)
15人生成AIを使う若手社員への聞き取り。ルールのあいまいさなどAI特有の負担が語られた(ドイツの大学の研究、2025年)
24個文献と専門家13人の検討からまとめられた、職場のテクノストレスの予防策(2023年)

Borle ら(2021)[1]

働く人のテクノストレスと、健康や仕事への影響を調べた21本の研究をまとめました。負担の種類は、仕事が増えて急かされる「過負荷」が17本(81%)、勤務時間外にも追われる「私生活への侵入」が16本(76%)で、よく調べられていました。テクノストレスは、心身の不調や仕事への不満と一貫して関連していました。例外として、仕事への熱意(ワーク・エンゲイジメント)には前向きな関連も見られました。

対象: 働く人を対象にした量的研究 / 限界: 負担を測る質問と不調を測る質問の中身が重なっていて、関連が強めに出ている可能性があると著者は指摘しています。生成AIが広まる前の研究が中心です。

Högemann ら(2025)[2]

生成AIを試験導入・利用している職場の若手社員15人(研究開発・IT・金融・マーケティング)に聞き取りをしました。これまでの5つの負担は、業種によって現れ方は違いましたが、生成AIでも関係していました。加えて、ルールや法令のあいまいさ、データ保護や著作権の心配、頼りすぎや力が落ちる不安、出力が信頼できるかの迷い、確認や監督の仕事が増えることが、新しい負担として語られました。一方で、効率が上がる、学べるといった前向きな面も報告されました。

対象: ドイツの大学の研究者による、若手社員15人への半構造化インタビュー / 限界: 少人数の聞き取りで、負担の大きさや割合はわかりません。

Hang ら(2021)[4]

銀行員355人に、3か月の間をあけて2回調査しました。テクノストレスは心の健康(ウェルビーイング)を下げていました。一方、研修や資料で使い方を学べる仕組みと技術的なサポートは、心の健康を高めていました。導入に関わる機会には、はっきりした効果は見られませんでした。負担と支えの15通りの組み合わせのうち、支えが負担の悪影響をやわらげていたのは6通りで、いずれも学ぶ仕組みか技術的なサポートでした。反対に、悪影響を強める方向の組み合わせも3通りありました。

対象: パキスタンの1つの銀行の従業員(男性265人・女性90人) / 限界: AIに限らない情報技術全般の調査で、1社だけの自己申告のアンケートです。

Elbir, Mizrak(2026)[5]

ロボットなどの自動化が進んだ5つの工場で、605人を調査し、4週間後に450人を追跡しました。テクノストレスが心の健康などを悪くする直接の影響は、統計的にはっきりしませんでした。その代わり、上司による技術面の支え、回復のための休み、デジタルの知識といった資源が、負担の悪影響をやわらげていました。働く人の心の健康を大切にする職場の雰囲気も、良い結果と関連していました。

対象: 自動車部品・電子機器・重機の工場で働く人 / 限界: 追跡は4週間と短く、生成AIではなく工場の自動化の研究です。

Xu ら(2023)[3]

「AIが自分のキャリアをおびやかす」と感じている度合いと、落ち込みの関係を、2週間ほどの間をあけた2回の調査で321人について調べました。そう感じている人ほど落ち込みが強く、その間を心身の消耗(情緒的消耗感)がつないでいました。会社に支えられていると感じている人では、消耗が落ち込みにつながる関係が弱まっていました。

対象: 中国で、20〜58歳を中心とした働く人321人 / 限界: アンケートによる関連の研究で、原因と結果は確かめられていません。

文献の整理と専門家13人の検討をもとにした研究[6]では、職場で取り組めるテクノストレスの予防策が24個にまとめられました。たとえば、チームで技術の使い方のルールを決める、連絡を受ける時間の決まりを作る、使い方の研修をする、困ったときの技術的なサポートを用意する、経験を共有する場を作る、変化を意識的に管理する、といったものです。

03まだわかっていないこと

生成AIの導入そのものが働く人の心に与える影響を、長く追った研究はまだ少ないのが現状です。どの支えがどのくらい効くかも、AIについてはまだ確かめられていません。

  • 今回の研究の多くは、AIに限らない情報技術全般や、工場の自動化を対象にしたものです。生成AIで同じ結果になるかは、まだはっきりしていません。
  • アンケートの研究が中心で、支えを増やしたら負担が減ったという、介入の効果を確かめた研究は見つかりませんでした。
  • 日本の職場で、生成AIの導入と働く人の負担を調べた研究は、今回の調査では確認できませんでした。

04今日からできること

導入の前に、自分がしんどくなりそうな点を書き出し、研修・聞ける人・使い方のルールの3つを職場に確かめましょう。どれもお金をかけずにできます。

1

しんどくなりそうな点を5つの種類で書き出す

「仕事が増える」「時間外にも追われる」「使い方が難しい」「仕事がなくなる不安」「変化が速い」のどれに当たるかをメモします。種類がわかると、職場に何を頼めばいいかが見えてきます。

目安 10分・1回

2

「研修・聞ける人・ルール」の3つを職場に確かめる

使い方を学ぶ機会はあるか、困ったときに誰に聞けばいいか、入力してよい情報や使ってよい場面のルールはあるか。学ぶ機会と聞ける人は研究で負担をやわらげていた支えに当たり、ルールづくりは予防策の研究でも挙げられています。ない場合は、上司や担当部署に質問の形で伝えてみます。

目安 導入前に1回

3

チームで小さな「使い方メモ」を共有する

うまくいった使い方や、確認が必要だった失敗を、短く書いて共有します。予防策の研究で挙げられた「経験を共有する場」の小さな形です。AIの答えを確かめる手順はAIに作らせた資料をそのまま出していいかの記事にまとめています。

目安 週1回・5分

4

AIに関する連絡を受ける時間を決めておく

新しい機能の情報や質問が時間外にも届くと、負担になりやすくなります。チームで「連絡は勤務時間内に」などの決まりを話し合っておきます。

目安 話し合い15分・1回

入力してよい情報がわからない不安にはChatGPTに入力したデータの行き先と設定が、仕事がなくなる不安には職業ごとのAIの影響の研究が参考になります。

つらさが続くときは
眠れない、気分の落ち込みが続くなど、日常生活に支障が出ているときは、一人で抱えずに、職場の産業医や保健師、医療機関に相談できます。

05よくある質問

会社のAI導入でストレスを感じるのは、自分がAIに弱いからですか?

そうとは限りません。新しい技術による負担はテクノストレスと呼ばれ、仕事が増える・急かされる、勤務時間外にも追われる、使い方が複雑、仕事を失う不安、変化が速いといった形で、多くの職場で調べられてきました。生成AIでは、ルールのあいまいさや出力の信頼性への迷いも負担になっていました。

AIの研修がない会社では、どうすればいいですか?

研修がなくても、聞ける人や情報を共有する場を作ることはできます。チームで使い方のメモを共有する、困りごとを話す時間を短く設けるなど、研究で挙げられた「経験を共有する場」は小さく始められます。職場への提案として、上司や担当部署に聞いてみるのも一つの方法です。

AIを使うと仕事が楽になると聞きますが、負担が増えることもありますか?

研究では両方が報告されています。生成AIを使う若手社員への聞き取りでは、効率が上がる・学べるという前向きな面と同時に、出力を確かめる手間や、監督する仕事が増えるといった負担も語られていました。どちらが大きいかは、職場の支えや使い方によって変わると考えられています。

出典

  1. Borle P, Reichel K, Niebuhr F, Voelter-Mahlknecht S (2021). How Are Techno-Stressors Associated with Mental Health and Work Outcomes? A Systematic Review of Occupational Exposure to Information and Communication Technologies within the Technostress Model. International Journal of Environmental Research and Public Health, 18(16), 8673. https://doi.org/10.3390/ijerph18168673
  2. Högemann M, Hein L, Britsche JO, Thomas O (2025). Technostress and generative AI in the workplace: a qualitative analysis of young professionals. Frontiers in Artificial Intelligence, 8, 1728881. https://doi.org/10.3389/frai.2025.1728881
  3. Xu G, Xue M, Zhao J (2023). The Association between Artificial Intelligence Awareness and Employee Depression: The Mediating Role of Emotional Exhaustion and the Moderating Role of Perceived Organizational Support. International Journal of Environmental Research and Public Health, 20(6), 5147. https://doi.org/10.3390/ijerph20065147
  4. Hang Y, Hussain G, Amin A, Abdullah MI (2021). The Moderating Effects of Technostress Inhibitors on Techno-Stressors and Employee's Well-Being. Frontiers in Psychology, 12, 821446. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2021.821446
  5. Elbir U, Mizrak KC (2026). Technostress, psychosocial safety climate, and worker well-being in automated manufacturing: A two-wave study. PLoS One. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0345249
  6. Berger M, Schäfer R, Schmidt M, Regal C, Gimpel H (2023). How to prevent technostress at the digital workplace: a Delphi study. Journal of Business Economics. https://doi.org/10.1007/s11573-023-01159-3