AIに仕事を奪われるのは本当?職業ごとの研究では、多くの仕事は「なくなる」より「変わる」

「AIに仕事を奪われる」という話を見て、自分の仕事は大丈夫かと気になっていませんか。職業ごとの影響を調べた研究では、多くの仕事は「なくなる」より「中身が変わる」と見られています。ただし影響の大きさは職業によって違います。データで確かめてみましょう。
3行でわかる
- ILOの2025年の分析では、世界の働く人の約4人に1人(24%)が、生成AIの影響を受けうる職業で働いています。最も影響の大きい区分は3.3%です。
- 「影響を受ける」は「失業する」と同じではありません。ILOは、最も起こりやすいのは仕事の消滅ではなく中身の変化だとしています。
- 自分の仕事を作業に分けて、AIで速くなる作業と人が要る作業を見分けることが、今日からできる準備の第一歩です。
01結論から言うと
AIの影響が最も大きい区分に入る仕事は、世界の3.3%です。多くの仕事では作業の一部がAIに置き換わり、仕事の中身が変わると見られています。
研究では、職業そのものではなく、職業の中の「作業」ごとにAIの影響を調べます。たとえば事務職なら、データ入力、書類作成、電話応対、上司との相談などに分けて考えます。
このときの「影響」は、英語でエクスポージャー(さらされる度合い)と呼ばれます。意味は「その作業をAIで速く、または代わりにできる可能性」です。実際に人が減るかどうかとは別の話です。
ILO(国際労働機関)は、ほとんどの職業には人の関わりが必要な作業が残るため、生成AIで最も起こりやすいのは仕事の「変化」だとまとめています[1]。
02研究とデータでわかっていること
影響を受けうる仕事は世界で約4人に1人、高所得国では約3人に1人です。最も影響が大きいのは事務職で、専門職の一部でも影響が強まっています。
主な研究を、影響の「可能性」を調べたものと、実際の「働き方の変化」を調べたものに分けて並べます。
- 可能性の推計: ILO(世界)、Eloundouら(米国)
- 実際の変化: 顧客サポートの職場(生産性)、フリーランスの仕事サイト(仕事の量と収入)
Gmyrekら / 国際労働機関 ILO(2025)[1]
世界の働く人の24%が、生成AIの影響を受けうる職業にいました。最も影響の大きい区分に入る職業の多くは、データ入力、タイピスト、経理・簿記、一般事務などの事務職でした。
影響の大きい区分の割合は女性4.7%、男性2.4%で、高所得国では女性9.6%、男性3.5%と差が広がりました。ウェブ開発、金融アナリスト、翻訳者などの一部の専門職では、2023年の推計より影響の度合いが上がっています。
対象: 約3万の作業から選んだ2,861の作業を、働く人1,640人の回答とAIの予測で評価し、世界の就業者に当てはめた推計 / 限界: 作業をAIで行える「可能性」の推計で、実際に職が減るかは測っていません。ILOは、会議メモや日程調整などは2023年の推計が楽観的すぎ、実際にはまだ人の手間がかかると見直しています。
Eloundouら / 学術誌 Science(2024)[2][3]
対話型のAIだけを使う場合、仕事の半分以上の作業に影響が出るのは、仕事全体の約1.8%でした。AIを組み込んだソフトが今後そろう前提では、この割合は46%強に増えると推計されています。
影響はすべての賃金水準に及び、収入の高い仕事ほど影響を受けやすい傾向がありました。
対象: 米国の職業と作業の一覧を、人の評価とAIの分類で評価 / 限界: 著者らは、AIがいつ・どこまで導入されるかの予測はしていないと明記しています。
Brynjolfssonら / 経済学誌 QJE(2025)[4]
顧客サポートの職場にAIの補助を段階的に入れたところ、1時間あたりに解決した問い合わせの数が平均15%増えました。経験の浅い人や技能の低い人では、速さと質の両方が上がりました。
対象: ある企業の顧客サポート担当5,172人 / 限界: 1つの職種・1つの企業の結果です。最も経験のある人では、速さの伸びは小さく、質はわずかに下がりました。
Huiら / 経営学誌 Organization Science(2024)[5]
大手の仕事仲介サイトで、生成AIの影響を強く受ける職種のフリーランスは、ChatGPTや画像生成AIの登場後に仕事の量と収入が減っていました。過去の実績が高い人でも、減り方は小さくなっていませんでした。
対象: オンラインの仕事仲介サイトのフリーランス / 限界: 登場直後の短い期間の結果で、会社に雇われて働く人にそのまま当てはまるかはわかりません。
日本では、生成AIを使ったことがある人は26.7%でした(総務省、2024年度調査)。2023年度の9.1%から増えたものの、米国の68.8%とは差があります。使わない理由は「自分の生活や業務に必要ない」に次いで「使い方がわからない」が多い結果でした[6]。
AIへの不安で心が疲れているときの付き合い方は、AI時代のメンタルヘルスの記事で整理しています。
03まだわかっていないこと
影響を受けうる仕事のうち、実際にどれだけの人が職を失うのか、いつ起きるのかは、まだわかっていません。日本の職業ごとの実測データも少ない状態です。
- 影響の推計は「作業をAIで行える可能性」です。会社がどう導入するか、人を減らすか仕事を変えるかで、結果は大きく変わります(ILO)。
- 実際の変化を調べた研究は、顧客サポートやフリーランスなど一部の職場に限られ、期間も短いものが中心です。
- 日本の職業ごとに、生成AIで雇用がどう変わったかを長く追ったデータは、まだほとんどありません。
- AIで新しく生まれる仕事がどれだけあるかは、推計が難しい分野です。
04今日からできること
職業名で一喜一憂するより、自分の仕事を作業に分けて見直すことが一番の準備です。お金はかからず、15分から始められます。
自分の仕事を「作業」に分けて書き出す
1週間にやっている作業を10個ほど紙に書きます。研究と同じく、職業名ではなく作業単位で見ると、AIの影響が及ぶ範囲が具体的になります。
目安 15分・1回
各作業に「AIで速くなりそう」「人が要る」の印をつける
文章の下書きや要約、決まった形の入力は「速くなりそう」。相手との調整、現場での判断、責任をとる確認は「人が要る」の側です。印が片方に偏っていないか見ます。
目安 10分・1回
「速くなりそう」な作業を1つ、AIで試してみる
会社のルールで許された範囲で、秘密や個人情報を入れずに試します。顧客サポートの研究では、経験の浅い人で速さと質がともに上がっていました。慣れていないことは、試さない理由になりません。
目安 30分・週1回
「人が要る」作業に使う時間を少し増やす
浮いた時間を、相談・調整・確認など人の関わりが必要な作業に回します。職場でAI導入の話が出たら、自分の作業の実情を伝える場に参加します。ILOは、仕事を一番よく知る働く人が導入のしかたに関わることが、働く条件と生産性の両方に役立つとしています。
目安 月1回の見直し
05よくある質問
事務の仕事はAIでなくなるの?
なくなると決まったわけではありません。ILOの2025年の分析では、データ入力や一般事務などの事務職が最も影響を受けやすい区分に多く入りました。ただしILOは、これは作業の多くをAIで行える可能性を示すもので、職業全体がすぐ自動化されるという意味ではないと書いています。会議メモや日程調整も、実際にはまだ人の手間がかかると見直されています。
「AIの影響を受ける」と「失業する」は同じ意味?
同じではありません。研究でいう影響(エクスポージャー)は、仕事の中の作業をAIで速く・代わりにできる可能性のことです。その作業が減って仕事の中身が変わるのか、人が減るのかは、会社がどう導入するか、働く人が新しいやり方を学ぶ機会があるかで変わる、とILOは書いています。
給料の高い仕事ならAIの影響は小さいの?
そうとは限りません。米国の職業を対象にしたEloundouらの分析では、影響はすべての賃金水準に及び、収入の高い仕事ほど影響を受けやすい傾向がありました。ILOの分析でも、金融アナリストやウェブ開発など専門職の一部で影響の度合いが2023年より上がっています。
今から何を学べばいい?
まずは、自分の仕事でAIを試してみることから始められます。日本で生成AIを使ったことがある人は26.7%で、使わない理由は「必要ない」に次いで「使い方がわからない」が多い結果でした(総務省、2024年度調査)。週1回、1つの作業で試すところからで構いません。
出典
- Gmyrek P, Berg J, Kamiński K, ほか (2025). Generative AI and Jobs: A Refined Global Index of Occupational Exposure. ILO Working Paper 140. 国際労働機関(ILO). https://www.ilo.org/publications/generative-ai-and-jobs-refined-global-index-occupational-exposure
- Eloundou T, Manning S, Mishkin P, Rock D (2024). GPTs are GPTs: Labor market impact potential of LLMs. Science, 384(6702), 1306-1308. https://doi.org/10.1126/science.adj0998
- 同上の詳細版(プレプリント、2023). GPTs are GPTs: An Early Look at the Labor Market Impact Potential of Large Language Models. arXiv:2303.10130. https://arxiv.org/abs/2303.10130
- Brynjolfsson E, Li D, Raymond L (2025). Generative AI at Work. The Quarterly Journal of Economics, 140(2), 889-942. https://doi.org/10.1093/qje/qjae044
- Hui X, Reshef O, Zhou L (2024). The Short-Term Effects of Generative Artificial Intelligence on Employment: Evidence from an Online Labor Market. Organization Science, 35(6), 1977-1989. https://doi.org/10.1287/orsc.2023.18441
- 総務省 (2025). 令和7年版 情報通信白書「個人におけるAI利用の現状」. https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/html/nd112210.html


