「AIで簡単に稼げる」副業の勧誘は本物?講座の相談は5年で約3倍、契約前に見る3つの点

SNSで「AIを使えば副業で簡単に稼げる」という広告を見て、気になった人は少なくありません。結論から言うと、「簡単に」「すぐ元が取れる」とうたう勧誘はうのみにしないでください。国民生活センターには、AI講座などのビジネス講座をめぐる相談が5年で約3倍に増えています。
3行でわかる
- AI講座やSNS運用講座など「ビジネス講座」の相談は、2020年度の1,169件から2025年度は3,551件に増えた。
- よくある流れは、安い入口商品のあと、Web会議で高額な講座を勧められる形。月額だけ示され、総額は数十万円から100万円を超えることもある。
- 契約前に「総額」「事業者の表記」「その場で決めない」の3点を確かめる。困ったら消費者ホットライン188へ。
01結論から言うと
「AIで簡単に稼げる」という勧誘は、本物かどうかを広告から見分けるのは難しいため、うのみにしないのが答えです。総額と解約条件を確かめ、その場で契約しないことが、国民生活センターのすすめる守り方です。
AIは新しい技術です。「今のうちに学べば稼げる」という話には、本当らしさがあります。だからこそ勧誘の入り口に使われやすくなっています。
国民生活センターは2026年9月16日、ビジネス講座のトラブルについて注意を呼びかけました。発表では「高収入が得られる」「簡単に稼げる」という広告をきっかけに高額な講座を契約し、説明どおりの収入が得られなかった相談が紹介されています[1]。
ここで大事なのは、AIを学ぶこと自体が悪いのではない点です。問題は、収入を約束するような言葉で、高額な契約を急がされることです。
02研究とデータでわかっていること
相談は5年で約3倍に増え、2025年度は3,551件でした。相談の約半分に「解約」が含まれます。研究では、期限で急がせる誘い文句は、じっくり考えずに決めさせるように作られていると整理されています。
国民生活センター(2026年)[1]
AI講座やSNS運用講座などビジネス講座の相談は、1,169件(2020年度)、1,831件、2,106件、2,510件、2,682件、3,551件(2025年度)と毎年増えました。2026年度も7月31日までに1,121件あり、前年の同じ時期の821件を上回っています。
対象: 全国の消費生活センター等に寄せられ、PIO-NET(相談を集めたデータベース)に2026年7月31日までに登録された相談 / 限界: 相談に来た人の数で、被害の全体ではありません。AI講座だけの件数は示されていません。
同じ発表では、相談の中身にも共通点がありました。2025年度の相談3,551件のうち、多かった内容は次のとおりです(1件に複数の内容が含まれます)[1]。
- 解約(全般): 1,748件(49.2%)
- 電話勧誘: 1,655件(46.6%)
- SNS: 1,511件(42.6%)
- 返金: 1,193件(33.6%)
- 電子広告: 1,162件(32.7%)
紹介された事例には、決まった流れがあります。例えば20歳代の男性は、「AIを使って副業で稼ぐ」というSNS広告から1万円の情報商材(ノウハウを売る教材)を買いました。その後、Web会議で2時間ほど説明を受け、「講座代は1、2カ月ですぐに取り戻せる」と言われて約80万円の講座を36回払いで契約しています[1]。
別の事例では、求人サイトで副業の面接を受けたら「AIの知識が必須で有料研修が必要」と言われました。月額2万円ほどと思って契約すると、総額は65万円でした[1]。
Norris, Brookes, Dowell(2019年)[7]
ネット詐欺の被害と心理の研究34本を整理したレビューです。だます側のメッセージは人の弱いところを狙って作られ、特に「期限つき」の誘いは、内容をじっくり考えるより印象で決めさせるように作られていると整理されています。
対象: ネット詐欺の被害に関する心理学の研究34本 / 限界: AI副業や講座の勧誘を調べた研究ではありません。著者らも、はっきりした結論を出せる研究はまだ少ないとしています。
国民生活センターの事例でも、「当日であれば特典としてAIのプロンプト(指示文)も提供する」と言われ、約20万円を決済した人がいました[1]。「今日だけ」と急がされたら、それ自体を立ち止まる合図にできます。
03まだわかっていないこと
AIをうたう講座だけの相談件数や、実際に稼げた人の割合は、公的な資料ではまだわかっていません。AI副業の勧誘そのものを調べた査読研究も見当たりませんでした。
- 国民生活センターの数字はAI講座とSNS運用講座などをまとめたもので、AIをうたう講座がどれだけ増えたかは分けて示されていません。
- 講座を受けた人のうち、実際に収入を得られた人がどれくらいいるかを示す公的なデータはありません。
- ネット詐欺の心理の研究は進んでいますが、「AI」という言葉が人を信じやすくさせるかどうかを確かめた研究は、今回の調査では見つかりませんでした。
SNS広告から別のアプリへ誘う流れは、投資の勧誘でも見られます。BOHANのSNS型投資詐欺の入り口と出口や、デジタル探偵の有名人が勧める投資広告の確かめ方もあわせて読むと、共通する手口がつかめます。
04今日からできること
契約の前に、総額を書き出す、事業者の表記を見る、その場で決めない、の3つを行ってください。どれもお金はかからず、合わせて10分ほどでできます。
「月額」ではなく「総額と期間」を聞いて書き出す
「月2万円」と言われたら、何カ月払うのか、分割の手数料を入れて合計いくらかを聞き、紙に書きます。国民生活センターの事例では、総額が数十万円から100万円を超えていました。
目安 5分
「特定商取引法に基づく表記」を開く
ネットで売る事業者は、名前(名称)・住所・電話番号を広告に出すことが求められています。表記が見つからない、住所や電話番号がないときは、契約を見送る理由になります。
目安 3分
Web会議では「今日は決めません」と伝えて切る
「今日だけの特典」と言われても、その場で決めずに一晩置きます。「面接」「交流会」と聞いていたのに講座の話が始まったら、はっきり断ってかまいません。
目安 1回の勧誘につき1晩
契約書面と勧誘の記録を残す
もう契約した人は、契約書面を受け取った日を確認し、説明の画面やメッセージを画面保存します。電話やWeb会議で勧誘された契約は、書面を受け取った日から数えて8日以内なら、クーリング・オフ(無条件の解約)ができる場合があります。
目安 10分
クーリング・オフの期間は、契約の形によって変わります。消費者庁の特定商取引法ガイドによると、次のとおりです[2][3][4]。
- 電話やWeb会議で勧誘された(電話勧誘販売): 書面を受け取った日から数えて8日以内
- 「仕事を紹介するので収入が得られる」と言われて講座や教材を買った(業務提供誘引販売取引): 書面を受け取った日から数えて20日以内
- 自分で広告やサイトから申し込んだ(通信販売): クーリング・オフの規定はない
どれに当たるかは、やりとりの中身で変わります。自分で決めつけず、早めに相談してください。
消費者ホットライン(188): 解約できない、総額が説明と違うなど、契約のトラブルのとき。近くの消費生活センターにつながります[5]。
警察相談専用電話(#9110): お金をだまし取られた、脅されているとき。身の危険があるときは110番[6]。
05よくある質問
自分でサイトから申し込んだAI講座も、クーリング・オフできますか?
自分で広告やサイトから申し込む通信販売には、クーリング・オフの規定がありません。ただし、申し込みのあとにWeb会議や電話で勧誘されて上位の講座を契約した場合は、電話勧誘販売に当たる場合があり、クーリング・オフの対象になりえます。判断に迷ったら消費者ホットライン188に相談できます。
「事業者間の契約だから解約できない」と言われたら、あきらめるしかないですか?
あきらめる前に相談してください。国民生活センターは、ビジネス講座の契約でも、契約の時点で実際に事業をしていないなど、実態として消費者に当たる場合には、クーリング・オフができる場合があるとしています。
契約書をもらっていません。もう解約はできませんか?
できる場合があります。国民生活センターによると、Web会議や電話で勧誘されて契約した場合などで、特定商取引法に定める契約書面が渡されていないときも、クーリング・オフが可能です。勧誘の画面やメッセージを保存して、188に相談してください。
AIを学ぶこと自体がむだなのでしょうか?
むだではありません。問題は学ぶことではなく、「簡単に稼げる」「すぐ元が取れる」という勧誘で高額な契約を急がされることです。国民生活センターは、教育訓練給付制度など公的な支援の情報も検討するよう勧めています。
出典
- 独立行政法人国民生活センター (2026). ビジネス講座のトラブルにご注意-広告・勧誘と実際の講座内容が異なる、Web会議での思わぬ勧誘に気をつけましょう-(報道発表資料、2026年9月16日). https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20260916_3.pdf
- 消費者庁. 特定商取引法ガイド「電話勧誘販売」. https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/telemarketing/
- 消費者庁. 特定商取引法ガイド「業務提供誘引販売取引」. https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/businessopportunity/
- 消費者庁. 特定商取引法ガイド「通信販売」. https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/mailorder/
- 消費者庁. 消費者ホットライン. https://www.caa.go.jp/policies/policy/local_cooperation/local_consumer_administration/hotline/
- 警察庁. 警察相談専用電話. https://www.npa.go.jp/goiken/index.html
- Norris, G., Brookes, A., & Dowell, D. (2019). The psychology of internet fraud victimisation: a systematic review. Journal of Police and Criminal Psychology, 34(3), 231-245. https://doi.org/10.1007/s11896-019-09334-5


