AIの声の電話で、家族だと思って振り込んでしまった。すぐやることと、お金が戻る可能性がある制度

家族の声だと思って振り込んだあとで、詐欺だと気づく。血の気が引く思いだと思います。あなたを責める必要はありません。振り込んだ直後にすることは、振込先の銀行と警察への連絡です。口座にお金が残っていれば、「振り込め詐欺救済法」で戻る可能性があります。
3行でわかる
- 気づいたらすぐ、振り込んだ先の口座がある銀行と警察に連絡し、口座の取引を止めてもらいます。
- 口座にお金が残っていれば、振り込め詐欺救済法で「被害回復分配金」が支払われる可能性があります。上限は口座に残っている額です。
- 申請期間は公告の翌日から30日以上で、過ぎると受け取れません。支払いまでは半年以上かかるのが一般的です。
01結論から言うと
振り込んだと気づいたら、振込先の銀行と警察にすぐ連絡し、口座を止めてもらいます。お金が戻るかどうかは、その口座に残っている額で決まります。
金融庁は、犯人が口座からお金を引き出してしまうと支払いは受けられないと説明しています。だから最初の連絡は早いほど意味があります。
AIの声が使われたかどうかは、手続きには関係しません。法律が対象にしているのは、詐欺などで「預金口座等への振込み」が使われた被害です。オレオレ詐欺のほか、SNS型投資・ロマンス詐欺も、口座への振込みで被害にあった場合は対象になると金融庁は説明しています。現金を直接渡したなど振込みを使っていない被害は、この制度とは別に警察へ相談します。
この記事は、振り込んだ「あと」のことだけを書きます。電話の段階で見抜く方法は、家族の声でお金を頼む電話が来たときの確かめ方や、AI音声のなりすまし詐欺と「合言葉」の備えで整理しています。
02研究とデータでわかっていること
2025年の特殊詐欺の被害は2万7千件あまり・1,423億円で、6割は振込みでした。人はAIの声を確実には聞き分けられず、だまされたあとに自分を責める人も多いことがわかっています。
警察庁(2026年5月公表)[3]
2025年の特殊詐欺は27,832件、被害額は1,423.1億円で、どちらも前年より大きく増えました。振込型は16,894件で、全体の60.7%を占めています。
対象: 全国の警察が把握した件数(確定値) / 限界: この資料には、AIの声が使われた件数の区分は見当たりませんでした。
Mai, Bray, Davies, Griffin(2023)[1]
本物の声とAIで作った声を529人に聞かせたところ、偽物を正しく見抜けたのは73%でした。偽の声の例を先に聞かせても、成績はわずかに上がっただけでした。
対象: 英語と中国語の話者 / 限界: 録音を聞き比べる実験で、知らない人の声です。家族の声で電話をかけて急かされる場面は調べていません。
Bai, Ho, Sung, Hung, Tsai(2026)[2]
詐欺の被害者の心の影響を調べた21本の研究をまとめたシステマティックレビューです。被害は不安や落ち込み、恥ずかしさ、自分を責める気持ちと関連していました。心の傷は、失った金額の大きさより、気持ちを操られたことや信頼を裏切られたことと強く関連していました。
対象: 詐欺の被害を受けた大人(国や手口はさまざま) / 限界: 研究ごとに方法や測り方が違うため、数字をまとめる分析はせず、文章で整理しています。
救済法の流れは、法律と預金保険機構・全国銀行協会の説明で決まっています。
- 口座を止める: 金融機関は、犯罪に使われた疑いがある口座の取引を止めます。
- 権利を消す公告: 預金保険機構のサイトで、口座の持ち主の権利を消す手続きの公告が出ます。持ち主が届け出られる期間は60日以上です。
- 支払いの申請: 支払手続の公告が出たら、被害者が振込先の金融機関に申請します。申請期間は公告の翌日から30日以上です。
- 分配: 残高を上限に支払われます。被害者が複数なら被害額に応じて分け、残高が1,000円未満なら支払いはありません。
全国銀行協会は、この2つの期間を合わせて、支払いまで少なくとも90日以上かかるとしています。金融庁は、実際には半年以上かかるのが一般的だと説明しています。
03まだわかっていないこと
日本の詐欺でAIの声がどれだけ使われているか、救済法で被害額の何割が戻っているかは、今回調べた公的資料では確認できませんでした。
- 警察庁の2025年の統計資料には、AIの声が使われた件数の区分がありません。AIの声の詐欺が増えているかどうかは、公的な数字ではまだわかりません。
- 救済法で被害者全体のうち何割にいくら戻ったかをまとめた数字は、今回の調査では確認できませんでした。戻る額は口座ごとに大きく違います。
- 詐欺の被害のあと、心がどう回復していくかを長く追った研究や、支援の効果を確かめた研究はまだ少ないと、レビューの著者は書いています。
04今日からできること
振込先の銀行へ電話、警察へ届け出、振込明細を残す、公告と申請期間を確かめる。この4つを、できれば今日のうちに進めます。どれも無料です。
振込先の銀行に電話して、口座を止めてもらう
連絡するのは、振込みを頼んだ自分の銀行ではなく、振り込んだ先の口座がある銀行です。全国銀行協会のサイトに、各銀行の詐欺被害の連絡先が一覧で載っています。「振り込め詐欺の被害を受け、そちらの銀行の口座に振り込んだ」と伝えます。
目安 気づいたらすぐ、電話1本10分
警察に被害を届け出る
最寄りの警察署・交番か、警察相談専用電話の#9110に連絡します。全国銀行協会は、銀行への連絡とあわせて必ず警察にも届け出るよう案内しています。
目安 当日中に
振込明細と、電話のメモを手元に残す
支払いの申請には、振込明細書など振り込んだことがわかる資料が要ります。なくしても申請はできますが、振込みの内容を金融機関に説明する必要があります。着信の番号、日時、言われた内容もメモしておくと、警察や銀行に説明しやすくなります。
目安 15分
公告と申請期間を確かめる
公告は預金保険機構のサイトに、原則として毎月1日と16日に載ります。自分で探し続けるより、振込先の金融機関に問い合わせるのが効率的だと預金保険機構は案内しています。被害を申し出た人には、金融機関から申請期間が個別に知らされます。
目安 月2回の公告日に確認
警察相談専用電話 #9110: 被害の届け出や相談に。受付時間は都道府県警察ごとに異なります(愛知県警は平日9時〜17時)。緊急時は110番。
預金保険機構 振込詐欺被害回復業務課(03-6262-6794、平日9時30分〜18時): 救済法の手続きや公告の見方の問い合わせに。
消費者ホットライン 188: 「お金を取り戻します」という勧誘など、怪しい話の相談に。
ほかのAIがらみのお金のトラブルは、「AIで簡単に稼げる」副業の勧誘で、顔や声を勝手に使われた被害はディープフェイク被害のあとにすることで整理しています。
05よくある質問
振り込んだお金は全額戻ってくる?
全額とは限りません。支払いの上限は、振込先の口座に残っている額です。被害者が1人で、振り込んだ全額が口座に残っていれば、全額が支払われる予定だと全国銀行協会は説明しています。引き出されていれば残高の範囲になり、被害者が複数なら被害額に応じて分けられます。残高が1,000円未満なら支払いはありません。
振り込め詐欺救済法の申請はどこでする?
振り込んだ先の金融機関に、申請書と本人確認の資料、振込明細書など振り込んだことがわかる資料を出します。振込みをした金融機関から出すこともできると金融庁は説明しています。申請書は金融庁と預金保険機構のサイトからも入手できます。
AIの声にだまされたのは、自分が悪い?
自分を責める必要はありません。実験では、AIで作った声を偽物と見抜けたのは73%で、例を聞いて準備してもわずかしか上がりませんでした。詐欺の被害者を調べた研究のまとめでも、自分を責める気持ちや恥ずかしさが多く報告されていました。心の傷の重さは、失った金額よりも、気持ちを操られたことや裏切られたことと強く関連していました。責める相手はだました側です。
「お金を取り戻します」という連絡が来たら?
すぐにお金を払わず、相談してください。国民生活センターは、被害回復をうたう二次被害にあう可能性があるとして、不審に思ったら消費生活センター等に相談するよう呼びかけています。消費者ホットライン188で、近くの消費生活センターにつながります。救済法の手続きは、振込先の金融機関が窓口です。
申請期間を過ぎてしまったら、もう取り戻せない?
預金保険機構によると、申請期間を過ぎると救済法による支払いは受けられません。ただし、加害者に民事上の請求をすることはできるとしています。また、刑事裁判で犯人から財産が没収・追徴された場合には、法務省の「被害回復給付金支給制度」を使える場合があります。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
出典
- Mai, K. T., Bray, S., Davies, T., & Griffin, L. D. (2023). Warning: Humans cannot reliably detect speech deepfakes. PLOS ONE, 18(8), e0285333. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0285333
- Bai, J., Ho, M. H., Sung, H. T., Hung, C. S., & Tsai, J. H. (2026). Mental health and psychosocial sequelae of fraud victimization: a systematic review. Frontiers in Psychology. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1805536
- 警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」(2026年5月22日) https://www.npa.go.jp/bureau/criminal/souni/tokusyusagi/hurikomesagi_toukei2025.pdf
- 金融庁「振り込め詐欺等の被害にあわれた方へ」 https://www.fsa.go.jp/policy/kyuusai/furikome/index.html
- 犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律(平成19年法律第133号)e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/419AC1000000133
- 預金保険機構「振り込め詐欺救済法に基づく公告」 https://furikomesagi.dic.go.jp/
- 預金保険機構「振り込め詐欺救済法 Q&A」 https://furikomesagi.dic.go.jp/qa.html
- 全国銀行協会「振り込め詐欺救済法とは」 https://www.zenginkyo.or.jp/hanzai/rescure/
- 全国銀行協会「金融犯罪に遭った場合のご相談・連絡先」 https://www.zenginkyo.or.jp/hanzai/information/
- 国民生活センター「SNSをきっかけとして、著名人を名乗る、つながりがあるなどと勧誘される金融商品・サービスの消費者トラブルが急増」(2024年5月29日) https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20240529_1.pdf
- 愛知県警察「警察相談専用電話 #9110」 https://www.pref.aichi.jp/police/soudan/dial/jumin/soudan.html


