運転中にAIと音声で話していて、ヒヤリとした。研究では、車の音声操作でも頭の負担は5段階で平均3.34と中程度以上で、話し終えても最大27秒は注意が戻りきらなかった

カーナビやスマホのAIに話しかけて、目的地を探したり、ちょっとした質問をしたりしながら運転していた。ふと気づくと、前の車が止まりかけていた。横断歩道の人に気づくのが遅れた。手も目も使っていないのに、なぜ見落としたのかと動揺している人もいるでしょう。声だけのやりとりでも、頭の注意は運転から離れます。研究でわかっていることと、ヒヤリとしたあとにすることを整理します。
3行でわかる
- 2015年型の車10車種で257人を調べた研究では、音声で車を操作するときの頭の負担は5段階で平均3.34と中程度から高く、1週間練習しても消えませんでした。
- 音声のやりとりを終えたあとも、最大27秒は注意が戻りきっていませんでした。信号待ちで話しても、青になったあとに影響が残りうると著者らは指摘しています。
- ヒヤリとしたら、まず会話をやめて安全な場所に止まり、落ち着いてから運転に戻ります。次からは、AIへの質問や設定を出発前か停車中に済ませます。
01 結論から言うと声で話していただけなのに、なぜ見落とした?
手や目を使わなくても、話す・聞く・考えることに頭の注意が取られるからです。研究では、車の音声操作の負担は、携帯電話で話すときより高い水準のことが多くありました。ヒヤリとしたのは、同時にしていたことの重さのためです。
音声での操作は、手をハンドルに、目を前に置いたままにできるので、安全そうに見えます。ところが研究では、声だけのやりとりの最中に画面をちらりと見る人が多く、前方やミラーを見る回数が変わっていました[1]。著者らは「車に話しかけることを、目を使わない作業だと考えるのは誤り」とまとめています。
ここで紹介する研究は、生成AIとの会話ではなく、車の音声操作を調べたものです。それでも、声で何かを頼み、答えを聞いて考えるという点は共通しています。
02 研究とデータでわかっていること運転中の音声操作は、どのくらい注意を奪う?
音声操作の負担は5段階で平均3.34で、練習しても消えず、やりとりを終えたあとも最大27秒残っていました。年齢が高い人ほど負担が大きく、実際の事故の分析では、気が散った運転の事故の起こりやすさ(オッズ比)は約2倍でした。
Strayerら(2016、Cognitive Research: Principles and Implications)[1]
2015年型の車10車種の音声機能で、電話をかける、ラジオを合わせるなどの操作を、住宅街の道を走りながらしてもらいました。頭の負担は5段階で平均3.34(車種によって2.37〜4.57)でした。年齢が高い人ほど負担が大きく、5日間家で練習しても負担は消えませんでした。やりとりを終えた3秒後の負担は最も重い5の水準で、運転だけの水準に戻るまで27秒かかっていました。
対象: 米国の21〜70歳の257人(平均44歳) / 限界: 2015年型の車の音声機能を調べたもので、生成AIとの自由な会話や、今の車・スマホの機能で同じ結果になるかは確かめられていない。
著者らは、時速25マイル(約40km)なら、注意が戻りきるまでに約300m進むと計算しています。信号待ちで電話をかけたりメッセージを送ったりしても、青になったあとに影響が残りうるということです[1]。同じ研究グループの以前の研究では、携帯電話で話すことは5段階の2程度とされていました。
Cooperら(2020、Frontiers in Psychology)[2]
6車種の車で、タッチ画面や音声で目的地を探すなどの操作をしながら住宅街を走ってもらいました。55〜75歳の人は21〜36歳の人より、操作に時間がかかり、合図への反応が遅く、負担を大きく感じていました。
対象: 米国の125人 / 限界: 車の機能を調べた研究で、AIとの会話は含まれていない。
Zhongら(2024、Scientific Reports)[3]
実際の道路で、電話・音楽・ナビ・ラジオの操作を、音声と手と目の操作で比べました。音声のほうが手と目の操作より気が散りにくい結果でした。一方、作業の種類ではナビと音楽が最も気が散りやすく、電話、ラジオの順でした。
対象: 中国の18〜25歳の運転者(分析は24人) / 限界: 若い人だけの少人数の研究で、決められた作業を頼まれて行う形だった。
Dingusら(2016、PNAS)[4]
米国で3,500人以上の運転を3年間、車内のカメラとセンサーで記録し、けがや物損のあった事故905件を分析しました。気が散っていたことは事故の68.3%に関わり、気が散った運転の事故の起こりやすさ(オッズ比)は、ふつうの運転の約2倍でした。手に持った携帯電話で話すことは2.2倍、怒りや悲しみ、動揺が見てわかる状態の運転は9.8倍でした。
対象: 米国の16〜98歳の運転者3,500人以上 / 限界: 車の音声操作やAIとの会話の事故リスクは、この分析では示されていない。
03 まだわかっていないこと生成AIとの会話は、車の音声操作より危ない?
まだわかっていません。運転中の生成AIとの会話が、注意や事故にどう響くかを実際の道路で確かめた研究は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。今の手がかりは、車の音声操作と、携帯電話の研究です。
- AIとの会話は、決まった命令を言う車の音声操作より長く、内容も自由です。負担が大きくなるのか、慣れると小さくなるのかは調べられていません。
- 紹介した研究は米国と中国のもので、日本の道路や運転者で同じ結果になるかは確かめられていません。
- 音声操作の負担は車種によって大きく違っていました。今の車やスマホの機能が、どのくらい改善しているかはわかっていません。
04 今日からできること運転中にヒヤリとしたら、まず何をする?
会話をやめ、安全な場所に止まって気持ちを落ち着けてから運転に戻ります。何が起きたかを書き留め、次からはAIへの質問や設定を出発前か停車中に済ませます。
その場で会話をやめる
AIの返事が続いていても聞き流し、画面には触れません。運転に注意を戻すことだけに集中します。
目安 その瞬間
安全な場所に止まり、落ち着いてから出る
コンビニの駐車場やパーキングエリアなどに止まります。動揺が見てわかる状態の運転は、事故の起こりやすさ(オッズ比)が9.8倍という分析があります。呼吸と鼓動が落ち着くまで待ちます。
目安 5〜10分
何が起きたかを書き留める
時刻、場所、AIに何を頼んでいたか、何に気づくのが遅れたかをメモします。ぶつかった、けがをさせたかもしれない場合は、下の相談先に連絡します。
目安 3分
質問と設定は、出発前か停車中に済ませる
目的地や音楽は走り出す前に決めます。調べものや相談は、着いてからにします。終えたあとも最大27秒は注意が戻りきらないので、信号待ちで始めるのも避けます。
目安 出発前1〜2分
同乗者がいれば、操作を頼む
ナビの変更やAIへの質問は、助手席の人にお願いします。一人のときは、急ぎでなければ次に止まるまで待ちます。
目安 毎回
別の作業をしながら話を聞くと内容を覚えにくい研究は会議の最中にAIで調べものをしていたら、大事な話を聞き逃した、見張り続ける作業での見落としはAIの結果を確かめる係なのに、間違いを見逃した、ナビに頼ることと道の覚え方はナビに頼りきりで、道を覚えられないで整理しています。
けが人がいるときは119番、事故の連絡は110番です。まずけが人の手当てと安全の確保を優先してください。
05よくある質問
ハンズフリーや音声操作なら、運転中に使っても安全?
安全とは言えません。研究では、手や目を使わない音声操作でも頭の負担は5段階で平均3.34と中程度から高く、操作中に画面をちらりと見る人も多くいました。手と目の操作よりは気が散りにくいという研究もありますが、負担がなくなるわけではありません。
信号待ちの間なら、AIに話しかけてもいい?
研究では、音声のやりとりを終えたあとも最大27秒は注意が戻りきっていませんでした。著者らは、信号待ちで電話をかけるなどしても、青になったあとに影響が残りうると指摘しています。急ぎでない用事は、駐車してからにするのが確かです。
慣れれば、運転中のAIとの会話も平気になる?
研究では、5日間家で練習しても、音声操作の負担は消えませんでした。最初に難しかった操作は、1週間後も比較的難しいままでした。慣れたと感じても、注意が取られることは変わらないと考えておくのが安全です。
出典
- Strayer DL, Cooper JM, Turrill J, Coleman JR, Hopman RJ (2016). Talking to your car can drive you to distraction. Cognitive Research: Principles and Implications, 1, 16. https://doi.org/10.1186/s41235-016-0018-3
- Cooper JM, Wheatley CL, McCarty MM, et al. (2020). Age-Related Differences in the Cognitive, Visual, and Temporal Demands of In-Vehicle Information Systems. Frontiers in Psychology, 11, 1154. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2020.01154
- Zhong Q, Zhi J, Xu Y, Gao P, Feng S (2024). Assessing driver distraction from in-vehicle information system: an on-road study exploring the effects of input modalities and secondary task types. Scientific Reports, 14, 20289. https://doi.org/10.1038/s41598-024-71226-4
- Dingus TA, Guo F, Lee S, et al. (2016). Driver crash risk factors and prevalence evaluation using naturalistic driving data. Proceedings of the National Academy of Sciences, 113(10), 2636–2641. https://doi.org/10.1073/pnas.1513271113


