考える力・集中

会議や授業の最中にAIで調べものをしていたら、大事な話を聞き逃した。研究では、話を聞きながら別の作業をさせた実験で内容を覚えにくく、まずは聞き逃した点を話した本人に確かめる

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わかっている度 ★★☆ 中研究3本・レビュー1本を整理出典照合済み(2026-10-21)
人のいない会議室の細長いガラスの机
Photo: Designer: Morphosis, Fabricator: Tom Farrage Co. / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

会議や授業の最中に、出てきた言葉をAIに聞いたり、資料の数字をAIで確かめたりしていた。気づくと話が先に進んでいて、あとで「さっき決めたとおりに」と言われても、何が決まったのかわからない。AIを手元で使いながら話を聞く場面が増え、こうした聞き逃しに焦る人は少なくありません。研究でわかっていることと、聞き逃したあとにやることを整理します。

3行でわかる

  1. 講義を聞きながら別の作業をするよう割り振った実験では、内容を覚えにくくなる結果が多く報告されています。メッセージを打っていた間に話された内容で、とくにテストの成績が低かった実験もあります。
  2. 一方、いつ横のゲームを表示するかを自分で選べたカナダの大学生の実験では、表示していた時間が長くても、講義のテストの成績に差は出ませんでした。著者らは、聞き逃しても困らない場面を選んでいた可能性を挙げています。
  3. 聞き逃したら、その日のうちに1点に絞って話した本人に確かめます。次からは、AIで調べたいことはメモにためて区切りで調べ、決定や依頼の場面だけは画面を閉じます。

01 結論から言うとAIを見ながら聞いて、聞き逃したのは自分の集中力のせい?

集中力が特別に弱いからとは限りません。話を聞きながら別の作業をすると内容を覚えにくくなる結果が、講義の実験で多く報告されています。話が大事な所にさしかかったときに画面へ目を移していれば、誰でも聞き逃しは起こりえます。

AIに質問を打ち、答えを読んでいる間も、話し手は先に進みます。会議や授業は、聞き逃した所まで戻ることができません。研究者はこうした「同時に複数のメディアを使うこと」をメディア・マルチタスクと呼び、学びへの影響を調べてきました[1]。

大事なのは、聞き逃したこと自体より、そのあとの手当てです。確かめずに進めると、決定と違う作業をしてしまうなど、手戻りが大きくなりやすいからです。

02 研究とデータでわかっていること話を聞きながら別の作業をすると、何が起きる?

講義中に別の作業をするよう割り振った実験では、内容を覚えにくい結果が多く出ています。ただ、いつ別の画面を見るかを自分で選べた実験では差が出ない研究もあり、影響の大きさは「いつ目を離すか」で変わる可能性があります。

22分カナダの大学生200人あまりが見た、録画の講義の長さ(2023年に実施)
63%と51%同じ実験で、別の画面を開いていた時間の平均(遊べる組と、見るだけの組)。テストの成績に差は出なかった
80人同時に複数のメディアを使うことが多い人ほど、記憶のテストの成績が低めだった米国の若い大人(18〜26歳)の人数
39件「同時に使うことが多い人ほど気が散りやすい」かを確かめた結果を集めた分析の数。補正後は関連がはっきりしなかった

Marty-Dugasら(2024、Heliyon)[1]

この論文がまとめた先行研究では、講義の最中にメッセージを打つ組に割り振られた学生は知識のテストの成績が低く、とくに打っていた間に示された内容で低くなっていました。一方、著者らの実験では、22分の録画の講義を見ながら、講義の横に小さなゲームをキー操作でいつでも表示できるようにしました。自分で操作できる組は講義の63%、見るだけの組は51%の時間、ゲームを表示していましたが、講義のテストの成績に差はなく、表示時間と成績の関連も見られませんでした。著者らは、学生が聞き逃しても困らない場面を選んでいた可能性を挙げています。

対象: カナダの大学の学部生200人あまり / 限界: 録画の講義と単純なゲームでの結果で、話の流れが速い会議や、AIでの調べもののように内容を読む作業で同じになるかはわからない。

Madoreら(2020、Nature)[2]

ふだん同時に複数のメディアを使う程度を質問紙で測り、脳波と瞳孔の大きさを記録しながら記憶のテストをしました。同時に使うことが多い人ほど記憶のテストの成績が低く、注意がそれる傾向も強くなっていました。記憶の成績との関連の一部は、注意を保つ力の差で説明されていました。

対象: 米国の大学周辺の18〜26歳の80人 / 限界: 一時点の関連を見た研究で、同時に使うから注意がそれるのか、もともと注意がそれやすい人が同時に使うのかは、著者らも今後の課題としている。

Wiradhany・Nieuwenstein(2017、Attention, Perception, & Psychophysics)[3]

「ふだん同時に複数のメディアを使う人ほど気が散りやすい」という有名な結果を2回の実験で再現しようとし、あわせて39件の結果をまとめて分析しました。14の検定のうち、気が散りやすい方向で有意になったのは5つだけでした。まとめた分析では弱い関連が出ましたが、小さな研究の偏りを補正すると、はっきりしなくなりました。

対象: これまでに発表された研究と、著者らの2つの再現実験 / 限界: 「ふだんの習慣」と注意の課題の関連を見たもので、その場で別の作業をしたときの影響を測ったものではない。

つまり、「同時に使う習慣が注意力そのものを落とす」かはまだ議論が続いています。一方で、「その場で目と手を別の作業に向けた間の話は残りにくい」ことは、講義の実験からうかがえます。聞き逃しの手当ては、後者を前提に考えるのが現実的です。

03 まだわかっていないことAIで調べながら聞くと、どのくらい聞き逃す?

まだわかっていません。今回調べた範囲では、会議や授業の最中にAIを使ったときの聞き逃しを直接測った研究は見つかりませんでした。既存の研究の多くは、メッセージやゲームなど学びと関係のない作業を対象にしています。

  • AIで話題の言葉を調べるような「話に関係のある作業」が、関係のない作業と同じように聞き逃しを増やすのかは、わかっていません。
  • 同時に複数のメディアを使う習慣と注意や記憶との関連は、研究によって結果が分かれています。レビューでも、関連がない研究が多いこと、原因と結果の向きがわからないことが指摘されています[4]。
  • 調べたいことをメモにためて区切りで調べる工夫が、聞き逃しをどれだけ減らすかを比べた実験は見つかりませんでした。メッセージへの返信を遅らせた学生ほど成績がよかった観察はありますが、正式には検定されていません[1]。

04 今日からできること聞き逃したあと、まず何をする?

その日のうちに、聞き逃した点を1つの質問にまとめて話した本人に確かめます。録画や文字起こしがあれば元の記録で確かめ、次からはAIで調べたいことをメモにためて区切りで調べます。

1

聞き逃した点を1つに絞り、話した本人に確かめる

「〇〇の決定のところを聞き逃したので、もう一度確認させてください」のように、どこがわからないかを具体的に伝えます。推測で作業を進めないことが、手戻りを防ぐいちばんの近道です。

目安 5分・当日中

2

記録があれば、要約ではなく元の記録で確かめる

録画や文字起こしがあるときは、AIで調べものをしていた時間帯を見直します。論文の要約では、AIが条件や限界を落としやすいことが報告されているので、決定や数字は元の記録で確かめます(AIの要約だけ読んで会議に出たら、抜けていた大事な点を指摘された)。

目安 10〜15分

3

次から、AIで調べたいことはメモにためる

わからない言葉や確かめたい数字が出たら、AIに打たずに紙やメモに一言だけ書き、話の区切りや会議のあとでまとめて調べます。調べた結果を話に生かしたいときは、「あとで確認して共有します」と伝えれば足ります。

目安 1回数秒・会議ごと

4

決定・数字・自分への依頼の場面だけは画面を閉じる

「では、こうしましょう」「〇〇さん、お願いします」が出そうな場面は、AIの画面を閉じて話し手を見ます。聞きながら要点をメモした人のほうが内容をよく覚えていた実験があります(AIが議事録をとってくれるなら、自分のメモはもういらない?)。

目安 会議の終わりの5分

AIの出した結果を確かめる作業で見落としが続くときは、AIの出した結果を確かめる係なのに、間違いを見逃してしまったも参考になります。

05よくある質問

会議中にAIで調べるのは、やめたほうがいい?

一律にやめるべきとまでは研究から言えません。講義中に別の作業をさせた実験では内容を覚えにくい結果が多い一方、いつ別の画面を見るかを自分で選べた録画の講義の実験では差が出ませんでした。決定・数字・自分への依頼の場面だけは画面を閉じ、調べたいことはメモにためて区切りで調べる使い分けが現実的です。

聞き逃したことを正直に言うと、評価が下がらない?

聞き逃しを伝えたときの評価を直接調べた研究は、今回見つかりませんでした。ただ、確かめないまま進めると、決定と違う作業をしてしまうおそれがあります。「〇〇の部分をもう一度確認させてください」と1点に絞って聞くと、相手の負担も小さくなります。

AIの議事録や要約があれば、聞き逃しても大丈夫?

大丈夫とは言い切れません。論文などの要約では、AIが条件や限界を落としやすいことが研究で報告されています(会議の要約で確かめた研究は見つかっていません)。聞き逃した時間帯は、要約ではなく録画や文字起こしの元の記録で確かめ、それでも不明な点は話した本人に聞くのが確実です。

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出典

  1. Marty-Dugas J, McHardy RJ, Ralph BCW, Kim J, Smilek D (2024). Active vs passive media multitasking and memory for lecture materials. Heliyon, 10(11), e31935. https://doi.org/10.1016/j.heliyon.2024.e31935
  2. Madore KP, Khazenzon AM, Backes CW, Jiang J, Uncapher MR, Norcia AM, Wagner AD (2020). Memory failure predicted by attention lapsing and media multitasking. Nature, 587, 87–91. https://doi.org/10.1038/s41586-020-2870-z
  3. Wiradhany W, Nieuwenstein MR (2017). Cognitive control in media multitaskers: Two replication studies and a meta-analysis. Attention, Perception, & Psychophysics, 79(8), 2620–2641. https://doi.org/10.3758/s13414-017-1408-4
  4. Uncapher MR, Wagner AD (2018). Minds and brains of media multitaskers: Current findings and future directions. Proceedings of the National Academy of Sciences, 115(40), 9889–9896. https://doi.org/10.1073/pnas.1611612115