仕事・キャリア

AIのチャット窓口が入ってから、怒ったお客さんの対応ばかり回ってくる。研究では、AIの案内のつまずきが客のいら立ちを強め、支えを感じる人ほど落ち込みが長引きにくかった

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わかっている度 ★★☆ 中研究6本・公的資料0件を整理出典照合済み(2026-10-15)
職場の机に置かれた電話機
Photo: Petiatil / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

問い合わせにAIのチャットや自動音声が入ってから、電話に出ると最初から怒っているお客さんばかり。そう感じている人は少なくありません。北米のコールセンターの研究では、AIの聞き違いや振り分けのミスで客がいら立ってから人につながる、という声が多く集まっていました。この記事では、何が起きているのかと、きつい対応を受けた直後にできることを、研究から順に整理します。

3行でわかる

  1. 米国とカナダのコールセンターの研究では、簡単な用件がAIや自動音声に移り、人には複雑な用件と、AIのつまずきでいら立った客の対応が多く残っていました。
  2. 客からひどい扱いを受けた日は、夜にそのことを思い返しやすく、翌朝の気分まで沈みやすいという研究があります。会社や上司の支えを感じている人ほど、その結びつきは弱めでした。
  3. 直後は「記録を残す」「AIが原因の部分も含めて短く報告する」「仕事のあとは思い返しから離れる」の3つが、研究の結果と食い違いにくい手です。

01 結論から言うとAIの窓口が入ると、人に回る対応はきつくなる?

北米のコールセンターの研究では、きつくなったという声が多数でした。AIが簡単な用件を引き受けるぶん、人には難しい用件と、AIの案内で待たされていら立った客が回りやすくなるためです。ただし日本の職場を調べた研究はまだありません。

怒っているお客さんの多くは、あなた個人ではなく、つながるまでの手間に腹を立てています。研究に出てくる働く人も「客は会社に怒っているのに、それを窓口の自分にぶつける」と話していました。

だからといって、きつさを「仕方ない」と飲み込む必要はありません。客からのひどい扱いは、その日の夜や翌朝の気分にまで響くことが研究でわかっています。直後に小さく手を打つことには意味があります。

AIの導入で人が減った職場のつらさは、AIの導入で人が減り、残った職場がつらいで、職場のストレスチェックの使い方は職場のストレスチェックの記事で整理しています。

02 研究とデータでわかっていること怒った客の対応のあと、心には何が起きる?

客にひどい扱いを受けた日は、夜にそのことを思い返しやすく、翌朝の気分が沈みやすいことが、コールセンターで働く人の日誌の研究でわかっています。会社や上司の支えを感じている人ほど、この結びつきは弱めでした。

68%自動化の技術に否定的な自由回答91件のうち、AIや自動音声のつまずきで仕事がきつくなったと書いたものの割合(米国・カナダのコールセンター、2022〜2023年の調査)
1,189回コールセンターで働く149人が書いた、毎日のアンケートの回数。客にひどい扱いを受けた日ほど、夜の思い返しが多かった(2013年発表)
185人銀行の窓口で働く人の調査。上司の支えを感じる人ほど、困った客のあとの嫌な気分が強まりにくかった(中国、2022年発表)

O'Bradyら / Work and Occupations(2026)[1]

米国とカナダの通信会社のコールセンターで、AIのチャット、自動音声の案内、セルフサービスの導入後に何が起きたかを調べました。簡単な用件が自動化され、人には複雑な用件が多く残りました。AIの聞き違いや振り分けのミスで待たされた客は、つながる前からいら立っており、それをなだめる仕事が増えていました。自動化に否定的な自由回答91件のうち62件(68%)が、こうしたつまずきで仕事がきつくなったという内容でした。

対象: 管理職・働く人・労働組合の担当者など106人への聞き取りと、働く人3,277人のアンケート / 限界: 労働組合と協力した調査で、組合員の声が中心。割合は自由回答を分類したもので、全員の経験を数えたものではない。

Wangら / Journal of Applied Psychology(2013)[2]

コールセンターで働く人が毎日アンケートに答えました。客からひどい扱いを受けた日ほど、その夜に嫌なやりとりを思い返すことが多く、それが翌朝の嫌な気分につながっていました。会社に支えられていると感じている人ほど、ひどい扱いと夜の思い返しの結びつきは弱めでした。

対象: コールセンターで働く149人、毎日のアンケート1,189回分 / 限界: 自分で答えるアンケートで、生成AIが入る前の職場の研究。

Xiaoら / Frontiers in Psychology(2022)[3]

銀行の窓口で働く人を調べると、困った客の行動を多く経験している人ほど嫌な気分が強く、客への自発的な手助けが少なめでした。上司から理解や支えを受けていると感じる人ほど、困った客と嫌な気分の結びつきは弱まっていました。

対象: 中国・青島の銀行2行の窓口で働く185人 / 限界: 1回の調査で、支えがあれば気分が軽くなるという因果までは言えない。

Zhangら / Frontiers in Psychology(2019)[4]

客からひどい扱いを受けている人ほど、仕事が家庭の時間や気持ちに食い込む「仕事と家庭のぶつかり」が強く、家族との暮らしへの満足が下がっていました。ただし、仕事のあとに仕事のことを頭から切り離せている人では、この結びつきが弱まっていました。

対象: 中国東部の美容室で働く221人を、1か月おきに3回調査 / 限界: 美容の仕事が対象で、電話やチャットの窓口とは働き方が違う。

Yanら / BMC Medical Education(2024)[5]

患者からひどい扱いを受けた看護師では、いやなできごとを周りに話すことが多い人ほど、疲れきった感じや仕事と家庭のぶつかりが強いという結果でした。著者らは、周りに話すことが嫌なできごとをくり返し思い返すことにつながる、と論じています。

対象: 中国・重慶の看護師1,627人(2022年10〜11月) / 限界: 1回の調査で、話すことが原因とは言い切れない。話す相手や話し方の違いは調べていない。

03 まだわかっていないこと日本の職場でも同じことが起きている?

日本の問い合わせ窓口で、AIの導入前後に働く人の負担がどう変わったかを調べた研究は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。直後の対処のしかたも、AIの窓口で働く人を対象に確かめた研究はまだありません。

  • 02の研究のうち、AIの窓口を扱ったのは北米のコールセンターの研究だけです。ほかの研究は、銀行・美容室・病院など、AIとは関係のない職場の結果です。
  • きつい対応のあと、AIのチャットに愚痴を言うと楽になるのかは、わかっていません。中国のホテルなどの接客業(ホスピタリティ業界)で働き、AIのチャットを使ったことがある394人の調査では、客からひどい扱いを受けて疲れている人ほどAIに愚痴を言っていましたが、それで疲れが軽くなったかは調べられていません[6]。
  • 周りに話すことが助けになるのか、思い返しを増やすのかは、まだはっきりしていません。看護師の調査の著者らも、話すことで疲れが和らぐかは定まっていないとしています。話す相手や回数によって違う可能性があります。

04 今日からできることきついクレームを受けた直後に、何をする?

その場で記録を残し、AIの案内が原因になった部分も含めて上司に短く報告します。そのうえで、仕事のあとは思い返しから意識して離れる時間をつくります。どれもお金はかかりません。

1

対応の直後に、3行だけ記録を残す

日時、客が怒っていた理由(AIで何回やり直したか、どこに振り分けられたか)、言われたことを短く書きます。気持ちの整理のためではなく、あとで事実を伝えるための記録です。

目安 1件につき2〜3分

2

AIが原因の部分も含めて、上司に短く報告する

「AIの案内で3回やり直したあと、怒った状態でつながった」のように、自分の対応と、AIや振り分けの問題を分けて伝えます。研究では、上司や会社の支えを感じる人ほど、嫌な気分や夜の思い返しが強まりにくい結果でした。評価や成績にどう扱われるかも、このとき確かめておけます。

目安 その日のうちに5分

3

愚痴は短く、思い返しと切り離す

同僚に話すなら、出来事を1回伝えて終わりにします。何度も話して思い返すことは、看護師の調査ではかえって疲れの強さと結びついていました。帰り道や家では、散歩や家事など、手と体を使うことに意識を向けます。

目安 仕事のあと15分

4

同じことが続くなら、記録をまとめて職場に相談する

1週間ぶんの記録を見て、「AIのどの案内のあとに怒った客が多いか」をまとめます。個人の我慢の問題ではなく、仕組みの問題として職場の会議や相談窓口に出せます。

目安 週1回・15分

職場でAIに見張られているように感じるときは、AIの監視で職場の息苦しさを感じるときの記事もあわせて読めます。

05よくある質問

AIのチャットボットが入ると、人が受ける問い合わせはきつくなる?

米国とカナダのコールセンターの研究では、簡単な問い合わせがAIや自動音声に移り、人には複雑な問い合わせが多く残っていました。AIの聞き違いや窓口の振り分けミスで客がいら立ってから人につながることも多く、働く人の負担が増えたという声が目立ちました。ただし、日本の職場で同じことが起きているかを調べた研究は見つかっていません。

きついクレームを受けたあと、同僚に話すと楽になる?

研究ではまだはっきりしていません。中国の看護師1,627人の調査では、いやなできごとを周りに話すことが多い人ほど、疲れきった感じが強いという結果でした。何度も話して思い返すより、短く報告して手を打つ相談と、気持ちを切り替える時間を分けるほうが、研究の結果とは食い違いにくいと言えます。

AIの案内ミスで怒らせたお客さんの評価が、自分の成績に入るのはおかしくない?

北米のコールセンターの研究でも、AIや自動音声のつまずきで怒った客の低い評価が働く人に向かうことが問題になっていました。労働組合の協約で、通話のモニタリングで得た情報をもとにした処分を制限している職場もありました。自分の職場で評価がどう扱われるかは、記録を添えて上司や職場の相談窓口に確かめるのが第一歩です。

つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。

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出典

  1. O'Brady S, Kim J (2026). Contested Automation: Double Indeterminacy, Union Power, and Job Quality in Call Centers. Work and Occupations, 53(4), 902-937. https://doi.org/10.1177/07308884261442149
  2. Wang M, Liu S, Liao H, Gong Y, Kammeyer-Mueller J, Shi J (2013). Can't get it out of my mind: employee rumination after customer mistreatment and negative mood in the next morning. Journal of Applied Psychology, 98(6), 989-1004. https://doi.org/10.1037/a0033656
  3. Xiao B, Liang C, Liu Y, Zheng X (2022). Service staff encounters with dysfunctional customer behavior: Does supervisor support mitigate negative emotions? Frontiers in Psychology, 13, 987428. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2022.987428
  4. Zhang R, Wu Y, Ferreira-Meyers K (2019). The Work-Family Spillover Effects of Customer Mistreatment for Service Employees: The Moderating Roles of Psychological Detachment and Leader–Member Exchange. Frontiers in Psychology, 10, 2107. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2019.02107
  5. Yan W, Cheng Z, Xiao D, Wang H, Du X, Li L, Song C (2024). Patient mistreatment, emotional exhaustion and work-family conflict among nurses: a moderated mediation model of social sharing of negative work events and perceived organizational support. BMC Medical Education, 24, 1041. https://doi.org/10.1186/s12909-024-06022-9
  6. Cheng J, Jiang J (2026). Customer Mistreatment and Venting to Conversational AI: Emotional Exhaustion as Mediator and Trust in Conversational AI as Moderator. Behavioral Sciences, 16(4), 520. https://doi.org/10.3390/bs16040520