職場のAIやツールに見張られている気がして、しんどい。研究では、つらさは「自分で決められない」「プライバシーがない」感じを通して強まり、仕組みを知る人ほど軽かった

会社が、パソコンの操作やチャットの量、在席の時間を記録するツールやAIを入れた。悪いことはしていないのに、ずっと見られている気がして落ち着かない。そう感じるのは、気にしすぎではありません。研究では、職場の監視は、ストレスや疲れの訴えと結びついていました。気持ちを我慢で抑え込む前に、何から手をつけるかを整理します。
3行でわかる
- 欧州の働く人27,242人の調査では、デジタル機器で仕事ぶりを監視されている人ほど、ストレス・うつ・不安や疲れを訴える見込みが少し高い傾向がありました。
- カナダの3,508人の調査では、監視とつらさのつながりは「仕事の圧力」「自分で決められない」「プライバシーがない」の3つの感じで説明できました。
- まず何が記録されているかを会社に聞き、自分で決められる所を1つ取り戻し、我慢だけで乗り切ろうとせず人に相談する、の順に進めます。
01 結論から言うと監視されている気がしてつらいのは、気にしすぎ?
気にしすぎではありません。複数の調査で、職場の監視はストレスや疲れの訴えと結びついていました。つらさは監視そのものより「自分で決められない」「プライバシーがない」という感じを通して強まるため、そこに手を打てます。
監視のツールやAIが入ると、多くの人は「何を見られているのか」「どう使われるのか」がわからないまま働くことになります。わからないものに見られている状態は、それだけで落ち着かないものです。
研究からわかるのは、つらさの通り道です。監視を止められなくても、何が記録されるかを知ることや、自分で決められる範囲を取り戻すことは、働く人の側からも始められます。
02 研究とデータでわかっていること職場の監視は、心と体にどう響く?
監視がある人ほど、ストレス・うつ・不安や疲れを訴える見込みが少し高い傾向がありました。つらさは、仕事の圧力・裁量の減り・プライバシーの不安を通して強まっていました。AIの役割や限界をよく知っている人ほど、つらさは軽めでした。
Müller ら(2026)[1]
職場で「デジタル機器による仕事や行動の監視」「仕事や勤務の自動の割り当て」「仕事ぶりの評価」の3つの仕組みがあるかを聞いたところ、監視は5つの体調の訴え(全体的な疲れ、ストレス・うつ・不安、筋肉や骨の不調、頭痛や目の疲れ、事故やけが)のすべてと結びついていた。ほかの2つの仕組みより、関連が一貫していた。
対象: 欧州の働く人27,242人 / 限界: 一度きりの調査で、原因と結果は決められない。監視の有無は「はい・いいえ」の1問で、大学卒の人が多めに含まれていた。
Glavin ら(2024)[2]
仕事が記録・監視・評価されていると感じる人ほど、心の苦痛が強かった。ただし、そのつながりは「仕事の圧力が強い」「自分で決められない」「職場でプライバシーがない」という3つの感じですべて説明できた。
対象: カナダの全国の働く人3,508人 / 限界: 一度きりの調査で、原因と結果は決められない。AIに限らず、職場の監視全般を感じ方として聞いている。
Chu ら(2026)[3]
AIによる監視が強いと感じる管理職ほど、3か月後に自分で決められる感じが低く、心の苦痛が強かった。一方、職場のAIの役割・できること・限界をよく知っている人ほど、苦痛は低かった。意外にも、回復力(立ち直る力)が高い人ほど、監視と苦痛の結びつきは強かった。
対象: 中国の製造業の管理職482人(3か月ずつ空けた3回の調査) / 限界: 時間をずらした調査でも、原因と結果は決めきれない。一般の社員や日本の職場に同じように当てはまるかはわからない。
Röttgen ら(2025)[4]
仕事の指示・予定・監視・フィードバックをアルゴリズム(自動の仕組み)が担う度合いが高いと感じる人ほど、仕事のペースが速く、自分で決められる感じが低く、それとは別にイライラも強かった。
対象: ドイツで尺度をつくった研究のうち、クラウドワーカー・倉庫・配送で働く297人の調査 / 限界: 一度きりの調査で、主な目的は質問紙の開発。
Müller らは会社に対して、仕組みを透明にし、監視の範囲の線引きをはっきりさせ、働く人が結果に疑問を出したり直してもらえたりする手順を整えるよう勧めています [1]。「何が記録されていますか」と聞くことは、研究者が必要だと考えている透明性を求めることです。
AIの評価で低い点がついたときの手順はAIの評価で低い点がつき、落ち込む・腹が立つに、AIが仕事の割り振りや評価を決める仕組みそのものはAIが仕事の割り振りや評価を決めるのは本当?にまとめています。
03 まだわかっていないこと何が記録されるか知れば、本当に楽になる?
まだ確かめられていません。仕組みを知る人ほどつらさが軽いという関連はありますが、説明を受けたあとにつらさが減るかを試した研究は見つかりませんでした。日本の職場の研究も見つかっていません。
- 見つかった研究は、どれも調査です。監視が原因でつらくなったのか、もともとつらい人が監視を強く感じたのかは、区別しきれていません。
- 欧州とカナダの調査は、AIに限らない職場の監視全般を聞いています。生成AIを使った新しい監視に、同じ結果が当てはまるかはわかっていません。
- 回復力の高い人ほど監視と苦痛の結びつきが強かった結果は、中国の製造業の管理職1つの調査だけです。
- 会社が監視の目的や範囲を説明した場合に、働く人のつらさが減るかを試した研究は見つかりませんでした。
04 今日からできること見張られている感じがつらいとき、何から始める?
まず記録されている中身を会社に聞き、次に自分で決められる所を上司と1つ決めます。我慢だけで乗り切ろうとせず、つらさが続くなら社内外の相談先を使います。どれもお金はかかりません。
記録されている中身を、会社に聞く
「何を記録しているか」「何のためか」「誰が見るか」「どのくらい保存するか」の4つを、上司か人事に文面で聞きます。わからないまま想像するより、範囲がわかるほうが落ち着きやすくなります。
目安 メール1通、15分
自分で決められる所を、1つ取り戻す
作業の順番、集中する時間帯、休憩の取り方など、自分で決めてよい範囲を上司と1つ決めます。研究では、自分で決められない感じが、監視とつらさをつなぐ通り道の1つでした。
目安 上司との相談 10分
我慢だけで乗り切ろうとしない
立ち直る力が高い人ほど、監視と心の苦痛の結びつきが強かった研究があります。一人で耐えるより、同僚と困りごとを共有したり、職場の産業医・保健スタッフ・相談窓口に話したりします。
目安 週に1回、5分でも
困ったことを日付つきで記録する
監視の数字で注意された、休憩を取りにくくなったなど、困った出来事を日付と一緒にメモします。相談するときに、状況を正確に伝えられます。
目安 1回1分
監視のやり方や処遇をめぐる職場のトラブルは、各都道府県の労働局などにある総合労働相談コーナーで無料で相談できます。社内の相談窓口やストレスチェックの使い方は職場のAI導入でしんどくなる前ににまとめています。
05よくある質問
会社がAIでパソコンの操作を監視するのは、許されるの?
ここで「許される・許されない」は判断できません。会社の規則や監視の目的・範囲、説明のしかたで変わるためです。まず会社に記録の中身と目的を聞き、納得できない点は総合労働相談コーナーなどに相談してください。
監視されていると思うと、仕事に集中できない。どうしたらいい?
記録の範囲がわからないと、想像で不安がふくらみやすくなります。何が記録されているかを確かめ、作業の順番や集中する時間帯など、自分で決められる所を1つ決めると、手がかりになります。
気にしないようにすれば平気になる?
研究では、立ち直る力が高い人ほど、監視と心の苦痛の結びつきが強い結果がありました。気持ちの持ち方だけで抑え込むより、記録の範囲を確かめたり、人に話したりするほうが、研究の結果に沿った進め方です。
AIの仕組みを知ると、何が変わるの?
中国の管理職の調査では、職場のAIの役割・できること・限界をよく知っている人ほど、心の苦痛が低く、自分で決められる感じが高い傾向がありました。ただし、説明を受けるとつらさが減るかを試した研究はまだありません。
出典
- Müller A, Danailova I, Ertel M, Gündel H, Heming M, Kemter A, Scheepers L, Röttgen C (2026). The association between core functions of algorithmic management and work-related health problems: indications for effects beyond well-known psychosocial stressors. Frontiers in Public Health, 14, 1886482. https://doi.org/10.3389/fpubh.2026.1886482
- Glavin P, Bierman A, Schieman S (2024). Private Eyes, They See Your Every Move: Workplace Surveillance and Worker Well-Being. Social Currents, 11(4), 327-345. https://doi.org/10.1177/23294965241228874
- Chu J, Chu H (2026). When resilience backfires: the counterintuitive effect of employee resilience in high-tech surveillance environments. Frontiers in Psychology, 17, 1790846. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1790846
- Röttgen C, Dzaack H, Herbig B, Weinmann T, Müller A (2025). Algorithmic management: psychological measurement and associations with work design and mental strain. BMC Psychology, 13, 1327. https://doi.org/10.1186/s40359-025-03680-2


