AIが仕事の割り振りや評価を決めるのは本当?研究では、自動の管理が強い人ほど心身の不調が多く、人が最後に決める形は公平と受け止められやすかった

シフトや仕事の割り振りがアプリで決まる。評価の点数がシステムから届く。「AIに管理されているのでは」と不安になる人は少なくありません。研究では、仕事の割り振り・監視・評価をアルゴリズム(自動で判断する計算の手順)に任せる「アルゴリズム・マネジメント」は実際に広がっていて、管理の度合いが強い人ほど心身の不調を訴える割合が高いという結果が出ています。一方で、自由度が増す面や、人が最後に決める形なら受け入れられやすいこともわかってきました。
3行でわかる
- 仕事の割り振り・シフト・監視・評価を自動で行う「アルゴリズム・マネジメント」は、配達やネットの仕事から、倉庫など従来の職場にも広がっています。
- スウェーデンの物流で働く978人の調査では、自動の管理を強く受けている人は、受けていない・弱い人より心理的な苦痛の割合が2.12倍、仕事中のけがや事故の割合が1.92倍でした(関連であり、原因とは言い切れません)。
- ドイツの約3,900人の実験では、人事の決定をAIだけで行う形は公平と受け止められにくく、AIの提案を人が最後に判断する形は受け入れられやすいという結果でした。
01 結論から言うとAIが仕事の割り振りや評価を決めるのは本当?
本当です。仕事の割り振り、シフト、監視、評価を自動で行う仕組みは研究の対象になるほど広がっています。ただ、良し悪しは使われ方しだいで、研究のまとめでは「縛る」使い方が多いと指摘されています。
研究では、こうした仕組みを「アルゴリズム・マネジメント」と呼びます。上司が担ってきた仕事の一部(誰に何を任せるか、どれだけ速く働いたか、評価をどうするか)を、データと計算の手順で自動で行うやり方です。
172本の論文をまとめた体系的レビューは、この仕組みが働く人の自由を「縛る面」と「広げる面」の両方を持つとしています。[1] そのうえで、これまでの企業は主に管理・統制のために使ってきたと結論づけています。
この記事は「何が起きているのか」を知るための整理です。AIの面接や書類選考についてはAIの面接や書類選考で落とされたかもしれないに、AIの評価で低い点がついたときの気持ちの整理はAIの評価で低い点がつき、落ち込む・腹が立つにまとめています。
02 研究とデータでわかっていることAIに管理されると、働く人にどんな影響がある?
自動の管理を強く受けている人ほど、心理的な苦痛、体の痛み、事故の報告が多いという関連が出ています。働く時間や順番を選べる自由がある一方、速さや締め切りに追われやすい面も報告されています。
Hennum Nilssonら(2025年、International Archives of Occupational and Environmental Health)[2]
仕事の割り振り、シフト、監視、成績の自動評価などを強く受けている人は、受けていない・弱い人より、心理的な苦痛が2.12倍、仕事中の事故が1.92倍、頭痛が1.68倍、筋肉や関節の痛みが1.54倍多かった。
管理の強さは、自動での仕事の割り振り、デジタルでの監視、シフトの自動決定、成績の自動評価、自動での契約終了などを聞く11の質問で測りました。強く受けていた人は全体の8.7%、中くらいが34.3%でした。痛みや頭痛との関連は主に配達のドライバーで見られ、倉庫で働く人でははっきりしませんでした。
対象: スウェーデンで倉庫や配達の仕事をしている978人(2024年2〜7月のネット調査。SNS広告と労働組合を通じて募集) / 限界: 一時点の調査で、原因と結果は確定できない。もともと体調に不安のある人がこうした職場で働いている可能性も著者らは挙げている。
Woodら(2019年、Work, Employment and Society)[3]
ネットで仕事を受ける人の多くは、仕事の順番ややり方を自分で選べていた一方、評価の点数で仕事が回ってこなくなる仕組みのもとで、速さや締め切りに追われ、睡眠を削る人も多かった。
調査では、72%が仕事の順番を、74%がやり方を自分で選べると答えました。一方で、54%がとても速いペースで働く必要があると答え、60%が厳しい締め切りの中で働き、54%が夜の睡眠を削っていました。
対象: 東南アジアとサハラ以南アフリカでネットの仕事を受ける人(面接107人、2014〜2015年。アンケート679人) / 限界: 調査への回答率が低く(30%と7%)、ネットの仕事を受ける人全体を代表するとは限らない。会社に雇われている人の結果ではない。
Semujanga・Parent-Rocheleau(2024年、International Journal of Environmental Research and Public Health)[4]
報酬が自動で決まる度合いが強い人ほど、時間に追われるストレスが強かった。一方で、決め方の手続きを「公正だ」と感じる度合いも高く、その仕組みがわかりやすいと感じている人ほど、その傾向は強かった。
対象: 配達やネットの仕事などをしている962人(83.5%が米国、13.4%がインド在住) / 限界: 一時点の自己回答の調査で、原因と結果は確定できない。日本の会社員にそのまま当てはまるかはわからない。
Kernら(2022年、Patterns)[5]
人事などの決定を、人の関わりなしにAIだけで行う形は公平と受け止められにくかった。AIの提案をもとに人が最後に決める形は、人が主に決める形と同じくらい公平と受け止められた。
4つの場面(採用や試用期間中の契約終了などの人事、銀行、職業安定所、刑務所)で、決め方を変えた架空の場面を読んでもらう実験です。人事の場面は、全体として「公平でない」と答える人が多い場面でした。
対象: ドイツの16〜75歳の約3,900人(確率抽出のネット調査、2021年7月) / 限界: 架空の場面への評価で、自分が実際に評価されたときの受け止め方とは違う可能性がある。
Choi・Chao(2026年、Personality and Social Psychology Bulletin)[6]
自分に不利な決定(ボーナスがもらえない等)がAIから出たときは、人の管理職から出たときより公平と受け止められ、否定的な反応が小さかった。AIにも偏りがありうると知らせると、その差は小さくなった。
対象: アジアの大学生、米国の働く大人、欧州・アフリカなど各地のネット参加者による6つの実験、合計2,794人 / 限界: 職場の架空の場面を使った実験。AIを「感情に左右されない」と見る受け止め方が、この差に関わっていた。
まとめると、「AIの管理は必ず悪い」という単純な話ではありません。働く人の負担と結びつきやすいのは、管理が強く、速さを数字で追われ、決め方が見えない場面です。[1][2][3] 反対に、決め方が見え、人が最後に判断する形は、受け入れられやすい傾向がありました。[4][5]
| 自動で行われやすいこと | 研究で報告された主な面 |
|---|---|
| 仕事の割り振り・シフト | 順番や時間を選べる自由がある一方、仕事の量が読めない[1][3] |
| 速さや作業量の監視 | 速いペース・締め切りに追われる。強い管理は心身の不調と関連[2][3] |
| 評価・報酬 | 時間に追われるストレスと関連。決め方が見えると公正と感じやすい[4] |
| 採用・契約終了などの人事 | AIだけで決める形は公平と受け止められにくい[5] |
03 まだわかっていないこと日本の職場でも同じことが起きている?
まだはっきりしていません。今回調べた研究は海外の、それも配達やネットの仕事が中心で、日本の会社員を対象にした査読済みの研究は見つかりませんでした。
- 日本の職場で、仕事の割り振りや評価にどのくらいAIが使われているか(今回は信頼できる査読研究や公的統計を確認できなかった)
- AIの管理が不調の原因なのか、もともと負担の大きい職場で使われやすいだけなのか(主な研究は一時点の調査)
- 配達やネットの仕事の結果が、事務や専門職など会社に雇われている人にも当てはまるか。レビューも、初期の研究の多くが配達・送迎・ネットの仕事の分析だったとしている[1]
- どんな説明の仕方や、人による見直しの仕組みがあれば負担が軽くなるか(実際の職場で比べた研究はまだ少ない)
04 今日からできることAIに管理されているか不安なとき、何から始める?
まず、自分の仕事のどこが自動で決まっているかを書き出し、決め方と最後に判断する人を職場に確かめます。体の負担が続くときは、記録をつけて早めに相談します。
何が自動で決まっているかを書き出す
仕事の割り振り、シフト、作業の速さの計測、評価の点数、報酬のうち、システムが決めているものに印をつけます。研究で負担と結びついていたのは、こうした管理が重なっている場面でした。
目安 10分
「何のデータで、最後は誰が決めるか」を聞く
上司や人事に、評価やシフトに使われているデータと、人が見直す場面があるかを確かめます。研究では、決め方が見えることや人が最後に判断することが、受け止め方を変えていました。職場のルールそのものが無いときは職場にAIを使うルールがないときも参考になります。
目安 面談で5分
体と睡眠の変化を2週間メモする
休憩が取れない日、痛みや頭痛、眠れない日を短く記録します。続くときは、その記録を持って産業医や職場の相談窓口に話します。社外の無料の窓口は職場のAI導入でしんどくなる前ににまとめています。
目安 1日1分×2週間
点数を「自分の価値」と切り分けて読む
自動の評価は、決められたデータをもとに計算した結果です。点数に納得できないときは、根拠の説明と人による見直しを頼みます。
目安 評価が届くたびに5分
05よくある質問
アルゴリズム・マネジメントとは何?
上司が担ってきた管理の仕事(誰に何を任せるか、シフト、作業の監視、評価、報酬など)を、データと計算の手順で自動で行うやり方です。配達やネットの仕事で広がり、倉庫など従来の職場でも使われています。
AIに管理されると体調が悪くなるの?
関連は出ていますが、原因とは言い切れません。スウェーデンの物流の調査では、自動の管理を強く受けている人ほど心理的な苦痛や事故の割合が高くなっていました。ただし一時点の調査で、もともと負担の大きい職場で使われやすい可能性もあります。
AIの評価は人の評価より不公平?
場面によって違います。ドイツの実験では、人事の決定をAIだけで行う形は公平と受け止められにくい一方、人が最後に判断する形は受け入れられやすい結果でした。米国・アジア・欧州などの参加者による実験では、不利な決定はAIから出たほうが公平と受け止められる傾向もありました。
出典
- Noponen N, Feshchenko P, Auvinen T, Luoma-aho V, Abrahamsson P (2023). Taylorism on steroids or enabling autonomy? A systematic review of algorithmic management. Management Review Quarterly. https://doi.org/10.1007/s11301-023-00345-5
- Hennum Nilsson K, Bodin T, Strauss P, Matilla-Santander N, Badarin K, Brulin E, Håkansta C (2025). Algorithmic management is associated with psychological distress, musculoskeletal pain, and occupational accidents: a cross-sectional study in logistics. International Archives of Occupational and Environmental Health, 98, 929-942. https://doi.org/10.1007/s00420-025-02180-5
- Wood AJ, Graham M, Lehdonvirta V, Hjorth I (2019). Good Gig, Bad Gig: Autonomy and Algorithmic Control in the Global Gig Economy. Work, Employment and Society, 33(1), 56-75. https://doi.org/10.1177/0950017018785616
- Semujanga B, Parent-Rocheleau X (2024). Time-Based Stress and Procedural Justice: Can Transparency Mitigate the Effects of Algorithmic Compensation in Gig Work? International Journal of Environmental Research and Public Health, 21(1), 86. https://doi.org/10.3390/ijerph21010086
- Kern C, Gerdon F, Bach RL, Keusch F, Kreuter F (2022). Humans versus machines: Who is perceived to decide fairer? Experimental evidence on attitudes toward automated decision-making. Patterns, 3(10), 100591. https://doi.org/10.1016/j.patter.2022.100591
- Choi J, Chao MM (2026). For Me or Against Me? Reactions to AI (vs. Human) Decisions That Are Favorable or Unfavorable to the Self and the Role of Fairness Perception. Personality and Social Psychology Bulletin, 52(3), 671-691. https://doi.org/10.1177/01461672241288338


