AIに頼りすぎ

AI翻訳を信じて送った文章が、誤訳だった。研究では、1文ずつは9割前後正しくても、文書全体では誤りが混ざりやすかった

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わかっている度 ★★☆ 中研究5本を整理出典照合済み(2026-10-10)
辞書の小口に並ぶ見出しの切り込み
Photo: Till Niermann / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

AI翻訳で訳した文章を、海外の取引先や外国語を話す相手にそのまま送った。あとから、意味が違って伝わっていたとわかった。そんなときは、慌てて長い謝罪文を送るより、間違った点だけを短く直し、元の文を添え、伝わったかを確かめるのが近道です。研究では、AI翻訳は1文ずつなら9割前後正しくても、文書のどこかに誤りが混ざることが珍しくありませんでした。

3行でわかる

  1. 英語から3言語に訳した研究では、1文ずつの正確さは80〜97%でしたが、文書単位では16〜66%に1か所以上の誤りがありました。
  2. 正確さは言語やツールで大きく変わり、ネット上の文章などデータの少ない言語ほど下がる傾向がありました。
  3. 送ってしまったら、間違った点を短い文で直し、原文と「機械翻訳を使った」ことを添え、要点を相手に言い直してもらいます。

01 結論から言うとAI翻訳の誤訳を送ってしまったら、どうする?

間違った点だけを短い文で訂正し、元の文と、機械翻訳を使ったことを添えます。そのうえで、要点を相手の言葉で言い直してもらい、伝わったかを確かめます。

誤訳に気づくと、「失礼なことを書いてしまったかも」と焦ります。でも、相手にとって大事なのは、正しい内容が伝わることです。長い謝罪文をまたAIで訳すと、新しい誤訳が混ざるおそれがあります。

医療の現場でAI翻訳を調べた研究者たちは、機械翻訳した文書には原文を添えること、機械翻訳を使ったと明記すること、内容を口頭で言い直してもらって理解を確かめることを勧めていました。[1] どれも、訂正を送るときにそのまま使える考え方です。

この記事は、送ってしまった「あと」のことを書きます。AIの答え全般の確かめ方は、AIの答えが間違っていた。ハルシネーションはどのくらい起きる?にまとめています。

02 研究とデータでわかっていることAI翻訳はどのくらい間違える?

英語から3言語に訳した研究では、1文ずつなら8〜9割台正しく訳せていましたが、文書全体では1か所以上の誤りがよく見つかりました。正確さは言語とツールで大きく変わりました。

89〜97%ChatGPT(GPT-4)で1文ずつ訳したときの正確さ。英語からスペイン語・中国語・ロシア語(Kongら、2026年)
16〜56%同じ条件で、文書単位で1か所以上の誤りがあった割合。ロシア語がいちばん高かった
6%以下健康に害が出るおそれのある誤訳を含んだ文書の割合(同じ研究、両ツール・3言語)
7.1分AIの訳をプロが手直しする方法の平均時間。プロが一から訳すと16.8分(Brewsterら、2025年)

Kongら(2026)[1]

救急外来の医療者が患者向けに書いた説明文50件(316文)を、ChatGPT(GPT-4)とGoogle翻訳でスペイン語・中国語・ロシア語に訳しました。1文ずつの正確さは、スペイン語で97%と96%、中国語で95%と90%、ロシア語で89%と80%でした。ところが説明文1件ごとに見ると、1か所以上の誤りを含む割合は、ChatGPTで16%・24%・56%、Google翻訳で24%・56%・66%でした。元の文の打ち間違い(strain を stain と書いた)が、「あざ」「しみ」と訳された例もありました。

対象: アメリカの病院の救急外来の説明文。訳文をプロが英語に戻し、医師が正しさと害の可能性を判定 / 限界: 英語からの3言語だけで、日本語は含まない。どんな文が誤訳されやすいかの分析は、件数が少なく探索的なもの。

Karakusら(2025)[3]

医療の場でのAI翻訳(ニューラル機械翻訳)を調べた研究を集めたシステマティックレビューです。2,867本から10本を選んで分析しました。正確さは言語によって違い、データの少ない言語ほど低くなっていました。重大な誤りが起こりうるため、医療で広く使うにはまだ早いと結論づけています。

対象: 医療の場での通訳・翻訳の研究10本 / 限界: 2000年以降に英語で書かれた研究のみ。分析できた研究は10本と少ない。

Brewsterら(2025)[2]

子どもの退院時の説明文を6言語に訳し、「AIだけ」「プロの翻訳者」「AIの訳をプロが手直し」を比べました。AIだけの訳は言語によって出来がばらつき、ネット上の文章が少ない言語(アルメニア語・ソマリ語)でいちばん低く評価されました。AIの訳をプロが手直しする方法は、プロが一から訳すのと同じか、より高い評価で、時間は平均7.1分と、16.8分より短くすみました。

対象: アメリカの小児病院の説明文。言語の専門家・医師・子どもの家族が評価 / 限界: 元の文書の数が少なく、すべての言語やツールに当てはまるとは限らない。AIの最初の訳だけを評価している。

Chaoら(2026)[4]

台湾の病院の外来20回分、2,450のやりとりを、3つの翻訳ツールで中国語から日本語に訳しました。そこから選んだ40のやりとりを、プロの医療通訳者8人が6段階(0〜5点)で評価すると、正確さの中央値はChatGPTで5、ほかの2つのツールで2と、ツールによって大きな差がありました。

対象: 循環器と呼吸器の外来の会話(2024年12月〜2025年11月) / 限界: 1つの病院の、中国語から日本語への翻訳だけ。評価したのは、3つのツールの訳がすべて同じだったものを除いて選んだ一部のやりとり。日本語から外国語への研究ではない。

ほかに、子どもの退院時の説明文を3言語で比べた研究では、スペイン語とポルトガル語ではAI翻訳がプロの訳と同じくらいの評価でしたが、ハイチ・クレオール語ではプロの訳を下回りました。[5] これらの研究からは、正確さが言語の組み合わせやツールによって変わり、元の文の書き方も影響しうることがうかがえます。

03 まだわかっていないこと日本語のAI翻訳はどのくらい正確?

日本語から外国語への翻訳の正確さを、仕事や暮らしの文章で調べた研究は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。研究の多くは英語から訳した医療の文書です。

  • 今回見つかった研究は、ほとんどが英語から他の言語への、医療の説明文の翻訳でした。日本語からのメールや仕事の文書で、どのくらい誤訳が起きるかはわかっていません。
  • ツールは頻繁に更新されます。研究で使われた版の結果が、今のツールにそのまま当てはまるとは限りません。
  • 訳した文を同じツールで日本語に戻して確かめる方法が、どのくらい誤りを見つけられるかを調べた研究は見つかりませんでした。
  • 誤訳のあとの訂正の送り方を比べた研究もありません。04の手順は、研究者の勧めを応用したものです。

04 今日からできること誤訳に気づいたら、何から手をつける?

送った訳文と元の文を並べて影響の大きい誤りを探し、短い文で訂正を送ります。原文と機械翻訳を使ったことを添え、要点を言い直してもらって伝わったかを確かめます。

1

元の文と訳文を並べ、影響の大きい誤りを探す

日付・時間・金額・数量・「〜しない」などの否定・人や会社の名前を優先して見直します。元の日本語に打ち間違いがなかったかも確かめます。Kongらの研究でも、元の文の打ち間違いが別の意味に訳された例がありました。

目安 10分

2

訂正は短い文で、原文と「機械翻訳を使った」ことを添える

「先ほどのメールは機械翻訳を使いました。日付に誤りがありました。正しくは10月20日です」のように、直す点だけを1文ずつ書きます。数字は数字で書き、元の日本語の文も下に添えます。

目安 15分

3

要点を相手の言葉で返してもらう

「念のため、日時と場所を返信で書いていただけますか」と頼みます。医療の研究者が勧めていた、言い直してもらって理解を確かめる方法(ティーチバック)の応用です。

目安 5分

4

次から、大事な文書は人の確認を入れる

契約・お金・健康・学校の手続きなど、間違えると困る文書は、AIの訳を下書きにして、その言語がわかる人に確認してもらいます。Brewsterらの研究では、AIの訳をプロの翻訳者が手直しする方法は、プロが一から訳すより短い時間で、同じかそれ以上の評価でした。

目安 文書ごと

翻訳ツールに相手の名前や住所、会社の情報を貼りつけた場合の扱いは、ChatGPTに個人情報や会社の情報を入力しても大丈夫?で整理しています。失敗のあとAIを使うのが怖くなったときは、AIの答えで失敗してから、AIを使うのが怖いも参考になります。

05よくある質問

AI翻訳の誤訳で相手を困らせてしまった。どう伝え直せばいい?

機械翻訳を使ったことを伝え、間違っていた部分だけを短い文で直します。日付や金額などの大事な点は数字で書き、元の日本語の文も添えると、相手が別の方法で確かめられます。最後に、要点を相手の言葉で返してもらうと、今度こそ伝わったかがわかります。

訳した文を日本語に戻して確かめれば大丈夫?

目安にはなりますが、それだけで正しいとは言えません。研究では、プロの翻訳者が訳文を英語に戻し、医師が正しさを判定していました。利用者が同じAIで日本語に戻して確かめる方法が、どのくらい誤りを見つけられるかを調べた研究は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。

どの翻訳AIがいちばん正確?

言語の組み合わせと文章の内容で変わります。同じ研究の中でもツールによって差があり、データの少ない言語ほど正確さが下がる傾向がありました。どのツールでも、大事な文書は人の確認を入れるのが研究者のすすめでした。

契約や病院の書類もAI翻訳で済ませていい?

医療の説明文を調べた研究者は、結果の重い文書では、どの言語でもプロの翻訳者の確認なしに機械翻訳を使わないよう勧めていました。医療の場では、病院に通訳の手配ができるか聞いてみてください。契約やお金の書類は、内容がわかる人に確認してもらってから決めます。

出典

  1. Kong M, Fernandez A, Bains J, et al. (2026). Evaluation of the accuracy and safety of machine translation of patient-specific discharge instructions: a comparative analysis. BMJ Quality & Safety, 35(3), 150-158. https://doi.org/10.1136/bmjqs-2024-018384
  2. Brewster RC, Tse G, Fan AL, et al. (2025). Evaluating human-in-the-loop strategies for artificial intelligence-enabled translation of patient discharge instructions: a multidisciplinary analysis. npj Digital Medicine, 8, 629. https://doi.org/10.1038/s41746-025-02055-6
  3. Karakus IS, Strechen I, Gupta A, et al. (2025). Bridging language gaps in healthcare: a systematic review of the practical implementation of neural machine translation technologies in clinical settings. Journal of the American Medical Informatics Association, 32(11), 1756-1766. https://doi.org/10.1093/jamia/ocaf150
  4. Chao KY, Huang CH, Liu WL, et al. (2026). Comparative Evaluation of ChatGPT, Google Translate, and UD Talk for Chinese-to-Japanese Translation in Cardiology and Pulmonology Outpatient Consultations: Prospective Observational Study. Journal of Medical Internet Research, 28, e93082. https://doi.org/10.2196/93082
  5. Brewster RCL, Gonzalez P, Khazanchi R, et al. (2024). Performance of ChatGPT and Google Translate for Pediatric Discharge Instruction Translation. Pediatrics, 154(1), e2023065573. https://doi.org/10.1542/peds.2023-065573