子どもがAIで同級生の性的な偽画像を作ってしまった。学校と家庭は、広がりを止めて被害を受けた子を守ることから始める

わが子が、あるいは担任するクラスの生徒が、AIで同級生の性的な偽画像を作ってしまった。動揺するのは当然です。最初にすることは、子どもを問い詰めることより、画像の広がりを止めて、被害を受けた子を守ることです。法律と国の通知、研究からわかっている順番を整理します。
3行でわかる
- 2026年1〜6月に警察が扱った、子どもの画像を生成AIなどで性的に加工した事案は123件。行為者の約7割は同級生や同じ学校の人でした。
- 最初の1日でするのは、送信や投稿を止める、送り先と保存場所を書き出す、学校に伝えるの3つです。被害を受けた子の安心が最優先です。
- 法律は学校に、加害側への指導と保護者への助言も求めています。罪に当たるかは警察や裁判所が判断します。
01 結論から言うと子どもが同級生の偽画像を作ったら、まず何をする?
子どもが同級生の性的な偽画像を作ったときは、まずこれ以上送らせず、送り先と保存場所を書き出して学校に伝えます。学校と保護者は、被害を受けた子の安心を最優先に動きます。
文部科学省は2026年3月12日の事務連絡で、性的ディープフェイク(AIなどで実在の人の画像を性的に加工したもの)の事案が起きたら、速やかに警察と連携するよう求めました[1]。あわせて、被害を受けた子の心のケアと、加害した子への指導に漏れがないように、とも書いています。
通知は、子どもが加害者になる事案も多く、学校行事や卒業アルバムの写真を加工して友人に共有する行為などが見られると述べています[1]。
いじめ防止対策推進法は、いじめを「インターネットを通じて行われるものを含む」行為で、された側が心身の苦痛を感じているもの、と定めています[4]。学校に求められていることを、法律と国の基本方針から表にしました。
| 学校に求められていること | 根拠 |
|---|---|
| 速やかに事実を確かめ、学校の設置者に報告する | いじめ防止対策推進法23条2項[4] |
| 複数の教職員と専門家で、被害を受けた子と保護者を支え続ける | 同23条3項[4] |
| 加害した子への指導と、その保護者への助言を続ける | 同23条3項[4] |
| 必要なら、加害した子を別の教室で学習させるなどの措置をとる | 同23条4項。教育委員会による出席停止は26条[4] |
| 保護者どうしの争いが起きないよう、情報を共有する | 同23条5項[4] |
| 犯罪として扱うべきと認めるときは、警察と連携する | 同23条6項[4] |
| ネット上の不適切な書き込みなどは、被害の拡大を避けるため直ちに削除の措置をとる | いじめ防止基本方針[5] |
保護者にも役割があります。同じ法律の9条は、保護者は子どもがいじめをしないよう必要な指導をするよう努め、学校の措置に協力するよう努める、と定めています[4]。
02 研究とデータでわかっていること子どもが同級生の画像を広めるのは、珍しいこと?
珍しくありません。日本では警察が扱う子どもの性的な加工画像の事案が急増し、行為者の約7割は同級生や同じ学校の人です。海外の研究でも、子ども同士の画像の悪用は一定の割合で起きています。
警察庁(2026年9月)[2]
2026年上半期の123件は、前年同期より63件多く、半年だけで2025年1年間の114件を上回りました。被害を受けた子は中高生が約9割で、小学生の被害もありました。警察は事案に応じて、刑法や児童ポルノ禁止法などでの捜査や、指導・警告をしています。
対象: 都道府県警察が扱った事案 / 限界: 警察が把握した分だけの数で、学校や家庭で止まった事案は含まれません。
Mori ら(2022)[7]
2016年以降にデータを集めた28研究、4万8,024人をまとめると、性的な画像やメッセージを本人の同意なく転送した割合は14.5%でした。2016年より前にデータを集めた研究と、統計的に同程度の割合でした。
対象: 若者を調べた28研究 / 限界: 本人が撮った画像の転送が対象で、AIで作られた偽画像は含みません。
Finkelhor ら / アメリカ(2026)[8]
18歳になる前に起きた画像の被害3,254件を調べると、行為者が若者だったのは約30%、大人だったのは28.8%でした。著者は、学齢期の子どもに合わせた予防の大切さを指摘しています。
対象: SNS広告で集めた18〜28歳の2,083人の回答(2023〜2024年) / 限界: 無作為に選んだ標本ではなく、行為者がわからない例も36.7%ありました。生成AIの画像に絞った研究ではありません。
Henry・Beard(2024)[9]
同意のない性的な画像を作る・撮る・広めるなどの行為をした人を調べた26研究をまとめると、動機は一つではなく、仲間からの評価、力関係、性的な関心、仕返しなどに関係していました。
対象: 16歳を超える人を調べた2013〜2023年の研究 / 限界: 中学生・高校生を中心にした結果ではありません。
Gaffney ら(2021)、Polanin ら(2022)[10][11]
学校のいじめ防止プログラムを評価した100件をまとめると、いじめの加害はおよそ18〜19%、被害はおよそ15〜16%減っていました。ネットいじめの予防プログラム50研究のまとめでも、加害と被害は減りましたが、効果の大きさは小さめでした。
対象: Gaffneyらは主にアメリカ・カナダ・ヨーロッパの学校の評価、Polaninらは50研究・4万5,371人 / 限界: 効果は国やプログラムによって大きくばらつき、AIの偽画像を対象にしたプログラムではありません。
Touloupis / ギリシャ(2024)[12]
研修を受けた先生が、同意のない性的な画像やメッセージのやり取りを防ぐ学校のプログラムを行うと、直後と6か月後のどちらでも、受けた生徒たちのこうした行為は、受けなかった生徒たちより減っていました。
対象: 中学生280人(プログラムを受けた131人、受けなかった149人) / 限界: 1か国の小規模な研究で、自己申告の回答にもとづきます。AIの偽画像は対象ではありません。
03 まだわかっていないことAIの偽画像を作った子への対応は、どこまでわかっている?
AIの偽画像を作った子どもに、どんな指導が再発を防ぐかを確かめた研究は、まだ見つかりませんでした。手がかりは、いじめや画像の転送全般の研究です。
- 生成AIで偽画像を作った子どもへの指導の効果を比べた研究は、今回の調査では見つかりませんでした。
- 画像を使った性的な加害の場面で、周りの人がどう止めに入るかの研究はまだ少ない、と31の研究を整理したレビューが報告しています[13]。
- 日本の数字は警察が把握した事案だけで、学校や家庭で止まった事案の数はわかっていません。
04 今日からできること家庭と学校は、今日から何をすればいい?
今日中に送信と投稿を止め、送り先を書き出し、学校に伝えます。そのうえで学校の措置に協力し、行為の重さを時間をかけて子どもに理解させます。
これ以上、送らせない・投稿させない
子どもに、送信や投稿をすぐやめるよう伝えます。そのうえで、誰に送ったか、どのグループやSNSに載せたか、端末のどこに残っているかを紙に書き出します。大人が画像を開いて見せ合ったり、転送したりはしません。
目安 今日中・30分
学校に伝え、削除は学校や警察と相談して進める
書き出したメモを持って、担任か管理職に連絡します。消す前に、何を残すべきかを学校や警察に確かめます。警察庁などの啓発資料は、一度SNSやグループに投稿した画像は広まり、二度と消せなくなると伝えています[1]。
目安 今日中・連絡1回
被害を受けた子を守る措置を受け入れる
加害した子を別の教室で学習させるといった学校の措置は、被害を受けた子が安心して学ぶためのものです[4]。謝罪の連絡は、直接相手の家に行く前に、学校を通して相手の意向を確かめます。
目安 学校との面談1回から
行為の重さを、時間をかけて理解させる
国の基本方針は、加害した子に、いじめが人格を傷つける行為だと理解させ、自分の行為の責任を自覚させるよう求めています。同時に、その子が抱える問題などの背景にも目を向けるとしています[5]。なぜ作ったのかは、落ち着いてから聞きます。
目安 数週間・週1回の対話
先生は、クラス全体にも声をかけます。画像を持っている生徒には、見せない・送らない・先生に知らせる、と伝えます。基本方針は、重大事態の調査について、いじめを受けた子や情報を提供した子を守ることを最優先にするよう求めています[5]。予防としては、文部科学省が「生命(いのち)の安全教育」と情報モラル教育の充実を挙げています[1]。
警察相談専用電話(#9110): 最寄りの警察本部の相談窓口につながります。身の危険があるときは110番。
24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310): 電話をかけた地域の教育委員会の相談窓口につながります[1]。
法テラス・サポートダイヤル(0570-078374): 法的なトラブルの相談窓口です[14]。
被害を受けた側の手順はディープフェイク被害のあとは「証拠・報告・相談」の3つ、その後の学校生活はディープフェイクのいじめを受けて、学校に戻れるか不安でまとめています。予防は子どもの写真がAIで性的に加工される被害も参考になります。
05よくある質問
AIで作った偽物の画像でも、いじめになるの?
なりえます。いじめ防止対策推進法は、インターネットを通じた行為も含め、された側が心身の苦痛を感じているものをいじめと定めています。画像が本物かどうかではなく、された側が苦しんでいるかどうかで考えます。
子どもが作った性的な偽画像は、犯罪になるの?
犯罪に当たるかどうかは、事案ごとに警察や裁判所が判断します。この記事では判断しません。警察庁によると、警察は事案に応じて刑法や児童ポルノ禁止法などでの捜査や、指導・警告をしています。2025年には、こうした加工画像に初めて児童ポルノ禁止法を適用した検挙がありました(大人の教員の事案)。
14歳未満なら、警察は関係ない?
そうとは限りません。刑法41条は14歳未満の行為を罰しないと定めていますが、警察庁は、事案に応じて指導や警告をしていると公表しています。学校のいじめへの対応は、年齢にかかわらず行われます。
被害を受けた子の家に、すぐ謝りに行くべき?
まず学校に相談します。法律は学校に、保護者どうしの争いが起きないよう情報を共有する措置を求めています。相手が今、謝罪を受けられる状態かどうかを、学校を通して確かめてからにします。
出典
- 文部科学省 (2026). 性的ディープフェイクによる児童生徒の被害・加害防止のための広報啓発資料の活用等について(依頼)(事務連絡, 令和8年3月12日。警察庁などの啓発資料「そのAIの使い方、犯罪かも…」を含む). https://www.mext.go.jp/content/20260409-mxt_kyousei01-000047289_4.pdf
- 警察庁サイバー警察局 (2026年9月). 令和8年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について(コラム「生成AIによる児童の性的加工画像」). https://www.npa.go.jp/publications/statistics/cybersecurity/data/R8kami/R08_kami_cyber_jousei.pdf
- 警察庁 (2026年3月). 令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について(児童の性的加工画像). https://www.npa.go.jp/publications/statistics/cybersecurity/data/R7/R07_cyber_jousei.pdf
- いじめ防止対策推進法(平成25年法律第71号)第2条・第9条・第23条・第26条. e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/425AC1000000071
- 文部科学大臣決定 (2013, 最終改定2017). いじめの防止等のための基本的な方針. 文部科学省. https://www.mext.go.jp/content/20240329-mext_jidou02-000034502_006.pdf
- 刑法(明治40年法律第45号)第41条. e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045
- Mori C, Park J, Temple JR, Madigan S (2022). Are Youth Sexting Rates Still on the Rise? A Meta-analytic Update. Journal of Adolescent Health, 70(4), 531-539. https://doi.org/10.1016/j.jadohealth.2021.10.026
- Finkelhor D, Colburn D, Gewirtz-Meydan A, O'Brien JE, Jones LM, Turner HA, Mitchell KJ (2026). Youth-Produced Images Are the Majority of Child Sexual Abuse Materials: Categories of Youth and Adult Perpetrators From a Victim Based Study. Sexual Abuse. https://doi.org/10.1177/10790632261415819
- Henry N, Beard G (2024). Image-Based Sexual Abuse Perpetration: A Scoping Review. Trauma, Violence, & Abuse. https://doi.org/10.1177/15248380241266137
- Gaffney H, Ttofi MM, Farrington DP (2021). Effectiveness of school-based programs to reduce bullying perpetration and victimization: An updated systematic review and meta-analysis. Campbell Systematic Reviews, 17(2), e1143. https://doi.org/10.1002/cl2.1143
- Polanin JR, Espelage DL, Grotpeter JK, et al. (2022). A Systematic Review and Meta-analysis of Interventions to Decrease Cyberbullying Perpetration and Victimization. Prevention Science, 23(3), 439-454. https://doi.org/10.1007/s11121-021-01259-y
- Touloupis T (2024). School prevention of non-consensual sexting among middle adolescents: Does sexual preoccupation awareness matter? Frontiers in Psychology, 15, 1384620. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2024.1384620
- Parton LE, Rogers MM (2026). An Exploration of Victim Blaming and Bystander Intervention in the Context of Image-Based Sexual Abuse: A Scoping Review. Behavioral Sciences, 16(5), 757. https://doi.org/10.3390/bs16050757
- 法テラス(日本司法支援センター). 法テラス・サポートダイヤル. https://www.houterasu.or.jp/


