AIで将来の仕事がなくなると聞いて、進路に迷う。学生の調査では、AIへの不安より「AIをわかっている度合い」のほうが将来への前向きさと強く結びついていた

目指していた仕事が「AIに置き換わる」と聞いて、今の勉強を続けていいのか分からなくなった。進路を決める時期に、そんな迷いを抱える学生は少なくありません。海外の大学生の調査では、AIへの不安は就職への不安と結びついていました。一方で、将来への前向きさと強く関わっていたのは、不安の大きさより、AIをどれだけ理解し使えるかでした。
3行でわかる
- トルコやヨルダンの大学生の調査では、AIへの不安が高い学生ほど、就職や将来の仕事への不安も高い傾向がありました。中国の大学生の調査では、進路を決めにくい傾向がありました。
- トルコの理学療法・リハビリを学ぶ学生438人の調査では、将来への前向きさと強く関わっていたのは、AIへの不安ではなく、AIを理解し使える度合いでした。
- どれも一時点の調査で、原因と結果はわかっていません。それでも、目指す仕事でAIがどう使われているかを具体的に調べ、少し使ってみることは、迷いを整理する手がかりになります。
01 結論から言うとAIのせいで進路に迷うのは、おかしいこと?
おかしくありません。複数の国の大学生の調査で、AIへの不安は就職や将来の仕事への不安と結びついていました。迷いから抜け出す手がかりは、不安を消すことより、AIについて具体的に知ることにありそうです。
AIが仕事を変えるというニュースは、これから仕事を選ぶ学生ほど身近に感じられます。どの仕事のどの作業がAIの影響を受けやすいかは、AIの影響を受けやすい仕事の記事にまとめています。ここでは、そうしたニュースで進路に迷った学生が、どう立て直せるかを研究から考えます。
学生がどのくらいAIを使っているかは、子どもや学生のAI利用率の記事で整理しています。
02 研究とデータでわかっていることAIへの不安は、学生の進路選びにどう関わる?
AIへの不安が高い学生ほど、就職の不安が高く、進路を決めにくい傾向がありました。一方、AIを理解し使える度合いが高い学生ほど、将来に前向きでした。
Gülerら(2026, BMC Medical Education)[1]
理学療法・リハビリを学ぶ学生に、AIを理解し使える度合い(AIリテラシー)、AIへの不安、将来の仕事への前向きさをたずねました。AIリテラシーが高い学生ほど将来に前向きで、関連の強さは0.396でした。AIへの不安は、前向きさと弱い逆の関連(0.147)にとどまりました。年齢や成績、AIを使う頻度などをそろえて分析すると、前向きさと独立して関わっていたのはAIリテラシーだけでした。
対象: トルコの2都市の大学の学部生438人 / 限界: 一時点のオンライン調査で、AIを学んだから前向きになったのか、前向きな学生がAIを学ぶのかはわかりません。人と接することが中心の仕事を目指す学生での結果です。
Dağら(2026, Scientific Reports)[2]
保健系のさまざまな学科の学生で、AIへの不安が高いほど、就職活動への不安も高い傾向がありました(関連の強さ0.233)。収入などの条件をそろえても、AIへの不安は就職活動の不安と関わっていました。著者は、大学でAIリテラシーを高める教育とキャリア相談を充実させることが、就職の不安を和らげる助けになりうると述べています。
対象: トルコの大学の保健系の学生821人(82.5%が女性) / 限界: 一時点の調査で、関連の強さは中くらい以下です。メッセージアプリで配られたアンケートに答えた学生に限られます。
Duanら(2026, Scientific Reports)[3]
AIへの不安が高い学生ほど、進路の目標がはっきりせず、決める準備も整っていない傾向がありました。その関わりの63.35%は、変化に合わせて進路を考え直す力(キャリア適応力)が低いことを通したものでした。進路を決めることへの自信の高さは、この関わりを和らげていませんでした。
対象: 中国の大学生315人 / 限界: アンケートを統計モデルで分析した研究で、時間を追って変化を確かめたものではありません。
Al-Nasa'hら(2026, Frontiers in Artificial Intelligence)[4]
工学と情報系の学生で、AIへの不安が高いほど、将来の仕事への心配も強い傾向がありました(関連の強さ0.680)。情報系の学生は工学系の学生より、AIへの不安と進路の迷いが高めでした。
対象: ヨルダンの4大学の学部生820人 / 限界: 一時点の調査です。著者は、AIリテラシーの教育やキャリアの助言を勧めていますが、その効果は調べていません。
03 まだわかっていないことAIを学べば、進路の不安は減る?
まだわかっていません。紹介した研究はどれも一時点の調査で、AIを学んだことで不安が減ったり、進路を決めやすくなったりするかを確かめた研究は、今回の調査では見つかりませんでした。
- AIリテラシーと前向きさのどちらが先か。前向きな学生ほどAIを学ぼうとする、という逆の向きも考えられます。
- 日本の学生や、高校生で同じ結果になるか。紹介した研究は、トルコ・中国・ヨルダンの大学生が対象です。
- 大学の授業やキャリア相談で、AIへの不安が実際に和らぐか。著者たちは勧めていますが、効果を試した研究ではありません。
- AIの影響を受けやすい分野ほど、不安が大きいのか。分野による差を調べた研究はまだ少数です。
04 今日からできること進路の迷いから、どう立て直す?
不安を消そうとするより、目指す仕事でAIがどう使われているかを具体的に調べ、自分でも少し使ってみます。そのうえで、進路を一度に決めず「次の一歩」だけを決め、学校の相談窓口も使います。どれもお金はかかりません。
次の工夫は、研究で将来への前向きさと関わっていた「AIを理解し使える度合い」と「変化に合わせて考え直す力」に近づける方向で選びました。工夫そのものの効果を試した研究ではない点に注意してください。
| 迷いのもと | 研究で関わっていたもの | 今日できること |
|---|---|---|
| 仕事がなくなるか不安 | AIへの不安(就職の不安と関連) | 不安と事実を分けて書く |
| AIのことがよくわからない | AIリテラシー(前向きさと関連) | 目指す分野でAIの使われ方を調べ、使ってみる |
| 進路を決めきれない | キャリア適応力(決めやすさと関連) | 一度に決めず、次の一歩だけ決める |
不安と事実を分けて書き出す
紙を2つに分け、左に「心配していること」、右に「調べてわかっていること」を書きます。ニュースの見出しだけで感じた不安と、確かめた事実を分けると、何を調べればよいかが見えてきます。
目安 10分
目指す仕事で、AIがどの作業に使われているかを調べる
「仕事がなくなるか」ではなく、「どの作業にAIが使われ始め、人は何を担っているか」を、業界団体や公的機関の資料、その仕事をしている人の話から集めます。
目安 1つの仕事につき30分
学んでいる分野で、AIを実際に使ってみる
授業の復習やレポートの下調べなど、学校のルールで認められた範囲で、AIに何ができて何を間違えるかを自分で確かめます。研究で前向きさと関わっていたのは、不安の大きさより、AIを理解し使える度合いでした。
目安 週1回・20分
進路を一度に決めず、「次の一歩」だけ決める
「この授業を取る」「この仕事の人に話を聞く」など、1〜2か月でできることを1つ決めます。変化に合わせて考え直す力が低いと、進路を決めにくい傾向がありました。
目安 15分・1〜2か月ごとに見直す
学校の相談窓口で、一緒に考えてもらう
大学のキャリアセンターや、高校の進路指導の先生に、書き出した不安と調べたことを持って相談します。研究の著者たちも、キャリア相談の充実を勧めていました。
目安 予約して1回30〜60分
仕事が変わったあとの立て直しについては、AIで仕事が自動化されたあとの記事も参考になります。
05よくある質問
AIで将来なくなる仕事は、目指さないほうがいい?
この記事で紹介した研究からは、どの仕事を避けるべきかはわかりません。調べられたのは、学生の不安や前向きさとの関わりです。仕事がなくなるかどうかより、その仕事のどの作業にAIが使われ始めているかを具体的に調べると、判断の材料になります。
AIの不安を感じるのは、自分だけ?
自分だけではありません。トルコやヨルダンの大学生の調査でも、AIへの不安は将来の仕事への心配と結びついていました。中国の大学生の調査では、進路の決めにくさと結びついていました。ヨルダンの工学・情報系の学生の調査では、情報系の学生のほうが工学系より不安が高めでした。
AIを勉強すれば、不安はなくなる?
まだわかっていません。AIを理解し使える度合いが高い学生ほど将来に前向きだったのは、一時点の調査での関わりです。AIの勉強をした結果、不安が減ったかを確かめた研究は、今回の調査では見つかりませんでした。
高校生にも当てはまる?
紹介した研究は、すべて大学生を調べたものです。高校生や日本の学生で同じ結果になるかは、まだわかっていません。進路の迷いは、学校の進路指導の先生にも相談できます。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
出典
- Güler MA, Demirdel S, Demirdel E, Güler MB (2026). Artificial intelligence literacy, rather than artificial intelligence anxiety, is associated with career optimism in physiotherapy and rehabilitation students: a cross-sectional study. BMC Medical Education. https://doi.org/10.1186/s12909-026-09899-w
- Dağ E, Nal M, Topuz İ, Kılınç H, Demir Y, Bektaş G (2026). Artificial intelligence perceptions and career anxiety among health sciences students. Scientific Reports. https://doi.org/10.1038/s41598-026-42030-z
- Duan N, Li L, Lin G, Chen H (2026). The impact of AI anxiety on career decisions of college students. Scientific Reports. https://doi.org/10.1038/s41598-026-37648-y
- Al-Nasa'h M, Al-Tarawneh L, Alhwayan O (2026). Artificial intelligence anxiety, digital well-being, and future career concerns among engineering and information technology students in Jordan. Frontiers in Artificial Intelligence. https://doi.org/10.3389/frai.2026.1598741


