偽情報・ディープフェイク

SNSの相手がAIかもしれない。ボットのアカウントは見分けられる?研究では、文章や顔写真の印象ではほぼ当てられなかった

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わかっている度 ★★☆ 中研究6本・公的資料3件を整理
並んだ郵便受け
Photo: Enoch Leung from Canada / CC BY-SA 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

SNSでやりとりしている相手が、本当に人なのか気になることがあります。研究では、文章の自然さや顔写真の印象で見分けると、ほぼ偶然と同じ当たり方でした。見分ける自信がなくても大丈夫です。見るべきなのは印象ではなく、アカウントの記録と、相手が何を求めてくるかです。

3行でわかる

  1. AIが書いた自己紹介を人が見分けられた割合は50〜52%、AIで作った顔写真では48.2%でした。どちらも偶然とほぼ同じです。
  2. 一方で、AIの顔写真を使うアカウントには「最近まとめて作られた」「フォロワーが少ない」「停止されやすい」という記録上の特徴がありました。
  3. 相手が人かボットか決めきれなくても、お金・個人情報・外部への誘導の3つには応じないと決めておくことが、確かな備えになります。

01 結論から言うとSNSのボットやAIのアカウントは、見て見分けられる?

SNSのボットやAIが動かすアカウントは、文章や顔写真の印象だけではほとんど見分けられません。研究で手がかりになっていたのは、作成日やフォロワー数などのアカウントの記録でした。

ボットとは、ソフトウェアで一部または全部が自動で動かされているSNSのアカウントです。多くは宣伝など害の少ない用途ですが、偽情報を広げる、ある意見が多数派のように見せる、といった使われ方もあると研究で報告されています。[3]

総務省の情報通信白書(令和5年版)も、広告収入を目的に作られた偽・誤情報がボットなどで拡散・増幅されていると説明しています。[7]

この記事は「このアカウントは人か、ボットやAIか」という問いに絞ります。動画のディープフェイクの見抜きにくさはBOHANの「本物そっくりの動画を、人は見抜けない」、出どころを調べる手順はデジタル探偵の「ディープフェイク動画を人は見抜けるのか」が詳しく扱っています。

02 研究とデータでわかっていること人はAIの文章や顔写真をどのくらい見抜ける?

人がAIの書いた自己紹介やAIで作った顔写真を見抜けた割合は、どの実験でも50%前後で、偶然とほぼ同じでした。ボットかどうかの判定でも、多くを「人間」と答えていました。

50〜52%AIの自己紹介文と人の自己紹介文を見分けた正答率(米国中心の4,600人、2023年発表)
48.2%AIで作った顔と本物の顔を見分けた正答率(オンラインの作業者315人、2022年発表)
9〜15%英語で活発に投稿するTwitterアカウントのうち、ボットと推定された割合(2017年発表)
52.07%AIの顔写真を使うTwitterアカウントのうち、その後の確認で停止されていた割合(本物の写真は5.01%、2023年のデータ)

Jakeschら(2023)[1]

仕事・民泊のホスト・出会いの3つの場面で、AIが書いた自己紹介と人が書いた自己紹介を見せ、どちらが書いたかを答えてもらいました。正答率は50〜52%でした。正解に報酬を出しても、1問ごとに正誤を伝えても、ほとんど上がりませんでした。

参加者は、家族の話や「私」を使った文章を「人間らしさ」の手がかりにしていましたが、こうした特徴はAIの文章にも同じくらい含まれていました。人間らしく見えるものを選んだAIの文章は65.7%の判断で人が書いたと思われ、本物の人の文章(51.7%)を上回りました。

対象: 6つの実験の4,600人(主な実験は米国在住者) / 限界: 英語の自己紹介文の実験で、SNSの会話やコメントそのものではない。

NightingaleとFarid(2022)[2]

AIで作った顔と本物の顔を1枚ずつ見せる実験で、正答率は48.2%でした。見分けるコツを教え、1問ごとに正誤を伝えた別の実験でも59.0%にとどまりました。顔の信頼度を7段階で評価してもらうと、AIで作った顔の方が本物より7.7%高く評価されていました。

対象: オンラインの作業者315人・219人・223人(3つの実験) / 限界: 2020年ごろの1種類の画像生成AIで作った顔での実験。顔写真の見抜きにくさはBOHANの記事でも紹介している。

Kennyら(2024)[3]

実在したTwitterのアカウント50個(ボットらしいもの25、人らしいもの25)を見せ、ボットか人かを答えてもらいました。見分ける力は控えめで、半々なのに多くを「人間」と答えていました。探索的な分析では、SNSの経験が多いと答えた人ほど見分ける力が低い傾向がありました。

対象: 米国の113人 / 限界: 人数が少なく、正解は2つのボット判定ソフトの推定で決めている。

Varolら(2017)[4]

英語で活発に投稿するTwitterのアカウント数百万件を分析し、ボットの割合を9〜15%と推定しました。著者らは、見つけにくい高度なボットを人と誤判定している可能性があり、15%も控えめな数字だとしています。

対象: 英語で投稿する活発なアカウント / 限界: 生成AIが広まる前のデータで、日本語のアカウントは含まない。

Rickerら(2024)[5]

2023年3月に集めたTwitterのプロフィール写真約1,500万枚を調べ、0.052%(7,723アカウント)がAIで作られた顔だと推定しました。こうしたアカウントは、フォロワー数の中央値が60(本物の写真のアカウントは165)と少なく、半数以上(52.38%)が調査と同じ2023年に作られていました(本物の写真のアカウントは6.22%)。

数日間にまとめて作られた集団もあり、手作業で確認した1,000アカウントの話題は、政治(36.1%)と暗号資産を中心としたお金の話(33.1%)が多くを占めていました。

対象: 英語に限らないTwitterのアカウント / 限界: 1種類の画像生成AIの顔だけを探しており、ほかの方法で作った写真は数えていない。

YangとMenczer(2024)[6]

対話型AIで投稿を作っていたとみられるTwitterのボット1,140アカウントの集団を調べました。他人の自撮り写真を盗んで本物の人のように見せ、互いにフォロー・返信・再投稿し合い、暗号資産の話題や怪しいサイトを広めていました。既存のボット判定ツールも、AIの文章を判定するツールも、このボットと人をうまく見分けられませんでした。見つかったきっかけは、AIの断り文句をそのまま誤って投稿していたことでした。

対象: 2022年10月〜2023年4月の投稿から見つかった、Twitterの1つのボット集団 / 限界: うっかり正体を出したボットだけを見つけた事例で、全体の数はわからない。

研究を並べると、印象の手がかりと記録の手がかりで結果が分かれていました。

手がかり研究でどうだったか
文章が自然か、家族の話や「私」を使うか当てにならない。AIの文章にも同じくらい含まれていた[1]
顔写真が自然か、感じがよいか当てにならない。AIの顔の方が少し信頼されていた[2]
SNSに慣れている自分の勘当てにならない。経験が多いと答えた人ほど見分ける力が低い傾向があった[3]
アカウントの作成日、フォロワー数手がかりになる。AIの顔写真のアカウントは新しく、フォロワーが少なかった[5]
似たアカウント同士で互いに反応し合っている手がかりになる。ボットの集団は互いにフォロー・返信し合っていた[6]

03 まだわかっていないこと日本語のSNSでは、ボットはどのくらいいる?

日本語のSNSで、ボットやAIが動かすアカウントがどのくらいあるのかを示す研究は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。最新の生成AIで見分けがどこまで難しくなるかも、まだはっきりしていません。

  • 紹介した割合(9〜15%、0.052%)は、どれも英語中心の、生成AIが広まる前後のTwitterの数字です。日本語や、ほかのSNSにそのまま当てはまるかはわかりません。
  • 実験の多くは、文章1つや写真1枚を見て答えるものです。何日もやりとりを続けた場合に見分けやすくなるのかは、調べられていません。

04 今日からできること相手がボットかもしれないとき、どうすればいい?

人かボットかを当てようとするより、アカウントの記録を見ることと、お金・個人情報・外部への誘導に応じないことを決めておく方が確かです。どれもお金はかからず、数分でできます。

1

「印象で判断しない」と決めておく

文章が自然、写真の感じがよい、話が合う。こうした印象は、研究では見分ける根拠になっていませんでした。

目安 考え方の切り替えだけ

2

アカウントの記録を3つ見る

プロフィールの作成時期、フォロワーとフォローの数、過去の投稿の中身を見ます。作られたばかりで、似た投稿や似たアカウントとのやりとりばかりなら慎重に扱います。あくまで目安です。

目安 1アカウント2〜3分

3

お金・個人情報・外部への誘導には応じない

投資やもうけ話、住所や電話番号、別のアプリやサイトへの移動を求められたら、相手が人でもボットでも応じません。研究で見つかったボットの集団は、お金の話や怪しいサイトの宣伝に使われていました。

目安 その場で断るだけ

4

気になる投稿は、広める前に止まる

同じ主張が多くのアカウントから流れてきても、多くの人の声とは限りません。共有する前に、別の発信元でも同じ情報が出ているかを確かめます。

目安 共有の前に1分

選挙の時期の備えは選挙のディープフェイクに惑わされないためににまとめています。SNSで知り合った相手からのお金の話は、BOHANのロマンス詐欺の記事が手口を詳しく扱っています。AIの文章を判定するツールの限界は、AI判定ツールで「AIが書いた」と言われたときでも紹介しています。

困ったときの相談先
警察相談専用電話 #9110: お金をだまし取られた、脅されているときの相談に。東京都内では警視庁総合相談センターにつながります。被害に遭った直後や身の危険があるときは110番。
消費者ホットライン 188: SNSで勧められた投資・副業・通販の契約トラブルの相談に。近くの消費生活センターなどを案内してもらえます。

05よくある質問

文章がとても自然なら、人間が書いたと考えてよいですか?

いいえ。米国中心の4,600人の実験では、AIの書いた自己紹介と人の書いた自己紹介を見分けられた割合は50〜52%で、ほぼ偶然と同じでした。家族の話や「私」を使った文章を人間らしいと感じる手がかりは、当てになっていませんでした。

プロフィールの顔写真が自然なら本物の人ですか?

そうとは限りません。AIで作った顔と本物の顔を見分ける実験では正答率が48.2%で、作られた顔の方が少し信頼できると評価されていました。顔写真の自然さは判断の根拠になりません。

ボットかどうかを判定するツールの結果は信じていいですか?

結果は参考程度にとどめるのが安全です。対話型AIで投稿を作っていたとみられるボット集団の研究では、既存のボット判定ツールも、AIの文章を判定するツールも、そのアカウントと人をうまく見分けられませんでした。

出典

  1. Jakesch M, Hancock JT, Naaman M (2023). Human heuristics for AI-generated language are flawed. Proceedings of the National Academy of Sciences, 120(11), e2208839120. https://doi.org/10.1073/pnas.2208839120
  2. Nightingale SJ, Farid H (2022). AI-synthesized faces are indistinguishable from real faces and more trustworthy. Proceedings of the National Academy of Sciences, 119(8), e2120481119. https://doi.org/10.1073/pnas.2120481119
  3. Kenny R, Fischhoff B, Davis A, Carley KM, Canfield C (2024). Duped by Bots: Why Some are Better than Others at Detecting Fake Social Media Personas. Human Factors, 66(1). https://doi.org/10.1177/00187208211072642
  4. Varol O, Ferrara E, Davis CA, Menczer F, Flammini A (2017). Online Human-Bot Interactions: Detection, Estimation, and Characterization. Proceedings of the International AAAI Conference on Web and Social Media (ICWSM). https://arxiv.org/abs/1703.03107
  5. Ricker J, Assenmacher D, Holz T, Fischer A, Quiring E (2024). AI-Generated Faces in the Real World: A Large-Scale Case Study of Twitter Profile Images. Proceedings of the 27th International Symposium on Research in Attacks, Intrusions and Defenses (RAID). https://arxiv.org/abs/2404.14244
  6. Yang KC, Menczer F (2024). Anatomy of an AI-powered malicious social botnet. Journal of Quantitative Description: Digital Media, 4. https://doi.org/10.51685/jqd.2024.icwsm.7
  7. 総務省 (2023). 令和5年版 情報通信白書「偽・誤情報の拡散」. https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r05/html/nd123140.html
  8. 警視庁「相談ホットラインのご案内」. https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/sodan/madoguchi/sogo.html
  9. 消費者庁「消費者ホットライン」. https://www.caa.go.jp/policies/policy/local_cooperation/local_consumer_administration/hotline/