仕事・キャリア

AIの面接や書類選考で落とされたかもしれない。研究では評価に偏りと精度の課題があり、応募者は利用目的の確認と開示請求ができる

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わかっている度 ★★☆ 中研究3本・公的資料5件を整理
夕暮れの窓辺に並んだ待合室の椅子
Photo: Casey Hugelfink from Bergheim, Germany / CC BY 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

応募した会社から、録画面接やWebの適性検査のあとに短い不採用の通知だけが届く。「AIに落とされたのでは」と気になるのは自然なことです。研究では、採用に使うAIの評価には精度と偏りの課題が見つかっています。一方で応募者には、自分の情報の使われ方を確かめる手段があります。

3行でわかる

  1. 履歴書の選別をまねた研究では、名前を入れ替えただけで、白人に多い名前の履歴書が85.1%の比較で優先されました。録画面接から性格を推定するAIは、学び方しだいで信頼できる度合いが大きく変わりました。
  2. 応募者の立場の実験では、AIだけが決める選考は、人が決める選考より不公平だと受け止められていました。合格でも不合格でも、この傾向は同じでした。
  3. 日本の法律は、応募者の個人情報を目的を明らかにして集め、その範囲で使うよう求めています。応募者は利用目的を確かめ、保有個人データの開示を請求できます。

01 結論から言うと採用でAIに落とされることはある?

書類の選別や録画面接の分析にAIを使う方法は研究されており、使われる場面はあります。ただ、あなたの不採用にAIがどう関わったかは、外からはわかりません。わかるのは「AIの評価には限界がある」ことと「確かめる手段がある」ことです。

採用に使われるAIには、主に2つの型があります。1つは、応募書類を読み込んで求人との合い具合を点数にし、候補をしぼる型です。もう1つは、録画面接の映像から話し方や表情などを読み取り、性格や適性を推定する型です。

EUのAI法は、採用や選考に使うAIを「高リスク」に分類しています。人の仕事の将来や暮らしに大きな影響を与えうるため、というのが理由です。[4] 不採用の結果だけで、あなたの力が足りなかったと決めつける必要はありません。

AIで仕事そのものがどう変わるかは、AIに仕事を奪われるのは本当?で整理しています。

02 研究とデータでわかっていることAIの書類選考や面接評価は、正確で公平?

研究では、AIの評価は条件しだいで偏り、精度にもばらつきがありました。また応募者は、AIだけが決める選考を、人が決める選考より不公平と感じやすいことがわかっています。

85.1%履歴書の選別をまねた実験で、白人に多い名前の履歴書が有意に優先された比較の割合(米国の名前、2024年発表)
11.1%同じ実験で、女性に多い名前の履歴書が有意に優先された比較の割合
500件超実験に使われた公開の履歴書の数。9つの職種の求人500件と照らし合わせた
4つの実験応募者の立場で選考の公平さを評価した実験の数(米国のオンライン調査、合計1,073人、2023年発表)

WilsonとCaliskan(2024)[6]

AIの言語モデルで履歴書を選ぶ場面をまねて、偏りを調べました。中身が同じ履歴書の名前だけを入れ替え、3つのモデルで、300万回を超える比較をしています。

白人に多い名前の履歴書が優先された比較は85.1%、女性に多い名前が優先されたのは11.1%でした。黒人男性に多い名前の履歴書は、比べ方によっては最大100%の比較で不利になっていました。

対象: 公開の履歴書500件超・9職種の求人500件、米国で人種や性別と結びつきやすい名前 / 限界: 実際の企業の選考ではなく、研究者が作った模擬の仕組み。日本語の履歴書や日本の名前での結果ではない。

Hickmanら(2022)[7]

録画面接の言葉・声・しぐさから、性格の5つの特性を推定するAIを作り、信頼できるかを調べました。面接官が評価した性格を手本に学んだAIは、ほかの集団で試すと、信頼性の結果はまちまちでしたが、妥当性を示す結果は一貫していました。

一方、本人が答えた性格検査を手本に学んだAIには、信頼性や妥当性の根拠がほとんど見られませんでした。同じ「AI面接」でも、何を手本に学んだかで結果が大きく変わるということです。

対象: 3つの集団の模擬の録画面接(合計1,073人)と、再テスト用の99人 / 限界: 本番の採用面接ではなく、研究のために行った模擬の面接での結果。

Lavanchyら(2023)[8]

米国のオンライン調査の参加者に、架空の求人に応募したつもりになってもらう4つの実験をしました。書類選考をアルゴリズムだけが行う場合、人だけ、または人がアルゴリズムを補助に使う場合より、不公平だと評価されました。

選考に通った場合も落ちた場合も、この傾向は変わりませんでした。著者らは「アルゴリズムには自分の個性が見えない」という思いが、理由の一つだとしています。

対象: 4つの実験の合計1,073人(米国のオンライン調査) / 限界: 架空の場面で、本当の応募ではない。参加者は米国の人口より女性・白人・高学歴にかたよっていた、と著者ら自身が書いている。

国や地域のルールも並べると、今の考え方が見えてきます。表は、この記事で確認した公的資料の要点です。

資料採用とAIに関わる要点
職業安定法 第5条の5[1]求人者は、業務の目的に必要な範囲で、目的を明らかにして応募者の個人情報を集め、その目的の範囲で保管・使用する(本人の同意など正当な事由がある場合を除く)
厚生労働省「公正な採用選考の基本」[2]選考は応募者の適性・能力にもとづく基準で行う。本籍・出生地、宗教、支持政党など、差別の原因となるおそれのある情報の収集は原則として認められない
個人情報保護委員会のガイドライン[3]本人から得た情報から行動や関心を分析する場合は、どんな取扱いかを本人が予測できる程度に、利用目的を特定する
EUのAI法[4]選考に使うAIを高リスクに分類。使う側は、対象となる人にAIの利用を知らせる。職場での感情の推定は、医療・安全の目的を除き禁止。AIの出力をもとにした決定で不利な影響を受けた人は、条件つきでAIの役割の説明を求められる

個人情報保護委員会のガイドラインが挙げる例は、広告や信用スコアです。採用だけに向けた説明ではありません。[3] EUのAI法は、感情を読み取るAIについて「科学的な根拠に深刻な懸念がある」とも書いています。[4] EUの法律は日本の企業の選考にそのまま当てはまるものではなく、考え方の一例として紹介しています。

03 まだわかっていないこと日本の採用AIは、どこまで調べられている?

日本語の応募書類や日本の面接で、AIの評価がどれだけ正確で公平かを確かめた研究は見つかりませんでした。今回の研究は、どれも米国の模擬の場面です。

  • 日本の企業がどのくらい、どの段階でAIを選考に使っているかを示す公的な統計は、今回の調査では見つかりませんでした。
  • 模擬の実験で見られた偏りが、実際に使われている選考の仕組みでも同じように起きるかはわかっていません。仕組みは会社ごとに違い、外からは確かめにくいためです。
  • 応募者にAIの利用を知らせたり理由を説明したりすると、不公平感がやわらぐのかは、研究の結果がそろっていません。

04 今日からできることAIで選考されたか、どう確かめる?

応募先の利用目的を読み、わからなければ選考の方法を質問します。不採用のあとは、保有個人データの開示を請求する方法があります。どれも無料か少ない費用で、1回10〜30分ほどで始められます。

1

応募前に、個人情報の利用目的を読む

応募ページや採用のプライバシーポリシーで、書類や録画面接のデータを何に使うかを確かめます。分析や自動処理に触れているかが目安です。法律は、目的を明らかにして集めることを求めています。[1]

目安 1社10分

2

選考の方法を、短く質問しておく

「書類選考や録画面接の評価にAIを使っていますか。データはいつまで保管しますか」と、採用の窓口にメールで聞きます。答えが得られなくても、記録として残ります。

目安 1通5分

3

不採用のあと、開示請求を考える

本人は、会社が持つ自分の個人データの開示を、データでの提供など希望する方法で請求できます。業務に著しい支障がある場合などの例外があり、試験の採点情報のすべては出ない例が示されています。手数料がかかることもあります。[3]

目安 申請書の作成30分

4

不採用を、自分の価値と結びつけない

研究では、AIの評価は名前や学び方の条件で変わりました。[6][7] 1社の結果で自分を否定せず、次の応募先の準備に気持ちを向けます。

目安 1日1回、結果と気持ちを分けて書く

面接でAIなしだと言葉が出ない不安がある人は、試験や面接の前の練習のしかたも参考にしてください。顔のデータの開示請求については、顔認証やAIカメラの記事でも整理しています。

困ったときの相談先
個人情報保護法相談ダイヤル(03-6457-9849、平日9:30〜17:30): 開示請求や個人情報の扱いについて相談できます。[5]
法テラス(0570-078374): 法律の相談先がわからないときの案内窓口です。

05よくある質問

AIで不採用になったか、会社に聞いてもいいですか?

質問すること自体は問題ありません。職業安定法は、求人者が目的を明らかにして応募者の個人情報を集め、その範囲で使うよう定めています。答えるかどうかや答え方は会社の判断です。個別の判断が必要なときは、相談窓口を使えます。

不採用の理由を開示請求で知ることはできますか?

開示請求で求められるのは、会社が持つあなたの個人データです。不採用の理由の説明が含まれるとは限りません。個人情報保護委員会のガイドラインは、業務に著しい支障がある場合などに開示しない例外を示しています。

録画面接のAIは、表情で合否を決めているのですか?

仕組みは会社や製品ごとに違い、外からは確かめられません。研究では、録画面接から性格を推定するAIの信頼性は、何を手本に学んだかで大きく変わりました。EUのAI法は、職場で感情を推定するAIを、医療・安全の目的を除き禁止しています。

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出典

  1. e-Gov法令検索. 職業安定法(昭和22年法律第141号)第5条の5(求職者等の個人情報の取扱い). https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000141
  2. 厚生労働省. 公正な採用選考の基本. https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/topics/saiyo/saiyo1.htm
  3. 個人情報保護委員会. 個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)(3-1-1 利用目的の特定、3-8-2 保有個人データの開示). https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/
  4. European Union (2024). Regulation (EU) 2024/1689 (Artificial Intelligence Act): Article 5(1)(f), Article 26(11), Article 86, Annex III point 4, Recitals 44 and 57. Official Journal of the European Union. https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2024/1689/oj
  5. 個人情報保護委員会. 個人情報保護法相談ダイヤル. https://www.ppc.go.jp/personalinfo/pipldial/
  6. Wilson K, Caliskan A (2024). Gender, Race, and Intersectional Bias in Resume Screening via Language Model Retrieval. Proceedings of the AAAI/ACM Conference on AI, Ethics, and Society, 7(1), 1578–1590. https://doi.org/10.1609/aies.v7i1.31748
  7. Hickman L, Bosch N, Ng V, Saef R, Tay L, Woo SE (2022). Automated video interview personality assessments: Reliability, validity, and generalizability investigations. Journal of Applied Psychology, 107(8), 1323–1351. https://doi.org/10.1037/apl0000695
  8. Lavanchy M, Reichert P, Narayanan J, Savani K (2023). Applicants' Fairness Perceptions of Algorithm-Driven Hiring Procedures. Journal of Business Ethics, 188, 125–150. https://doi.org/10.1007/s10551-022-05320-w