考える力・集中

AIに頼りすぎて、文章が書けなくならないか心配。研究と国の指針からわかった、書く力を残す使い方

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わかっている度 ★★☆ 中研究5本・公的指針1件を整理
ノートの上の鉛筆と削りくず
Photo: Angelina Litvin linalitvina / CC0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

メールもレポートもAIに下書きを頼むようになって、ふと「AIがなかったら、もう書けないかも」と不安になる。そう感じるのは自然なことです。研究では、AIの助けで文章はその場で良くなる一方、AIを外すと質が下がる例がありました。分かれ目は、AIに「書かせる」か、自分が書くのを「手伝わせる」かにありそうです。

3行でわかる

  1. 大学生1,625人の実験では、AIの指摘を外したグループの文章は、書き直しが必要と判定された割合が31%で、指摘を続けたグループ(14%)の2倍を超えました。
  2. 好きなだけ使えるAIで学んだ学生は、45日後の抜き打ちテストで正答率が低く、考えさせる形のAIの家庭教師では学びが増えていました。
  3. 文部科学省の指針は、自分で書いた文章をAIに直させ、それを「たたき台」に自分で推敲する使い方を例に挙げています。

01 結論から言うとAIに文章を頼ると、書く力は落ちる?

使い方しだいです。AIに書かせて任せきりにすると、AIを外したときに質が下がる例がありました。自分で書いてからAIに指摘や見直しを頼む使い方なら、書く力を残しやすいと考えられます。

AIは文章をその場で良くしてくれます。仕事の文章を書く実験では、AIを使うと作業時間が40%短くなり、質も18%上がりました。[4]

問題は、その「良くなった分」が自分の力として残るかどうかです。AIがあるときの出来を見るだけでは、自分の力が伸びたかどうかはわかりません。

「考える力」全体への影響はChatGPTを使うと考える力が落ちる?、AIで書いた文章を自分の言葉と思えない悩みはAIに書かせた文章が「自分の言葉じゃない」気がするで取り上げています。この記事は、日々の使い方をどう決めるかに絞ります。

02 研究とデータでわかっていることAIを外したとき、何が起きていた?

AIの助けを外すと、文章の質が下がる研究がありました。好きなだけAIを使って学んだ人は、あとで覚えている量も少なめでした。一方、すぐ答えを出さず考えさせる設計のAIでは、学びが増えていました。

31%AIの指摘を外したグループで、書き直しが必要と判定されたコメントの割合。指摘を続けたグループは14%(大学生1,625人・10科目、2020年)
57.5%ChatGPTを使って学んだ学生の、45日後の抜き打ちテストの正答率。使わなかった学生は68.5%(大学生120人の実験)
2倍以上考えさせる設計のAIの家庭教師で学んだ学生の伸び(中央値)。教室の授業と比べて(物理の授業、194人)
40%ChatGPTを使ったときに短くなった、仕事の文章を書く時間(大卒の専門職453人の実験)

Darvishiら(2024)[1]

大学の10科目で、学生が互いの課題にコメント(レビュー)を書く場面を調べた実験です。最初の4週間は全員に、AIが「コメントが短い・ありきたり」と指摘して書き直しを促しました。次の4週間、AIの指摘を外したグループでは、書き直しが必要と判定されたコメントの割合が31%で、指摘を続けたグループの14%を大きく上回りました。コメントの長さも、平均で約17%短くなっていました。

AIの代わりに、自分で確かめるチェックリスト(評価の基準に沿っているか、具体的か、改善案があるか、前向きな言葉か)を渡したグループは26%で、AIなしよりは低くなりました。著者らは、学生はAIの助けから学ぶより、頼る傾向があったとまとめています。

対象: 学部生1,625人(オーストラリアの研究チーム、2020年) / 限界: 使われたのは文章を生成するAIではなく、決まったルールなどで指摘する仕組み。期間は8週間で、長く続く影響はわからない。

Barcauí(2025)[2]

AIについて学ぶ大学生120人を、ChatGPTを学習の助けに使うグループと、AIを使わず従来の方法で学ぶグループに分けました。45日後の抜き打ちテストの正答率は、ChatGPTのグループが57.5%、使わなかったグループが68.5%でした。

対象: 大学生120人の実験 / 限界: 書く力ではなく、知識が残るかを測った研究。ChatGPTの使い方に制限はなかった(要旨で確認できた範囲)。

Kestinら(2025)[3]

米ハーバード大学の物理の授業で、学生自身が手を動かすよう促し、問題を1段ずつ進めるように設計したAIの家庭教師と、教室の授業を比べました。AIで学んだ学生の伸び(中央値)は、教室の学生の2倍を超えていました。AIで学んだ時間の中央値は49分でした。

著者らは、ふつうのAIのチャットは「役に立つ」ように作られていて「学ばせる」ようには作られていないため、そのまま使うと考えずに課題を終えられてしまう、と書いています。

対象: 194人 / 限界: 書く力ではなく物理の理解を、授業の直後に測った研究。正確な解き方をあらかじめAIに渡すなど、作り込んだ設計で、一般のAIをそのまま使った結果ではない。

Bauerら(2026)[5]

ファッションデザインを学ぶ大学1年生が、論文の序文を「AIなし→ChatGPTあり→再びAIなし」の順に3回書いた実験です。ChatGPTを使ったときだけでなく、その後AIなしで書いたときも文章の質が上がっていました。

対象: 大学1年生(授業内の演習) / 限界: 要旨で確認できた範囲。3回目は使った直後の授業内の演習で、時間がたったあとの力はわからない。

AIを使ったあとの力が下がった研究と、上がった研究があります。違いを生む条件はまだはっきりしません。ただ、AIに頼りきりで学ぶと、AIを外したときや時間がたったときの成績が下がる結果は、2つの研究で共通していました。[1][2]

03 まだわかっていないことどんな頼り方なら書く力は落ちない?

「先に自分で書く」と「先にAIに書かせる」を直接比べ、あとでAIなしで書く力を測った査読つきの研究は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。下の使い方は、近い研究と国の指針から考えたものです。

  • 紹介した研究は、8週間・45日といった期間です。何年も使い続けたときの影響はわかっていません。
  • 研究の多くは学生が対象です。日本語で働く大人の書く力を調べた研究は見つかりませんでした。
  • AIを使ったあとに書く力が上がった研究もあり、何が違いを分けたかは、まだ説明されていません。

04 今日からできること書く力を残すには、AIをどう使えばいい?

最初の下書きは自分で書き、AIには「書いて」ではなく「問題点を指摘して」と頼みます。直すのは自分の手で行い、ときどきAIなしで書いて、自分の力を確かめます。お金はかかりません。

1

最初の下書きは自分で書く

短くても下手でもかまいません。言いたいことを先に自分の言葉で出します。文部科学省の指針も、自分で作った文章をAIに直させ、それを「たたき台」にする使い方を例に挙げています。[6]

目安 1本につき最初の10分

2

AIには「直して」でなく「指摘して」と頼む

「わかりにくい所を3つ挙げて。書き直した文は出さないで」のように頼みます。答えを出さずに考えさせる設計のAIで学びが増えた研究に近い使い方です。[3]

目安 1回3分

3

直すのは自分の手で行う

AIの書き直し案を使う場合も、そのまま貼らずに自分で何度か推敲します。指針は、推敲した過程と結果を提出する使い方を、利活用が考えられる例にしています。[6]

目安 1本につき5〜10分

4

自分用のチェックリストを1枚作る

「言いたいことが1文で言えるか」「具体例があるか」「読み手が次に何をすればよいか書いたか」など3〜4項目にします。AIを外したあと、チェックリストのグループは何もないグループより質の低下が小さくなりました。[1]

目安 作るのに10分、使うのは1回1分

5

ときどき、AIなしで書いてみる

週に1本など、短いメールや日記をAIなしで書き、書きにくさを確かめます。AIを外したときの力は、AIがあるときの出来とは別に確かめないとわからないためです。[1][2]

目安 週1回・15分

何でもAIに任せない必要はありません。定型の連絡など、書く力を伸ばしたいわけではない文章は任せ、自分の力を残したい文章だけ上の手順にする、と分けるのも一つの方法です。

学校の課題でAIをどこまで使えるかはレポートや宿題にAIを使ったら不正?、仕事でAIが作った文章を出す前の確かめ方は仕事でAIに作らせた文章や資料、そのまま出して大丈夫?にまとめています。長い文章をAIの要約で済ませてしまう悩みはAIの要約だけで済ませてしまうで扱っています。

05よくある質問

AIに文章を書いてもらうと、自分で書けなくなりますか?

任せきりにすると、AIを外したときに質が下がる例がありました。大学生1,625人の実験では、AIの指摘を外したグループで、書き直しが必要と判定されたコメントの割合が31%と、指摘を続けたグループの14%を大きく上回りました。最初の下書きを自分で書き、AIには指摘を頼む使い方なら、自分の力を残しやすいと考えられます。

AIに文章を直してもらうのは、使ってもいい使い方ですか?

文部科学省の指針は、自分で作った文章をAIに修正させたものを「たたき台」にし、自分で何度も推敲する使い方を、利活用が考えられる例に挙げています。一方、AIが作ったものをほぼそのまま自分の成果物として提出するのは、不適切な例とされています。

どのくらいの頻度でAIなしで書けばいいですか?

何回が適切かを調べた研究は見つかりませんでした。目安として週に1本ほど、短い文章をAIなしで書き、書きにくくなっていないかを確かめる方法があります。AIを外したときの力は、AIがあるときの出来とは別に確かめないとわからないためです。

出典

  1. Darvishi A, Khosravi H, Sadiq S, Gašević D, Siemens G (2024). Impact of AI assistance on student agency. Computers & Education, 210, 104967. https://doi.org/10.1016/j.compedu.2023.104967
  2. Barcauí A (2025). ChatGPT as a cognitive crutch: Evidence from a randomized controlled trial on knowledge retention. Social Sciences & Humanities Open, 12, 102287. https://doi.org/10.1016/j.ssaho.2025.102287
  3. Kestin G, Miller K, Klales A, Milbourne T, Ponti G (2025). AI tutoring outperforms in-class active learning: an RCT introducing a novel research-based design in an authentic educational setting. Scientific Reports, 15, 17458. https://doi.org/10.1038/s41598-025-97652-6
  4. Noy S, Zhang W (2023). Experimental evidence on the productivity effects of generative artificial intelligence. Science, 381(6654), 187–192. https://doi.org/10.1126/science.adh2586
  5. Bauer NF, Fütterer T, Brucker B, Gerjets PH (2026). Leveraging ChatGPT in academic writing: ChatGPT enhances students' writing quality, writing experience, and ownership. Computers and Education Open, 100351. https://doi.org/10.1016/j.caeo.2026.100351
  6. 文部科学省(2024年12月26日). 初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0). https://www.mext.go.jp/content/20241226-mxt_shuukyo02-000030823_001.pdf