AIの文章の候補を使っていると、自分の意見まで変わる?研究では偏った候補で考えが寄り、注意書きでは防げなかった。先に自分の考えを書いておく

意見文や感想、SNSの投稿を書くとき、AIが続きの文を提案してくれる。便利な一方で、「書き終えたら、最初に思っていたことと少し違う」と感じたことはありませんか。2,582人が参加した実験では、一方に偏ったAIの候補を見ながら書いた人の意見が、AIの側に寄っていました。しかも多くの人は、そのことに気づいていませんでした。この記事では、研究でわかっていることと、意見を書く前に決めておける使い方を整理します。
3行でわかる
- 2,582人の実験では、偏ったAIの候補を見ながら社会問題の意見文を書いた人は、書いたあとの意見がAIの立場に寄っていました。5段階の尺度で0.44ポイントの差です。
- 候補を「偏っていない」と感じていた人が多く、偏りに気づけたのは14〜19%でした。書く前に偏りの注意書きを見せても、意見の寄り方ははっきりとは減りませんでした。
- 気をつけるだけでは防ぎにくいので、意見を書くときは先に自分の考えを1〜3行書き、AIは書き終えてからの言い回しの確認に回す、という順番を決めておくのが一つの手です。
01 結論から言うとAIの書く手伝いで、自分の意見は変わるの?
変わりうることが、実験で確かめられています。偏った候補を見ながら書くと、意見がAIの側に寄りました。変化は大きくはありませんが、本人が気づきにくく、注意書きでも防げなかった点が重要です。
文章を書くAIには、入力の途中で続きの文を提案する機能があります。いわゆる「候補」や「オートコンプリート」です。候補は書く手間を減らしてくれますが、どの言葉を選ぶかには、AIの考え方の傾向が入りえます。
ここで紹介する研究は、AIを使わないように勧めるものではありません。意見を書くときの「使う順番」を決めておけば、便利さを残したまま、自分の考えを守りやすくなるかもしれない、という話です。
AIでアイデアを出すと案が似通う問題はAIでアイデアを出すと、みんな似た案になる?で、書く力を残す使い方はAIに頼りすぎて、文章が書けなくならないか心配で整理しています。
02 研究とデータでわかっていること偏った候補で、意見はどのくらい変わった?
意見文を書いたあとの賛否が、5段階の尺度でAIの立場に0.44ポイント寄りました。数週間前の本人の意見と比べても寄っており、同じ内容を一覧で読んだだけの人より変化が大きくなっていました。
Williams-Ceciら / Science Advances(2026)[1]
参加者に、学校の標準テストの是非(実験1)や死刑の廃止、遺伝子組み換え作物(実験2)などの社会問題について、短い意見文を書いてもらいました。一部の人には、あらかじめ一方の立場に寄せたAIが続きの文を提案しました。実験1(1,485人)では、候補を使った人の書いたあとの意見が、候補なしの人よりAIの立場に0.44ポイント寄りました。この差には、候補を1つも採用しなかった人も含まれます。同じ主張を一覧の文章で見せただけの人より、AIの候補で書いた人のほうが寄り方は大きくなっていました。
実験2(1,097人)では、数週間前に聞いた本人の意見と比べました。候補を使った人は平均0.37ポイントAIの側に寄り、候補なしの人に有意な変化はありませんでした。
書く前に「AIの候補はあなたと違う意見を支持しているかもしれない」と注意した人でも0.27ポイント寄り、書いたあとに伝えた人でも同じように寄っていました。注意書きは、寄り方をはっきり減らしませんでした。
対象: オンラインの調査サイトで集めた成人。題材は米国で賛否の分かれる社会問題 / 限界: 候補は研究者がわざと偏らせたもので、ふだんの製品の候補より長い。効果は書いた直後に測ったもので、どのくらい続くかはわかっていない。
Baiら / Nature Communications(2025)[2]
3つの実験(合計4,829人)で、AIが書いた説得の文章を読んだ人は、中立の文章を読んだ人より、政策への賛否が有意に大きく変わりました。AIの文章の説得力は、一般の人が書いた文章と同じくらいでした。
対象: 米国のオンライン調査サイトで集めた成人 / 限界: まとまった説得の文章を読ませた実験で、書く手伝いの候補とは状況が違う。
では、どうすれば影響を受けにくくなるのか。意見文の場面で確かめた研究は、今回は見つかりませんでした。近い手がかりになるのが、判断の順番を変える実験です。
Kokjeら / Cognitive Research: Principles and Implications(2026)[3]
2枚の顔写真が同じ人かを見分ける課題で、AIの助言を出すタイミングを変えました。先に自分だけで判断し、AIと答えが違ったときだけ助言を見る形では、AIの助言に従う割合が下がり、間違った助言を退けるときの自信も高くなりました。ただし、正しい助言まで退けやすくなり、全体の正確さは助言を同時に見る形と差がありませんでした。
対象: ドイツに住む成人、各実験77〜86人 / 限界: 顔写真の見分けの課題で、意見を書く場面での効果は調べていない。
03 まだわかっていないことふだん使うAIの候補でも、同じことが起きる?
わかっていません。実験の候補は研究者がわざと偏らせたもので、ふだんのサービスの候補がどのくらい偏っているか、意見の変化がどのくらい続くかは、まだ調べられていません。
- 実験では、AIの候補を研究者が一方の立場に寄せていました。ふだん使うサービスの候補に、同じくらいの偏りがあるかはわかりません。
- 意見の変化は、書いた直後に測ったものです。何週間も続くのか、くり返し使うと積み重なるのかは、研究者自身も今後の課題としています。
- 実験は英語の文章で、米国で賛否の分かれる題材を使っていました。日本語の文章や日本の社会問題で同じ結果になるかは確かめられていません。
- 「先に自分の考えを書く」ことで影響が減るかは、意見を書く場面ではまだ試されていません。下の04は、近い研究からの手がかりです。
04 今日からできること意見を書く前に、何を決めておけばいい?
意見を書くときは、AIを開く前に自分の考えを1〜3行書いておき、AIは書き終えてからの言い回しの確認に回します。書き終えたら最初のメモと見比べ、変わった点に自分で納得できるか確かめます。
「意見を書く文章」かどうかを先に見分ける
事務的な連絡や手順の説明と違い、賛否や評価を書く文章(意見文、レビュー、感想、SNSの投稿など)は、候補の影響を受けやすい場面です。こうした文章のときだけ、下の順番に切り替えます。
目安 書き始める前に10秒
AIを開く前に、自分の考えを1〜3行メモする
「賛成か反対か」「いちばんの理由は何か」を、短くメモに残します。先に自分で判断してからAIを見ると、違う助言に流されにくかった実験があります[3]。
目安 1〜2分
中身を書き終えてから、AIを言い回しの確認に使う
主張と理由は自分で書き切り、そのあとでAIに誤字や読みやすさを見てもらいます。書いている途中で候補を見続けると、採用しなくても意見が寄った結果があるためです[1]。
目安 書き終えたあとに5分
最初のメモと見比べる
書き上げた文章と2のメモを並べ、主張や理由が変わっていないか確かめます。変わっていたら、それが自分で納得した理由によるものか、候補に引っぱられただけかを考えます。考えが変わること自体は悪いことではありません。
目安 2〜3分
注意書きだけでは防げなかったという結果は、「気をつけていれば大丈夫」とは限らないことを示しています。だからこそ、気持ちではなく順番で守るのが現実的です。AIと意見が食い違うと自分が間違っている気がする、という悩みについては、姉妹メディアのAIと意見が違うと、自分が間違っている気がするが参考になります。AIに直してもらううちに文章の個性が薄れる問題は、AIに直してもらううちに、自分の文章らしさが消えた気がするで整理しています。
05よくある質問
AIの候補を採用しなければ、意見は変わらない?
そうとは限りません。2,582人の実験では、AIの候補を1つも採用しなかった人も含めた集計で、意見がAIの側に寄っていました。候補を読むだけでも、考えるきっかけになっている可能性があります。
「AIは偏っているかも」と気をつけていれば防げる?
注意書きだけでは十分ではありませんでした。書く前に「AIの候補はあなたと違う意見を支持しているかもしれない」と伝えられた人でも、意見はAIの側に寄っていました。気をつける気持ちに加えて、使い方の順番を決めておくことが手がかりになります。
ふだん使うAIの候補も、意図的に偏っているの?
この研究では、研究者がわざと一方の意見に寄せた候補を作りました。ふだんのサービスの候補がどのくらい偏っているかは、この研究では調べていません。ただ研究者は、AIの文章には学習した文章の偏りが入りうると指摘しています。
出典
- Williams-Ceci, S., Jakesch, M., Bhat, A., Kadoma, K., Zalmanson, L., & Naaman, M. (2026). Biased AI writing assistants shift users' attitudes on societal issues. Science Advances, 12(11), eadw5578. https://doi.org/10.1126/sciadv.adw5578
- Bai, H., Voelkel, J. G., Muldowney, S., Eichstaedt, J. C., & Willer, R. (2025). LLM-generated messages can persuade humans on policy issues. Nature Communications, 16, 6037. https://doi.org/10.1038/s41467-025-61345-5
- Kokje, E., Lermer, E., Kleine, A. K., & Gaube, S. (2026). AI-augmented decision-making in face matching: comparing concurrent and non-concurrent advice presentation. Cognitive Research: Principles and Implications, 11, 11. https://doi.org/10.1186/s41235-026-00707-z


