偽情報・ディープフェイク

AIに自分の名前を聞いたら、間違った情報が出た。研究では知られていない人ほど誤りが増え、まずは画面を残してサービスに報告する

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わかっている度 ★★☆ 中研究3本・公的資料と公式ヘルプ8件を整理出典照合済み(2026-10-13)
A pair of black glasses rests on a stack of notebooks. A silver pen lies next to them. An apple is in the background. The scene is set on a
Photo: Shixart1985 / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

ためしにAIに自分の名前を聞いてみたら、していない仕事や、行ったことのない学校、身に覚えのない出来事が書かれていた。驚いて、少し怖くなった人もいると思います。あなたに落ち度があるわけではありません。生成AIは人について、もっともらしい間違いを答えることがあります。この記事では、間違いに気づいた直後にすることと、相談できる場所を順番に整理します。

3行でわかる

  1. AIが人について間違えるのは珍しくありません。183人の経歴をAIに書かせた研究では、ChatGPT(2023年当時)の答えのうち裏付けのある事実は約58%で、知られていない人ほど誤りが増えました。
  2. 直後にすることは、画面と質問文を保存し、AIのサービスの報告窓口に伝えることです。Geminiのように、回答から「法的な問題を報告」できるサービスもあります。
  3. 答えがSNSなどに貼られて広がったら法務局の人権相談、個人情報の扱いの苦情は個人情報保護委員会、法律上の判断は法テラス(0570-078374)に相談できます。

01 結論から言うとAIが自分について間違えたら、まず何をする?

あわてて何度も聞き直す前に、画面と質問文を保存し、そのAIのサービスに報告します。答えが外に広がっているときだけ、法務局などの相談先も使います。

AIの答えは、新聞やSNSの投稿とは性質が違います。多くの場合、質問した人の画面にだけ、そのつど作られて表示されます。つまり、間違いを見たのがあなただけなら、まだどこにも「載って」いない可能性があります。

一方で、同じ名前を他の人が聞けば、似た間違いが出ることもあります。そこで大事なのは、「どんな質問で、何が出たか」を記録に残し、作った側(AIのサービス)に直してもらう道筋をつけることです。

個人情報保護委員会は2023年6月の注意喚起で、生成AIの答えは確率的な相関関係にもとづいて作られるため、不正確な内容の個人情報が含まれるリスクがあると書いています[4]。国も、こうした間違いが起きうることを前提にしています。

AIの答えを確かめる手順全般はハルシネーションの割合と確かめ方で、偽の画像や動画の被害はディープフェイク被害のあとにすることで整理しています。この記事は「自分についての間違い」に絞ります。

02 研究とデータでわかっていることAIは人について、どのくらい間違える?

人物の経歴をAIに書かせた研究では、裏付けのある事実は半分強でした。あまり知られていない対象ほど誤りが増えるという結果は、判例を調べた別の分野の研究でも出ています。

約58%ChatGPTが書いた人物の経歴のうち、Wikipediaで裏付けられた事実の割合(183人、2023年発表)
42.5%同じ研究で、InstructGPTの場合の割合
58〜88%米国の判例について確かめられる質問をしたとき、AIが誤って答えた割合(4種類のAI、2024年発表)

Minら(2023) [1]

AIに「〇〇さんの経歴を教えて」と頼み、答えを一つ一つの事実に分けてWikipediaと照らしました。裏付けのある事実の割合は、InstructGPTで42.5%、ChatGPTで58.3%、検索を使うPerplexityAIでも71.5%でした。どのAIでも、世の中であまり知られていない人ほど割合が下がり、答えの後半ほど誤りが多くなりました。

対象: Wikipediaに記事がある183人(国や知名度が偏らないように選んだ)。どのAIも、答えを控えた回答は除いて計算 / 限界: 2023年当時のAIでの結果で、今のAIでは割合が違う可能性があります。Wikipediaに載っていない一般の人は対象外です。

Dahlら(2024) [2]

4種類のAIに、無作為に選んだ米国の連邦裁判所の判例について確かめられる質問をすると、誤った答えの割合は58%(GPT-4)から88%(Llama 2)でした。新しく目立つ判例ほど成績がよく、下級の裁判所の判例ほど誤りが増えました。AIは自分が誤っているかをいつも予測できるわけではなく、質問に含まれた間違った前提をそのまま受け入れることもよくありました。

対象: GPT-4、GPT-3.5、PaLM 2、Llama 2 / 限界: 人ではなく判例についての研究です。「目立たないものほど間違えやすい」という傾向を示す、近い分野の結果として紹介します。

Huangら(2025) [3]

AIの作り話(ハルシネーション)についての研究をまとめたレビューです。AIはもっともらしいのに事実でない内容を作りやすく、検索を組み合わせたAIにも、作り話を防ぐうえでまだ限界があると整理しています。

対象: 大規模言語モデルのハルシネーション研究のまとめ / 限界: 人についての誤りの頻度を直接測った研究ではありません。

国の指針もこの問題に触れています。総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン(第1.2版、2026年3月)」は、各主体が必要に応じてAIの出力の誤りなどについて指摘を受け付ける機会を設けることを挙げています。AIの評価や判断などで不利益を受けた人から問い合わせを受けたときは、必要な範囲で適切に対応することが望ましいともしています[5]。間違いを伝えることは、AIを作る側・使う側にとっても想定された行動です。

03 まだわかっていないこと報告すれば、間違いは消える?

報告すれば確実に消える、とはまだ言えません。報告後にどのくらいで直るか、一般の人についての間違いがどのくらい起きるかを示した公的なデータは、見つかりませんでした。

  • 日本の一般の人(Wikipediaに載っていない人)について、AIがどのくらい間違えるかを測った研究は、確認できた範囲では見つかりませんでした。
  • 報告や訂正の申し出のあと、どのくらいの期間で、どこまで直るかを示した公的な統計はありません。
  • AIが画面に出した答えが、日本の法律でどう扱われるか(名誉毀損や個人情報の訂正の対象になるか)を、公的機関がまとめて示した資料は確認できませんでした。個別の判断は専門家に相談します。
  • 今のAIは2023〜2024年の研究のころより変わっています。割合は、AIの種類や聞き方でも大きく変わります。

04 今日からできること間違いに気づいた直後にできることは?

保存、範囲の確認、サービスへの報告の3つを、その日のうちに進めます。外に広がっている場合だけ、公的な窓口に相談します。どれも無料でできます。

1

画面と質問文をそのまま保存する

スクリーンショットに、質問した文、日時、サービス名、AIの種類が写るようにします。会話の共有リンクを作れるサービスなら、それも控えます。あとで報告や相談をするときの材料になります。

目安 5分

2

間違いの「もと」がネットにないか確かめる

自分の名前で一度だけ検索し、同じ間違いが書かれたページがないか見ます。もとのページがあれば、直すべきはそのページです。法務局は、削除の頼み方を助言しています[7]。何度も聞き直すより、日を決めて短く確かめるほうが負担が少なくなります。

目安 15分

3

そのAIのサービスに報告する

回答の評価ボタンや報告メニューを使います。Googleのヘルプでは、Geminiの回答の下のメニューから「法的な問題を報告」を選べること、EUの一般データ保護規則などの法律のもとでは回答内の不正確な個人データの訂正を求められる場合があることが案内されています[6]。ほかのサービスも、ヘルプの「プライバシー」や「報告」の項目を探します。

目安 15分(報告した日と内容をメモする)

4

周りに聞かれたときの一言を決めておく

「AIは人について間違えることがあり、あの内容は事実ではありません」と短く言えるようにします。勤め先の紹介ページなど、正しい情報が載っている場所があれば一緒に示します。

目安 5分

5

1か月後に同じ質問で確かめる

保存した質問文をそのまま使い、答えが変わったかを見ます。直っていなければ、前回のメモを添えてもう一度報告します。

目安 月1回・5分

間違いの内容によっては、名前を検索されることへの不安が続くこともあります。偽の情報が検索に残り続けるときの付き合い方は、検索結果の削除依頼と見守りの続け方も参考になります。

困ったときの相談先
答えがSNSなどに貼られて広がった・中傷に使われた: 法務局の人権相談(みんなの人権110番 0570-003-110、平日8時30分〜17時15分。インターネット人権相談も受付)[8]、違法・有害情報相談センター(ウェブの相談フォーム、無料)[9]
事業者による個人情報の扱いへの苦情: 個人情報保護委員会 個人情報保護法相談ダイヤル(03-6457-9849、平日9時30分〜17時30分)[10]
法律上どうできるかを知りたい: 法テラス・サポートダイヤル(0570-078374、平日9時〜21時、土曜9時〜17時)[11]

05よくある質問

AIが自分について間違ったことを答えるのはなぜ?

生成AIは、学習した文章の統計的なつながりから、もっともらしい文章を作る仕組みだからです。個人情報保護委員会も、応答に不正確な内容の個人情報が含まれるリスクがあると注意を呼びかけています。人物の経歴を書かせた研究では、あまり知られていない人ほど誤りが多くなりました。

AIのサービスに報告すれば、間違いはすぐ直る?

すぐ直るとは限りません。報告の受付はありますが、いつ・どこまで直るかを約束した公的なデータは見つかりませんでした。報告した日と内容を記録し、しばらくしてから同じ質問で確かめるのが現実的です。

確かめるために、自分の名前を何度もAIに聞いたほうがいい?

何度も聞くより、日を決めて短く確かめるほうが負担が少なくなります。AIの答えは聞き方や日によって変わるため、1回の答えだけで広く知られていると決めつける必要はありません。保存した画面と同じ質問文で、月に1回ほど確かめる形にします。

AIの間違った答えは、名誉毀損やプライバシーの侵害になる?

当たるかどうかは個別の判断になるため、この記事では判断しません。AIの答えがSNSなどに貼られて広がった場合は法務局の人権相談、法律上どうできるかを知りたい場合は法テラス(0570-078374)で相談先を案内してもらえます。

知り合いに「AIがあなたのことをこう言っていた」と言われたら?

「AIは人について間違えることがあり、その内容は事実ではない」と短く伝え、正しい情報が載っている場所(勤め先の紹介ページなど)があれば示します。言われた画面を見せてもらえるなら、保存しておくと報告に使えます。

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出典

  1. Min S, Krishna K, Lyu X, Lewis M, Yih W, Koh P, Iyyer M, Zettlemoyer L, Hajishirzi H (2023). FActScore: Fine-grained Atomic Evaluation of Factual Precision in Long Form Text Generation. Proceedings of the 2023 Conference on Empirical Methods in Natural Language Processing (EMNLP), 12076-12100. https://aclanthology.org/2023.emnlp-main.741/
  2. Dahl M, Magesh V, Suzgun M, Ho DE (2024). Large Legal Fictions: Profiling Legal Hallucinations in Large Language Models. Journal of Legal Analysis, 16(1), 64-93. https://doi.org/10.1093/jla/laae003
  3. Huang L, Yu W, Ma W, Zhong W, ほか (2025). A Survey on Hallucination in Large Language Models: Principles, Taxonomy, Challenges, and Open Questions. ACM Transactions on Information Systems, 43(2), Article 42. https://doi.org/10.1145/3703155
  4. 個人情報保護委員会 (2023年6月2日). 生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について. https://www.ppc.go.jp/news/careful_information/230602_AI_utilize_alert/
  5. 総務省・経済産業省 (2026年3月31日). AI事業者ガイドライン(第1.2版)本編. https://www.soumu.go.jp/main_content/001064279.pdf
  6. Google. Gemini アプリのプライバシー ハブ(Gemini アプリ ヘルプ). https://support.google.com/gemini/answer/13594961?hl=ja
  7. 法務省. インターネット上の人権侵害をなくしましょう. https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken88.html
  8. 法務省. 常設相談所(法務局・地方法務局・支局内). https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken20.html
  9. 違法・有害情報相談センター. https://ihaho.jp/
  10. 個人情報保護委員会. 個人情報保護法相談ダイヤル. https://www.ppc.go.jp/personalinfo/pipldial/
  11. 法テラス(日本司法支援センター). https://www.houterasu.or.jp/