ディープフェイクの被害のあと、検索するとまだ出てくる。評判を取り戻すには、検索結果の削除依頼と見守りを一人で抱えずに続ける

ディープフェイクの被害から何週間かたち、最初の削除や相談は済ませた。それでも名前で検索すると、まだ何かが出てくる気がして落ち着かない。そう感じるのは自然なことです。悪いのは作って広めた側で、あなたではありません。この記事では、被害のあとの数か月を見すえて、検索結果の削除依頼と、再投稿への備えと、気持ちの立て直し方を整理します。
3行でわかる
- 検索結果の削除は、サイトからの削除とは別の手続きです。Googleは本人の同意なく公開された偽の性的画像について、検索結果からの削除リクエストを受け付けています。
- 被害者75人に聞いた研究では、画像がまた見つかるかもしれない不安が長く続くことが語られました。自分で探し続けること自体が負担になる、という指摘もあります。
- 確認は日を決めて短く、できれば信頼できる人や窓口と分けて行います。法務局や違法・有害情報相談センターは、削除の頼み方を無料で助言しています。
01 結論から言うとディープフェイクの被害のあと、評判は取り戻せる?
一度で全部を消すのは難しくても、検索結果の削除依頼と再投稿の見守りを続けることで、目に触れる場所を減らしていけます。一人で抱えず、窓口や信頼できる人と分担するのが長続きのこつです。
被害の直後にすることは、ディープフェイク被害のあとの「証拠・報告・相談」で整理しました。この記事はその続きです。
数週間から数か月たつと、悩みの中身が変わってきます。サイトから消えたのに検索結果に残っている。別の場所に同じ画像が上がった。名前を検索するのがやめられない。こうした「長引く困りごと」は、手続きと気持ちの両方から手当てできます。
ここで大事なのは、評判を取り戻すことを「ネットから完全に消すこと」と同じにしないことです。検索で目に入りにくくする、見つけたらすぐ動ける仕組みを作る、そして自分の生活を取り戻す。この3つを少しずつ進めます。
02 研究とデータでわかっていること被害のあと、何が長く続き、何が支えになる?
画像による性的な被害の研究では、画像がまた広まる不安が長く続き、周りから責められると傷が深まることが報告されています。削除が被害者のいちばんの願いだという報告もあります。
McGlynn, Johnson, Rackley ほか(2021)[1]
被害を受けた75人への聞き取りで、多くの人が害は「終わりがない」と語りました。画像がまた見つかるかもしれない恐れや、ネットに再び上がっていないかを繰り返し確かめる様子も報告されています。周りの反応に傷つき、人づきあいやSNSから離れた人もいました。
対象: 英国・オーストラリア・ニュージーランドの18歳以上75人(質的研究) / 限界: 同意なく撮影・共有された画像の被害が中心で、加工された画像の被害は一部でした。
Rackley, McGlynn, Johnson ほか(2021)[2]
同じ国際研究のデータから、どの国でも被害者のいちばんの願いは画像の削除だったと報告しています。支援が足りないと、被害者が自分で自分の画像を探して報告するしかなく、画像を何度も見ること自体が大きな負担になると指摘しました。著者は、被害者が「主導権を取り戻せる」支援の仕組みが必要だとしています。
対象: 英国・豪州・NZの被害者と支援者への聞き取り(政策の提言が中心) / 限界: 支援の効果を数字で比べた研究ではありません。
Hellevik, Haugen, Överlien(2025)[3]
10〜24歳の被害をまとめた12本の研究では、恐れ・不安・落ち込みが報告されていました。いじめ、仲間外れ、被害者を責める反応が、こうした影響を強めていたとまとめています。転校や失職を報告した被害者もいました。
対象: 2010〜2024年の発表を検索し、条件に合った査読付き研究12本(2017〜2022年発表、欧米中心) / 限界: 若い人に限った整理で、ディープフェイクだけを扱ったものではありません。
日本の公的な仕組みもあります。法務省によると、法務局は削除依頼の方法を助言し、人権侵害に当たると判断した情報はプロバイダなどに削除を要請しています。2024年にネット上の人権侵害情報で新しく救済手続を始めた件数は1,707件で、法務省は「高水準で推移している」としています。
検索結果そのものの削除については、最高裁判所が2017年1月31日の決定(逮捕歴の記事が検索で表示された事案)で考え方を示しています。裁判所の判例ページの要旨では、事実の性質や内容、伝わる範囲と具体的な被害の程度などを比べ、公表されない法的利益が優越することが明らかな場合に、検索事業者へ削除を求めることができるとされています。個別の事案がこれに当たるかどうかは、相談先で確かめてください。
03 まだわかっていないこと長い目で見た回復について、まだわからないことは?
ディープフェイクの被害者が、その後の数年でどう回復していくかを追いかけた研究は、まだ見当たりません。どの支援がいちばん効くかも、比べた研究が足りません。
- 同じ人を長く追いかけた研究は少なく、レビューの著者も長い目で見た影響の研究が必要だとしています。
- レビューでは、守りになる要因や、法的・心理的な対応がどれだけ効くかも、これからの課題とされています。
- 研究の多くは欧米で行われたもので、日本の被害者を対象にしたものは今回の調査では見つかりませんでした。
- 検索結果の削除が、本人の気持ちや周りの評判をどれだけ回復させるかを測った研究も見つかりませんでした。
04 今日からできること残っている検索結果と再投稿には、どう向き合う?
検索結果の削除を申し出る、見守りを仕組みにして回数を決める、手続きを窓口や信頼できる人と分ける。この3つを、自分のペースで進めます。
検索結果に残るページは、検索の削除を申し出る
Googleのヘルプでは、本人とわかり、偽造された裸や性的な内容で、同意なく公開されたものは、検索結果からの削除を申請できます。Googleは、報告された画像と同じ画像を見つけて検索から削除するよう、最善を尽くしているとしています。ただし消えるのは検索結果だけで、サイト側への申し出も続けます。
目安 1件につき10〜15分
見守りは「通知」に任せ、確かめる日を決める
Googleアラートに自分の名前を登録すると、新しい検索結果が見つかったときにメールが届きます。研究では、繰り返し探すこと自体が負担になると指摘されています。通知の頻度を決め、自分で検索するのは週1回など日を決めます。
目安 登録5分、確認は週1回
画像を見る役は、一人で背負わない
新しい投稿のURLを集めて削除を頼む作業は、信頼できる人と分けることもできます。法務局は削除依頼の方法を助言し、違法・有害情報相談センターも無料で相談を受けています。
目安 相談フォームの入力に15分
性的な偽画像は、再投稿を防ぐ仕組みも知っておく
英国の非営利団体が運営する無料のStopNCII.orgは、画像から「ハッシュ」という目印だけを作り、参加している企業での再投稿の発見に使います。画像そのものは端末から出ません。AIで作られた裸や半裸の偽の画像も対象です。画像の中で18歳以上であること、手元に画像があることが条件で、すでに載っている投稿は各サービスへの報告が先です。
目安 15分
手続きの記録とは別に、自分の生活の予定を書く
研究では、被害のあと人づきあいから離れた人が多くいました。責める反応が影響を強めていたというまとめもあります。削除の記録とは別に、責めずに話を聞いてくれる人と会う予定や、続けたいことを1つだけ入れます。
目安 週1つ
みんなの人権110番(0570-003-110): 最寄りの法務局につながります。ネットの人権相談はWebのインターネット人権相談受付窓口からもできます。
違法・有害情報相談センター(総務省の支援事業、相談は無料): 書き込みや画像の削除の方法について助言を受けられます。
法テラス・サポートダイヤル(0570-078374、平日9時〜21時、土曜9時〜17時): 検索結果の削除を裁判で求めるかなど、法律の相談先がわからないときに。
見破り方を知りたい方は、ディープフェイク動画を人は見抜けるのかをご覧ください。被害のあと自分を責めてしまう気持ちについては、AIを使った詐欺のあと自分を責めてしまうときも参考になります。子どもの写真の被害は子どもの写真がAIで性的に加工される被害で整理しています。
05よくある質問
サイトから画像が消えたのに、検索結果に残っているのはなぜ?
検索結果とサイトは別々に管理されているためです。Googleのヘルプでも、検索結果から外れてもページそのものはウェブ上に残りうると説明しており、検索とサイトの削除は別の手続きです。逆に、サイトから消えても検索結果に古い表示が残ることがあるので、検索側にも申し出ます。
検索結果の削除は、裁判をしないと認められない?
偽の性的画像については、Googleが本人などからの削除リクエストを受け付けています。裁判で検索結果の削除を求める場合の考え方は、最高裁判所が2017年の決定で示しています。自分の場合にどちらの方法が合うかは、法務局や法テラスで確かめられます。
名前の検索がやめられない。どうすればいい?
確かめたくなるのは自然なことです。研究でも、被害者が画像が上がっていないか繰り返し確かめる様子が報告され、自分で探すこと自体が負担になると指摘されています。Googleアラートなどの通知に任せ、自分で検索する日を週1回などに決めると、確認の回数を減らせます。
同じ画像がまた投稿されたら、最初からやり直し?
最初からではありません。前回の記録(URL、日時、申し出た先、返事)を残しておけば、同じ手順を短い時間で繰り返せます。Googleは、報告された性的画像と同じ画像を検索から削除するよう最善を尽くしているとしています。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
出典
- McGlynn, C., Johnson, K., Rackley, E., Henry, N., Gavey, N., Flynn, A., & Powell, A. (2021). 'It's Torture for the Soul': The Harms of Image-Based Sexual Abuse. Social & Legal Studies, 30(4), 541–562. https://doi.org/10.1177/0964663920947791
- Rackley, E., McGlynn, C., Johnson, K., Henry, N., Gavey, N., Flynn, A., & Powell, A. (2021). Seeking Justice and Redress for Victim-Survivors of Image-Based Sexual Abuse. Feminist Legal Studies, 29, 293–322. https://doi.org/10.1007/s10691-021-09460-8
- Hellevik, P. M., Haugen, L.-E. A., & Överlien, C. (2025). Outcomes of image-based sexual abuse among young people: a systematic review. Frontiers in Psychology, 16, 1599087. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2025.1599087
- Google 検索ヘルプ「不本意な偽のポルノ画像を Google から削除する」(英語版: Remove involuntary fake pornography from Google) https://support.google.com/websearch/answer/9116649?hl=ja
- Google 検索ヘルプ「アラートの作成」 https://support.google.com/websearch/answer/4815696?hl=ja
- 最高裁判所第三小法廷 平成29年1月31日決定(平成28(許)45)裁判例結果詳細 https://www.courts.go.jp/hanrei/86482/detail2/index.html
- 法務省「インターネット上の人権侵害をなくしましょう」 https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken88.html
- 法務省「令和6年における「人権侵犯事件」の状況について(概要)」 https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken03_00252.html
- 違法・有害情報相談センター(総務省支援事業) https://ihaho.jp/
- StopNCII.org(Revenge Porn Helpline / SWGfL)FAQ https://stopncii.org/faq/
- 法テラス(日本司法支援センター) https://www.houterasu.or.jp/
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」電話相談 https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/soudan/tel/


