怪しいニュース、ネットで検索して確かめれば大丈夫?研究では、検索した人のほうが偽ニュースを本当と判断しやすく、見出しをそのまま検索すると質の低いサイトに当たりやすかった

AIで作られた記事や画像が増え、「怪しいと思ったら検索して確かめよう」とよく言われます。けれど研究では、検索した人のほうが偽のニュースを本当だと判断しやすくなっていました。検索そのものが悪いのではなく、何を打ち込み、どの結果を開くかで、たどり着く情報が変わります。
3行でわかる
- 米国の5つの実験では、偽のニュースを検索して確かめるよう促された人は、本当だと判断する確率が19%高くなりました。
- 見出しやURLをそのまま検索すると、上位10件に信頼性の低いサイトが入る割合が77%で、ほかの言葉で調べたとき(21%)より高くなりました。
- 前もって「見出しをそのまま検索しない」「上から順に開かず、発信元を選んで開く」「確かめきれないものは広めない」と決めておくのが備えになります。
01 結論から言うと怪しいニュースは、検索すれば確かめられる?
やり方しだいです。研究では、検索した人のほうが偽のニュースを信じやすくなっていました。見出しをそのまま検索すると、同じ話をくり返す質の低いサイトに当たりやすいためと考えられています。
偽のニュースには、それを書いたサイトや、同じ話を写したサイトがいくつもあることがあります。見出しの言い回しは、そうしたサイトにしか出てこないことも多く、そのまま検索すると「ほかでも同じことが書かれている」ように見えてしまいます。研究者は、信頼できる情報が少なく、質の低い情報ばかりが見つかる状態を「データの空白(データボイド)」と呼んでいます。
AIを使えば、それらしい記事やサイトを大量に作れるようになりました。ネット上のAIの文章がどのくらい増えているかはネットの記事は、AIが書いたものだらけ?でまとめています。検索で確かめるなら、何で検索し、どの結果を信じるかを前もって決めておくことが、これまで以上に大事になります。
02 研究とデータでわかっていること検索すると、なぜ偽ニュースを信じやすくなる?
検索結果に質の低いサイトが混ざると、偽の話を「裏づけ」のように感じてしまうためです。質の高いサイトばかりが出た人では、検索しても信じやすさは変わりませんでした。
Aslettら / ニューヨーク大学など(2024年)[1]
公開から48〜72時間以内の人気ニュース記事を、検索して確かめるよう促す組と促さない組に分けて、真偽を判断してもらう実験を5回行いました。最初の実験では、検索を促された人が偽のニュースを本当と判断する確率が0.057上がり、これは19%の増加にあたりました。公開から3〜6か月たった記事で同じ人に2回判断してもらった実験でも、検索のあとで本当と判断した人が18%増えていました。
検索の画面を記録した実験では、検索結果の中に信頼性の低いサイトが1割以上あった人で、偽のニュースを信じる確率が上がっていました。信頼性の高いサイトばかりが出た人では、検索しない人と差がありませんでした。打ち込まれた言葉のうち約9%は記事の見出しやURLそのままで、そうした検索では上位10件に信頼性の低いサイトが入る割合が77%と、ほかの言葉の21%より高くなっていました。
対象: 米国の成人。オンライン調査会社などで集めた参加者で、5つの実験(2019年末〜2021年末)。記事の真偽は専門のファクトチェッカーが判定 / 限界: 検索結果の質を記録したのはGoogleの検索結果で、AIによる検索や日本語の検索は含みません。参加者がふだん自分で選んで読む記事ではなく、研究者が選んだ記事を判断しています。
Panizzaら / IMTルッカ高等研究院など(2022年)[2]
SNSに似せた画面で科学の話題の投稿を見せ、内容が科学的に正しいかを判断してもらう実験を2回行いました。「別のサイトで発信元や内容を調べる(横読み)」「検索結果の最初の項目だけで決めず、下まで見て選ぶ」という専門家のやり方を画面で案内すると、そのやり方を使う人は増えました。ただ、正しく判断できる人が増えたのは、発信元がよく知られていない投稿のときに限られていました。
対象: 英国に住む成人。2つの実験で計5,387人 / 限界: 気候変動や健康、新型コロナなど科学の話題の投稿で調べた結果で、AIで作られた投稿は対象ではありません。やり方を使ったかどうかの一部は、本人の回答で測っています。
Kozyrevaら / マックス・プランク人間発達研究所など(2024年)[3]
世界の81本の論文をもとに、一人ひとりができる偽情報への対策を9種類に整理した研究のまとめです。その中には「横読みと確かめ方の手順」のほか、共有の前に一手間はさむ工夫、手口を先に知っておく方法、注意書きのラベルなどが含まれています。
対象: 偽情報への対策を調べた81本の論文 / 限界: 対策ごとに、確かめられた対象や条件はまちまちで、どれか1つで十分という結論ではありません。
3つを合わせると、「検索して確かめる」こと自体は有効な対策の1つですが、見出しをそのまま入れて上から開くだけでは逆効果になりうる、ということになります。確かめ方の中身を前もって決めておくことが、備えの中心になります。
03 まだわかっていないこと日本語やAIの検索でも、同じことが起きる?
まだわかっていません。研究は米国の英語のニュースと、2021年ごろまでの検索結果で行われたもので、日本語の検索や、検索結果の上に出るAIの要約で同じことが起きるかは確かめられていません。
- 日本語のニュースを日本語で検索したとき、同じように質の低いサイトに当たりやすいのか。
- 検索結果の上に出るAIの要約が、質の低いサイトを根拠にしてしまうことがどのくらいあるのか。
- AIで大量に作られたサイトが、データの空白をどのくらい埋めてしまっているのか。
- 確かめ方の手順を前もって決めておくと、ふだんのSNSの使い方の中で、だまされる回数が実際に減るのか。
検索結果の上に出るAIの要約の正確さについては、検索結果の上に出るAIの要約は信じていい?で別にまとめています。
04 今日からできること検索で確かめるとき、前もって何を決めておく?
見出しをそのまま検索しない、上から順に開かず発信元を選ぶ、発信元そのものを調べる、確かめきれないものは広めない、の4つを決めておきます。1件あたり数分でできます。
見出しやURLを、そのまま検索しない
見出しの言い回しをコピーせず、「いつ・どこで・何が」の言葉に言い換えて検索します。人名や地名に「発表」「ファクトチェック」などの言葉を足すと、報道機関や検証の記事が見つかりやすくなります。
目安 1件1〜2分
上から順に開かず、発信元を選んで開く
検索結果の一覧を下まで見て、名前を知っている報道機関や、話題に関係する公的機関・自治体のページを選んで開きます。同じ言い回しの記事が並んでいるだけなら、裏づけとは数えません。
目安 1件1分
記事の中身より先に、発信元を調べる
知らないサイトや投稿者なら、その名前で検索して、どんな運営者か、ほかの人がどう評価しているかを確かめます(横読み)。選挙の時期の使い方は選挙のディープフェイクに惑わされないためににもまとめています。
目安 1件2分
確かめきれないものは、広めない
数分調べてもはっきりしないときは、「本当かもしれない」ではなく「まだわからない」として、共有を待ちます。家族のグループでのルールづくりは家族のグループに流れてくるAIの偽画像や偽ニュースが参考になります。
目安 共有する前に毎回
AIに真偽を聞いて確かめる場合の注意点は、ニュースが本当かどうか、AIに聞けば確かめられる?にまとめています。
05よくある質問
怪しいニュースは、検索しないほうがいいの?
検索をやめる必要はありません。研究で信じやすさが上がったのは、検索結果に信頼性の低いサイトが混ざった人でした。信頼性の高いサイトばかりが出た人では、検索しない人と差がありませんでした。見出しをそのまま入れず、発信元を選んで開けば、検索は確かめる手段として使えます。
検索して同じ話がたくさん出てきたら、本当と考えていい?
数だけでは決められません。偽のニュースは、同じ話を写したサイトがいくつも出てくることがあります。研究では、偽のニュースの見出しやURLをそのまま検索すると、上位10件に信頼性の低いサイトが入る割合が77%でした。何件出たかより、どこが書いているかを見ます。
どのくらい調べたら、確かめたことになる?
決まった目安はありません。この記事では、言い換えて検索する、知っている発信元を選んで開く、発信元を調べる、の3つを1件数分で行う方法を紹介しました。それでもはっきりしないときは、無理に結論を出さず、「まだわからない」として共有を待つのが安全です。
出典
- Aslett K, Sanderson Z, Godel W, Persily N, Nagler J, Tucker JA (2024). Online searches to evaluate misinformation can increase its perceived veracity. Nature, 625, 548-556. https://doi.org/10.1038/s41586-023-06883-y
- Panizza F, Ronzani P, Martini C, Mattavelli S, Morisseau T, Motterlini M (2022). Lateral reading and monetary incentives to spot disinformation about science. Scientific Reports, 12, 5678. https://doi.org/10.1038/s41598-022-09168-y
- Kozyreva A, Lorenz-Spreen P, Herzog SM, Ecker UKH, Lewandowsky S, Hertwig R, et al. (2024). Toolbox of individual-level interventions against online misinformation. Nature Human Behaviour, 8(6), 1044-1052. https://doi.org/10.1038/s41562-024-01881-0


