偽情報・ディープフェイク

AIの偽情報を信じた家族と、けんかになった。研究では、訂正で意固地になることはまれで、言い争うより先に話を聞くほうが考え直す余地が生まれやすい

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わかっている度 ★★☆ 中研究4本・公的資料0件を整理出典照合済み(2026-10-17)
黒い鉄のティーポットと湯のみ
Photo: Cole Hutson colehutson / CC0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

家族が、AIで作られたらしい動画やニュースを本気で信じている。「それは偽物だよ」と言ったら言い合いになり、気まずいままになってしまった。そんなとき、どちらかが悪いわけではありません。研究からわかるのは、訂正しても相手が意固地になることはまれだということです。つまずきやすいのは、むしろ「言い争いの形」のほうだと考えられます。関係を直してから、話を聞く順番に変えれば、もう一度話せます。

3行でわかる

  1. 52の研究(6,878人)をまとめた分析では、相手が誤った話を支える理由を自分で考えるほど、訂正が効きにくく誤りが残りやすくなっていました。言い争いは、その状態に近い形です(言い争いそのものを調べた研究ではありません)。
  2. 訂正でかえって信じこむ「逆効果」は、研究のまとめではまれで、確かな現象とは言えないとされています。伝えたこと自体は間違いではありません。
  3. 立て直しは「言い方だけ謝る」「話題を選んで聞く側に回る」「確かめ方を一緒に決める」の3つ。AIの偽情報は誰でもだまされうるので、相手の頭の良し悪しの話にしないことが土台です。

01 結論から言うと偽情報で家族とけんかしたら、もう話せない?

話せます。訂正で相手が意固地になることは研究ではまれで、研究から考えると、言い争いで相手が「信じる理由」を語り続ける形になると、誤りが残りやすくなります。言い方を謝り、聞く順番に変えれば、話し直す余地は残ります。

けんかになると、相手は自分の考えを守るために理由を次々に挙げます。実験では、誤った話を支える理由を自分で考えた人ほど、訂正のあとも誤りが残りやすくなっていました。強く言うほど遠ざかるように感じるのは、相手の性格だけでなく、話し方の形も関わっていると考えられます。

もう一つ大事なのは、AIが作る偽情報は、そもそも見分けるのが難しいことです。だまされたのは家族の落ち度というより、誰にでも起きることです。自分がだまされたときの気持ちの整理は、AIの偽画像やデマを本物だと信じてしまい、自分が情けないでまとめています。

02 研究とデータでわかっていること言い争いは、なぜ偽情報を残してしまう?

研究のまとめでは、相手が誤った話を支える理由を自分で考えるほど、訂正の効果が弱まり誤りが残りやすくなっていました。一方で、訂正がかえって信念を強める逆効果は確かな現象ではなく、伝えること自体は避けなくてよいとされています。

52研究訂正の効果をまとめた分析の研究数(参加者6,878人、2017年)
697人AIが書いた投稿と人の投稿を見分けられなかった実験の参加者(主に英語圏、2023年)
952人よく聞いてもらうと考え直す姿勢が高まった予備研究と3つの実験の合計(イスラエル・イギリス、2020年)

Chanら(2017)[1]

誤った情報を訂正する効果を調べた52の研究をまとめた分析です。訂正には大きな効果がありましたが、訂正のあとも誤った話は残りがちでした。とくに、聞き手が誤った話を支える理由を自分で考えたときほど、誤りが残り、訂正が効きにくくなっていました。くわしい訂正は効果を高める一方で、誤りが残る度合いとも結びついていました。

対象: 52研究・6,878人(主に実験) / 限界: 家族の会話そのものを調べた研究ではなく、実験で読んだ文章への反応をまとめたものです。

Swire-Thompsonら(2020)[2]

「訂正するとかえって信じこむ」という逆効果の研究を見直した論文です。逆効果は再現されないことが多く、確かな現象とは言えないと結論づけました。そのうえで、特定の人たちに訂正を伝えるのを避けるべきではないとしています。

対象: これまでの逆効果の研究の見直し / 限界: 逆効果が起きる条件が絶対にないとまでは言えないと、著者も書いています。

Itzchakovら(2020)[3]

自分の偏った考えについて話すとき、相手がよく聞いてくれた人は、ふつうに聞かれた人や聞いてもらえなかった人より、自分を見つめ直し、考えを変えることに開かれていました。3つの実験をまとめると、考え直す姿勢への効果は中くらい(d=0.46)、偏見そのものへの効果は小さめ(d=0.32)でした。

対象: イスラエルの成人と大学生、イギリスの大学生(予備研究と3つの実験の合計952人) / 限界: テーマは偽情報ではなく集団への偏見です。話す前と比べて偏見が減ったという確かな証拠は得られず、比べられたのは聞き方の違いの間だけでした。

Spitaleら(2023)[4]

参加者は、AI(GPT-3)が書いた投稿と人が書いた投稿をほとんど見分けられず、正解の割合は平均で偶然と同じ0.5前後でした。誤った投稿を「誤り」と見抜けた度合いも、人が書いた投稿の0.92に対し、AIが書いた投稿は0.89とわずかに低めでした。

対象: 主にイギリス・オーストラリア・カナダ・アメリカ・アイルランドの697人 / 限界: 2023年時点のAIと、健康や科学の話題の投稿での結果です。くわしくはAIが書いた偽情報は、人が書いたものよりだまされやすい?へ。

やりがちなこと研究からみた起きやすいこと代わりにできること
その場で反論を重ねる相手が信じる理由を語り続け、誤りが残りやすい [1]その場では止めて、時間をおく
もう二度とその話をしない訂正を避ける理由は研究からは見当たらない [2]落ち着いた時に一度だけ短く伝える
「なんで信じるの」と責める聞いてもらえない会話では考え直す姿勢が生まれにくい [3]どこで見たか、なぜ気になったかを聞く

03 まだわかっていないこと家族の関係そのものの研究はある?

家族どうしの言い争いと仲直りを、偽情報のテーマで直接調べた研究はまだ少なく、ここでの整理は、訂正の実験と、聞き方の実験からの間接的な推測を含みます。

  • 実験の多くは、知らない人の文章を読む形です。親子や夫婦のように長い関係があり、感情が強く動く場面で同じ結果になるかは確かめられていません。
  • 聞き方の研究のテーマは偏見で、偽情報への信念にも同じように効くかは、まだはっきりしません。
  • AIで作られた動画や音声は年々本物らしくなっています。2023年の研究結果が、いまのAIにもそのまま当てはまるとは限りません。
  • 日本の家族を対象にした研究は、今回の調べでは見つかりませんでした。

04 今日からできること家族との関係を、どう立て直す?

中身の判断と言い方を分けて、言い方だけを先に謝ります。そのうえで、話題を一つにしぼって聞く側に回り、確かめ方を一緒に決めておくと、次に同じことが起きても言い争いになりにくくなります。

1

「言い方」だけを先に謝る

「話の中身は今も違うと思うけれど、強く言ったのはごめん」と伝えます。考えを曲げずに、関係だけを先に直せます。メッセージでも十分です。

目安 1分・けんかの当日か翌日

2

次に話すときは、まず聞く側に回る

「どこで見たの」「どこが気になったの」と聞き、途中で反論しないで最後まで聞きます。自分の意見は、聞き終えてから一つだけ短く伝えます。

目安 10分・1回に話題は1つ

3

確かめ方を、一緒に決めておく

「最初に出したのは誰か」「公的機関や当事者が同じことを言っているか」を見る、と二人で決めます。どちらが正しいかではなく、確かめ方で合意します。家族のグループでのルール作りは家族のグループに流れてくるAIの偽画像や偽ニュース、どう備える?も参考になります。

目安 5分・一度決めればくり返し使える

05よくある質問

家族がAIの偽情報を信じていたら、指摘しないほうがいい?

指摘してかまいません。研究のまとめでは、訂正でかえって信じこむ「逆効果」はまれで、訂正を避ける理由にはならないとされています。ただし、研究から考えると、言い争いの形にすると相手は信じる理由を言い続けることになり、誤りが残りやすくなるおそれがあります。落ち着いた時に、短く伝えるのが向いています。

けんかのあと、どちらから謝ればいい?

謝るのは「言い方」の部分で十分です。「話の中身は今も違うと思うけれど、強い言い方をしたのはごめん」のように、事実の判断と言い方を分けると、自分の考えを曲げずに関係だけを直せます。どちらが先かより、早めに一言かけるほうが大切です。

何度言っても信じたままなら、どうすればいい?

その話題を毎回持ち出さず、ほかの話ができる関係を保つことを優先してください。偏見について話す実験では、よく話を聞いてもらえた人ほど考え直す姿勢が高まる傾向がありました。お金をだまし取られそうな場合は、関係よりも被害を止めることを優先し、警察などの公的な相談窓口に早めに相談してください。

AIで作られた偽情報を、家族と一緒に見分ける方法はある?

見た目で見分ける方法は当てになりません。AIが書いた投稿を人が書いたものと区別できなかった研究もあります。見た目ではなく、「最初に出したのは誰か」「公的機関や当事者が同じことを言っているか」を一緒に確かめるほうが確かです。

「偽情報・ディープフェイク」を順に読む
知る → 備える → 起きたとき → 立て直す(この記事)
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出典

  1. Chan MS, Jones CR, Hall Jamieson K, Albarracín D (2017). Debunking: A Meta-Analysis of the Psychological Efficacy of Messages Countering Misinformation. Psychological Science, 28(11), 1531-1546. https://doi.org/10.1177/0956797617714579
  2. Swire-Thompson B, DeGutis J, Lazer D (2020). Searching for the Backfire Effect: Measurement and Design Considerations. Journal of Applied Research in Memory and Cognition, 9(3), 286-299. https://doi.org/10.1016/j.jarmac.2020.06.006
  3. Itzchakov G, Weinstein N, Legate N, Amar M (2020). Can high quality listening predict lower speakers' prejudiced attitudes? Journal of Experimental Social Psychology, 91, 104022. https://doi.org/10.1016/j.jesp.2020.104022
  4. Spitale G, Biller-Andorno N, Germani F (2023). AI model GPT-3 (dis)informs us better than humans. Science Advances, 9(26), eadh1850. https://doi.org/10.1126/sciadv.adh1850