SNSの「AI生成」の表示、付いていない投稿は本物と思っていい?研究では、見た目では見分けられず、表示があっても広めたい気持ちは残った

SNSで見かける「AI生成」「AIで作成」といった表示。付いていれば気をつけられそうですが、付いていない投稿はどう受け止めればいいのでしょうか。研究からわかるのは、表示は役に立つ手がかりでも、それだけで本物かどうかは決まらないということです。表示に頼りすぎないための備え方を、3本の研究から整理します。
3行でわかる
- 表示がないことは、本物の証拠になりません。付け漏れもあり、見た目で見分けるのも難しく、AIの顔写真を人が当てた割合は48.2%でした。
- 「AI生成」の表示を見ると、人は「全部AIの作り話」と受け取りがちで、本当の見出しまで信じにくくなっていました。
- 表示で信じる度合いは下がっても、共有したい気持ちはあまり変わりませんでした。表示の意味を知り、出どころを確かめ、広める前に止まる習慣が備えになります。
01 結論から言うと「AI生成」の表示がなければ本物?
本物とは限りません。表示は作り方の手がかりの一つで、付け漏れや付け間違いがあります。本物かどうかは、表示の有無ではなく、出どころと他の情報源で確かめます。
表示を付ける仕組みには、もともと限界があります。チューリッヒ大学の研究者は論文の中で、SNSの運営会社がAIで作られたものをすべて見つけて表示するのは難しく、必ず付け漏れが出ると指摘しています[1]。反対に、人が作ったものに誤って「AI生成」と付いてしまうこともありえます[1]。
それなら自分の目で見分けられるかというと、こちらも難しいことがわかっています。AIが作った顔写真と本物の顔写真を見比べる実験では、正答率は48.2%で、当てずっぽうと同じくらいでした[3]。
つまり「表示がない」と「自分で見て違和感がない」の2つがそろっても、本物の保証にはなりません。表示は、あれば参考にする手がかりの一つとして扱うのが現実的です。
02 研究とデータでわかっていること人はAIの表示をどう受け止める?
表示を見ると、人は内容を信じにくくなります。ただ「全部AIが作った」と受け取りやすく、本当の情報まで疑う一方、共有したい気持ちはあまり変わりませんでした。
見た目では、ほぼ見分けられない
Nightingale・Farid(2022、米国科学アカデミー紀要)[3]
AIが作った顔写真と本物の顔写真を1枚ずつ見分ける実験で、正答率の平均は48.2%でした。AIの顔に出やすい不自然な跡の説明と、1問ごとの正解の表示を加えた別の参加者でも59.0%にとどまり、解き進めても上がりませんでした。AIの顔は、本物の顔より平均で7.7%「信頼できそう」と評価されていました。
対象: オンラインの仕事募集サービスで集めた参加者315人(見分け)、219人(説明と正解の表示つき)、223人(信頼できそうかの評価)。1人128枚 / 限界: 顔写真だけの実験で、2022年発表時点の画像生成の技術によるものです。動画や声、風景の画像には当てはまらないこともあります。
表示を見ると「全部AIの作り話」と受け取りやすい
Altay・Gilardi(2024、PNAS Nexus)[1]
ニュースの見出しに「AI生成」の表示を付けると、正確だと思われる度合いと共有したい気持ちを合わせた評価が下がりました。見出しが本当か偽か、人が書いたかAIが書いたかに関係なく下がっていました。主に下がったのは正確さの評価で、共有の気持ちだけで見ると統計的にはっきりした差ではありませんでした。下げ幅は、米国での1つ目の実験で、「偽」と表示した場合の約3分の1(2.66ポイントと9.33ポイント)です。
対象: 米国と英国のオンライン調査の参加者、2つの実験で計4,976人(事前登録あり) / 限界: 見出しを評価する調査で、実際のSNSでの行動を測ったものではありません。
なぜ本当の見出しまで疑われたのでしょうか。2つ目の実験で、表示の意味を説明する文を変えたところ、理由が見えてきました。「AIで文章を読みやすく整えた」「AIが下書きを書いた」と説明された人では、表示の影響は統計的にはっきりしませんでした。説明がない人と「AIが話題を選び、記事を全部書いた」と説明された人では、信じる度合いが下がっていました[1]。人は表示を見ると、AIが全部作ったものと受け取りやすいのです。
また、この研究では、AIの表示があることで、表示のない見出しが信じられやすくなる影響は見られませんでした[1]。
表示があっても、広めたい気持ちは残る
Wittenbergら(2025、PNAS Nexus)[2]
記者やファクトチェックで「AIで作られた、誤解を招く画像」と指摘された実際の投稿に、さまざまな表示を付けて見せました。どの表示でも、投稿の主張を信じる度合いは下がりました。しかし「AI生成」とだけ伝える表示では、共有する・「いいね」する気持ちに、統計的にはっきりした変化はありませんでした。
対象: 米国のオンライン調査の参加者7,579人(2023年10月に3,223人、12月に4,356人)、投稿は14件と29件 / 限界: 共有の気持ちは本人の回答で、実際の行動ではありません。米国だけの結果です。
1つ目の実験では、「編集・加工された」「改変・ねつ造された」「独立したファクトチェッカーの確認を受けた」のように、AIという言葉を使わない表示は、共有や「いいね」の気持ちも下げていました[2]。表示の言葉づかいによって、受け止め方が変わることがうかがえます。
| 場面 | 研究でわかったこと | 備え |
|---|---|---|
| 表示がない | 付け漏れがありうる。見た目で当てられるのは約半分 [1][3] | 出どころを確かめる |
| 「AI生成」の表示がある | 「全部AIの作り話」と受け取りやすく、本当の情報まで疑いやすい [1] | 表示の意味を確かめる |
| 表示を見ても広めたくなる | 「AI生成」だけの表示では、共有の気持ちはあまり変わらない [2] | 広める前に一度止まる |
03 まだわかっていないこと表示はどこまで頼りになる?
まだ結論は出ていません。研究の多くは米国・英国のオンライン調査で、実際のSNSや日本の利用者、動画や声の偽物での効果は確かめられていません。
- ここで紹介した研究は、どれも調査の画面で見出しや画像を見せたものです。実際のSNSで、表示が共有の数を変えるかはわかっていません。
- 参加者は米国と英国の人で、日本の利用者やSNSの表示の言葉で同じ結果になるかは確かめられていません。
- 見分けの実験は顔写真で、発表は2022年です。その後の画像や、動画・声の偽物を人がどこまで見分けられるかは、技術の進み方によって変わりえます。
- 表示の付け漏れが、表示のない投稿への信頼を上げるかは、はっきりしていません。Altayらの見出しの実験では、その影響は見られませんでした[1]。
04 今日からできること表示に頼りすぎないために、何をしておく?
表示の意味を一度確かめ、表示の有無より出どころで判断し、広める前に一度止まる。この3つを習慣にしておくと、表示が付いていてもいなくても落ち着いて対応できます。
使っているSNSの「AI」の表示の意味を、一度読んでおく
表示がどんなときに付くのか、誰が付けるのかは、サービスごとに違います。各サービスのヘルプで「AI」と検索し、説明を読んでおきます。研究では、表示の意味の説明しだいで受け止め方が変わっていました。
目安 よく使うSNSごとに5分
表示の有無ではなく、出どころを見る
気になる画像や動画は、最初に投稿したのは誰か、報道機関や公的機関が同じことを伝えているかを確かめます。アカウントの見方はSNSの相手がAIかもしれないときの記事にまとめています。
目安 1件につき1〜2分
表示があってもなくても、広める前に一度止まる
「AI生成」とだけ書かれた表示では、共有したい気持ちはあまり変わりませんでした。共有ボタンを押す前に「本当だと確かめたか」を自分に1回聞きます。手口を先に知っておく備えは、選挙のディープフェイクに惑わされないためにでも扱っています。
目安 共有の前に10秒
自分が投稿するときは、AIを「どこまで」使ったかを書き添える
「全部AIで作った」のか「写真の明るさだけAIで直した」のかで、受け止め方は変わります。研究では、使い方の説明が軽い使い方だとわかると、表示の影響ははっきりしなくなっていました。AIで作った画像を投稿するときの考え方は、AIで作った画像を「自分の作品」として投稿してもいい?にまとめています。
目安 投稿のたびに一言
偽物が気になりすぎて何も信じられなくなったときは、何も信じられなくなったときの記事も参考になります。うっかり広めてしまったあとの対応は、AIの偽画像を拡散してしまったときにまとめています。
05よくある質問
「AI生成」の表示がない画像や動画は、本物と考えていい?
いいえ。表示がないのは、付け漏れや、まだ見つかっていないだけのこともあります。見た目で見分けるのも難しく、AIが作った顔写真を人が当てた割合は48.2%でした。表示の有無ではなく、最初の投稿者や、ほかの報道・公的機関の発信で確かめます。
「AI生成」と表示された投稿は、全部うそ?
そうとは限りません。表示はAIを使ったという作り方の情報で、内容が本当かどうかの判定ではありません。研究では、人は表示を見ると「全部AIが書いた」と受け取り、本当の見出しや人が書いた見出しまで信じにくくなっていました。
AIの画像は、練習すれば見分けられるようになる?
少しは上がりますが、限界があります。AIの顔写真の実験では、見分け方の説明と1問ごとの正解の表示を加えると、正答率は48.2%から59.0%に上がりました。ただし、問題を解き進めても正答率は上がっていきませんでした。
出典
- Altay S, Gilardi F (2024). People are skeptical of headlines labeled as AI-generated, even if true or human-made, because they assume full AI automation. PNAS Nexus, 3(10), pgae403. https://doi.org/10.1093/pnasnexus/pgae403
- Wittenberg C, Epstein Z, Péloquin-Skulski G, Berinsky AJ, Rand DG (2025). Labeling AI-generated media online. PNAS Nexus, 4(6), pgaf170. https://doi.org/10.1093/pnasnexus/pgaf170
- Nightingale SJ, Farid H (2022). AI-synthesized faces are indistinguishable from real faces and more trustworthy. Proceedings of the National Academy of Sciences, 119(8), e2120481119. https://doi.org/10.1073/pnas.2120481119


