偽情報・ディープフェイク

偽情報やディープフェイクが気になって、何も信じられなくなった。研究では、人は「だまされる」より「疑いすぎる」間違いが多めだった

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わかっている度 ★★☆ 中研究6本を整理出典照合済み(2026-10-10)
新聞の発送室で刷り上がった新聞の束(古い白黒写真)
Photo: Miscellaneous Items in High Demand, PPOC, Library of Congress / Public domain / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

AIで作られた偽の動画や画像の話を聞くたびに、ニュースを見ても「これも偽物かも」と思ってしまう。そう感じるのは自然な反応です。ただ、研究では、人は偽の情報にだまされるより、本当の情報を疑ってしまう間違いの方が多めでした。立て直しの目標は「全部疑う」ことではなく、信じてよいものを決め直すことです。

3行でわかる

  1. 40か国の19万人あまりを調べた研究のまとめでは、人は本当と偽のニュースをおおむね見分けられ、間違えるときは「疑いすぎ」の側に寄っていました。
  2. 偽情報への注意をうながす働きかけは、偽の話を信じる人を減らす一方で、本当の情報まで疑う気持ちを少し強めていました。ただし米国の実験では、その影響は1週間後には消えていました。
  3. 疑うコツだけでなく「信頼できる情報は多い」と伝えるコツでも、見分ける力は上がっていました。信頼する情報源を決め直すことが、立て直しの軸になります。

01 結論から言うと偽情報が怖くて何も信じられないのは、おかしい?

おかしくありません。偽情報への警告を見たあとは、本当の情報まで疑いやすくなることが実験で確かめられています。ただ、その影響は短期間で薄れていました。疑う力はそのままに、信じてよい情報源を決め直すことが立て直しの近道です。

「AIで本物そっくりの動画が作れる」と知れば、身構えるのは自然な反応です。研究者は、偽の情報を本当だと思う間違いと、本当の情報を偽物だと思う間違いを分けて調べてきました。

わかってきたのは、後者の「疑いすぎ」の間違いも小さくないことです。[1] ふだん目にするニュースの多くは本物です。すべてを疑うと、正しい情報まで受け取れなくなるおそれがあります。[2]

偽の画像を広めてしまったあとの手順はAIの偽画像や動画を本物と思って拡散してしまったに、選挙の前の備えは選挙のディープフェイクに惑わされないためににまとめています。この記事は、そのあとに残る「何も信じられない」気持ちを扱います。

02 研究とデータでわかっていること疑いすぎると、何が起きる?

人は偽ニュースを偽と見抜くより、本当のニュースを本当と認める方が苦手でした。偽情報への注意喚起やコツの提示は、偽の話を信じる人を減らす一方、本当の情報への信頼もやや下げていました。

19万4,438人本当と偽のニュースの見分けを調べた67本の論文をまとめた分析の参加者(40か国、2025年発表)
約59%生のデータがある22本(4万2,074人)で、本当のニュースを疑う側に寄っていた人の割合
6,127人偽情報への対策を見せた実験の参加者(米国・ポーランド・香港、2022年)。米国では1週間後に影響が消えていた
32%→24%米国の4,907人の実験で、見分け方のコツを読んだ人の、偽の見出しを正確だと答えた割合(2018年)

PfänderとAltay(2025)[1]

本当のニュースと、事実確認で偽とされたニュースの正確さを評価してもらった67本の論文(303の効果量、19万4,438人、40か国)をまとめた分析です。人は本当のニュースを偽のニュースより正確だと評価し、見分ける力ははっきりありました。

一方で、偽ニュースを偽と判断するより、本当のニュースを本当と判断する方が苦手でした。著者らは、間違えるときは「だまされる」より「疑いすぎる」側に寄っていたとまとめています(この偏りの大きさ自体は小さい)。

対象: 40か国の実験。参加者の34%は米国、54%はヨーロッパ / 限界: 実験の場面は実際のSNSの見方とは違う。どの偽ニュースを選ぶかで結果が変わりうる、と著者ら自身が書いている。

Hoesら(2024)[2]

米国・ポーランド・香港の6,127人に、事実確認の投稿、偽情報の見分け方のコツ、偽情報についての報道のどれかを見せる実験をしました。どの方法も偽の情報を信じる人を減らしましたが、本当の情報を正確だと思う度合いも下げていました。

ただし、米国で1週間後に追跡したところ、良い影響も悪い影響も消えていました。香港では、はっきりした影響は見られませんでした。

対象: 3つの国・地域のオンライン調査の参加者 / 限界: オンラインの実験で、実生活にそのまま当てはまるとは限らない。偽の主張は研究者が作ったもの。

Guessら(2020)[3]

Facebookが世界14か国で出した「偽ニュースを見分けるコツ」をもとに、米国とインドで実験しました。米国(4,907人)では、偽の見出しを正確だと答えた人が32%から24%に減りました。

同時に、主要な報道機関のニュースを正確だと思う度合いもわずかに下がりました。ただ、その下がり幅は偽ニュースでの下がり幅よりずっと小さく、米国では中央値で20日後の2回目の調査で、統計的に測れなくなっていました。

対象: 米国とインドのオンライン調査、インド農村での対面調査 / 限界: 効果は時間とともに薄れた。インドの対面調査では効果が見られなかった。

Altayら(2024)[4]

米国の3,919人を、疑うことをうながすコツ、「信頼できるニュースは多い」と伝えるコツ、両方を混ぜたコツ、コツなしに分けました。3種類のコツはどれも、本当と偽のニュースを見分ける力を高めていました。

信頼をうながすコツは本当のニュースを受け入れやすくし、疑いをうながすコツは偽ニュースを退けやすくしました。両方を混ぜたコツはその両方に効き、本当のニュースが75%という現実に近い割合のとき最も効果的でした。従来のメディアへの信頼が上がったのは、信頼をうながすコツだけでした。

対象: 米国のオンライン調査の参加者 / 限界: 1回だけの短い働きかけで、効果がどれだけ続くかは調べていない。

ClarkとLewandowsky(2026)[5]

人が罪や不正を告白しているように見えるディープフェイク動画を見せる3つの実験(175人・275人・223人)で、事前に「この動画はディープフェイクです」と警告しても、多くの人が動画の内容に引きずられて判断していました。

1つ目の実験では、警告を受けて偽物だと理解していた人でも、その人物を罪があると見る度合いは、比較のための別の動画を見た人より高いままでした。

対象: 米国(実験1・2)と英国(実験3)のオンライン実験の参加者 / 限界: 質問の形に影響された可能性を著者ら自身が否定できていない。

StefkovicsとGere(2026)[6]

ヨーロッパ27か国の2万7,227人に、ウクライナ侵攻についての見出しを、AIが書いたものと人が書いたもの、本当と偽を混ぜて見せました。偽ニュースは本当のニュースより正確でないと評価され、AIが書いたか人が書いたかによる違いはわずかでした。

対象: 2025年5〜6月のオンライン調査(登録パネル) / 限界: 1つの話題の見出しだけで、ほかの話題に当てはまるかはわからない。

研究を並べると、疑う気持ちとの付き合い方が見えてきます。

研究でわかったこと立て直しのヒント
間違いは「疑いすぎ」の側に寄りやすい[1]疑う力はすでにある。足りないのは「信じてよいもの」の目安
偽情報への注意喚起は、本当の情報への信頼も下げた[2][3]偽情報の話題ばかり追うと、疑いが広がりやすい
その影響は1週間〜数週間で薄れた[2][3]今の「何も信じられない」は、ずっと続くとは限らない
「信頼できる情報は多い」と伝えるコツでも見分ける力が上がった[4]信頼する情報源を決め直すことも、立派な対策
偽と知っていても、動画の印象は判断に残った[5]偽と表示された動画は、見ずに閉じてよい

03 まだわかっていないこと疑いすぎは、どのくらい続く?

数週間より長く続くかは、まだわかっていません。今回紹介した働きかけの実験は、どれも1回の働きかけを長くても数週間追ったものです。日本の人を対象に、AIの偽情報で疑いが強まるかを調べた研究は見つかりませんでした。

  • 偽情報の報道に毎日のようにふれ続けたとき、疑う気持ちが積み重なるのかは調べられていません。
  • 紹介した研究の多くは米国やヨーロッパのもので、日本の報道やSNSの環境で同じ結果になるかはわかりません。
  • 「信頼できる情報は多い」と伝える方法が、AIの動画が増えた環境でも同じように効くかは、まだ確かめられていません。

04 今日からできること何を信じればいいか、どう決め直す?

全部を疑うのをやめ、信頼する情報源を決め、判断を保留する選択肢を持ちます。偽情報の話題を追う量を減らし、偽と表示された動画は見ずに閉じます。どれもお金はかからず、10分ほどで始められます。

1

信頼する情報源を2〜3つ決めておく

公的機関の発表や、訂正を出す報道機関など、ふだん頼りにする先を書き出します。米国の実験では「信頼できるニュースは多い」と伝える短いコツを読んだ人も、見分ける力が上がっていました。[4]

目安 10分(1回だけ)

2

「本当か偽か」の二択に「保留」を足す

決めきれない情報は、信じも否定もせず「今はわからない」で置いておきます。急いで白黒をつけないための工夫です(研究で直接確かめた方法ではなく、考え方の一つです)。

目安 1回5秒

3

偽情報の話題を追いかける量を減らす

偽情報についての報道を1回読んだだけでも、本当の情報まで疑いやすくなる傾向が実験で見られました。[2] 気になる話題は、決めた情報源で1日1回確かめれば十分です(研究からの考え方の一つです)。

目安 1日1回

4

偽と表示された動画は、見ずに閉じる

偽物と知っていても、動画の印象は判断に残っていました。[5]「本当に偽物か自分で確かめたい」と何度も見る必要はありません。

目安 その場で

相手が人かAIかわからないアカウントが気になるときは、SNSの相手がAIかもしれないも参考にしてください。不安や眠れない状態が続くときは、一人で抱え込まず、医療機関や地域の保健所などの相談窓口を頼ってください。

05よくある質問

偽情報が多すぎて、ニュースを見るのが怖くなりました。見るのをやめた方がいいですか?

完全にやめる必要はありません。研究では、人は本当と偽のニュースをおおむね見分けられ、間違いは疑いすぎの側に寄っていました。信頼する情報源を2〜3つ決め、そこで確かめる形にすると、見る量を減らしながら必要な情報は受け取れます。

「これもAIの偽物かも」と思うのは、注意深くてよいことでは?

偽の情報への警戒は役に立ちます。ただ、6,127人の実験では、偽情報への注意喚起が本当の情報を正確だと思う度合いまで下げていました。ふだん目にする情報の多くは本物なので、すべてを疑うと、正しい情報まで受け取れなくなるおそれがあります。

AIが書いたニュースは、人が書いたものより見抜きにくいのですか?

ヨーロッパ27か国の2万7,227人を対象にした2025年の実験では、AIが書いたか人が書いたかによる評価の違いはわずかでした。ただし、ウクライナ侵攻についての見出しだけを使った研究で、動画やほかの話題に当てはまるかはわかっていません。

「偽情報・ディープフェイク」を順に読む
知る → 備える → 起きたとき → 立て直す(この記事)
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出典

  1. Pfänder J, Altay S (2025). Spotting false news and doubting true news: a systematic review and meta-analysis of news judgements. Nature Human Behaviour, 9(4), 688–699. https://doi.org/10.1038/s41562-024-02086-1
  2. Hoes E, Aitken B, Zhang J, Gackowski T, Wojcieszak M (2024). Prominent misinformation interventions reduce misperceptions but increase scepticism. Nature Human Behaviour, 8(8), 1545–1553. https://doi.org/10.1038/s41562-024-01884-x
  3. Guess AM, Lerner M, Lyons B, Montgomery JM, Nyhan B, Reifler J, Sircar N (2020). A digital media literacy intervention increases discernment between mainstream and false news in the United States and India. PNAS, 117(27), 15536–15545. https://doi.org/10.1073/pnas.1920498117
  4. Altay S, De Angelis A, Hoes E (2024). Media literacy tips promoting reliable news improve discernment and enhance trust in traditional media. Communications Psychology, 2, 74. https://doi.org/10.1038/s44271-024-00121-5
  5. Clark S, Lewandowsky S (2026). The continued influence of AI-generated deepfake videos despite transparency warnings. Communications Psychology, 4, 13. https://doi.org/10.1038/s44271-025-00381-9
  6. Stefkovics Á, Gere D (2026). Beliefs and sharing intentions of human- and AI-generated fake news: Evidence from 27 European countries. PNAS Nexus, 5(3), pgag032. https://doi.org/10.1093/pnasnexus/pgag032