偽情報・ディープフェイク

AIで作られた偽の口コミや偽の専門家は、どのくらいある?研究では、人はAIが書いた口コミをほぼ見分けられなかった

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わかっている度 ★★☆ 中研究3本・公的資料5件を整理
手に持ったレンズ越しに逆さに映る家と空
Photo: AntanO / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関の資料をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

星5つの口コミがずらりと並ぶお店。「医師」や「専門家」を名乗る人のおすすめ。どれも、AIで作られたものではないかと不安になる人は少なくありません。研究では、AIが書いた口コミを、人は文章からほとんど見分けられませんでした。だからこそ、文面の「AIっぽさ」ではなく、投稿者の履歴と公的な名簿という、外から確かめられる手がかりに目を向けます。

3行でわかる

  1. 生成AIが書いた口コミと人の口コミを混ぜた実験では、人の判定は当てずっぽうと大差なく、AIの判定ツールもだまされていました。
  2. AIが書いた偽の口コミがどのくらいあるかの確かな数字はまだありません。生成AI以前の研究では、飲食店の口コミの約16%が疑わしいとして除かれていました。
  3. 日本では2023年10月から、広告を隠した口コミは景品表示法の規制対象です。見る側は、投稿者の履歴と公的な名簿で確かめます。

01 結論から言うとAIが書いた偽の口コミは、読んで見抜ける?

AIが書いた口コミは、読んだだけではほぼ見抜けません。実験では人の判定は当てずっぽうと大差なく、AIの判定ツールもだまされていました。文面より、投稿者と評価の偏りを確かめるほうが手がかりになります。

「日本語が不自然」「ほめ方が大げさ」といった文面の違和感は、AIが自然な文章を書けるようになったいま、頼りにくくなっています。研究でも、人は文章の印象だけでは、AIが書いた口コミと人の口コミを区別できませんでした。

一方で、偽の口コミには文章の外にも特徴があります。同じ時期に似た高評価が集中する、投稿者がほかに何も書いていない、といった点です。また「医師」「弁護士」などの肩書は、国の名簿で確かめられるものがあります。SNSのアカウント全体がAIかどうかの見分けにくさは、SNSの相手がAIかもしれないの記事で整理しています。

02 研究とデータでわかっていること偽の口コミはどのくらいあって、なぜ見分けにくい?

生成AI以前の研究で、口コミサイトの飲食店の口コミの約16%が疑わしいとして除かれていました。生成AIの口コミは人にもAIの判定ツールにも見分けにくく、機械で見つける研究が進んでいます。

約16%米国の大手口コミサイトで、仕組みにより疑わしいとして除かれていた飲食店の口コミ(2016年発表の研究)
約3分の1生成AIが書いた口コミを、参加者が「AIが書いた」と正しく見分けられた割合(実験の参加者151人、2024年発表)
6人上の実験で、20件中16件をを正しく見分けてボーナスをもらえた人数(151人中)
2023年10月1日日本で、広告であることを隠した表示が景品表示法の規制対象になった日

Kovács(2024)[1][2]

生成AIに飲食店の口コミを書かせ、口コミサイトに実際に投稿された人の口コミと混ぜて、どちらが書いたかを当ててもらいました。2つの実験で、人はAIが書いた口コミを見分けられませんでした。正解するとお金がもらえる条件でも、人の口コミをAIと間違える誤りと、AIの口コミを人と間違える誤りの両方がよく起きました。別の調査では、AIの判定ツールもだまされていました。大学の発表によると、AIの口コミを正しく見分けられたのは約3分の1で、20件中16件を正しく分類できたらもらえるボーナスを得たのは151人中6人でした。

対象: オンライン調査の参加者(大学の発表では151人)、AIの口コミ100件と人の口コミ100件 / 限界: 飲食店の口コミという1種類の文章で、日本語の口コミや別の業種で同じ結果になるかはわからない。

Salminenら(2022)[3]

大手通販サイトの口コミのデータをもとに、2種類の言語モデルで偽の商品レビューを作り、見分ける実験をしました。機械の分類器はほぼ完璧に見分けた一方で、人の判定者は、正解率も判定者どうしの一致も、機械よりはっきり低くなっていました。著者らは、人には難しくても「機械で機械を見つける」ことはできると述べています。

対象: 大手通販サイトの英語の商品レビュー / 限界: 研究当時の、いまより古い言語モデルで作った文章で、より新しいAIの文章に同じ分類器が通用するかは確かめられていない。

Luca・Zervas(2016)[4]

米国の大手口コミサイトで、サイトの仕組みにより疑わしいとして除かれた飲食店の口コミを、偽の口コミの目安として分析しました。除かれた口コミは約16%で、ふつうの口コミより評価が極端(とても良い、またはとても悪い)な傾向があり、時間とともに増えていました。口コミが少ない、または最近悪い評価を受けたお店ほど、偽の口コミに手を出しやすい傾向も見られました。

対象: 米国の大手口コミサイトの飲食店の口コミ / 限界: 生成AIが広まる前のデータで、除かれた口コミがすべて偽物とは限らない。AIが書いた偽の口コミの割合は示していない。

公的機関の動きもあります。消費者庁は、2023年10月1日から、広告であるのに広告であることを隠した表示(ステルスマーケティング)を景品表示法の規制対象にしました。SNSの投稿やレビューの投稿も含まれます。規制されるのは広告を出す事業者で、頼まれて投稿した人は対象外とされています[5]。2024年6月には、ワクチン接種の費用を割り引く代わりに、地図サービスの口コミ欄へ星5か星4の投稿を頼んでいた診療所の運営法人に、消費者庁が措置命令を出しました[6]。米国の連邦取引委員会は2024年8月、存在しない人の口コミを禁止する規則を発表し、その例として「AIが生成した偽の口コミ」を挙げています[7]。

03 まだわかっていないことAIの偽の口コミや偽の専門家は、増えている?

生成AIが広まってから、AIが書いた偽の口コミや偽の専門家がどのくらい増えたのかを示す、査読を経た確かな数字は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。

  • 日本語の口コミで、AIが書いたものがどのくらい混ざっているかを測った研究は少ない。
  • AIで作った顔写真や架空の経歴で「専門家」を名乗るアカウントについて、数や見分け方を調べた査読研究は、今回調べた範囲では見つからなかった。
  • 機械で偽の口コミを見つける方法が、新しいAIの文章にも通用し続けるかは、まだはっきりしない。

04 今日からできること口コミや専門家が本物か、どう確かめる?

文面の印象で判断せず、投稿者の履歴、評価の時期と偏り、公的な名簿の3つを確かめます。どれも無料で、1件あたり数分でできます。

1

投稿者の名前を押して、ほかの投稿を見る

口コミの投稿者を開き、ほかにどんな投稿をしているかを見ます。投稿がその1件だけ、または短い期間に別々のお店へ高評価ばかり、という場合は、その口コミの重みを下げて読みます。

目安 気になる口コミ3件・2分

2

評価を「新しい順」と「低い順」で並べ替える

同じ時期に似た高評価が集中していないか、低い評価に具体的な不満が書かれていないかを見ます。研究では、疑わしい口コミは評価が極端な傾向がありました。星の平均より、中くらいの評価の具体的な中身が参考になります。

目安 1分

3

「医師」を名乗る人は、国の検索で確かめる

厚生労働省の「医師等資格確認検索」では、姓と名をそろえて入力すると、医師・歯科医師の登録や行政処分の情報を確かめられます。ただし2年に1度の届出をしていない人などは表示されないため、見つからないことだけで偽物とは決めつけず、所属する病院の公式サイトでも確かめます。

目安 3分

4

口コミや専門家の話だけで決めず、別の情報源に当たる

お店や商品なら、公式の情報や行政の発表を、専門家の話なら、その人の名前と所属を別に検索します。ページを離れて外から確かめる考え方は、選挙のディープフェイクに惑わされないためにでも紹介しています。

目安 大きな買い物や契約の前に5分

通販サイトそのものが本物かを確かめたいときは、防犯メディアBOHANの悪質通販サイトの見分け方と、デジタル探偵の偽ショップを注文前に見抜くチェックも参考になります。

困ったときの相談先
消費者ホットライン(188): 口コミを信じて買った商品や契約でトラブルになったとき。近くの消費生活センターや消費生活相談窓口を案内してもらえます。

05よくある質問

AIが書いた口コミは、文章を読めば見分けられる?

研究では、ほぼ見分けられませんでした。生成AIが書いた飲食店の口コミと人の口コミを混ぜた実験では、正解するとボーナスがもらえる条件でも、人の判定は当てずっぽうと大差なく、AIの判定ツールもだまされていました。文面より、投稿者の履歴や評価の偏りを確かめるほうが手がかりになります。

偽の口コミはどのくらいあるの?

AIが書いたものに限った割合は、今回調べた範囲では確かな数字が見つかりませんでした。生成AIが広まる前の米国の大手口コミサイトの研究では、飲食店の口コミの約16%が、サイトの仕組みで疑わしいとして除かれていました。サイトや時期、業種で大きく変わる数字です。

お店に頼まれて書いた口コミは違法なの?

2023年10月1日から、広告であることを隠した表示(ステルスマーケティング)は景品表示法の規制対象になりました。規制されるのは広告を出す事業者で、頼まれて投稿した人は対象外と消費者庁は説明しています。個別のケースが違反かどうかは、消費者庁が判断します。

「医師」を名乗る人が本物か確かめる方法は?

厚生労働省の「医師等資格確認検索」で、氏名から医師・歯科医師の登録を確かめられます。姓と名をそろえて入力する必要があり、2年に1度の届出をしていない人などは表示されないため、見つからないことだけで偽物とは決められません。

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出典

  1. Kovács B (2024). The Turing test of online reviews: Can we tell the difference between human-written and GPT-4-written online reviews? Marketing Letters, 35(4), 651-666. https://doi.org/10.1007/s11002-024-09729-3
  2. Yale School of Management (2024). AI Can Write a More Believable Restaurant Review Than a Human Can([1]の研究の大学による紹介). https://insights.som.yale.edu/insights/ai-can-write-more-believable-restaurant-review-than-human-can
  3. Salminen J, Kandpal C, Kamel AM, Jung SG, Jansen BJ (2022). Creating and detecting fake reviews of online products. Journal of Retailing and Consumer Services, 64, 102771. https://doi.org/10.1016/j.jretconser.2021.102771
  4. Luca M, Zervas G (2016). Fake It Till You Make It: Reputation, Competition, and Yelp Review Fraud. Management Science, 62(12), 3412-3427. https://doi.org/10.1287/mnsc.2015.2304
  5. 消費者庁「ステルスマーケティングに関する景品表示法の規制」. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/stealth_marketing/
  6. 消費者庁 (2024). 景品表示法に基づく措置命令について(ステルスマーケティング告示に該当、令和6年6月7日公表). https://www.caa.go.jp/notice/entry/038178
  7. Federal Trade Commission (2024). Federal Trade Commission Announces Final Rule Banning Fake Reviews and Testimonials. https://www.ftc.gov/news-events/news/press-releases/2024/08/federal-trade-commission-announces-final-rule-banning-fake-reviews-testimonials
  8. 厚生労働省「医師等資格確認検索」はじめにお読みください. https://licenseif.mhlw.go.jp/search_isei/html/readmefirst.htm
  9. 消費者庁「消費者ホットライン」. https://www.caa.go.jp/policies/policy/local_cooperation/local_consumer_administration/hotline/