家族のグループに流れてくるAIの偽画像や偽ニュース、どう備える?研究では、信頼している相手の話ほど確かめられにくかった

家族のグループに、災害や事件の衝撃的な画像や「拡散希望」のニュースが流れてくる。AIで作られたものかもしれないと思っても、家族に「それ偽物だよ」とは言いにくいものです。研究では、信頼している発信元からの話ほど、わざわざ確かめる人が少なくなっていました。身近な人は、偽情報から守る役にも、広める役にもなります。だから、何か起きる前に家族で確かめ方を決めておくと動きやすくなります。
3行でわかる
- 英国の実験では、信頼している発信元の投稿を確かめた人は6.7%で、知らない発信元の20%より少数でした。信頼が「確かめない理由」になりやすいということです。
- 高齢者と健康の偽情報についての26本の研究のまとめでは、家族や親しい友人は偽情報を見分ける助けにも、広める経路にもなっていました。
- 前もって決めておきたいのは「転送する前に出どころを書く」「気づいたら送った本人に個別に、どこが違うかを伝える」の2つです。
01 結論から言うと家族のグループのAIの偽情報には、何を備えればいい?
家族のグループで備えるべきなのは、見抜く目より「確かめ方の約束」です。信頼している相手の話ほど確かめなくなるからです。転送前に出どころを書くことと、間違いは送った本人に具体的に伝えることを、先に家族で決めておきます。
AIで作った画像や文章は、見た目や読み心地だけではほとんど見分けられません。英米の実験では、AIの文章か人の文章かを当てた割合は50%前後でした。詳しくは「AIが書いた偽情報は、人が書いたものよりだまされやすい?」にまとめています。
家族のグループには、もう一つ難しさがあります。送ってくる相手を信頼しているので、確かめる気持ちが起きにくいことです。さらに、間違いを指摘すると関係がぎくしゃくしそうで、黙ってしまうこともあります。
だから、何か流れてきてから考えるのではなく、落ち着いているときに家族で約束を決めておくのが役に立ちます。
02 研究とデータでわかっていること身近な人からの偽情報は、なぜ止めにくい?
研究では、信頼している発信元の投稿ほど確かめる人が少なくなっていました。家族や親しい友人は、偽情報を見分ける助けになる一方で、広める経路にもなります。訂正のしかたも人によって分かれ、黙ってしまう人もいました。
Panizzaら(2022)[1]
英国の5,387人に、SNSに似た画面で科学の話題の投稿を見せました。調べ方の助言を表示された人のうち、信頼している発信元の投稿で、ほかのサイトを調べるなどして確かめた人は6.7%でした。知らない発信元の投稿では20%でした。
同じ内容の記事でも、信頼されている報道機関の投稿では90.7%、あまり信頼されていない報道機関の投稿では77.3%の人が、正しいかどうかを当てていました。人は中身より発信元で判断しがちだということです。
対象: オンラインで募集した英国の成人 / 限界: 使った投稿は15本だけで、家族から届いた投稿を調べたものではない。
Guessら(2019)[2]
2016年の米国大統領選挙のころ、Facebookの共有の記録を見せてもらえた1,191人を調べました。偽ニュースサイトの記事を1本以上共有した人は8.5%で、多くの人は共有していませんでした。
年齢による差ははっきりしていて、65歳以上は最も若い年代の約7倍、偽ニュースサイトの記事を共有していました。
対象: 米国の成人 / 限界: 生成AIが広まる前の選挙の時期の記録で、AIの偽画像は扱っていない。年齢の差の理由までは調べていない。
Vijaykumarら(2021)[3]
ブラジルでWhatsAppを使う726人に、知り合いが新型コロナの偽情報を送ってきたらどうするかを聞きました。訂正のしかたは「グループに返す」「送った本人だけに伝える」「何もしない」の3つに分かれました。
訂正しない傾向は、55歳以上より18〜54歳で強く出ていました。メッセージを批判的に見る力がある人ほど、グループや送った本人に訂正していました。
対象: 2020年5〜6月のブラジルの成人 / 限界: 「どうするか」を本人に聞いた調査で、実際の行動を測ったものではない。
Huら(2026)[4]
高齢者とネット上の健康の偽情報を調べた26本の研究をまとめました。家族や親しい友人は、偽情報を見分けて正す助けになる一方、本人がだまされていると、偽情報を広める経路にもなっていました。
著者らは、信頼できる家族が個別に一緒に確かめることが、身近なつながりで誤解が強まるのを防ぐ助けになりうると書いています。
対象: 2000〜2024年に発表された26本の研究 / 限界: 約7割が新型コロナの話題で、中国・米国・英国の研究が65%を超える。
Spearingら(2025)[5]
米国の1,223人に、AIが書いたとされる誤った記事を読ませました。「AIの情報は誤解を招くことがある」という注意書きは、記事の影響を減らしませんでした。影響を減らしたのは、どこが間違っているかを示す訂正でした。
対象: 米国の成人(2つの実験) / 限界: 家族や友人からの訂正ではなく、実験で示された訂正の効果を調べたもの。
研究を家族のグループに当てはめると、次のように整理できます。
| 家族のグループで起きること | 研究でわかったこと |
|---|---|
| 信頼している人の話はそのまま信じる | 信頼している発信元ほど確かめる人が少なかった[1] |
| 家族が守り役にも広め役にもなる | 親しい人は、見分ける助けにも広める経路にもなっていた[4] |
| 指摘しにくくて黙ってしまう | 訂正は「グループ」「本人だけ」「何もしない」に分かれた[3] |
| 「気をつけて」だけでは変わらない | 一般的な注意書きは効かず、具体的な訂正が効いた[5] |
03 まだわかっていないこと家族で約束を決めると、本当に偽情報は減る?
家族のグループで約束を決めることが、偽情報の共有を実際に減らすかを確かめた研究は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。日本のLINEなどの家族のグループを対象にした研究も、見つかっていません。
- 紹介した研究は、英国・米国・ブラジルなどのものです。日本の家族のグループで同じ結果になるかはわかっていません。
- 多くは生成AIが広まる前の研究で、AIの偽画像や偽の動画を家族で共有する場面を直接調べたものではありません。
- 家族からの訂正が、他人や専門家からの訂正と比べてどのくらい効くのかは、はっきりしていません。
04 今日からできること家族のグループで、前もって何を決めておく?
決めておくのは、転送前に出どころを書くこと、間違いは送った本人に具体的に伝えること、信頼している人の話でも1つだけ確かめることの3つです。家族で一度話すだけなら10分ほどで済み、お金はかかりません。
「転送するときは出どころを一言書く」と決める
「〇〇市のホームページより」「〇〇新聞の記事」のように、どこで見たかを添えて送る約束にします。出どころがわからない画像は「未確認」と書いて送るか、送るのをやめます。年齢で分けず、家族全員の約束にします。
目安 家族で話すのは10分ほど
間違いに気づいたら、送った本人に個別に、どこが違うかを伝える
グループで指摘する前に、まず本人に「この画像、〇〇が違うみたい」と、確かめた先を添えて伝えます。本人が納得したら、本人からグループに訂正してもらいます。広めてしまったあとの伝え方は「AIの偽画像や動画を拡散してしまった」も参考になります。
目安 1回5分ほど
信頼している人の話ほど、1つだけ別の情報源で確かめる
「家族が送ってきたから」ではなく、画像やニュースの中身を1つ選んで、公的機関や報道で同じことが言われているかを検索します。選挙の時期の備えは「選挙のディープフェイクに惑わされないために」にまとめています。
目安 1回1〜2分
疑いすぎて家族の話を何も信じられなくなるのも、つらいものです。そう感じたときは「偽情報やディープフェイクが気になって、何も信じられなくなった」も読んでみてください。
05よくある質問
家族が送ってきた画像がAIの偽物っぽいとき、グループで指摘していい?
指摘してよいですが、まず送った本人に個別に伝えるほうが角が立ちにくくなります。ブラジルの調査でも、訂正の仕方は「グループに返す」「送った人だけに伝える」「何もしない」の3つに分かれていました。伝えるときは「偽物かも」だけでなく、どこが違うかと確かめた先を添えます。
年配の家族のほうが、偽情報を広めやすいの?
米国の2016年のFacebookの研究では、65歳以上が最も若い年代の約7倍、偽ニュースサイトの記事を共有していました。ただし共有した人自体は8.5%と少数でした。ブラジルの調査では、若い世代のほうが訂正せずに黙っている傾向がありました。年齢で決めつけず、家族全員で同じ約束を持つほうが現実的です。
「AIの情報は間違うことがあります」とグループに書いておけば十分?
それだけでは足りない可能性があります。米国の1,223人の実験では、一般的な注意書きは誤った記事の影響を減らしませんでした。影響を減らしたのは、どこが間違っているかを示す具体的な訂正でした。
出典
- Panizza F, Ronzani P, Martini C, Mattavelli S, Morisseau T, Motterlini M (2022). Lateral reading and monetary incentives to spot disinformation about science. Scientific Reports, 12, 5678. https://doi.org/10.1038/s41598-022-09168-y
- Guess A, Nagler J, Tucker J (2019). Less than you think: Prevalence and predictors of fake news dissemination on Facebook. Science Advances, 5(1), eaau4586. https://doi.org/10.1126/sciadv.aau4586
- Vijaykumar S, Rogerson DT, Jin Y, de Oliveira Costa MS (2021). Dynamics of social corrections to peers sharing COVID-19 misinformation on WhatsApp in Brazil. Journal of the American Medical Informatics Association, 29(1), 33-42. https://doi.org/10.1093/jamia/ocab219
- Hu H, Jin G, Zhang X (2026). Older adults and online health misinformation: a systematic literature review. BMC Psychology, 14, 954. https://doi.org/10.1186/s40359-026-04714-z
- Spearing ER, Gile CI, Fogwill AL, Prike T, Swire-Thompson B, Lewandowsky S, Ecker UKH (2025). Countering AI-generated misinformation with pre-emptive source discreditation and debunking. Royal Society Open Science, 12(6), 242148. https://doi.org/10.1098/rsos.242148


