創作・著作権

AIに作品をまねされて、発表を続けるのが怖い。守りの柱は「載せ方・記録・申し立て」で、見えない加工の効果は研究で分かれている

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わかっている度 ★★☆ 中研究4本・公的資料4件・公式ヘルプ1件を整理出典照合済み(2026-10-10)
瓶に立てた絵筆
Photo: Joshua Niedermayer allesistdesign / CC0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関の資料をAIが調べて整理しました(法律の判断や商品の紹介はしていません。出典は末尾)。

自分の作品に似たAI画像を見たあと、次の作品を載せる手が止まってしまう。そう感じるのは自然なことです。文化庁の資料でも、AIで作られたものが大量に出回ることで「創作活動の委縮」につながるというクリエイターなどの懸念が挙げられています。[2]やめるか続けるかの二択の前に、載せ方・記録・申し立ての3つで備えながら発表を続ける方法があります。

3行でわかる

  1. 文化庁の資料では、AIの学習用の収集は、robots.txtやログインが必要な場所で「一定程度」防げるとされています。公表日などの記録は、似た生成物を見つけたときの材料になります。
  2. 画像に見えない加工をしてAIのまねを妨げる技術は、開発チームの評価では高い効果、別の研究チームの評価では簡単な処理で弱まるという結果で、評価が分かれています。
  3. 描き手20人への聞き取りでは、見えない加工の技術を知っていたのは10人で、実際に試したのは1人でした。

01 結論から言うとAIにまねされたら、発表はやめるべき?

やめるかどうかを決める前に、載せ方・記録・申し立ての3つで備える方法があります。どれも完全には防げませんが、文化庁の資料や描き手の調査に出てくる、お金のかからない手段です。

文化庁のガイダンスは、権利を使うかどうかは権利者自身の選択に委ねられているとしています。[1] 発表を続けるのも、休むのも、場所を変えるのも、あなたが決めてよいことです。

この記事は「続けるための備え」に絞ります。まねされた絵が著作権侵害に当たるかの線引き(作風と表現の違い)は自分の絵をAIにまねされたにまとめています。AIの絵と比べて自信がなくなる気持ちについては、AI時代のメンタルヘルスのAIの絵と比べて、自分の絵に自信がなくなるをご覧ください。

02 研究とデータでわかっていること作品を守る方法は、どこまで効く?

文化庁は、学習用の収集を「一定程度」防ぐ手段として技術的な措置を挙げています。見えない加工の技術は、研究チームによって結論が分かれています。描き手への聞き取りでは、この技術を実際に試した人は少数でした。

20人中10人見えない加工の技術を知っていた描き手(米国の研究チームの聞き取り、2025年発表)
20人中1人見えない加工の技術を実際に試した描き手(同じ聞き取り)
92%超開発チームの評価で、見えない加工がAIのまねを妨げた割合(通常の条件、2023年発表)
40%超別のチームの評価で、簡単な処理のあと、加工した絵からのまねが、加工なしの絵からのまねより良いと選ばれた割合の中央値(50%で差なし、2025年発表)

文化庁著作権課(2024)[1]

ウェブサイトのrobots.txtに、AIの学習用データを集めるクローラ(自動で集めるプログラム)を断る記載をすると、収集を一定程度防げるとしています。ログインが必要な場所に置くことも、収集を防ぐうえで役立つとしています。

似たAI生成物を見つけたときは、まず似ているかを比べます。そのうえで、元の作品が公表されていて入手できたことや、高度に似ていることなどが、元の作品をもとにした(依拠性)と示す要素になるとしています。

対象: 著作権者など権利者向けの解説 / 限界: robots.txtは、収集する側が記載に従う設定になっていることが前提とされています。

Shanら(2023, USENIX Security)[3]

作品にほとんど見えない加工を加えて、AIが画風をまねるのを妨げる技術を開発したチームの論文です。1,000人を超える描き手の協力で評価し、弱い加工でも、通常の条件では92%超、まねする側が対抗策をとった場合でも85%超でまねを妨げたと報告しています。

対象: 開発したチーム自身による評価 / 限界: 2023年当時のAIでの結果です。評価方法を変えた別の研究では、異なる結論が出ています(次の研究)。

Hönigら(2025, ICLR)[4]

見えない加工の技術3種類を、別の研究チームが検証しました。画像にノイズを加えてから拡大するという簡単な処理をしてから学習させると、まねの成功率の中央値はどの技術でも40%を超えました。50%は、加工なしの絵からのまねと見分けがつかない状態です。

著者らは、こうした加工だけでは描き手を確実には守れないと結論づけ、別の守り方の開発を求めています。

対象: 10人の描き手(過去の画家5人・現代の描き手5人)の絵、1人あたり18枚。判定は描き手ではない一般の評価者 / 限界: 当時のAIと加工ツールでの検証です。開発チームの評価方法とは測り方が異なります。

Almedaら(2025, CHI)[5]

ネットで作品を発表する描き手20人などへの聞き取りをもとに、ネットの創作の場がどう支えられ、AIの学習などでどう揺らいでいるかを整理した研究です。

見えない加工の技術を知っていたのは20人中10人で、実際に試したのは1人でした。

対象: 米国の大学の研究チームによる、描き手20人と、作品のデータをAIの学習に使った経験のある8人への聞き取り / 限界: 少人数の聞き取りで、どの手段がまねを減らしたかは測っていません。

KawakamiとVenkatagiri(2024, Creativity & Cognition)[6]

生成AIが描き手に与える影響を、SNSの投稿から分析しました。描き手が「AIを使ったのでは」と疑われることが、ストレスや仕事を失う不安につながっていると報告しています。

対象: 描き手に関するSNSの投稿 / 限界: 短い論文で、人数や影響の大きさは測っていません。

手段ごとに並べると、こうなります。

手段期待できること限界
robots.txt・ログインが必要な場所学習用の収集を一定程度防ぐ[1]収集する側が記載に従う必要がある[1]
見えない加工開発チームの評価では高い効果[3]簡単な処理で弱まるという評価もある[4]
透かし・プロフィールの方針無断で使ってほしくないという意思を示せるまねを減らす効果は測られていない
公表日と制作途中の記録依拠性を示す要素(公表され入手できた)の材料[1]記録だけで侵害かどうかは決まらない
サービスへの申し立て削除やアクセス制限を検討してもらえる[7]判断するのはサービス側

03 まだわかっていないことどの守り方が一番効くかは、わかっている?

まだわかっていません。守り方どうしを比べて、まねが実際に減ったかを測った研究は見つかりませんでした。見えない加工の効果は研究チームで結論が分かれ、日本の描き手の調査も見当たりません。

  • 透かしやプロフィールの記載が、AIによるまねを減らすかを測った研究は見つかりませんでした。
  • 見えない加工の評価はどちらも当時のAIとツールでのもので、AIが更新されたあとの効果はわかりません。
  • まねされたあと発表を続けた人と休んだ人の、その後を追った研究は見つかりませんでした。
  • 日本の描き手を対象にした査読つきの調査は、今回の調査では見つかりませんでした。

04 今日からできること発表を続けるために、何から始める?

載せる場所と形を見直し、公表日と制作途中のデータを残し、見つけたら記録してから申し立てと無料の相談を使います。どれも費用はかからず、1つ5〜30分ほどで始められます。

1

載せる場所と形を決め直す

自分のサイトなら、robots.txtに学習用クローラを断る記載を入れます。特に守りたい作品は、ログインが必要な場所に置く選択もあります。[1]

目安 30分

2

公表日と制作途中のデータを残す

作品ごとに、投稿のURL・公開日・下書きや途中のファイルを1つのフォルダにまとめます。元の作品が公表されていたことは依拠性の要素の1つとされています。[1] 途中のファイルは、自分で描いた経緯を見せる材料にもなります。

目安 1作品5分

3

プロフィールに方針を1文で書く

「無断転載・AI学習への利用はお断りします」のように書いておきます。まねを減らす効果を測った研究は見つかっていませんが、無断で使ってほしくないという意思をはっきり示せます。

目安 5分

4

見つけたら、記録してから申し立てる

URL・日時・画面を保存してから、投稿先の公式ヘルプにある権利侵害の窓口を使います。Googleの法的な削除リクエストは、審査のうえでブロック・制限・削除を検討するしくみです。通知の写しは、連絡先を除いて第三者のデータベースで公開されることがあります。[7]

目安 1件15分

5

判断に迷ったら、無料の弁護士相談を使う

文化庁はAIと著作権に関する無料の弁護士相談を提供しています。[1] 「文化芸術活動に関する法律相談窓口」はWebフォームで申し込み、原則10日以内(土日祝を除く)にメールで返事が来ます。[8]

目安 申し込み15分

6

発表の場所は急いで移さない

場所を移したり公開をやめたりすると、これまで見てくれていた人とのつながりが途切れることもあります。今の場所は残し、載せる作品を選ぶところからで十分です。

目安 考え方の切り替えだけ

自分の作品が学習に使われたかを知る方法は自分の作品がAIの学習に使われたか知る方法はある?に、自分がAIで作ったものを使うときの注意はAIで作った文章や画像を仕事で使っても大丈夫?にまとめています。

困ったときの相談先
文化芸術活動に関する法律相談窓口(文化庁、Webフォーム): AIと著作権を含む、創作活動の法律相談に。[8]
法テラス・サポートダイヤル 0570-078374(平日9〜21時、土曜9〜17時): どこに相談すればよいかわからないときに。[9]

05よくある質問

作品の公開をやめれば、AIにまねされずにすみますか?

文化庁の資料では、ログインが必要な場所に置くことは収集を防ぐうえで役立つとされています。一方で、場所を移したり公開をやめたりすると、見てくれる人とのつながりが途切れることもあります。全部やめる前に、載せる作品と場所を分ける方法もあります。

見えない加工をすれば、作品は守られますか?

研究で評価が分かれています。開発チームの評価では通常の条件で92%超まねを妨げた一方、別のチームの評価では、簡単な処理のあとのまねが加工なしの場合と見分けにくくなりました。加工だけに頼らず、記録や申し立てと組み合わせるのが現実的です。

似た作品を見つけたら、相手に直接言ってもいいですか?

この記事では法的な判断はできません。文化庁のガイダンスは、侵害かどうかの判断や警告の送付などを適切に行うため、弁護士などへの相談が重要だとしています。文化庁の無料の弁護士相談や、法テラス・サポートダイヤル(0570-078374)で相談先を確かめてください。

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出典

  1. 文化庁著作権課 (2024). AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス(令和6年7月31日). https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/pdf/94097701_01.pdf
  2. 文化審議会 著作権分科会 法制度小委員会 (2024). AIと著作権に関する考え方について(令和6年3月15日). https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/pdf/94037901_01.pdf
  3. Shan S, Cryan J, Wenger E, Zheng H, Hanocka R, Zhao BY (2023). Glaze: Protecting Artists from Style Mimicry by Text-to-Image Models. 32nd USENIX Security Symposium. https://www.usenix.org/conference/usenixsecurity23/presentation/shan
  4. Hönig R, Rando J, Carlini N, Tramèr F (2025). Adversarial Perturbations Cannot Reliably Protect Artists From Generative AI. International Conference on Learning Representations (ICLR 2025). https://proceedings.iclr.cc/paper_files/paper/2025/hash/af800ac69aea2fb5c4bcf8c6a5f3c79d-Abstract-Conference.html
  5. Almeda SG, Kim JO, Hartmann B (2025). Creativity Supportive Ecosystems: A Framework for Understanding Function and Disruption in Online Art Worlds. Proceedings of the 2025 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems. https://doi.org/10.1145/3706598.3713734
  6. Kawakami R, Venkatagiri S (2024). The Impact of Generative AI on Artists. Proceedings of the 16th Conference on Creativity & Cognition, 79–82. https://doi.org/10.1145/3635636.3664263
  7. Google Legal ヘルプ「法的な理由でコンテンツを報告する」. https://support.google.com/legal/answer/3110420?hl=ja
  8. 文化庁「文化芸術活動に関する法律相談窓口」. https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunka_gyosei/kibankyoka/madoguchi/index.html
  9. 日本司法支援センター(法テラス). https://www.houterasu.or.jp/