創作・著作権

共同制作やサークルで、AIを使うかのルールは先に決めたほうがいい?研究では、進め方の食い違いはチームの成果と結びつき、最初の取り決めが土台になっていた

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わかっている度 ★☆☆ 低研究5本・公的資料0件を整理出典照合済み(2026-10-20)
机の上の絵筆と画材
Photo: Slyronit / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(商品の紹介や法的な判断はしていません。出典は末尾)。

合同誌や合作、サークルの作品づくりで、誰かがAIを使い始めた。使っていいのか、表示はどうするのか、誰も決めていなかった。あとからもめるのが心配になるのは自然なことです。創作サークルのAIのルールそのものを調べた研究は、まだ見当たりません。ただ、チームの研究では、進め方をめぐる対立は成果の低さと結びついていました。始める前に「AIをどこまで、どう表示するか」を短く決めておくことが、いちばん手軽な備えです。

3行でわかる

  1. 116の研究(8,880グループ)を合わせた分析では、人間関係や進め方をめぐる対立は、グループの成果の低さと安定して結びついていました。
  2. 物語の実験では、AIの案を受け取った書き手の作品に、読み手が持ち主の取り分を少なくとも25%減らす評価をしていました(補足の分析)。共同制作で同じことが起きるかは、まだ調べられていません。
  3. 始める前に、使ってよい作業、表示のしかた、名前の載せ方、守れなかったときの扱い、見直す日の5つを決めて書き残すと、あとの食い違いを減らせます。

01 結論から言うとサークルのAIルールは、始める前に決めるべき?

決めておくほうが安全です。チームの研究では、進め方の対立は成果の低さと結びつき、約束ごとと進め方の計画の両方の質が高いチームが高い成果を長く保ちました。AIの使い方は人により考えが違うため、先に言葉にしておきます。

AIの使い方は、同じサークルの中でも考えが分かれやすいテーマです。「案出しくらいなら使ってもいい」と思う人もいれば、「少しでも使うなら表示すべき」と考える人もいます。

決めないまま作業を進めると、完成間近になって「それはAIで作ったの?」という話が出てきます。そのときには作業がほとんど終わっていて、やり直しにも表示の追加にも手間がかかります。

だからこそ、作業を分担する前の、まだ誰も困っていない段階で決めます。ルールは厳しくても緩くてもかまいません。

02 研究とデータでわかっていること決めずに進めると、何がもめやすい?

もめやすいのは、進め方・役割の食い違いと、作品の評価や名前の扱いです。116研究の分析では進め方の対立は成果の低さと結びつき、AIの案を使った物語では読み手が書き手の取り分を減らしていました。

116研究グループ内の対立を調べた研究を合わせた分析(8,880グループ、2012年発表)。進め方の対立は成果の低さと安定して結びついた
25%以上AIの案を受け取った書き手の作品で、読み手が持ち主の取り分を減らした幅(英国の書き手293人・読み手600人、2024年発表、補足の分析)
8.1%AIの案を5つまで見られた書き手の物語で、新しさの評価が上がった幅。一方で物語どうしは似やすくなった(同じ研究)
d=0.61同じAIの絵に「人が作った」と表示したとき、「価値」の評価が上がった大きさ(ネット調査の参加者150人、2023年発表)

de Witら(2012)[1]

グループ内の対立を調べた116の研究(合計8,880グループ)を合わせて分析しました。人間関係の対立と、進め方の対立(誰が何をするか、どう進めるかをめぐる食い違い)は、グループの成果の低さと安定して結びついていました。

一方、作業の中身についての意見の違いは、強い悪影響とは結びついていませんでした。意見が違うこと自体より、進め方が食い違うことのほうが問題になりやすい、と読めます。

対象: さまざまなグループを調べた116の研究 / 限界: 相関を合わせた分析で、創作サークルやAIの使い方を直接扱ったものではありません。

MathieuとRapp(2009)[2]

経営シミュレーションで競う32チームを、時間を追って調べました。最初に、チームでの約束ごと(チャーター)と作業の進め方の計画をどれだけしっかり作ったかを評価しました。

進め方の計画の質が高いチームは、低いチームより成果が高くなりました。さらに、約束ごとと計画の両方が高いチームが、もっとも高い成果を長く保っていました。

対象: 経営大学院(MBA)の学生32チーム / 限界: 経営の課題での研究で、創作の共同作業やAIのルールを調べたものではありません。

DoshiとHauser(2024)[3]

英国の293人に8文の短い物語を書いてもらい、一部の人はAIから物語の案を受け取れるようにしました。AIの案を5つまで見られた人の物語は、新しさの評価が8.1%上がりました。一方で、AIの案を使った物語どうしは、人だけで書いた物語どうしより似ていました。

補足の分析では、読み手はAIの案を受け取った書き手について、物語の持ち主としての取り分を少なくとも25%減らしていました。多くの読み手は、AIを使ったことを作品に表示すべきだと答えていました。

対象: 英国の書き手293人と、評価した読み手600人 / 限界: 持ち主の取り分の結果は、事前に決めた主な分析ではなく補足の分析です。一人で書く物語の実験で、共同制作ではありません。

Epsteinら(2020)[4]

AIで作った絵ができるまでの説明文を読んでもらい、関わった人にどれだけ手柄と責任があるかを割り振ってもらいました。AIを「人が使う道具」ではなく「自分で描く作り手」のように説明すると、AIを使った作家への責任と報酬の割り振りが少なくなりました。

対象: クラウドソーシング(Amazon Mechanical Turk)で募った参加者 / 限界: 説明文を読んで判断する実験で、実際の作品やサークルでの評価ではありません。

Bellaicheら(2023)[5]

実際にはすべてAIが作った絵に、「人が作った」か「AIが作った」の表示をランダムに付けて評価してもらいました。「人が作った」と表示された絵は、好き・美しさ・深み・価値のすべてで評価が高くなりました。差が大きかったのは価値(d=0.61)と深み(d=0.47)でした。

対象: ネット調査サービス(Amazon Mechanical Turk)で集めた150人 / 限界: 表示だけを変えた実験です。共作の一部にAIを使った作品が、どう評価されるかはわかっていません。

研究を、共同制作で起きやすい場面に当てはめると、次のように整理できます。

起きやすいこと研究でわかったこと
「AIを使うなんて聞いていない」と食い違う進め方の対立は、グループの成果の低さと結びついた[1]
始めてからルールを作ろうとしてもまとまらない約束ごとと進め方の計画の両方の質が高いチームが、高い成果を長く保った[2]
作品全体の評価が下がる「AI」の表示だけで、価値や深みの評価が下がった[5]
誰の作品か、名前や取り分でもめるAIの案を使った書き手は、持ち主としての取り分を減らされた[3]。AIを作り手のように説明すると、作家への手柄の割り振りが減った[4]
作品どうしが似てくるAIの案を使った物語どうしは、人だけの物語どうしより似ていた[3]

03 まだわかっていないことどんなルールにすれば、もめずに済む?

どんなAIルールなら共同制作でもめにくいかを、直接調べた研究は今回調べた範囲では見つかりませんでした。わかっているのは、進め方の食い違いが問題になりやすいことと、最初の約束ごとが土台になることまでです。

  • 「AI禁止」「一部だけ許可」「自由」のどれがサークルの満足度を高めるかは、比べた研究がありません。
  • 紹介した研究は、経営大学院の学生、英国の書き手、海外のネット調査の参加者などが対象です。日本の同人誌や合作で同じ結果になるかはわかっていません。
  • 共作の一部にだけAIを使った場合に、使っていないメンバーの評価がどう変わるかは、まだ調べられていません。

04 今日からできること始める前に、何を決めておけばいい?

決めるのは、使ってよい作業、表示のしかた、名前の載せ方、守れなかったときの扱い、見直す日の5つです。話し合いは30分ほど、決めたことは共有のメモに残し、全員が読めるようにします。

1

「使ってよい作業」を作業ごとに書き出す

「AIは使う・使わない」の二択にせず、案出し、下絵、背景、色の調整、文章の推敲、誤字の確認、翻訳のように作業を並べて、一つずつ可・不可を決めます。境目があいまいなものは「迷ったら事前に相談」と書いておきます。

目安 15分、作業を分担する前に1回

2

表示と名前の載せ方を決める

AIを使った部分を作品のどこに、どう書くかを決めます。誰がどの部分を担当したかも、奥付や説明文にどう載せるかをそろえます。読み手は表示で評価を変えることがあるため、表示は一人で決めず全員で決めます。投稿先やイベントにAI作品の決まりがあれば、それに合わせます。

目安 10分、発表や頒布の前にもう一度確認

3

守れなかったときと、見直す日を決めて残す

ルールと違う使い方が見つかったら「その部分を差し替える」「表示を足す」など、責めずに直す手順を決めておきます。あわせて「〇月〇日に見直す」と日付を入れ、決めたことを共有のメモやチャットに固定して残します。

目安 5分、見直しは作業の中間で1回

作品を販売したり、コンテストや公募に出したりする予定があるなら、権利と応募要項の確認も合わせて行います。公募の考え方は「AIを使った作品を、コンテストや公募に出してもいい?」、仕事で使う場合は「AIで作った文章や画像を仕事で使っても大丈夫?」にまとめています。表示の考え方は「AIで作った画像を「自分の作品」として投稿してもいい?」も参考になります。

困ったときの相談先
作品の売上の分け方や権利をめぐって話がこじれ、法律の相談先がわからないときは、法テラスで相談先の案内を受けられます。窓口の番号や受付時間は、法テラスの公式ページで最新のものを確かめてください。

05よくある質問

サークルで「AIは禁止」と決めてもいい?

決めてかまいません。大事なのは、禁止か許可かより、どこまでを「AIを使った」と数えるかを全員が同じ意味で理解していることです。下書きの案出し、誤字の確認、背景の素材づくりなど、作業ごとに線を引くと、あとで「それも禁止だったの?」という食い違いを防げます。

メンバーの一人だけがAIを使いたい場合はどうする?

その人の担当部分だけ使ってよいか、作品全体の表示をどうするかを話し合います。物語の実験では、AIの案を受け取って書いた人の取り分を、読み手が少なくとも25%減らしていました。作品にAIの表示が付くと、使っていないメンバーの評価にも関わりうるため、表示の仕方は全員で決めます。

ルールを決めたあとで、AIの使い方を変えたくなったら?

作業を始める前に「見直す日」を決めておき、その日に全員で話し合って改めます。途中で一人が黙って変えると、進め方をめぐる対立になりやすくなります。116の研究を合わせた分析では、進め方の対立はチームの成果の低さと結びついていました。

AIを使った部分の著作権は誰のもの?

この記事では法的な判断はしません。権利の扱いは作品ごとの事情で変わるため、サークルの中だけで決めつけないことが大切です。仕事として発表・販売する作品なら、関連記事「AIで作った文章や画像を仕事で使っても大丈夫?」や、法律の専門家への相談もあわせて確かめてください。

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出典

  1. de Wit FRC, Greer LL, Jehn KA (2012). The paradox of intragroup conflict: a meta-analysis. Journal of Applied Psychology, 97(2), 360-390. https://doi.org/10.1037/a0024844
  2. Mathieu JE, Rapp TL (2009). Laying the foundation for successful team performance trajectories: The roles of team charters and performance strategies. Journal of Applied Psychology, 94(1), 90-103. https://doi.org/10.1037/a0013257
  3. Doshi AR, Hauser OP (2024). Generative AI enhances individual creativity but reduces the collective diversity of novel content. Science Advances, 10(28), eadn5290. https://doi.org/10.1126/sciadv.adn5290
  4. Epstein Z, Levine S, Rand DG, Rahwan I (2020). Who Gets Credit for AI-Generated Art? iScience, 23(9), 101515. https://doi.org/10.1016/j.isci.2020.101515
  5. Bellaiche L, Shahi R, Turpin MH, Ragnhildstveit A, Sprockett S, Barr N, Christensen A, Seli P (2023). Humans versus AI: whether and why we prefer human-created compared to AI-created artwork. Cognitive Research: Principles and Implications, 8, 42. https://doi.org/10.1186/s41235-023-00499-6