創作・著作権

AIで作った文章や画像を仕事で使っても大丈夫?文化庁の考え方では「既存の作品に似ていないか」の確認が出発点

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わかっている度 ★★☆ 中研究2本・公的資料5件を整理出典照合済み(2026-10-09)
机の上の契約書と万年筆
Photo: Blogtrepreneur / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関の資料をAIが調べて整理しました(法律の判断や商品の紹介はしていません。出典は末尾)。

AIで作ったバナー画像や記事の下書きを、仕事でそのまま使っていいのか迷う人は少なくありません。文化庁の考え方では、AIで作ったものも、既存の作品との「類似性」と「依拠性」がそろうと著作権侵害になり得るとされています。使う前に、似たものがないか確かめるのが出発点です。

3行でわかる

  1. 文化庁の考え方では、AIで作ったものでも、既存の作品との類似性と依拠性があれば著作権侵害になり得るとされています。
  2. 作るだけなら私的使用などの範囲で許されても、ネットで公開・配布する「利用」は範囲外になる場合が多いとされています。
  3. 使う前に、検索で似た作品がないか確かめ、使った指示(プロンプト)を記録しておくことが勧められています。

01結論から言うと

文化庁の考え方では、AIで作った文章や画像も、既存の作品に似ていて、それをもとにしたと認められれば侵害になり得るとされています。仕事で使う前に「似ていないか」を確かめるのが基本です。

著作権の侵害かどうかは、2つの点で判断されます。1つは「類似性」です。既存の作品の表現の本質的な特徴が感じ取れるほど似ているかどうかです。AIを使わずに作った場合の判例と同じように判断されるとされています[1]。

もう1つは「依拠性」です。既存の作品をもとにして作ったかどうかです。文化庁の考え方では、従来の考え方を踏まえて、AIを使った場合にどう判断されるかが整理されています[1]。

注意したいのは、元の作品がAIの学習に使われていた場合、本人がその作品を知らなくても侵害になり得る点です。文化庁のチェックリストは、これを生成AIの「仕組み上の特性」として、理解したうえで使うよう求めています[2]。

なお、この記事はAIで作ったものを「使う側」の話です。自分の絵がAIにまねされた側の話は自分の絵をAIにまねされたの記事にまとめています。

02研究とデータでわかっていること

文化庁は2024年に、AIと著作権の考え方と、AIを仕事で使う人向けのチェックリストを公表しました。研究者が取り出そうとした実験では、AIが学習した文章や画像をそのまま出力することがあると確かめられています。

2つ侵害の判断に使われる要件。類似性と依拠性(文化庁、2024年)
3つAI生成物に著作権が生じるかを判断する要素の例。指示の内容、試行の仕方、選び方(文化庁、2024年)
1,000件超画像生成AIのモデルから取り出せた学習データの画像(2023年発表の研究)
数百件文章生成AIのモデルから一字一句そのまま取り出せた学習データの文章(2021年発表の研究)

文化庁の資料をもとに、AIで作ったものを使うときに見られる点を整理すると次のとおりです。

見られる点文化庁の考え方
類似性既存の作品の表現上の本質的な特徴が感じ取れるか。作風などのアイデアが似ているだけでは足りない[1]
依拠性作品そのものや題名・キャラクター名を指示に入れると認められやすい。作品がAIの学習に使われていた場合も、通常は推認され得る[1][2]
作る場面と使う場面私的使用などで作るのは許される場合でも、公開・配布は範囲外になる場合が多い[2]
生成物の著作権AIは著作者になれない。指示がアイデアどまりなら著作物性はなく、人の創作的寄与があれば認められることがある[1]

文化審議会 著作権分科会 法制度小委員会(2024)[1]

AIで作ったものに著作権が生じるかは、人の「創作的寄与」がどれだけ積み重なっているかで判断されるとされました。表現を具体的に示す詳細な指示は寄与と評価されやすく、長い指示でもアイデアにとどまるものは影響しないとされています。

試行回数が多いこと自体や、複数の候補から選ぶだけでは、寄与とは評価されないとされています。人が創作的に加筆・修正した部分には、通常、著作物性が認められるとされています。

対象: 現行の著作権法の解釈(2024年3月15日時点) / 限界: 文書自体に法的な拘束力はなく、個々の生成物ごとに判断されます。

文化庁著作権課(2024)[2]

AIを仕事で使う人向けに、使う前の確認事項をまとめています。生成物を使う前に、既存の作品と似ていないかをネットの文章検索・画像検索などで確かめることが必要とされています。生成に使った指示(プロンプト)を確認できるように残しておくことも望まれるとしています。

対象: 生成AIを業務で使う人・業務外で使う人 / 限界: すべて実施すれば法的責任を問われない、という意味ではないと資料自体に書かれています。

Carliniら(2021・2023, USENIX Security)[4][5]

文章生成AIのモデルから、学習データの文章を一字一句そのまま数百件取り出せました。画像生成AIのモデルからも、学習データの画像を1,000件以上取り出せました。AIが学習したものを、ほぼそのまま出力することがあるとわかりました。

対象: 当時の代表的な文章生成・画像生成のモデル / 限界: 研究者が意図して取り出そうとした実験で、ふだんの使い方でどのくらいの頻度で起きるかを測ったものではありません。

03まだわかっていないこと

生成AIと著作権を直接扱った判例・裁判例は、文化庁の考え方の公表時点でまだ乏しいとされています。どこまで似たら侵害かの線引きは、事案ごとの判断です。

  • 「表現上の本質的な特徴」に何が当たるかは、個別の事例に即して判断されるとされています[1]。
  • 学習データに作品が含まれていても、技術的な対策しだいで依拠性が否定される場合があり得るとされていますが、異なる意見もあったと記されています[1]。
  • 文化庁の考え方は公表時点のもので、裁判例や技術の変化に応じて見直すとされています[1]。
  • ふだんの使い方で、既存の作品にそっくりな出力がどのくらい起きるかを測った研究は、今回の調査では見つかりませんでした。

04今日からできること

使う前に検索で似たものがないか確かめ、指示を記録し、利用規約と職場のルールを確認します。どれも無料で、1件あたり数分から始められます。

1

公開する前に、似た作品がないか検索する

画像は画像検索、文章は特徴的な一文を文章検索にかけます。文化庁のチェックリストが例に挙げている確かめ方です。

目安 1件5〜10分

2

指示に作品そのものや作品名を入れない

既存の画像の入力や、作品の題名・キャラクター名などの固有名詞を指示に入れると、依拠性が認められやすくなるとされています。

目安 指示を書くたびに10秒

3

使った指示と作った日をメモに残す

指示(プロンプト)と生成した日、使ったサービス名を、成果物と同じフォルダに保存します。あとで作り方を説明できるようにするためです。

目安 1件2分

4

AIサービスの利用規約と職場のルールを確かめる

他人の作品の入力を禁じている規約もあるとされています。職場にAI利用のルールがなければ、使い方を上司に一度確認します。

目安 15分(初回のみ)

5

著作物として取引するときは、AIを使ったことを伝える

文化庁のチェックリストでは、AI生成物を著作物として契約などの取引の対象にするとき、AIを使ったことや著作物性を説明することが求められるとされています。

目安 納品時に1文

AIが作った文章の中身の誤りを確かめる方法は、仕事でAIに作らせた文章や資料、そのまま出して大丈夫?にまとめています。社外の資料をAIに入力するときの注意はChatGPTに個人情報や会社の情報を入力しても大丈夫?も参考になります。

困ったときの相談先
文化芸術活動に関する法律相談窓口(文化庁、Webフォーム): AIと著作権に関する相談。芸術家以外のAI利用者も、文化庁のガイドラインに関する相談ができます。
法テラス・サポートダイヤル(0570-078374): どこに相談すればよいかわからないとき。平日9時〜21時、土曜9時〜17時。

05よくある質問

AIで作った画像や文章に著作権はあるの?

文化庁の考え方では、AIは著作者になれず、AIへの指示が表現に至らないアイデアにとどまる場合、生成物に著作物性は認められないとされています。一方で、表現を具体的に示す詳細な指示や、人が創作的に加筆・修正した部分には、著作物性が認められることがあるとされています。個々の生成物ごとに判断されます。

自分で楽しむだけなら、似た画像を作っても大丈夫?

文化庁のチェックリストでは、個人が私的使用の目的で生成することは、権利制限規定の範囲内であれば許諾なく行えるとされています。ただし、ネットで公開したり配ったりする「利用」は範囲外になる場合が多いとされています。私的使用は著作権法で「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内」での使用と定められています。仕事で公開・配布するなら、使う前の確認が欠かせません。

知らないうちに既存の作品に似てしまったら、どうなるの?

文化庁の考え方では、AIの利用者が元の作品を知らなくても、その作品がAIの学習に使われていた場合は、通常、依拠性があったと推認され得るとされています。故意や過失がなければ、損害賠償や刑事罰の対象にはならないと考えられています。ただし、差止め(使うのをやめる請求)や、使用料に相当する額の返還を求められることはあり得るとされています。

文化庁の「考え方」は法律なの?

法律ではありません。文化審議会の小委員会が公表時点の考え方を整理したもので、文書自体に法的な拘束力はないとされています。自分のケースがどう判断されるかは、弁護士への相談で確かめるものです。

AIと著作権のことで、どこに相談できる?

文化庁の「文化芸術活動に関する法律相談窓口」は、クリエイターのほか、芸術家以外のAI利用者からも文化庁のガイドラインに関する相談を受け付けており、Webフォームで申し込めます。相談先がわからないときは法テラス・サポートダイヤル(0570-078374)も使えます。

出典

  1. 文化審議会 著作権分科会 法制度小委員会 (2024). AIと著作権に関する考え方について(令和6年3月15日). https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/pdf/94037901_01.pdf
  2. 文化庁著作権課 (2024). AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス(令和6年7月31日). https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/pdf/94097701_01.pdf
  3. 著作権法(昭和45年法律第48号)第2条・第30条. e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000048
  4. Carlini, N., Tramèr, F., Wallace, E., et al. (2021). Extracting Training Data from Large Language Models. 30th USENIX Security Symposium. https://www.usenix.org/conference/usenixsecurity21/presentation/carlini-extracting
  5. Carlini, N., Hayes, J., Nasr, M., et al. (2023). Extracting Training Data from Diffusion Models. 32nd USENIX Security Symposium. https://www.usenix.org/conference/usenixsecurity23/presentation/carlini
  6. 文化庁. 文化芸術活動に関する法律相談窓口. https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunka_gyosei/kibankyoka/madoguchi/index.html
  7. 法テラス(日本司法支援センター). 法テラス・サポートダイヤル. https://www.houterasu.or.jp/