AIを使った詐欺にあったあと、また狙われるのが怖い。研究では被害者の連絡先は名簿で出回り、手口を知らせる郵便だけで再被害が22.4%減っていた

AIの声の電話や、偽の動画の広告にだまされて、お金を失った。手続きが一段落しても、知らない番号が鳴るたびに体がこわばる。その怖さには、研究で見ると理由があります。そして、再び狙われたときに防げる手立てもわかってきています。
3行でわかる
- 詐欺グループの間では、過去にお金を払った人の名簿が出回ることがあり、「取り戻せます」と近づく二度目の詐欺も報告されています。また狙われる怖さには根拠があります。
- 一方、米国の実験では、手口と「また狙われるかもしれない」ことを知らせる郵便を受け取った被害者は、4か月の再被害が最大で22.4%減っていました。
- 知らない連絡には出ない、お金の話はかけ直して確かめる、話せる人を1人つくる。怖さを消すより、狙われても防げる決まりを持つほうが、暮らしを戻す近道になります。
01 結論から言うと詐欺にあうと、また狙われやすくなる?
狙われやすくなる可能性はあります。被害者の連絡先が名簿として売り買いされ、同じ人が何度も被害にあう例が研究で確かめられています。ただし、手口を知らされた人では再被害が減っていて、備えで変えられる部分もあります。
だます側は、一度お金を払った人を「話を聞いてくれる相手」として記録し、別の手口や別のグループに回すことがあります。被害のあとに不審な連絡が増えたと感じるのは、気のせいとは限りません。
一方で、狙われることと、だまされることは同じではありません。次の連絡が来たときに「これは前と同じ型だ」と気づければ、お金は守れます。この記事は、被害にあったあとの「また狙われる怖さ」を扱います。自分を責めてしまう気持ちはAIを使った詐欺にだまされて自分を責めてしまうとき、生活費の立て直しはAIを使った詐欺でお金を失い、暮らしが苦しいときで整理しています。
02 研究とデータでわかっていることまた被害にあう人は、どのくらいいる?
イングランドとウェールズの調査では、ネットの詐欺などの被害にあった人の約18%が1年に2回以上被害にあっていました。米国の約100万人の記録では、70〜80代で次の被害にあう危険が50代より高くなっていました。手口を知らせる郵便を送ると再被害は減っていました。
DeLiema, Langton, Brannock, Preble(2023)[1]
米国の郵便局の捜査機関が押収した、4つの詐欺グループの記録を使った研究です。記録には、だました相手の名前・住所・年齢と、何回お金を払ったかが書かれていました。約100万人の被害者を分析すると、70代と80代の人は50代と比べて次の被害にあう危険が9%高く、20代は24%低くなっていました。
対象: 2000〜2018年に郵便を使った詐欺にあった米国の人 / 限界: 学会で発表された抄録です。郵便の詐欺の記録で、AIを使った電話や動画の詐欺ではありません。
Havers, Tripathi, Burton, McManus, Cooper(2024)[2]
イングランドとウェールズの犯罪調査に答えた16歳以上の35,069人を分析しました。過去1年にネットを使った詐欺やパソコンの不正使用の被害にあった人は2,564人で、そのうち455人(17.75%)が1年のうちに2回以上被害にあっていました。
対象: 2019/20年の調査に答えた、過去1年にネットを使った人 / 限界: 本人の申告にもとづく結果です。2回目が同じ犯人によるものかはわかりません。
Schokkenbroek, Snaphaan(2026)[3]
ネットのロマンス詐欺の手口を調べた50本の研究を整理し、だます側の動きを9つの段階に分けました。最後の段階は「被害のあと」で、過去の被害者の連絡先をまとめた名簿が詐欺グループの間で売られること、「お金を取り戻す」と装う二度目の詐欺、別人を名乗って再び近づくことが報告されていました。最近はAIで作った顔写真や、ディープフェイクのビデオ通話が使われる例もあると書かれています。
対象: ロマンス詐欺についての50本の研究 / 限界: AIを使った手口についての研究は、まだ少ないとされています。
DeLiema, Brannock, Preble, Langton(2024)[4]
郵便の詐欺にお金を払った高齢者の住所を、くじで3つに分けた実験です。1つめには「郵便の詐欺にお金を払っていて、また狙われるかもしれない」と知らせ、見分け方を書いた手紙を1通、2つめにはその手紙に加えて注意を呼びかける資料を2週間おきに5通送り、3つめには何も送りませんでした。その後4か月の再被害は、何も送らない場合と比べて、手紙1通で8.6%、計6通で22.4%減っていました。
対象: 米国の高齢の郵便詐欺の被害者 / 限界: 学会で発表された抄録で、人数などの詳しい数字は示されていません。4か月より先の効果はわかりません。
DeLiema, Gao, Brannock, Langton(2025)[5]
郵便の詐欺に応じたことのある米国の世帯から集めた934件の回答を調べると、知らない番号の電話に出る、懸賞に応募する、勧誘の電話を切らないといった行動をまとめた指標が高い人ほど、1年間の被害の回数が多くなっていました。孤独やお金の余裕のなさも、被害の回数の多さと関連していました。一方、人と会う回数や同居の家族がいることは、被害の回数と関連していませんでした。
対象: 米国の高齢者で、すでに詐欺に応じたことがある人 / 限界: 一時点の調査で、どちらが原因かまでは言えません。
Chen, Li, Chua, Chen(2026)[6]
中国の大学生765人では、「詐欺は身近な危険だ」という意識とは別に、「自分は詐欺に対処できる」という感覚も、詐欺を防ぐ行動の多さと関連していました。ただ、危険を意識していることが対処できる感覚につながる道すじは、確かめられませんでした。
対象: 中国の大学生 / 限界: 一時点の調査です。詐欺の被害者に限った結果ではありません。
Bai, Ho, Sung, Hung, Tsai(2026)[7]
詐欺の被害者の心の影響を調べた21本の研究をまとめたレビューです。不安や落ち込み、恥ずかしさのほかに、人づきあいから離れる、お金やネットの場面を避ける、身の安全に自信が持てなくなるといった変化が報告されていました。くり返し、または長く被害にあった人では、こうした影響がより強いとする研究もありました。
対象: 詐欺の被害を受けた大人 / 限界: 研究の方法がまちまちで、数字をまとめて比べてはいません。
03 まだわかっていないことAIを使った詐欺でも、同じことが言える?
まだわかっていません。再被害の研究は、郵便の詐欺や高齢者を対象にしたものが中心です。AIの声や偽動画の詐欺にあった人が、どのくらい再び狙われるかを調べた研究は、今回の調査では見つかりませんでした。
- 再被害の数字は、米国の郵便の詐欺と、イングランドとウェールズのネットの詐欺の調査によるものです。日本の人やAIを使った手口で同じかはわかりません。
- 手口を知らせる郵便の実験は学会の抄録で、人数や、どんな人に効きやすかったかの詳しい数字は公開されていません。
- 名簿がどのくらいの範囲で売り買いされているか、何年くらい使われるのかは、研究では確かめられていません。
- 被害のあとの怖さが、時間とともにどう変わるかを長く追った研究は、ほとんどありません。
04 今日からできることまた狙われても、防ぐには?
自分に来やすい手口を知っておく、知らない連絡には出ない、お金の話は必ずかけ直す、「取り戻せます」には返事をしない。怖さを消すより、狙われても防げる決まりを持つことが、立て直しの土台になります。
「自分に来やすい次の手口」を2つ書き出す
研究では、被害者は同じ型の詐欺や「お金を取り戻せます」という二度目の詐欺に狙われていました。前回の流れ(最初の連絡、急がせた言葉、払い方)を紙に書き、「これが来たら止まる」と決めます。
目安 10分・1回
知らない番号やメッセージには、その場で応じない
知らない番号は留守番電話で用件を聞き、知らない相手のメッセージのリンクは開かないと決めます。米国の研究では、知らない番号の電話に出る、勧誘の電話を切らないといった行動が多い人ほど、被害の回数が多い傾向がありました。
目安 設定5分・毎回
お金の話は、自分で調べた番号にかけ直す
家族、銀行、警察、役所を名乗る相手でも、いったん切って、登録してある番号や公式の番号にかけ直します。AIの声や動画は本物とよく似ているので、声や見た目で判断しない手順にしておきます。
目安 1回5分
「取り戻せます」「調査します」には返事をしない
被害のあとに、第三者を名乗って「お金を取り戻す」と言う連絡は、研究で報告されている二度目の詐欺の型です。返事をせず、気になるときは相手の書いてきた連絡先ではなく、自分で調べた窓口に確かめます。
目安 毎回
「怪しいと思ったら話す人」を1人決める
家族や友人に「お金の話が来たら一度相談する」と伝えておきます。米国の研究では、孤独な人ほど被害の回数が多い傾向がありました。
目安 1回の会話
警察相談専用電話(#9110): 不審な連絡が続く、脅されているとき。身の危険を感じたら110番。
消費者ホットライン(188): 「お金を取り戻せる」などの勧誘や、契約のトラブルを相談したいとき。お住まいの地域の消費生活センターにつながります。
ロマンス詐欺のあとに相手から再び連絡が来たときの気持ちはロマンス詐欺の相手は、AIの写真で作られた人だったで、未遂のあとの不安はAIの声で家族をかたる電話があった。被害は防げたのに不安が続くで扱っています。
05よくある質問
一度詐欺にあうと、また狙われやすくなるの?
可能性はあります。過去の被害者の連絡先の名簿が詐欺グループの間で出回ることが報告され、イングランドとウェールズの調査では被害者の約18%が1年に2回以上被害にあっていました。ただ、手口を知らされた人では再被害が減っていました。
「お金を取り戻せます」という連絡が来たら?
返事をせず、お金も払わないでください。研究では、被害者に「取り戻してあげる」と近づいて、さらにお金を取る二度目の詐欺が報告されています。気になるときは、相手が書いてきた連絡先ではなく、自分で調べた警察の相談窓口や消費生活センターに確かめます。
怖くてネットや電話を使うのがいやになった。おかしい?
おかしくありません。研究のまとめでも、お金やネットの場面を避けるといった変化が報告されていました。全部やめるより、知らない連絡には出ない、お金の話は確かめるといった決まりを作るほうが、暮らしは戻しやすくなります。
眠れない、外出が怖いなどのつらさが2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、お住まいの自治体の精神保健福祉センターに相談できます。
出典
- DeLiema M, Langton L, Brannock MD, Preble E (2023). Aging and mass marketing fraud: Evidence on repeat victimization using perpetrator data. Innovation in Aging, 7(Suppl 1), 260(学会抄録). https://doi.org/10.1093/geroni/igad104.0866
- Havers B, Tripathi K, Burton A, McManus S, Cooper C (2024). Cybercrime victimisation among older adults: A probability sample survey in England and Wales. PLoS One. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0314380
- Schokkenbroek JM, Snaphaan T (2026). Love as Bait: A Scoping Review and Crime Script Analysis of Online Romance Scams. Trauma, Violence, & Abuse. https://doi.org/10.1177/15248380251361046
- DeLiema M, Brannock MD, Preble E, Langton L (2024). A fraud awareness mail campaign significantly reduces rates of revictimization among older victims. Innovation in Aging, 8(Suppl 1), 114(学会抄録). https://doi.org/10.1093/geroni/igae098.0367
- DeLiema M, Gao S, Brannock D, Langton L (2025). The Effects of Risky Behaviors and Social Factors on the Frequency of Fraud Victimization Among Known Victims. Innovation in Aging. https://doi.org/10.1093/geroni/igae111
- Chen L, Li H, Chua YP, Chen J (2026). When awareness is not enough: online fraud susceptibility, threat awareness, anti-fraud self-efficacy and online scam prevention behavior among Chinese university students. Frontiers in Psychology. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1857855
- Bai J, Ho MH, Sung HT, Hung CS, Tsai JH (2026). Mental health and psychosocial sequelae of fraud victimization: a systematic review. Frontiers in Psychology. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1805536


