AIを使った詐欺でお金を失い、暮らしが苦しい。家計の相談と公的な貸付が使え、詐欺の損失は雑損控除の対象外

返金の手続きを終えても、減ったお金はすぐには戻りません。家賃や毎月の支払いが重く感じる時期が、しばらく続くかもしれません。研究では、被害のあとにお金の問題が続いた人ほど、つらさも強くなっていました。この記事では、被害から数週間〜数か月たった時期に家計を立て直すための公的な相談先と制度を、公式の説明のとおりに整理します。
3行でわかる
- 生活が苦しいときは、地域の自立相談支援機関に相談できます。家計改善支援では、家計を「見える化」して、一緒に計画を立てます。
- 低所得世帯などは、社会福祉協議会の生活福祉資金を借りられる場合があります。なお国税庁は、詐欺や恐喝の損失には雑損控除を使えないと説明しています。
- 「お金を取り戻せる」「審査なしで貸す」という連絡は、二次被害の入口です。借金が重いときは、借りる前に多重債務の相談窓口か法テラスへ。
01 結論から言うと詐欺のあと、家計の立て直しはどこに相談する?
詐欺のあとの家計の立て直しは、まず住んでいる地域の自立相談支援機関に相談するのが入口です。借金の返済が重いときは、財務局などの多重債務相談窓口や法テラスが相談先になります。
この記事は、お金を払ってしまった「あと」の、長めの立て直しを扱います。振り込んだ直後の手続きは AIの声の電話で振り込んでしまったときにすること に、カードや決済で払った場合の返金の求め方は 有名人のAI動画の投資広告で払ってしまったとき にまとめています。
生活困窮者自立支援制度について、厚生労働省は「生活に困りごとや不安を抱えている場合は、まずは地域の相談窓口に」と案内しています。支援員が相談を受け、どんな支援が必要かを一緒に考えて、支援プランを作ります。
困りごとの種類ごとに、公式の説明で案内されている相談先を表にしました。
| 困りごと | 公式に案内されている相談先 |
|---|---|
| 生活費が足りない・家計が回らない | 地域の自立相談支援機関(自立相談支援・家計改善支援)[4] |
| 一時的にお金を借りたい | 市区町村の社会福祉協議会(生活福祉資金)[5] |
| 借金の返済が重い | 財務局の多重債務相談窓口、法テラスなど[6] |
| 怪しい貸付・「取り戻せる」という勧誘 | 消費者ホットライン188、警察[6][9] |
家計改善支援事業は、厚生労働省の説明では、家計の状況を「見える化」して根本的な課題をつかみます。そのうえで、相談者が自分で家計を管理できるよう、支援計画の作成、関係機関へのつなぎ、必要に応じた貸付のあっせんなどを行います[4]。
税金については、先に知っておきたい点が1つあります。国税庁は、雑損控除(災害や盗難の損失を所得から差し引く仕組み)の対象を、災害・盗難・横領などに限っています。そして「詐欺や恐喝の場合には、雑損控除は受けられません」と書いています[10]。自分の場合の税の扱いは、この記事では判断しません。
02 研究とデータでわかっていること被害のあとのお金の困りごとは、心にも響く?
響くことがわかっています。被害のあとにお金の問題が続いた人ほど、つらさが強い傾向がありました。一方で、つらさは失った金額の大きさだけでは決まっていませんでした。
DeLiema, Burnes, Langton(2021)[2]
米国の全国調査で、個人情報を悪用された65歳以上の被害者2,000人あまりを分析しました。被害のあとにお金の問題が続いた人や、解決にかかった時間が長い人ほど、気持ちの苦痛が強くなっていました。貧困線以下で暮らす人は、自分で負担する損失を抱えやすいという結果でした。
対象: 米国の犯罪被害調査(2014・2016年)に答えた65歳以上 / 限界: 詐欺ではなく個人情報の悪用の被害で、本人の申告にもとづく一時点の調査です。どちらが原因かまでは言えません。
Richardson, Elliott, Roberts(2013)[3]
担保のない個人の借金(クレジットカードの借金など)と健康の関係を、65本の研究から整理しました。借金がある人は、うつのオッズ比が2.77、心の不調全体のオッズ比が3.24で、多くの研究で借金が重いほど健康が悪い傾向でした。
対象: 一般の人・学生・債務相談の利用者などの調査 / 限界: 詐欺の被害者に限った研究ではありません。著者は、どちらが原因かを確かめるのは難しいと書いています。
Bai, Ho, Sung, Hung, Tsai(2026)[1]
詐欺の被害者の心の影響を調べた21本の研究をまとめたレビューです。心の傷は、お金の損失が片づいたあとも続くことが多くありました。そして、損失額の大きさより、気持ちを操られたことや信頼を裏切られたことと強く関連していました。
対象: 詐欺の被害を受けた大人(国や手口はさまざま) / 限界: 研究ごとに測り方が違うため、数字をまとめる分析はしていません。
この3つを合わせると、家計の立て直しと気持ちの立て直しは、別々に進むものだと考えられます。お金の問題を長引かせないことは、つらさを軽くする助けになりえます。ただ、お金が戻っても気持ちは残ることがあります。気持ちのほうは 詐欺にだまされて自分を責めてしまうとき にまとめています。
03 まだわかっていないこと公的な支援で、被害者の暮らしは戻る?
まだわかっていません。詐欺の被害者が家計の相談や貸付を使ったあと、暮らしがどう変わったかを調べた研究は、今回の調査では見つかりませんでした。
- 日本で、詐欺の被害のあとに借金や生活の困窮に陥った人の割合を示す公的な数字は、今回確認できませんでした。
- 借金と心の不調の関連は、どちらが原因かがまだ確定していません。
- 被害のあとの回復を長く追った研究や、支援の効果を確かめた研究を増やす必要があると、2026年のレビューの著者は書いています。
- AIを使った詐欺の被害者に限って、お金と暮らしへの影響を調べた研究は見つかりませんでした。
04 今日からできること家計を立て直すため、何から始めればいい?
支払いを紙1枚に書き出す、地域の相談窓口に電話する、借りる前に業者の登録と金利を確かめる。この3つから始められます。どれもお金はかかりません(電話の通話料は除く)。
これから出ていくお金と期限を、紙1枚に書き出す
家賃、光熱費、携帯代、ローンやカードの返済を、金額と支払日つきで並べます。家計改善支援も家計の「見える化」から始まるので、相談のときにそのまま持っていけます。
目安 30分
地域の自立相談支援機関か、社会福祉協議会に電話する
家計全体の相談は自立相談支援機関へ。生活福祉資金の問い合わせは、市区町村の社会福祉協議会が受けています。生活福祉資金の対象は、低所得世帯(市町村民税非課税程度)、障害者世帯、65歳以上の人がいる世帯です。返す見込みがあるかも考慮されます[5]。
目安 電話1本10分
借りる前に、業者の登録と金利を確かめる
ヤミ金融は、登録を受けていない業者や、上限を超える金利で利息を求める業者のことです[8]。出資法の上限金利は年20%です。金融庁の「登録貸金業者情報検索」で登録を確かめ、「誰でも簡単に借りられる」などの言葉には惑わされないようにします[8]。
目安 5分
「お金を取り戻せる」という連絡には払わない
消費者庁は、「国の救済制度で返金を受けられる」「返金手続を代行する」などと持ちかける二次被害に注意を呼びかけています[9]。きっぱり断り、迷ったら188に相談します。
目安 連絡が来たとき
借金を返すために新しく借りる前に、立ち止まってください。金融庁は、借りる前に「本当に借入れが必要か」「無理なく確実な返済が可能か」「契約内容を理解できたか」を確かめるよう呼びかけています[7]。返済が重いと感じた時点で、多重債務の相談窓口に相談できます。2026年は9月から12月まで「多重債務者相談強化キャンペーン」が行われ、各地で無料の相談会が開かれています[7]。
法テラス・サポートダイヤル(0570-078374): どの制度や窓口を使えばよいかの案内。平日9時〜21時、土曜9時〜17時(祝日・年末年始を除く)。個別の法律相談はしていません。
消費者ホットライン 188: 最寄りの消費生活センターなどにつながります。怪しい貸付や「取り戻せる」という勧誘の相談に。
金融庁 金融サービス利用者相談室(0570-016811、平日10時〜17時): 貸金業などの相談に。
気持ちのつらさが続くときは、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)にも相談できます。
05よくある質問
詐欺でだまし取られたお金は、確定申告で控除できる?
国税庁の説明では、雑損控除の対象は災害・盗難・横領などに限られ、「詐欺や恐喝の場合には、雑損控除は受けられません」とされています。自分の場合の税の扱いは、個別に確かめてください。
生活福祉資金は誰でも借りられる?
誰でもではありません。対象は、低所得世帯(市町村民税非課税程度)、障害者世帯、65歳以上の人がいる世帯です。連帯保証人を立てれば無利子、立てなければ年1.5%です(緊急小口資金と教育支援資金は無利子)。返す見込みがあるかも考慮されます。問い合わせは市区町村の社会福祉協議会へ。
家計の相談は、収入が少ない人しか使えない?
厚生労働省は、自立相談支援を「仕事や生活など、様々な困難により生活に困窮しているかた」向けの制度と説明し、困りごとがあればまず地域の窓口へと案内しています。家賃相当額が出る住居確保給付金のように、収入や資産の条件がある支援もあります。
「被害金を取り戻します」という連絡が来た。本物?
消費者庁は、返金や国の救済制度をうたって新たにお金を求める連絡を、投資トラブルの二次被害として注意を呼びかけています。お金は払わず、188に相談してください。
出典
- Bai, J., Ho, M. H., Sung, H. T., Hung, C. S., & Tsai, J. H. (2026). Mental health and psychosocial sequelae of fraud victimization: a systematic review. Frontiers in Psychology, 17. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1805536
- DeLiema, M., Burnes, D., & Langton, L. (2021). The Financial and Psychological Impact of Identity Theft Among Older Adults. Innovation in Aging, 5(4), igab043. https://doi.org/10.1093/geroni/igab043
- Richardson, T., Elliott, P., & Roberts, R. (2013). The relationship between personal unsecured debt and mental and physical health: a systematic review and meta-analysis. Clinical Psychology Review, 33(8), 1148–1162. https://doi.org/10.1016/j.cpr.2013.08.009
- 厚生労働省「生活困窮者自立支援制度」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000059425.html
- 厚生労働省「生活福祉資金貸付制度」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/seikatsu-fukushi-shikin1/index.html
- 金融庁「多重債務についての相談窓口」 https://www.fsa.go.jp/soudan/index.html
- 金融庁「多重債務者対策・貸金業法等について」「多重債務者相談強化キャンペーン2026の実施について」(2026年7月30日) https://www.fsa.go.jp/policy/kashikin/index.html / https://www.fsa.go.jp/policy/kashikin/campaign/campaign2026.html
- 財務省中国財務局「ヤミ金融って何?」 https://lfb.mof.go.jp/chugoku/kinyusyouken/kin3/yamikinnani.html
- 消費者庁「投資系トラブルの二次被害にご注意ください!」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/caution/caution_045/index.html
- 国税庁「No.1110 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)」(令和8年4月1日現在法令等) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1110.htm
- 法テラス「法テラス・サポートダイヤル」 https://www.houterasu.or.jp/site/soudanmadoguchi-houseido/support-dial.html
- 消費者庁「消費者ホットライン」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/local_cooperation/local_consumer_administration/hotline/
- 金融庁「金融サービス利用者相談室」 https://www.fsa.go.jp/receipt/soudansitu/index.html
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」電話相談 https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/soudan/tel/


