偽情報・ディープフェイク

地震や大雨のとき、SNSに流れるAIの偽画像にどう備える?研究では、デマは公式の発表より先に広がり、自治体の公式な訂正で収まった

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わかっている度 ★★☆ 中研究4本・公的資料0件を整理出典照合済み(2026-10-17)
携帯ラジオの裏側
Photo: Raimond Spekking / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

大きな地震や大雨のとき、SNSには被害の写真や「拡散希望」の投稿が次々に流れてきます。その中に、AIで作った偽の画像がまざるかもしれません。災害のさなかに一枚ずつ見抜くのは、とても難しいことです。研究では、災害のデマは公式の発表より先に広がりやすく、自治体の公式な訂正が届くと収まっていきました。だから、起きる前に「どこを見て確かめるか」を決めておくのがいちばんの備えになります。

3行でわかる

  1. ドイツ語話者104人の実験では、AIで作った風景や建物の画像をAIだと当てられたのは63.7%でした。5つの画像生成モデルのうち1つの画像では、29%しか当てられていません。
  2. 東日本大震災のデマの研究では、浦安市の公式アカウントが訂正を出したあと、訂正が一気に広がってデマは消えていきました。
  3. 備えは3つです。自分の地域の公式な発信先を先に登録しておくこと、災害の画像は公式の発表と照らすまで転送しないと決めること、「〇日に大地震」の投稿は公式ページそのものを開いて確かめることです。

01 結論から言うと災害のときのAIの偽画像には、何を備えればいい?

災害のときに備えるべきなのは、画像を見抜く目より「確かめる先」です。AIの画像は見た目では当てにくく、災害のデマは公式の発表より先に広がるからです。自分の地域の自治体や気象庁の発信先を、落ち着いているうちに決めておきます。

災害が起きると、人は少しでも早く状況を知りたくなります。テレビや公式の発表が追いつかないうちは、SNSの写真や動画が頼りになりがちです。

その中には、本物の写真だけでなく、昔の別の災害の写真や、AIで作った画像もまざります。こわい場面ほど目を引くので、確かめる前に広まってしまうことがあります。

災害のさなかは、気持ちに余裕がありません。だから「その場で見抜く」より、「前もって確かめる先を決めておく」ほうが現実的です。

02 研究とデータでわかっていること災害のデマやAIの画像は、どう広がる?

研究では、災害のデマは公式の発表より先に広がりやすく、不安や間違った行動につながっていました。AIで作った風景の画像は見た目では当てにくい一方で、自治体の公式な訂正が届くと、デマが収まった例が報告されています。

63.7%AIで作った風景・建物・室内の画像を、AIだと当てられた割合(ドイツ語話者104人、2025年4月の調査)
29%同じ調査で、5つの画像生成モデルのうち最も当てにくかった1つの画像をAIだと当てられた割合
約21時間東日本大震災で、最初のデマの投稿から訂正の投稿が急に増えるまでの時間(2011年の日本語の投稿)
21,204同じデマで、浦安市の訂正の投稿が拡散された数。デマの投稿の最多は2,078だった

Högemannら(2025)[1]

ドイツ語を話す大人104人に、風景・建物・室内の画像50枚(本物25枚、AIで作ったもの25枚)を見せ、AIで作ったものかを答えてもらいました。AIの画像をAIだと当てられたのは全体で63.7%でした。

画像を作ったモデルによって差が大きく、5つのモデルのうち1つで作った画像は29%しか当てられませんでした。年齢が上がるほど当てにくい傾向があり、AIを使う経験や画像を編集する経験による差は見られませんでした。

対象: 2025年4月にネットで参加したドイツ語話者の大人104人 / 限界: 災害の画像を使ったものではなく、参加者も研究者のつながりなどで集めた少人数。

Takayasuら(2015)[2]

東日本大震災の直後、「ガスタンクの爆発で有害な雨が降る」という根拠のない投稿が広がりました。研究者は地震から1週間の日本語の投稿を調べ、デマの投稿に関わった利用者が38,226人、訂正の投稿に関わった利用者が56,818人いたことを示しました。

最初の訂正は、デマが出てから90分後に投稿されていました。しかし初めのうちはデマのほうが速く増え、訂正では止まりませんでした。浦安市が公式サイトと公式アカウントで「科学的な根拠はない」と発信したあと、訂正が一気に広がり、デマの投稿は消えていきました。

対象: 2011年3月11日からの1週間の日本語の投稿 / 限界: 1つのデマだけを調べたもので、生成AIが広まる前の出来事。

Hilbertsら(2025)[3]

自然災害とSNSの偽情報を調べた研究を探し、173本の候補から条件に合う9本をまとめました。誤った投稿は公式の発表より先に広がることが多く、公式の情報への信頼を下げ、不安や恐れを強めていました。

その結果、必要のない避難や安全の手順を守らないといった行動につながり、救助や支援の手が本当に必要な所に届きにくくなることが示されていました。まとめた研究には、ハリケーンのときに出回った、サメが街を泳ぐ偽の写真や加工された被害写真を調べたものも含まれています。

対象: 9本の研究(8本はX、旧Twitterを調べたもの) / 限界: 多くが米国の研究(日本の研究は1本)で、AIで作った画像を中心に調べたものではない。

Dalloら(2023)[4]

2020年3月から2022年3月までの、地震の予知に関する82,129件の投稿を調べました。根拠のない予知の投稿は、ふだんから流れ続けていて、揺れを感じる地震があった直後に増えていました。

根拠のない予知の投稿の中には、公的機関の地震の発表にリンクしたり、公的機関のアカウントをつけたりしているものもありました。公式のリンクがついていても、中身が正しいとは限らないということです。

対象: 世界の英語の投稿 / 限界: 日本語の投稿を中心に調べたものではない。

研究を、災害のときにSNSで起きることに当てはめると、次のように整理できます。

災害のときに起きること研究でわかったこと
見た目で見抜こうとするAIの風景の画像は、モデルによっては3割ほどしか当てられなかった[1]
公式の発表より先にデマが届く誤った投稿は公式の発表より先に広がりやすかった[3]
個人の訂正だけでは止まらない自治体の公式な発信のあと、訂正が一気に広がった[2]
「公式のリンク付き」でも安心できない根拠のない予知の投稿が公的機関の発表にリンクしていた[4]

03 まだわかっていないこと災害のAIの偽画像は、どのくらい出回っている?

日本の災害で、AIで作った画像がどのくらい出回り、どれだけ行動に影響したかを数えた査読つきの研究は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。ここで紹介した研究の多くは、生成AIが広まる前のものです。

  • 災害の場面のAIの画像を、人がどのくらい見分けられるかを直接調べた研究は見つかっていません。紹介した実験は、ふつうの風景や建物の画像を使っています。
  • 東日本大震災の研究は1つのデマを調べたものです。ほかのデマやAIの画像でも、公式の訂正で同じように収まるかはわかっていません。
  • 前もって確かめる先を決めておくことが、災害のときの拡散を実際に減らすかを確かめた研究も、見つかっていません。

04 今日からできること災害が起きる前に、何を決めておく?

決めておくのは、自分の地域の公式な発信先を登録すること、災害の画像は公式の発表と照らすまで転送しないこと、「〇日に大地震」のような投稿は公式ページそのものを開いて確かめることの3つです。どれも無料で、15分ほどで準備できます。

1

住んでいる市区町村と気象庁の発信先を、今のうちに登録する

市区町村の公式サイトをブラウザのブックマークに入れ、公式のSNSアカウントがあればフォローしておきます。家族が離れて住んでいるなら、その地域の分も入れます。東日本大震災では、市の公式な発信のあとにデマが収まっていきました。

目安 10分ほど、1回だけ

2

「災害の画像は、公式の発表と照らすまで転送しない」と決める

被害の写真や動画が流れてきたら、1で登録した発信先や報道で、同じ場所の同じ出来事が伝えられているかを見ます。見つからないうちは転送しないか、「未確認」と書き添えます。家族のグループでの約束の決め方は「家族のグループに流れてくるAIの偽画像や偽ニュース、どう備える?」にまとめています。

目安 1回1〜2分

3

「〇日に大地震」の投稿は、リンク先ではなく公式ページを自分で開く

根拠のない予知の投稿は、揺れのあとに増え、公的機関の発表にリンクしていることもあります。投稿のリンクから飛ばずに、気象庁などの公式ページを自分で開き、本当にそう書いてあるかを確かめます。

目安 1回2〜3分

自分や家族が助けを求めるときは、SNSに書く前に119番や110番に電話するのが基本です。うっかり偽の画像を広めてしまったときは「AIの偽画像や動画を本物と思って拡散してしまった」が参考になります。疑いすぎて何も信じられなくなったときは「偽情報やディープフェイクが気になって、何も信じられなくなった」も読んでみてください。

05よくある質問

災害のときのAIの偽画像は、よく見ればわかる?

見た目だけで見分けるのは難しいと考えたほうが安全です。ドイツ語話者104人の実験では、AIで作った風景や建物の画像をAIだと当てられたのは63.7%で、5つのモデルのうち1つの画像では29%でした。画像そのものより、公式の発表や報道で同じ出来事が伝えられているかを確かめます。

「〇月〇日に大地震が来る」という投稿が流れてきたら?

転送せず、気象庁などの公式ページを自分で開いて確かめます。英語の投稿を2年分調べた研究では、根拠のない予知の投稿は揺れのあとに増え、公的機関の発表にリンクしているものもありました。リンクが公式でも、書かれている中身が公式の発表と同じとは限りません。

善意で広めた救助の投稿や被害の画像が、偽物だったら?

気づいた時点で、自分の投稿に「確認したら違っていた」と訂正を書き添えます。東日本大震災のデマの研究では、市の公式な訂正のあと、訂正の投稿が広がってデマが収まっていきました。訂正の書き方は、このメディアの「AIの偽画像や動画を本物と思って拡散してしまった」の記事にまとめています。

家族が災害のデマを信じてしまったら、どう伝える?

グループで指摘する前に、本人に個別に、どこが違うかと確かめた先を添えて伝えるほうが角が立ちにくくなります。市区町村の公式サイトや公式アカウントの発表を一緒に見るのも一つの方法です。

「偽情報・ディープフェイク」を順に読む
知る → 備える(この記事) → 起きたとき → 立て直す
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出典

  1. Högemann M, Betke J, Thomas O (2025). What you see is not what you get anymore: a mixed-methods approach on human perception of AI-generated images. Frontiers in Artificial Intelligence, 8, 1707336. https://doi.org/10.3389/frai.2025.1707336
  2. Takayasu M, Sato K, Sano Y, Yamada K, Miura W, Takayasu H (2015). Rumor diffusion and convergence during the 3.11 earthquake: a Twitter case study. PLoS ONE, 10(4), e0121443. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0121443
  3. Hilberts S, Govers M, Petelos E, Evers S (2025). The impact of misinformation on social media in the context of natural disasters: narrative review. JMIR Infodemiology, 5, e70413. https://doi.org/10.2196/70413
  4. Dallo I, Elroy O, Fallou L, Komendantova N, Yosipof A (2023). Dynamics and characteristics of misinformation related to earthquake predictions on Twitter. Scientific Reports, 13, 13391. https://doi.org/10.1038/s41598-023-40399-9