仕事でAIを使ってミスしたら、責任は自分?研究では、AIをよく知らない人ほど使った人を責めやすく、使う前に「任せる範囲と確かめ方」を周りと共有しておくことが備えになる

会社でAIを使うよう言われたけれど、もしAIの間違いに気づかずミスをしたら、自分のせいになるのだろうか。そんな不安を抱えて働いている人は少なくありません。研究では、責任の受け止め方は「周りがAIをどれだけ知っているか」で変わっていました。だからこそ、使う前の準備で変えられる部分があります。
3行でわかる
- 日本の大人588人の実験では、AIの働きを前もって知らなかった人ほど、AIを使った人に責任を寄せていた。
- AIの提案に従えば責められない、とは限らない。普段と違うやり方を勧められたときは、従っても従わなくても評価は変わらなかった。
- 使う前に「AIに任せる範囲」「誰が何を確かめるか」を上司や同僚と決めて、確かめた記録を残しておく。
01 結論から言うとAIのミスは、使った人のせいになる?
実験では、AIの働きを前もって知らないと、使った人の責任が重く見られやすい傾向がありました。法的な責任は個別の事情で決まるため断定できませんが、使う前に任せる範囲と確かめ方を共有しておくことで、ミスが起きたときの話し合いの土台が変わります。
AIのミスは、AIを作った会社、AIを導入した職場、使った本人の誰の責任なのか。研究者のあいだでも議論が続いています。ただ、実験でわかってきたのは、責任の受け止め方は固定されたものではなく、周りの人がAIについて何を知っているかで動くということです。
ここでいう「責任」は、法律上の責任ではなく、周りの人が「誰のせいだと感じるか」です。職場で問題になるのは、多くの場合まずこちらです。
02 研究とデータでわかっていることAIを使って失敗した人は、どう見られる?
日本の実験では、AIの働きを前もって知らない人ほど使った人を責め、知っている人はAIそのものにも責任を分けていました。AIに従ったかどうかより、普段のやり方と比べて判断が妥当だったかが見られていました。
Tsumura・Yamada(2025)[1]
日本の大人588人が、人がAIの手助けを受けて失敗する短い動画を見て、使った人・AI・AIを作った会社のそれぞれにどのくらい責任があるかを10段階で答えました。AIの機能を紹介する動画を前もって見なかった人は、使った人により大きな責任を寄せていました。紹介動画を見た人は、AIそのものにも責任を寄せていました。また、緊急時のような重要な場面ほど、作った会社の責任が重く、使った人の責任は軽く見られていました。
対象: クラウドソーシングで集めた日本の大人588人(19〜89歳) / 限界: 動画の中の使う人の立場を想像して答える実験で、実際の職場や自分が使った場合の判断とは違う可能性がある。
この結果は、AIのことを知らない上司や同僚ほど、ミスを「使った人のせい」と受け止めやすい可能性を示しています。使い始める前にAIの得意・不得意を共有しておくことは、ミスを防ぐだけでなく、起きたときの受け止め方にも関わります。
Tacconelliら(2026)[2]
アメリカとドイツの一般の大人と、ドイツの医師に、AIの提案を受けた医師の治療で患者に害が出た架空の事例を読んでもらいました。AIが普段どおりの治療を勧めたとき、それに従った医師は、従わなかった医師より妥当だと評価されました。一方、AIが普段と違う治療を勧めたときは、従っても従わなくても評価は統計的に同じでした。
対象: 分析に含めたのはドイツの医師248人、アメリカの大人1,202人、ドイツの大人1,358人 / 限界: 医療の架空の事例で、ほかの仕事や実際の裁判にそのまま当てはまるとは限らない。
「AIの言うとおりにしたから大丈夫」とは言い切れない、ということです。評価の物差しは、その仕事の普段のやり方でした。AIの答えが普段のやり方と違うときほど、なぜそれを選んだのかを説明できるようにしておく必要があります。
Goulasら(2026)[3]
ギリシャの教員1,339人に、わざと間違えた採点がついた生徒の答案を見直してもらいました。点が厳しすぎる間違いのとき、その点を「AIが付けた」と示された先生は、「同僚が付けた」と示された先生より直しが不十分で、正しい点とのずれが22%大きくなりました。点が甘すぎる間違いでは、差はありませんでした。
対象: ギリシャの普通の学校の教員1,339人(事前登録した実験) / 限界: 採点という1つの仕事での結果で、ギリシャ以外や別の仕事で同じになるかは確かめられていない。
専門家でも、AIの厳しすぎる間違いは見逃す向きがあったということです。「最後に人が確かめる」だけでは足りず、何をどう確かめるかを決めておく必要があります。AIの出力によくある間違いの見つけ方は仕事でAIに作らせた文章や資料、そのまま出して大丈夫?にまとめています。
03 まだわかっていないこと職場で実際に責任はどう分けられる?
実際の職場で、AIのミスの責任がどう分けられているかを調べた研究はまだ少なく、上の実験はどれも架空の場面です。法的な責任は、契約や就業規則などの個別の事情で決まります。
- 実際の職場で、AIを使ったミスが評価や処分にどう影響したかを追った研究は見つかっていません。
- 日本の実験は動画を見て使う人の立場を想像して答える形で、上司や同僚が実際にどう判断するかは確かめられていません。
- 任せる範囲を前もって共有することが、ミスのあとの評価を本当に変えるかは、まだ直接調べられていません。
04 今日からできること使う前に、何を決めておけばいい?
使い始める前に、AIに任せる作業、確かめる人と方法、AIの答えが普段のやり方と違うときの扱いを上司と決め、確かめた記録を残します。職場のルールがなければ、まず確認を求めるところから始めます。
AIに任せる作業と任せない作業を書き出す
下書き、要約、表の整理など、AIに任せる作業を具体的に挙げます。お客さんに出す数字や判断など、任せない作業も書いて、上司に見てもらいます。
目安 15分
「誰が、何を確かめるか」を決める
数字は元の資料と照らす、固有名詞は公式の情報で確かめる、など確かめ方を決めます。自分だけで確かめるのか、ほかの人も見るのかも決めておきます。
目安 10分
AIの得意・不得意をチームで共有する
「AIはもっともらしい間違いを出すことがある」など、使ってみてわかったことを同僚と共有します。研究では、AIを知っている人ほど、使った人だけを責めにくくなっていました。
目安 週1回5分
確かめた記録を残す
何をAIに頼み、どこを自分で直し、何と照らして確かめたかを、1行でメモに残します。AIの答えが普段のやり方と違ったときは、なぜ採用したか、しなかったかも書きます。
目安 1回1分
職場にAIの使い方のルールがないときは、職場にAIを使うルールがないで、会社に確認しておきたい点をまとめています。
05よくある質問
仕事でAIを使ってミスしたら、法律上の責任は誰になる?
この記事では判断できません。会社との契約、就業規則、ミスの内容、AIの使い方を会社が認めていたかなど、個別の事情で変わるためです。不安なときは、社内の担当部署か、労働問題の相談窓口に、事実を整理してから相談します。
AIの提案に従っておけば、責められにくい?
いつもそうとは限りません。アメリカとドイツの実験では、AIが普段どおりのやり方を勧めたときは従った医師が妥当と見られましたが、AIが普段と違うやり方を勧めたときは、従っても従わなくても評価は同じでした。この実験では、AIに従ったかどうかだけでなく、AIの提案が普段のやり方どおりかどうかで評価が変わっていました。
会社がAIの使用を勧めているのに、ミスは自分のせい?
研究では、周りがAIをよく知らないと、使った人に責任が寄りやすい傾向が出ていました。会社が使用を勧めている場合こそ、どの作業に使ってよいか、誰が最後に確かめるかを、使い始める前に上司と決めておくと、ミスが起きたときに話し合いやすくなります。
出典
- Tsumura T, Yamada S (2025). Effects of knowledge and importance on responsibility in human-AI decision making. Scientific Reports, 16, 2670. https://doi.org/10.1038/s41598-025-32513-w
- Tacconelli A, Merane J, Nielsen A, Tobia K, Hackanson B, Stremitzer A (2026). How Following Medical Artificial Intelligence Advice Can Mitigate Malpractice Liability: Cross-National Insights from a Randomized Trial. Journal of Nuclear Medicine, 67(9), 1474-1480. https://doi.org/10.2967/jnumed.126.272292
- Goulas S, Megalokonomou R, Sotirakopoulos P (2026). Why do experts miss AI's errors? Evidence from a randomized labeling experiment. PNAS Nexus, 5(6), pgag146. https://doi.org/10.1093/pnasnexus/pgag146


