自分の絵をAIにまねされた。文化庁の考え方では「作風」と「表現」で分かれる

自分の絵にそっくりなAI画像を見つけると、悔しさと不安で手が止まります。文化庁の考え方では、絵柄の雰囲気(作風)が似ているだけでは著作権侵害とはならず、創作的な表現が共通していれば侵害となり得るとされています。まずは記録を残し、無料の相談窓口を使えます。
3行でわかる
- 文化庁の考え方では、作風はアイデアとされ、作風が似ているだけでは侵害とはならないとされています。
- 創作的な表現が共通し(類似性)、元の絵をもとにした(依拠性)と認められれば、侵害となり得るとされています。
- 見つけたら記録を残し、文化庁の無料の弁護士相談などで個別に確かめるのが近道です。
01結論から言うと
文化庁の考え方では、「作風が似ている」だけなら著作権侵害とはならず、「創作的な表現が共通している」かどうかが分かれ目とされています。どちらに当たるかは個別の判断です。
著作権法が守るのは「創作的な表現」です。「アイデア」は守りません。文化庁の資料では、作風がアイデアである場合、作風が共通しても侵害とはならないとされています[2]。
一方で、完全なコピーでなくても、創作的な表現が共通していれば「類似性」は認められるとされています[3]。AIが作った絵かどうかは関係ありません。人が描いた場合と同じ基準で判断されるとされています[2][3]。
ただし、この考え方そのものに法的な拘束力はありません[1]。自分のケースがどちらに当たるかは、弁護士への相談で確かめるものです。
02研究とデータでわかっていること
文化庁は2024年に、AIと著作権の考え方と、権利者向けのガイダンスを公表しています。海外の調査では、多くの描き手がAIによるまねを不安に感じていました。
文化審議会 著作権分科会 法制度小委員会 / 文化庁(2024)[1][2]
AIを使った画像のSNS投稿や販売は、通常の著作権侵害と同じ基準で判断されるとされています。既存の作品との類似性と依拠性があり、例外規定の対象外なら、侵害になるとされています。
対象: 現行の著作権法の解釈 / 限界: 2024年3月15日時点の小委員会の考え方で、法的な拘束力はなく、裁判例もまだ乏しいとされています。
文化庁著作権課「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(2024)[3]
自分の絵に似たAI画像を見つけたら、まず両者を比べて類似性があるか確かめることが必要とされています。そのうえで依拠性を示す要素として、次のようなものが挙げられています。
- AIの利用者が元の絵そのものをAIに入力していた
- 作品名などの固有名詞を指示に入れていた
- 元の絵が公表されていて、接する機会があった
- AI画像が元の絵と高度に似ている
対象: 著作権者などの権利者向けの解説 / 限界: すべてを示す必要はなく、それぞれがプラスの要素になるという整理です。実際にどこまで認められるかは裁判所が個別に判断するとされています。
Shanら(2023, USENIX Security)[6]
描き手1,207人の調査で、91%がAIの絵についてよく読んでおり、自分の作品が学習に使われることを知っているか心配していました。97%が「一部の描き手の仕事の安定を損なう」と答えていました。
対象: 主にプロ(専業46%・兼業やフリーランス50%)の描き手 / 限界: 描き手の人づてで集めた参加者で、無作為の抽出ではありません。AIのまねを防ぐ技術を提案した論文の中の調査です。
Lovatoら(2024, AAAI/ACM AIES)[7]
描き手459人の調査で、80.17%が「学習に使った作品を詳しく開示すべき」と答えました。61.87%が「AIは描き手の仕事への脅威」と答えた一方、44.88%は「前向きな発展」とも答えていました。
対象: 18歳以上の描き手や芸術関係の仕事をする人(米国の大学のチームがSNSや調査パネルで募集) / 限界: 意見を聞いた調査で、実際の被害の大きさは測っていません。
03まだわかっていないこと
AIと著作権を直接扱った日本の裁判例はまだ乏しく、作風と表現の線引きは事案ごとの判断です。描き手の調査も海外のものが中心です。
- 「アイデア」と「創作的な表現」の線引きは、これまでも事案ごとに判断されてきたとされています。絵柄のどこからが表現かの一般的な基準はありません。
- 文化庁の考え方は公表時点のもので、裁判例や技術の変化に応じて見直すとされています。
- 著作者人格権(作者の名誉などに関わる権利)とAIの関係は、議論を続けるとされています。
- 日本のイラストレーターを対象にした査読つきの調査は、今回の調査では見つかりませんでした。
04今日からできること
見つけたAI画像と自分の作品を並べて記録し、作風と表現のどちらが似ているか整理してから、無料の窓口に相談するのが確実です。自分で侵害と決めつけて動く前に確かめます。
見つけたAI画像と自分の作品を記録する
AI画像のURL・投稿日・画面の保存と、自分の作品の公開日や制作途中のデータを1つのフォルダにまとめます。文化庁の資料では、作品が公表されていたことや高度に似ていることが依拠性の要素とされています。
目安 15分
「作風が似ている」か「表現が似ている」かをメモする
構図・線・色・キャラクターの形など、どこがどう似ているかを箇条書きにします。判断は自分でせず、相談のときに見せる材料にします。
目安 10分
作品を載せる場所の設定を見直す
自分のサイトなら、robots.txtにAI学習のクローラを断る記述を入れると、収集を一定程度防げると文化庁の資料にあります(クローラ側が記述に従う場合)。ログインが必要な場所に置くのも役立つとされています。投稿サイトは公式ヘルプでAI学習に関する設定があるか確かめます。
目安 10〜30分
文化庁の無料の弁護士相談に申し込む
「文化芸術活動に関する法律相談窓口」はWebのフォームで申し込めます。プロ・アマを問わず使え、弁護士が対応策を助言します。相手との交渉や訴訟の代行は対象外です。1の記録を手元に用意しておきます。
目安 申し込み15分
文化芸術活動に関する法律相談窓口(文化庁、Webフォーム): AIと著作権を含む創作活動の法律相談。
法テラス・サポートダイヤル(0570-078374): どこに相談すればよいかわからないとき。平日9時〜21時、土曜9時〜17時。
AIの絵と比べて気持ちが落ちこんでいるときは、AI時代のメンタルヘルスの記事「AIの絵と比べて、自分の絵に自信がなくなる」も参考になります。同じ悩みの記事は創作・著作権にまとめています。
05よくある質問
自分の絵柄をAIにまねされたら、著作権侵害になるの?
文化庁の考え方では、作風(絵柄の雰囲気などのアイデア)が共通しているだけでは著作権侵害とはならないとされています。一方で、創作的な表現が共通していて、元の絵をもとに作られたと認められる場合は、侵害となり得るとされています。自分のケースは弁護士に相談して確かめてください。
自分の絵がAIの学習に使われたか分からないと、何もできない?
文化庁の考え方では、学習データに含まれていたか分からなくても、AIの利用者が元の絵に接する機会があったことや、生成物が高度に似ていることなどを示せば、依拠性を推認させることができるとされています。
特定の絵師の絵だけを集めてAIに追加学習させるのは許されるの?
文化庁の考え方では、特定のクリエイターの少量の作品だけを使い、その創作的な表現を出力させることを目的とした追加学習は、著作権法第30条の4が適用されない場合があるとされています。その場合は権利者の許諾が必要になります。
AIと著作権のことを無料で相談できる?
文化庁は「インターネット上の海賊版による著作権侵害対策についての相談窓口」と「文化芸術活動に関する法律相談窓口」で、AIと著作権に関する無料の弁護士相談を提供しています。相談先が分からないときは法テラス(0570-078374)も使えます。
出典
- 文化審議会 著作権分科会 法制度小委員会 (2024). AIと著作権に関する考え方について(令和6年3月15日). https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/pdf/94037901_01.pdf
- 文化庁著作権課 (2024). 「AIと著作権に関する考え方について」【概要】. https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/pdf/94057901_01.pdf
- 文化庁著作権課 (2024). AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス. https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/pdf/94097701_01.pdf
- 文化庁. 文化芸術活動に関する法律相談窓口. https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunka_gyosei/kibankyoka/madoguchi/index.html
- 法テラス(日本司法支援センター). 法テラス・サポートダイヤル. https://www.houterasu.or.jp/
- Shan, S., Cryan, J., Wenger, E., Zheng, H., Hanocka, R., Zhao, B. Y. (2023). Glaze: Protecting Artists from Style Mimicry by Text-to-Image Models. USENIX Security Symposium. https://www.usenix.org/conference/usenixsecurity23/presentation/shan
- Lovato, J., Zimmerman, J. W., Smith, I., Dodds, P., Karson, J. L. (2024). Foregrounding Artist Opinions: A Survey Study on Transparency, Ownership, and Fairness in AI Generative Art. Proceedings of the AAAI/ACM Conference on AI, Ethics, and Society, 7(1). https://doi.org/10.1609/aies.v7i1.31691


