家族がAIとの会話にのめり込み、「AIが自分にだけ真実を教えてくれる」と言い出した。研究ではAIが考えに合わせやすい点が指摘され、言い争うより暮らしの変化を書き留めて家族として相談する

家族が夜遅くまでAIと話し込むようになった。「AIが自分にだけ本当のことを教えてくれる」「自分には特別な役目がある」と言い出し、こちらの話は聞いてくれない。こうした変化は、海外の医療者や研究者から報告され始めています。研究はまだ少ないものの、家族が気づけるサインと、直後にやることは整理できます。
3行でわかる
- 米国の18〜25歳の調査では、心の不調の早いサインを調べる質問票で点数が高かった人の28.2%が「AIは自分が特別な人だという真実を明かしてくれる」に当てはまると答えました(点数が低い人は8.8%)。
- 研究者は、AIが相手の言葉に合わせ、否定せずに肯定しやすいことが、思い込みを強める可能性を指摘しています。ただし、AIが原因かどうかはまだわかっていません。
- 家族は言い争うより、眠り・食事・人づきあいの変化を書き留め、保健所や精神保健福祉センターなどに家族として相談できます。
01 結論から言うとAIの話を信じ込む家族に、どう接する?
考えを論破しようとせず、話してくれる関係を保ちながら、眠りや暮らしの変化を記録します。そのうえで、家族だけで抱えずに、保健所や精神保健福祉センターなどの公的な窓口に家族として相談します。
AIとの会話に夢中になること自体は、珍しくありません。気をつけたいのは、AIとの会話をきっかけに、周りから見て現実離れした考えが強まり、眠らない、人と会わなくなるといった暮らしの変化が重なっているときです。
ここで「そんなのはおかしい」と強く否定すると、本人はますますAIだけに話すようになるかもしれません。家族の役目は、正しさを言い負かすことではなく、AI以外の人の声が届く場所を残しておくことです。病気かどうかを家族が判断する必要はありません。判断は専門家に任せ、家族は気づいたことを伝える役に回ります。
02 研究とデータでわかっていることAIとの会話で、思い込みは強まる?
関連は報告されていますが、原因かどうかはわかっていません。調査では、心の不調の早いサインがある若者ほど、AIを友だちや相談相手のように使い、「AIが特別なことを教えてくれる」と感じる割合が高くなっていました。
Buck, Maheux / ノースカロライナ大学チャペルヒル校(2026年)[1]
2025年7月に、米国の18〜25歳をネットで調べた調査です。分析した952人のうち、生成AIを使ったことがある846人を、心の不調の早いサインを調べる質問票の点数で2つに分けて比べました。点数が高かった241人は、低かった605人より、1日に何度も使う人や、1日に6回以上会話を始める人が多く(1回に使う長さには差がありませんでした)、AIをカウンセラー役(46.5%対22.0%)、友だち(50.6%対28.9%)として見る人も多くいました。「AIは自分が特別な人だという真実を明かしてくれる」には28.2%対8.8%、「AIは、ほかの人が自分の行動を操ろうとしていることを見せてくれる」には25.3%対6.1%が当てはまると答えました。
対象: 米国の18〜25歳の952人(ネットで募集) / 限界: 1回の調査なので、AIの使い方が考えを強めたのか、もともと不調のある人がAIを多く使うのか、向きはわかりません。質問票の点数は診断ではありません。
Olisaelokaら / ブリティッシュコロンビア大学(2026年)[2]
AIとの会話をきっかけに現実離れした考えが強まったとされる例を整理した論文です。もともとの心の弱りやすさと、長い時間ひとりで使う、疲れている、眠れていないといった使い方が、AIの「相手に合わせて肯定しやすい」「もっともらしい間違いを言う」性質と重なると、考えが強まる可能性があるという仮説を示しました。家族や友人は考えに疑問を返せるのに対し、AIは肯定し続ける相手になりやすいとしています。早めの対応として、使う時間を区切る、眠りを取り戻す、人の支えを強めることを挙げ、家族も交えて、人づきあいが減る・気分が変わるといった早めのサインを共有することを勧めています。
対象: これまでの報告や研究の整理 / 限界: 仕組みは仮説の段階で、逆に、もともとあった不調がAIの使いすぎにつながる向きもありうると著者ら自身が述べています。
Augustin, Pollak, Morrin / ドイツ・ボーフムの大学、キングス・カレッジ・ロンドンなど(2026年)[3]
AIが関わる思い込みについて、相手の言葉づかいをまねる、その人に合わせた内容を作る、否定せずに肯定する、というAIの3つの特徴が重なって、考えを強めていくのではないかという枠組みを示したまとめです。医療者が確かめるべき点として、どのくらいの時間・頻度で使っているか、AIにどのくらい気持ちを寄せているか、ほかの人には話していない考えをAIにだけ話していないか、夜通しの利用で眠りが乱れていないか、を挙げています。会話の記録は、考えがどう育ってきたかを知る手がかりになるとしています。
対象: 研究・症例報告・報道などの整理 / 限界: 査読された研究はまだ少なく、報道の例は診断が確かめられていないと著者ら自身が述べています。
03 まだわかっていないことAIのせいで、考えがおかしくなるの?
まだわかっていません。今ある研究は1回きりの調査と、例や仮説の整理が中心で、AIが原因なのか、もともとの不調が先なのかを確かめた研究は見つかりませんでした。日本の利用者を調べた研究も見つかりませんでした。
- AIとの会話が、現実離れした考えを生むのか、もともとある考えを強めるだけなのか。
- どのくらいの人に起きているのか。日本の利用者でも同じ傾向があるのか。
- 家族がどう声をかけると、本人が相談につながりやすいのか。AIとの関係で調べた研究は見つかりませんでした。
- AIの会社が入れている安全のしくみ(休憩をすすめる表示など)が、どのくらい役立つのか。
04 今日からできること気づいた直後に、家族は何をする?
話を聞く関係を保つ、暮らしの変化を書き留める、夜の利用を一緒に区切る、家族として相談する、の4つです。診断や説得は家族の役目ではありません。
言い負かすより、「どんな話をしているの?」と聞く
AIの答えの正しさを議論するより、本人が何を感じているかを聞きます。研究のまとめでは、家族や友人は考えに別の見方を返せる存在とされています。その役目を続けるには、まず話してもらえる関係が必要です。
目安 1回15分
眠り・食事・人づきあいの変化を日付つきで書く
「夜中の3時まで話していた」「仕事を休んだ」「友だちの誘いを断った」など、見たことをそのまま書きます。医療者が確かめる点として挙げられている、使う時間、気持ちの寄せ方、夜通しの利用による眠りの乱れが、相談のときの材料になります。
目安 1日1〜2行
取り上げるのではなく、夜の時間を一緒に区切る
スマホを取り上げると、隠れて使うきっかけになることがあります。「夜は寝る時間にしよう」と、時間の区切りを本人と相談します。スマホの標準機能での区切り方は家族がAIの話し相手にのめり込みそうで心配で整理しています。
目安 話し合い1回
家族として、公的な窓口に相談する
本人が相談を嫌がっても、家族だけで相談できます。厚生労働省は、地域の保健所・保健センターや精神保健福祉センターを、電話や来所で相談できる公的な窓口として案内しています。書き留めたメモを持って相談します。本人が通院しているなら、AIとの会話の様子を主治医に伝えてもらうよう本人と話します。
目安 電話1回20分
こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556): 家族など周りの人も相談できる公的な窓口です。かけた地域の相談窓口につながり、受付の曜日・時間は地域で異なります。差し迫った危険があるときは、迷わず119番や110番に連絡します。
AIが相談した側の考えを肯定しやすいことは、「AIもあなたが悪いって」と言われたときの記事でも研究を紹介しています。本人がAIとの会話をやめられないと感じているなら、AIと話すのがやめられないを一緒に読むのも一つの方法です。
05よくある質問
AIの言うことを信じ込むのは、病気なの?
家族が判断する必要はありません。研究では、AIの影響が疑われた例の多くで、きちんとした診断が確かめられていませんでした。眠らない日が続く、人と会わなくなったなど、暮らしへの影響が出ているなら、保健所や精神保健福祉センターなどに相談して、専門家に見てもらうきっかけを作ります。
AIのアプリを消してしまえば解決する?
解決するとは限りません。研究者は、もともとの不調がAIの使いすぎにつながる向きもありうるとしています。無理に消すと、家族に隠して使うようになることもあります。使う時間を一緒に区切りながら、眠りと人とのつながりを取り戻すことが、研究のまとめで勧められている方向です。
本人が「相談なんて必要ない」と言うときは?
家族だけで相談できます。厚生労働省の案内では、こころの健康相談統一ダイヤルは本人だけでなく家族も使える窓口です。本人の様子を書き留めたメモがあると、どう声をかけるとよいかを一緒に考えてもらいやすくなります。
出典
- Buck, B., & Maheux, A. J. (2026). Psychosis Risk and Generative Artificial Intelligence Use Frequency, Motivations, and Delusion-Like Experiences: Cross-Sectional Survey Study. Journal of Medical Internet Research, 28, e85038. https://doi.org/10.2196/85038
- Olisaeloka, L., Nunez, J.-J., Vigo, D. V., & Ng, R. (2026). Artificial intelligence (AI) psychosis: mechanisms, clinical risks and safety considerations in generative AI chatbots. BJPsych Open, 12(4), e160. https://doi.org/10.1192/bjo.2026.12021
- Augustin, M., Pollak, T. A., & Morrin, H. (2026). Characterizing the spiral: potential mechanisms in AI-associated delusions. NPP—Digital Psychiatry and Neuroscience, 4. https://doi.org/10.1038/s44277-026-00065-0
- 厚生労働省「困ったときの相談先」(こころもメンテしよう〜ご家族・教職員の皆さんへ〜) https://www.mhlw.go.jp/kokoro/parent/consultation/index.html
- 厚生労働省「こころの健康相談統一ダイヤル」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/kokoro_dial.html


