ニュースが本当かどうか、AIに聞けば確かめられる?研究では、AIの判定を見せても見分ける力は上がらず、人のファクトチェックでは上がった

SNSで気になるニュースを見かけたら、AIに「これって本当?」と聞けば早そうです。けれど、AIの判定を見た人が、本当と偽をうまく見分けられるようになるとは限りません。研究では、AIの判定をそのまま受け取ると、本当のニュースまで疑ってしまう場面がありました。
3行でわかる
- 米国2,159人の実験では、AI(ChatGPT)の判定を見せても、本当と偽の見出しを見分ける力は上がりませんでした。人が書いたファクトチェックを見せると上がりました。
- AIは偽の見出し20本のうち18本を「偽」と当てましたが、本当の見出しは20本中4本を「偽」と誤り、13本は「わからない」と答えていました。
- AIの答えは結論ではなく「手がかり」として使い、出典を開く、人のファクトチェックを探す、わからない話は広めない、の3つで補えます。
01 結論から言うとニュースの真偽は、AIに聞けばわかる?
AIの判定だけでは足りません。研究では、AIは偽の話を偽と当てることが多い一方、本当の話を疑ったり「わからない」と答えたりしやすく、その判定を見た人の見分ける力は平均では上がりませんでした。
ここでいう「見分ける力」は、本当のニュースを信じる割合と、偽のニュースを信じる割合の差のことです。偽を疑うだけでなく、本当のものはきちんと信じられて、はじめて見分けられていると言えます。
AIの判定には、当たりと外れと「わからない」が混ざっています。外れや「わからない」をそのまま受け取ると、本当のニュースを疑ったり、偽のニュースを「否定されていないから本当かも」と思ったりしてしまいます。AIの答えは、自分で確かめるための入り口として使うのが安全です。
02 研究とデータでわかっていることAIの判定を見た人は、だまされにくくなった?
平均では変わりませんでした。AIが本当の見出しを「偽」と誤ると信じる人が減り、AIが「わからない」と答えた偽の見出しは信じる人が増えました。人が書いたファクトチェックでは見分ける力が上がりました。
DeVernaら / インディアナ大学(2024年)[1]
本物の政治ニュース40本(本当20本・偽20本)の見出しを見せ、信じるか、SNSで共有したいかを聞く実験です。AIの判定を必ず見せる組では、見分ける力に意味のある変化はありませんでした(−4.50%、統計的に差なし)。一方、人が書いたファクトチェックを見た組では、信じるかの見分けが18.06%、共有したいかの見分けが8.98%良くなりました。
AIの判定の中身ごとに見ると、害が出る場面もありました。AIが「偽」と誤った本当の見出しは、信じる割合が12.75%下がりました。AIが「わからない」と答えた偽の見出しは、信じる割合が9.12%上がりました。AIの判定を自分で選んで見に行った人は、偽の見出しを信じやすい傾向がありました。著者らは、見る前にすでに考えが決まっていて、確認のために見た可能性を挙げています。
対象: 性別・年齢・学歴・支持政党などを米国の人口に合わせて集めた2,159人。事前登録したくじ引き式の実験 / 限界: 使ったAIはGPT-3.5で、見出しは40本と少なく、米国の政治ニュースに限られます。人のファクトチェックの組は後日に集めたため、時期の違いの影響は否定できないと著者らは述べています。
QuelleとBovet / チューリッヒ大学(2024年)[2]
米国のファクトチェック団体が判定済みの主張と、多言語のファクトチェック済みの主張を使い、AI(GPT-3.5とGPT-4)に真偽を判定させた研究です。正解率は平均で63〜75%で、AIにネット検索で調べさせると上がり、白黒がはっきりした判定では80%を超えました。ただ、「半分は本当」のような白黒つけにくい主張は苦手でした。言語によって正確さが大きく違い、英語以外の主張は英語に訳したほうが当たりやすくなっていました。
対象: 米国の政治的な主張と、多言語のファクトチェック済みの主張 / 限界: 日本語は対象に入っていません。AIの判定の正確さを測った研究で、判定を見た人がどう受け取るかは調べていません。
Costelloら / マサチューセッツ工科大学など(2024年)[3]
陰謀論を信じている2,190人が、AI(GPT-4 Turbo)と、その人に合わせた根拠をもとに対話する実験です。対話のあと、その陰謀論を信じる度合いが約20%下がり、2か月後も効果が残っていました。AIとの対話は、使い方しだいで考え直すきっかけにもなります。
対象: 陰謀論を信じているオンライン実験の参加者2,190人 / 限界: 相手の考えに合わせて根拠を示しながら対話するAIの効果です。ふだんAIにニュースの真偽を短く聞くだけの場面とは条件が違います。
3つの研究を合わせると、AIには「偽の話を偽と見抜く」力も「根拠を示して考え直させる」力もあります。それでも、短い判定だけを見せられた人は、外れた判定や「わからない」にも引っぱられていました。AIの答えをどう使うかで、結果が変わると考えられます。AIが書いた偽情報そのものの説得力についてはAIが書いた偽情報は、人が書いたものよりだまされやすい?でまとめています。
03 まだわかっていないこと新しいAIなら、もう心配いらない?
まだわかっていません。人がAIの判定をどう受け取るかを調べた実験は少なく、新しいAIや、検索して出典を示すAI、日本語のニュースで同じことが起きるかは確かめられていません。
- 最新のAIや、ネットを検索して出典を示すAIの判定を見た場合も、同じように見分ける力が上がらないのか。
- 日本語のニュースや、政治以外(健康・災害・お金)のニュースで同じ結果になるか。
- AIの判定に出典が付いていると、人がそれを開いて確かめるようになるのか。
- 実験ではなく、ふだんのSNSの使い方の中で、AIへの質問が拡散を減らすのか増やすのか。
04 今日からできることAIに真偽を聞くとき、どう使えばいい?
AIの判定を結論にせず、手がかりとして使います。出典を開く、人のファクトチェックを探す、「わからない」は広めない、自分の考えを先に書いておく、の4つです。
「本当?」ではなく「根拠と出典は?」と聞く
「本当か嘘か」だけを聞くと、短い判定しか返ってきません。「この話の根拠と、確かめられる出典を挙げて」と頼み、挙がったリンクを自分で開きます。開けない、話と中身が違う出典なら、その判定は使いません。
目安 1件3分
人が書いたファクトチェック記事を探す
研究で見分ける力を上げたのは、人が根拠をそろえて書いたファクトチェックでした。話題のキーワードに「ファクトチェック」を足して検索し、報道機関やファクトチェック団体が検証した記事があるか見ます。
目安 1件3分
「わからない」は「本当」ではないと決めておく
AIが「確かではない」と答えた話は、「否定されなかった」ではなく「まだ確かめられていない」と受け取ります。そういう話は、確かめられるまで共有しません。
目安 共有する前に毎回
AIに聞く前に、自分の見立てを一言メモする
研究では、自分から判定を見に行った人ほど、すでに考えが決まっていた可能性がありました。聞く前に「たぶん本当/たぶん偽/わからない」と書いておくと、AIの答えに引っぱられたかどうかに気づけます。
目安 10秒
もし確かめる前に広めてしまっていたら、AIの偽画像や動画を本物と思って拡散してしまったの訂正のしかたが使えます。何を見ても疑わしく感じて疲れたときは、偽情報やディープフェイクが気になって、何も信じられなくなったも参考にしてください。選挙の時期の備え方は選挙のディープフェイクに惑わされないためににまとめています。
05よくある質問
AIに「このニュースは本当?」と聞くのは、やめたほうがいい?
やめる必要はありません。AIは偽のニュースを偽と当てることが多く、手がかりを集める入り口としては使えます。ただ、研究ではAIが本当のニュースを偽と判定したとき、それを見た人も本当のニュースを信じにくくなっていました。AIの判定を結論にせず、AIが挙げた出典や、人が書いたファクトチェック記事を開いて確かめるのが安全です。
AIが「わかりません」と答えたニュースは、本当だと思っていい?
思わないほうが安全です。米国の実験では、AIが「確かではない」と答えた偽の見出しを、それを見た人はかえって信じやすくなっていました。「わからない」は「本当」という意味ではありません。そのニュースはまだ確かめられていない、と受け止めて、広めるのを待ちます。
新しいAIなら、ニュースの真偽を正しく判定できる?
研究では、新しいモデル(GPT-4)のほうが古いモデルより正確でした。ただ、一部だけ本当のような、白黒つけにくい話は苦手で、英語以外の言葉では正確さが下がりやすいことも報告されています。最新のAIで同じ実験をした研究は限られ、日本語のニュースで確かめた研究も見つかりませんでした。
出典
- DeVerna MR, Yan HY, Yang KC, Menczer F (2024). Fact-checking information from large language models can decrease headline discernment. Proceedings of the National Academy of Sciences, 121(50), e2322823121. https://doi.org/10.1073/pnas.2322823121
- Quelle D, Bovet A (2024). The perils and promises of fact-checking with large language models. Frontiers in Artificial Intelligence, 7, 1341697. https://doi.org/10.3389/frai.2024.1341697
- Costello TH, Pennycook G, Rand DG (2024). Durably reducing conspiracy beliefs through dialogues with AI. Science, 385(6714), eadq1814. https://doi.org/10.1126/science.adq1814


