友だちや家族へのメッセージ、AIに書いてもらっていい?研究では、AIの文は温かく伝わる一方、AIを使ったと疑われると冷たく見られやすかった

誕生日のお祝い、久しぶりの連絡、気まずくなった相手へのひと言。言葉が出てこなくて、AIに下書きを頼みたくなることがあります。でも「AIに書かせたと思われたら、気持ちがないと思われそう」と迷う人も多いはずです。研究では、AIの文そのものは温かく伝わりやすい一方、AIを使ったと疑われると評価が下がりやすいことがわかってきました。使うかどうかより、どう使うかを先に決めておくのが近道です。
3行でわかる
- AIの返信候補を使える会話の実験では、会話が速くなり、前向きな言葉が増え、相手からも協力的に見られやすくなっていました。
- 一方で、相手が「この人はAIを使っている」と思うほど、送り手を協力的でない、親しみにくいと評価していました。
- 送る前に、用件の連絡か気持ちを伝える言葉かを分け、気持ちの言葉には相手との具体的な出来事を自分で1つ足すと、迷いが減ります。
01 結論から言うと大切な人へのメッセージにAIを使っていい?
使うこと自体で関係が悪くなるとは、研究からは言えません。ただ、AIを使ったと相手に思われると評価が下がりやすい傾向があります。気持ちを伝える言葉では、AIの下書きに自分の言葉を足してから送るのが無難です。
AIが人どうしのやりとりに入り込むことは、研究者のあいだで「AIを介したコミュニケーション」と呼ばれています。スマホの返信候補や、文章を整えてくれる機能も、その一つです。
研究からわかってきたのは、AIの文の中身と、「AIを使った」という受け止め方は、別々に働くということです。中身は温かく整っていても、AIを使ったと思われた瞬間に、気持ちがこもっていないように見えることがあります。だから、AIを使うか使わないかの二択ではなく、どの場面で、どこまで任せるかを決めておくことが大切です。
02 研究とデータでわかっていることAIで書いた文は、相手にどう受け取られる?
実験では、AIの返信候補を使うと会話が速く前向きになり、相手からの評価も上がっていました。ところが、相手がAIを使っていると思うほど評価は下がりました。AIを使ったと知らせても、信頼や満足度の下がり方はわずかでした。
Hohenstein ら(2023)[1]
初対面の2人1組(219組)に、メッセージアプリで社会の政策の話題について話し合ってもらい、AIの返信候補(スマートリプライ)を使えるかどうかを無作為に分けました。候補が使えると会話は速くなり、候補を実際に使った人ほど、相手から協力的で親しみやすいと評価されていました。ところが、相手が「この人は候補を使っている」と思うほど、協力的でない、親しみにくい、押しが強いと評価していました。別の実験(291組)では、否定的な候補を出すと、前向きな候補のときより会話の感情が否定的になり、その変化は候補を実際に使ったことで起きていました。
対象: オンラインで集めた初対面の参加者 / 限界: 短い1回の会話の実験で、友だちや家族のような親しい相手の結果ではありません。
Purcell ら(2025)[2]
事前に計画を登録した2つのオンライン実験(計1,637人)で、相手に信頼してもらうためのメッセージを、半分の人はAIの文章補助を使って、残りは自分だけで書きました。受け取った人の信頼は、ゲームで実際に預けたポイントでも、自己評価でも、AIの有無でほとんど変わらず、AIを使ったと知らせても同じでした。AIを使った人は、より短い時間で書けていました。言葉の分析では、AIの手助けで書いた文は「本人らしさ」の指標がわずかに低く、温かさは高めでした。
対象: 米国のオンラインの参加者(18〜94歳) / 限界: 初対面どうしの1回きりの「取引」に近い場面で、著者ら自身も、長い付き合いの関係に当てはまるかは別の問題としています。
Cavalier ら(2025)[3]
米国の大学病院の患者の会で、医療者からの返信メッセージの評価を調べると、回答した1,455人はAIの下書きのほうを、人が書いたものより少し高く評価していました(満足度の差は5段階で0.30点)。ただ、「AIが書いた」と知らせると、「人が書いた」と知らせたときより満足度が0.13点低くなりました。どの条件でも、75%を超える人が満足と答えていました。
対象: 米国デューク大学の医療機関の患者の会の会員(2023年) / 限界: 医療者と患者のやりとりで、家族や友だちへのメッセージではありません。
Zhang・Geng・Qi(2026)[4]
中国の大学生406人に、生成AIを使っている同級生を1人思い浮かべてもらうと、AIをよく使っていると感じる相手ほど、温かさや有能さを低く見積もり、信頼も低いという関連がありました。ただ、その相手が「AIの長所と短所をよくわかっている」と感じる場合には、AIの使用と信頼の直接の関連は見られませんでした。
対象: 中国の大学生406人(2026年4月の調査) / 限界: ある時点の調査で、思い出した相手の評価に頼っているため、因果関係はわかりません。
4つの研究を合わせると、こう整理できます。AIの文の中身は、温かく整っていて、受け取る側の評価を下げにくい。下がりやすいのは、「AIに任せた」と受け止められたときです。ただし、親しい人との間で同じことが起きるかを直接調べた研究は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。ここは研究からの推測です。
03 まだわかっていないこと親しい人ほど、AIの文はがっかりされる?
まだわかっていません。今回の研究の多くは初対面どうしや医療のやりとりで、友だち・家族・恋人のような親しい相手で、AIで書いた言葉がどう受け取られるかを確かめた研究は見つかりませんでした。
- 友だち・家族・恋人へのメッセージで、AIの下書きがどう受け取られるかを直接調べた実験は見つかりませんでした。
- 謝罪、お悔やみ、お祝いなど、気持ちを伝えることが目的の言葉で、AIを使ったときの影響はわかっていません。
- AIで書いた文かどうかを、受け取った人がどのくらい見抜けるのかは、今回の研究では調べられていません。
- 日本語で、日本の人間関係を対象にした研究は見つかりませんでした。
04 今日からできることAIでメッセージを書く前に、何を決めておく?
送る前に、用件の連絡か気持ちを伝える言葉かを分けます。気持ちの言葉は、AIの下書きに相手との具体的な出来事を自分で足し、聞かれたら正直に言えるかを目安にします。どれも1回2〜5分ほどでできます。
「用件の連絡」か「気持ちの言葉」かを分ける
待ち合わせの調整や事務的な連絡は、AIに任せても困ることは少なめです。お祝い、お礼、謝罪、励ましのように気持ちを伝える言葉は、AIの文をそのまま送らないと決めておきます。
目安 送る前に10秒
相手と自分しか知らない出来事を1つ書き足す
「この前の旅行で迷ったとき」「あのとき言ってくれたひと言」のように、2人の間の具体的なことを1文入れます。研究では、AIの文は「本人らしさ」の指標がわずかに低めでした。具体的な1文は、AIには書けない部分です。
目安 1通につき3分
返信候補をそのまま押す前に、ひと呼吸おく
スマホに出てくる返信候補は、楽で速い反面、相手に「候補を使っている」と思われると、協力的でないと見られやすくなります。大事な相手や大事な話の返事では、候補を使うとしても、自分の言葉を1つ加えてから送ります。
目安 1回5秒
「AIに手伝ってもらった」と言えるかを、送る前の目安にする
聞かれたら正直に言えない使い方なら、任せすぎのサインです。研究では、AIを使ったと知らせても、信頼や満足度の下がり方はわずかでした。隠すより、「言葉を整えるのに使った」と言える範囲で使うほうが気持ちが楽です。
目安 送る前に10秒
職場でAIを使うことがどう見られるかは、職場でAIを使っていると知られたらどう思われるかの記事で整理しています。AIで整えた文章で自分らしさがなくなったと感じるときは、AIで直した文章が自分の言葉でなくなった気がするときの記事が参考になります。家族とのもめごとにAIの答えが持ち込まれたときは、「AIもあなたが悪いって」と言われたときの記事があります。
05よくある質問
AIで書いたメッセージだと、相手にばれる?
見抜けるかどうかは、今回の研究では調べられていません。わかっているのは、相手が「AIを使っている」と思うほど、送り手を協力的でないと評価しやすかったことです。ばれるかどうかより、自分の言葉が入っているかを気にするほうが役に立ちます。
AIを使ったと正直に言うと、印象は悪くなる?
下がるとしても、わずかでした。オンラインの信頼ゲームの実験では、AIを使ったと知らせても信頼はほとんど変わらず、患者向けメッセージの調査でも満足度の差は5段階で0.13点でした。ただし、親しい相手で調べた研究ではありません。
謝罪やお悔やみの言葉も、AIに書いてもらっていい?
使ってはいけないと決まっているわけではありませんが、研究ではまだ確かめられていません。気持ちを伝える言葉ほど、AIの下書きをそのまま送らず、相手との具体的な思い出や自分の言葉を必ず足すのが無難です。
出典
- Hohenstein J, Kizilcec RF, DiFranzo D, et al. (2023). Artificial intelligence in communication impacts language and social relationships. Scientific Reports. https://doi.org/10.1038/s41598-023-30938-9
- Purcell ZA, Jakesch M, Dong M, Nussberger AM, Köbis N. (2025). Writing with AI boosts trust-building efficiency. iScience. https://doi.org/10.1016/j.isci.2025.114092
- Cavalier JS, Goldstein BA, Ravitsky V, et al. (2025). Ethics in Patient Preferences for Artificial Intelligence-Drafted Responses to Electronic Messages. JAMA Network Open. https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2025.0449
- Zhang Z, Geng J, Qi C. (2026). Observer Perceptions of GenAI Use and Interpersonal Trust: The Roles of Warmth, Competence, and AI Literacy. Behavioral Sciences. https://doi.org/10.3390/bs16071221


