創作・著作権

AIの曲が増えて、自分の音楽の価値が下がる?研究では、音楽を学ぶ人でも作り手を聞き分けにくく、「AIが作った」と思うと聴き方が変わっていた

約8分で読めます

わかっている度 ★★☆ 中研究3本・レビュー1本を整理出典照合済み(2026-10-15)
楽譜の上に置かれた音叉
Photo: Lukasz Kobus, European Commission / CC BY 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

文章を打ち込むだけで、それらしい曲ができる時代になりました。曲を作ったり演奏したりしている人ほど、「自分の音楽はAIの曲に埋もれてしまうのでは」と不安になるのは自然なことです。研究では、音楽を学ぶ人でも曲の作り手を聞き分けるのは難しい一方、「AIが作った」と思って聴くと、聴き方そのものが変わることがわかってきました。

3行でわかる

  1. 音楽専攻の大学生71人の実験では、作り手の判断はほぼ当てずっぽうに近く、人が作った曲でも54.7%で取り違えていました。
  2. 米国の成人300人の実験では、同じ曲でも「AI作曲」と表示されると、聴きながら物語を思い描くことが減っていました。
  3. 聴く人は音だけでなく「誰が、何を伝えようとしたか」も受け取っています。ただ、曲の売れ方や仕事への影響は、これらの研究ではわかりません。

01 結論から言うとAIの曲が増えると、人の音楽は聴かれなくなる?

研究からは、そうとは言い切れません。音だけで作り手を聞き分けるのは難しいものの、聴く人は「人が作った」と思う曲をより高く評価し、物語を思い描きやすい傾向がありました。「誰が作ったと思うか」が、聴き方と結びついていました。

ここで紹介する研究は、「AIの曲は人の曲と同じくらい良いか」だけでなく、「聴く人は誰が作ったと思って聴いているか」に注目しています。作り手についての思い込みが、好き嫌いや心の動きと結びついていたからです。

一方で、これは曲の売れ方や作曲の仕事がどうなるかを調べた研究ではありません。実験室で短い曲を聴いた反応なので、「だから人の音楽は安泰」とも「だからAIに負ける」とも言えない、というのが正確なところです。

絵や文章でAIとの関わりに悩んでいる人は、自分の絵を「AIだ」と疑われたときの記事や、AIに手伝わせた作品が自分のものと思えないときの記事も参考になります。

02 研究とデータでわかっていること聴く人は、AIの曲と人の曲を聞き分けられる?

聞き分けは難しいという結果でした。音楽専攻の学生でも作り手の判断はほぼ当てずっぽうに近く、人の曲の54.7%を取り違えました。ただ「人が作った」と思った曲ほど評価が高く、「AI作曲」と表示されると物語を思い描きにくくなっていました。

54.7%人が作った曲なのに、作り手を取り違えた割合(音楽専攻の大学生71人、2026年発表)
4.25 対 3.82人が作った曲とAIが作った曲の評価の平均(7段階、同じ研究)
399人「AIっぽい」という感じ方や「AI作曲」の表示で、物語を思い描くことが変わるかを調べた米国の成人(2つの実験の合計、2026年発表)
88人映像に付けたAIの曲と人の曲で、気分の快・不快に差がなかった実験の参加者(2025年発表)

Chang・Jing(2026) [1]

AIが作った曲、人とAIの共作、人が作った曲の短い旋律を6つずつ、計18曲を、作り手を伏せて聴いてもらいました。AIの曲と共作の曲では、誰が作ったかの判断はほぼ当てずっぽうに近く、人が作った曲でも54.7%で作り手を取り違えました。評価(7段階)の平均は、人の曲4.25、共作4.01、AIの曲3.82の順でした。さらに、実際の作り手とは別に、「人が作った」と判断した曲ほど評価が高い傾向がありました。

対象: 音楽を専攻する大学3年生以上の71人 / 限界: 曲は各条件6つだけで、すべて同じ作曲者(著者の一人)とその作風をもとにしたAIで作られた。評価と作り手の判断は同時に聞いたため、「好きだから人が作ったと思った」可能性もあると著者は書いている。

Wu・Holmes(2026) [2]

1つめの実験では、すべて人が作った楽器の曲を聴いてもらい、「コンピューターが作ったっぽい」と感じた曲ほど、聴きながら思い描く物語が少なく、引き込まれにくいと答えていました。2つめの実験では、人の曲とAIの曲に「人」「AI」の表示をわざと付け替えました。すると、実際の作り手に関係なく、「AI」と表示された曲のほうが、思い描く物語が少なく、引き込まれにくくなりました。

対象: 米国の成人399人(1つめ99人、2つめ300人)、事前に計画を登録した実験 / 限界: 人の曲はベートーヴェンやモーツァルトなど西洋の楽器曲の短い抜粋で、AIの曲はそれをもとに作られた。日本の聴き手や歌もの、長い時間をかけた聴き方で同じかはわからない。

Fišer・Martín-Pascual・Andreu-Sánchez(2025) [3]

映像に、人が作った曲か、AIで作った曲を付けて見てもらいました。気分の快・不快は、どの曲でも変わりませんでした。AIの曲のほうが気持ちの高まりは強く感じられ、瞳孔も大きく開いていました。一方、人が作った曲のほうが、聞きなじみがあると感じられていました。

対象: スペインの研究での参加者88人(平均29.5歳) / 限界: 使ったAIは1種類だけで、著者も、その後AIの作曲ツールは大きく進歩したと書いている。

こうした研究をまとめたレビュー[4]でも、AIの曲は基本的な感情の手がかりをある程度再現でき、その場の心の動きを生むことがある一方、「AIが作った」とされると、好ましさや質、本物らしさの評価が下がる研究が複数あるとされています。ただし、差が見られなかった研究や、逆の結果になった研究もあります。

3つの実験からわかったことを、聴く人が受け取っているものごとに表にまとめました。

聴く人が受け取るもの研究の結果
音から作り手を当てること音楽専攻の学生でも難しかった [1]
その場の気分・気持ちの高まりAIの曲でも動く。快・不快は人の曲と差がなかった [3]
好き・美しいという評価「人が作った」と思った曲ほど高かった [1]
曲から物語を思い描くこと「AI作曲」と表示されると減った [2]

表の上2行は「音そのもの」、下2行は「誰が作ったと思うか」に関わります。AIは前者にはかなり近づいている一方、後者は、聴く人が作り手をどう思うかに左右されていました。

03 まだわかっていないこと作曲の仕事や曲の売れ方は、この先どうなる?

研究ではまだわかっていません。今回の研究は実験室で短い曲を聴いた反応で、配信での聴かれ方や仕事の依頼の数、長い時間をかけた愛着は調べていません。日本の聴き手や歌のある曲での結果も、まだほとんどありません。

  • AIの曲が増えたとき、配信サービスで人の曲がどれだけ聴かれるか、作曲の依頼がどう変わるか。
  • 何度も聴いて好きになる、歌詞に共感する、作り手を応援するといった、長い時間をかけた結びつきに違いが出るか。レビューも、ここは十分に確かめられていないとしています。
  • 「AIをどこまで使ったか」の伝え方しだいで、聴き方の変化を小さくできるか。
  • 日本語の歌、日本の聴き手、音楽を専門にしていない人で、同じ結果になるか。

04 今日からできることAIの曲が増える中で、作り手ができることは?

音の出来だけで勝負しようと思い詰めなくて大丈夫です。研究では、聴く人は「誰が、何を伝えようとしたか」も受け取っていました。作る過程の記録を残し、AIの使い方を正直に伝え、曲の背景を言葉にすることから始めます。

1

作る過程を記録しておく

メモ、ボイスメモ、作業途中のファイルを日付が分かる形で残します。音だけでは作り手が分かりにくいので、AIだと疑われたときに説明する材料にもなります。

目安 1曲につき作業のたびに1分

2

AIを使ったなら、どこに使ったかを具体的に書く

「伴奏のたたき台だけ」「音の調整だけ」など、使った範囲を書きます。研究では「AI」とだけ表示されると物語を思い描かれにくくなったので、あいまいな一言で済ませないほうが誤解は少ないと考えられます(まだ確かめられてはいません)。表示のルールは投稿先の規約も確かめます。

目安 投稿のたびに数分

3

曲の背景を、短い言葉で添える

どんな場面で作ったか、何を伝えたかったかを2〜3文で添えます。研究者は、「AI」の表示で物語が浮かびにくくなった理由の一つとして、伝えたい意図がないと受け取られることを挙げています。

目安 1曲につき5分

AIに作品をまねされる不安があるときは、AIに作品をまねされて発表が怖いときの記事で、載せ方と記録の残し方を整理しています。

05よくある質問

AIが作った曲と人が作った曲は、聴けば区別できるの?

研究では、区別は難しいという結果でした。音楽専攻の大学生71人の実験では、AIの曲や人とAIの共作の曲は、作り手の判断がほぼ当てずっぽうに近く、人が作った曲でも54.7%で作り手を取り違えていました。

AIの曲でも、聴く人の気持ちは動くの?

動くことはあります。88人が映像に合わせた音楽を聴いた実験では、気分の快・不快はAIの曲と人の曲で変わらず、AIの曲のほうが気持ちの高まりは強く感じられていました。一方、人の曲のほうが聞きなじみがあると感じられていました。

曲を発表するとき、AIを使ったかどうかは書くべき?

表示のルールは投稿先や契約によって違うので、まず投稿先の規約を確かめます。研究では「AIが作った」と表示された曲は物語を思い描かれにくい傾向があり、どこまでAIを使ったかを具体的に伝えると誤解を減らせる可能性がありますが、まだ確かめられてはいません。

「創作・著作権」を順に読む
知る(この記事) → 備える → 起きたとき → 立て直す
この悩みのガイドを見る

出典

  1. Chang J, Jing Y (2026). From perceptual rule transformation to listener attribution judgments: a blind-listening experiment on AI-generated, human-AI collaborative, and human-composed music. Frontiers in Psychology, 17, 1903971. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1903971
  2. Wu SH, Holmes KJ (2026). Is there a "mind" behind the music? Attributing music to AI can suppress narrative meaning-making. Cognitive Research: Principles and Implications, 11(1), 19. https://doi.org/10.1186/s41235-026-00715-z
  3. Fišer N, Martín-Pascual MÁ, Andreu-Sánchez C (2025). Emotional impact of AI-generated vs. human-composed music in audiovisual media: A biometric and self-report study. PLOS ONE, 20(6), e0326498. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0326498
  4. He W, Sun Y (2026). Human-AI emotional resonance in generative music: a mini-review of authorship attribution, affective response, and aesthetic evaluation. Frontiers in Psychology, 17, 1889696. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1889696