職場のAI導入でしんどくなる前に。ストレスチェックの結果は本人に届き、社外の相談窓口は無料で使える

会社にAIが入ってきて、仕事の進め方が急に変わる。覚えることが増え、聞ける人も忙しそう。そんなとき、しんどさを一人で抱えてしまう人は少なくありません。実は職場には、もともと使える仕組みがあります。ストレスチェックと医師の面接指導、そして社外の無料の相談窓口です。この記事では、それぞれの使い方を法律と厚生労働省の資料から整理します。
3行でわかる
- ストレスチェックは医師や保健師などが行う年1回以上の検査で、結果は本人に直接届き、本人の同意なしに会社へ渡してはならないと法律で定められています。
- 高ストレスと判定されたら、医師の面接指導を申し出られます。申し出を理由にした不利益な取扱いは、法律で禁じられています。
- 社内で話しにくいときは、こころの耳(電話・SNS・メール)や総合労働相談コーナー(全国378か所)を無料で使えます。
01 結論から言うとAI導入でしんどいとき、職場で使える仕組みはある?
あります。ストレスチェック、医師の面接指導、社内外の相談窓口です。AI導入のストレスだけを対象にした制度ではありませんが、仕事のストレス全般に使えます。
職場のAI導入とストレスの関係は、研究がまだ少ない分野です。研究でわかっていることは、姉妹メディアの会社にAIが導入されてから、なんとなくしんどいで、職場の支えについては会社にAIが入ってきて、しんどくなりそうで整理しています。
この記事が扱うのは、その先の「どこで、どう助けを求めるか」です。日本には、働く人の心の負担に対応する仕組みが法律と国の指針で用意されています。どれもお金はかかりません。しんどさがはっきりする前に、仕組みの中身を知っておくと、いざというときに迷わずに済みます。
02 研究とデータでわかっていることストレスチェックの結果は、会社に知られる?
労働安全衛生法では、結果は本人に直接通知され、本人の同意なしに会社へ提供してはならないと定めています。会社に届くのは、個人が特定されない形の集団の集計です。
ストレスチェックは、労働安全衛生法第66条の10で定められた検査です。流れを表にまとめます[1][3]。
| 段階 | 法律と指針に書かれていること |
|---|---|
| 1. 検査 | 医師・保健師などが行います。質問は「仕事の負担の原因」「心身の自覚症状」「周りからの支え」の3つの領域です。 |
| 2. 結果の通知 | 検査をした医師などから本人に直接届きます。本人の同意なしに会社へ提供してはなりません。同意を検査の前や検査の時に取ることも、指針では認められていません。 |
| 3. 面接指導の申し出 | 高ストレスと判定された人が希望すると、会社は医師による面接指導を行わなければなりません。申し出を理由にした不利益な取扱いは禁じられています。 |
| 4. 医師の意見と措置 | 会社は医師の意見を聞き、必要なら就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮などの措置をとります。 |
厚生労働省の指針は、さらに次の扱いも「行ってはならない」としています[3]。
- ストレスチェックを受けないことを理由にした不利益な取扱い
- 結果を会社に渡すことに同意しないことを理由にした不利益な取扱い
- 面接指導の結果を理由にした解雇、契約の不更新、退職勧奨など
検査や面接指導の事務をした人には、知った秘密を漏らしてはならない義務もあります(同法第105条)[1]。会社に届く集団の集計は、個人が特定されない方法で行う必要があります。厚生労働省は、10人を下回る単位では原則として集団分析をしてはいけないと案内しています[5]。
ストレスチェックの外側には、国の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」があります。この指針は、職場の心のケアを4つに分けています[4]。AI導入でしんどいときに、どこに当たるかを整理しました。
| 4つのケア | 指針での意味 | AI導入で困ったときの例 |
|---|---|---|
| セルフケア | 自分でストレスに気づき、対処する | 何が負担かをメモし、ストレスチェックの結果を読む |
| ラインによるケア | 日常的に接する上司が、職場環境の改善や相談対応をする | 上司に、研修の時間や使い方のルールを相談する |
| 事業場内産業保健スタッフ等によるケア | 産業医・保健師などが支える | 産業医や保健師に、心身の不調を相談する |
| 事業場外資源によるケア | 社外の機関や専門家の支援を受ける | こころの耳、総合労働相談コーナーを使う |
右の列は、指針の4つのケアにこのメディアがAI導入の場面を当てはめた例です。指針自体がAI導入について定めているわけではありません。
Imamura ら(2018)[13]
ストレスチェックを受け、さらに職場環境の改善も経験した人たちは、どちらもなかった人たちより、1年後の心理的ストレスが改善していました。ただし、効果の大きさは小さいものでした。
対象: 日本の労働者2,492人(2015〜2016年の調査)。両方を経験したのは65人 / 限界: 振り返り型の観察研究で、検査を受けただけのグループでは、はっきりした差は報告されていません。
Kawakami・Tsutsumi(2016)[12]
制度を紹介したレビューです。結果を本人に返すことと医師の面接だけでは、効果が出ない可能性があると指摘しています。一方、ストレス対処の研修や職場環境の改善を組み合わせると、効果が期待できるとしています。
対象: 法令・指針と既存の研究の整理 / 限界: 制度開始時の論考で、懸念として情報の大量流出や、高ストレスとされた人が不利益を受ける可能性も挙げています。
03 まだわかっていないことストレスチェックで、AI導入のしんどさは軽くなる?
まだわかっていません。AI導入によるストレスに、この制度が効くかを直接調べた研究は、今回の調査では見つかりませんでした。検査だけで心の状態が良くなるとは言えません。
- ストレスチェックが、AIなど新しい技術の導入に伴うストレスを和らげるかを調べた研究は、今回の調査範囲では見当たりませんでした。
- 国内の研究で改善が見られたのは、検査に加えて職場環境の改善があった場合です。検査を受けただけで良くなるとは示されていません。
- 50人未満の事業場での義務化は2028年4月からです。小さな職場でどう運用され、どんな効果があるかは、これから明らかになる段階です。
だからこそ、制度は「受けて終わり」ではなく、結果を見て相談につなげる入口として使うのが現実的です。
04 今日からできることしんどくなる前に、何を確かめておけばいい?
自分の職場のストレスチェックの時期と相談の窓口を確かめ、負担の中身をメモしておくことです。社外の窓口の番号を一つ控えておくと、いざというときに迷いません。
職場のストレスチェックの時期と申し出の窓口を確かめる
社内の案内や規程で、実施の時期、面接指導の申し出先、結果について相談できる窓口を見ておきます。指針では、結果と一緒に申し出の窓口や相談できる窓口を知らせることが望ましいとされています。
目安 5分
AI導入で何が負担かを3つに分けてメモする
「仕事の量や難しさ」「体や気分の変化」「聞ける人がいるか」に分けて書きます。ストレスチェックの3つの領域と同じ分け方なので、結果を読むときや相談するときに伝えやすくなります。
目安 1日5分を1週間
結果が届いたら、高ストレスかどうかと申し出の方法を読む
高ストレスと判定されたら、医師の面接指導を申し出るか考えます。申し出ると結果の会社への提供に同意したとみなされることがある点も、知ったうえで決めます。
目安 10分
社外の窓口を一つ、スマホに登録しておく
社内で話しにくい内容なら、こころの耳の電話・SNS・メール相談が使えます。配置換えや評価など労働条件の不安は、総合労働相談コーナーが窓口です。
目安 3分
こころの耳 電話相談(0120-565-455): 平日17時〜22時(受付21時50分まで)、土日10時〜16時(受付15時50分まで)。祝日・振替休日・年末年始は休み。発信者番号の通知が必要です。SNS相談は平日17時〜22時・土日10時〜16時、メール相談は24時間受付で1週間以内に返信されます。
総合労働相談コーナー: 解雇、配置転換、賃金の引下げ、いじめ・嫌がらせなどの労働問題を、面談か電話で、予約不要・無料で相談できます(土日祝・年末年始は休み)。
仕事の手順をAIに頼る場面で不安があるときは、仕事でAIに作らせた文章や資料、そのまま出して大丈夫?も参考になります。
05よくある質問
ストレスチェックは受けないといけないの?
厚生労働省の指針では、働く人にストレスチェックを受ける義務はないとしています。受けないことを理由にした不利益な取扱いは行ってはならないとされています。ただし、制度を役立てるため、全員が受けることが望ましいとも書かれています。
ストレスチェックの結果は上司や会社に知られる?
労働安全衛生法第66条の10では、結果は検査をした医師や保健師などから本人に通知され、本人の同意なしに会社へ提供してはならないと定めています。ただし、医師の面接指導を申し出た場合は、結果の提供に同意したものとみなしてよいと指針に書かれています。
従業員50人未満の会社でもストレスチェックはある?
現在、50人未満の事業場は努力義務です。2025年5月に公布された改正法により、2028年(令和10年)4月1日から50人未満の事業場でも実施が義務になると厚生労働省が案内しています。
AI導入で配置換えや評価が不安なときは、どこに相談できる?
全国の労働局や労働基準監督署などにある総合労働相談コーナーで、配置転換や賃金の引下げ、いじめ・嫌がらせなどの労働問題を、予約不要・無料で相談できます。心の負担の相談なら、こころの耳の電話・SNS・メール相談も使えます。
つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。
出典
- 労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第66条の10・第105条・附則第4条. e-Gov法令検索. https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000057
- 厚生労働省. ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策. https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/
- 厚生労働省. 心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針(平成27年公示、平成30年改正). https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001676923.pdf
- 厚生労働省. 労働者の心の健康の保持増進のための指針(平成18年公示、平成27年改正). https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/060331-2.pdf
- 厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署. ストレスチェックの「集団分析」を適切に実施しましょう!(2026年7月). https://www.mhlw.go.jp/content/001725894.pdf
- 徳島労働局. ストレスチェックとは. https://jsite.mhlw.go.jp/tokushima-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/anzen_eisei/newpage_02102.html
- 厚生労働省 こころの耳. 働く人の「こころの耳電話相談」. https://kokoro.mhlw.go.jp/tel-soudan/
- 厚生労働省 こころの耳. 働く人の「こころの耳SNS相談」. https://kokoro.mhlw.go.jp/sns-soudan/
- 厚生労働省 こころの耳. 働く人の「こころの耳メール相談」. https://kokoro.mhlw.go.jp/mail-soudan/
- 厚生労働省. 総合労働相談コーナーのご案内. https://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html
- 厚生労働省 まもろうよ こころ. 電話相談. https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/soudan/tel/
- Kawakami N, Tsutsumi A (2016). The Stress Check Program: a new national policy for monitoring and screening psychosocial stress in the workplace in Japan. Journal of Occupational Health, 58(1), 1-6. https://doi.org/10.1539/joh.15-0001-ER
- Imamura K, Asai Y, Watanabe K, et al. (2018). Effect of the National Stress Check Program on mental health among workers in Japan: A 1-year retrospective cohort study. Journal of Occupational Health, 60(4), 298-306. https://doi.org/10.1539/joh.2017-0314-OA


