仕事・キャリア

AIの導入で人が減り、残った職場がつらい。研究では、残った人の不調の約半分は「裁量が減る・先が見えない」などの仕事の変化と関わっていた

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わかっている度 ★★☆ 中研究3本・公的資料0件を整理出典照合済み(2026-10-13)
空いた椅子が並ぶオフィス
Photo: Jason Knauer / CC BY 3.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

AIの導入をきっかけに、同じ部署の人が減った。自分は残れたのに、ほっとするどころか毎日がしんどい。そう感じるのは、気持ちが弱いからではありません。人員削減の研究では、残った人にも病欠や心の不調が増えやすく、その一部は「仕事のどこが変わったか」で説明できました。変わった点がわかれば、立て直す手がかりも見えてきます。

3行でわかる

  1. 人員削減のあと職場に残った人は、病欠や心の不調が増えやすいと、複数の研究で報告されている。
  2. フィンランドの研究では、残った人の病欠の増え方の約半分が、体の負担・仕事を決める裁量・先の見通しの変化で説明された。
  3. 立て直しは、増えた仕事を書き出して優先順位を相談し、自分で決められる部分と先の見通しを取り戻すことから始められる。

01 結論から言うと人が減った職場に残ると、なぜつらい?

人員削減の研究では、残った人は病欠や心の不調が増えやすく、その差の約半分は、体の負担が増え、仕事を自分で決められなくなり、先の見通しが悪くなるという「仕事の変化」で説明されました。

人が減ると、残った人の仕事は増えがちです。それだけでなく、進め方を自分で決める余地が減ったり、「次は自分かもしれない」という不安が続いたりします。研究では、こうした変化が重なることが、不調と関わっていました。

ただし、ここで紹介する研究は、AIではなく、不況や組織の再編による人員削減を調べたものです。AIの導入で人が減った職場に、そのまま当てはまるとは限りません。それでも「人が減ったあとに残った人の仕事がどう変わるか」という点では、近い状況として参考になります。

02 研究とデータでわかっていること残った人の不調は、どのくらい増える?

大きな人員削減のあと、残った人の病欠は小さな削減の職場の2.17倍でした。心の薬の処方や、強い疲れの割合も高く、削減のやり方によって差が出ることも報告されています。

2.17倍大きな人員削減のあと、残った人の病欠の多さ(小さな削減との比較。フィンランドの自治体職員764人)
49%病欠の差のうち、体の負担・裁量・先の見通しなど仕事の変化で説明された割合(同じ研究)
54.4%20%以上の解雇があった職場に残った人で、強い疲れ(情緒的消耗)があった割合(削減なしの職場は32.2%。欧州4か国)

Kivimäki ら(2000年)[1]

職種の人員が18%を超えて減った職場に残った人は、8%未満の削減だった職場に比べ、医師の診断書つきの病欠が2.17倍でした。仕事の変化(体の負担、仕事を決める裁量、雇用の不安など)を考えに入れると、この差は49%小さくなりました。

特に大きかったのは、体の負担の増加と、決定に加わる機会や自分の技能を生かす余地の減少でした。一方、配偶者からの支えが減ったことや喫煙が増えたことを考えに入れても、差はほとんど変わりませんでした。

対象: フィンランドのライシオ市で、削減後も働き続けた自治体職員764人。平均4.9年の追跡 / 限界: 差の残り半分は、測った要因では説明できなかった。1つの町の公務員の研究。

Kivimäki ら(2007年)[2]

人員が18%以上減った職場に残った人は、そこまでの削減がなかった職場の人に比べ、抗うつ薬・抗不安薬・睡眠薬の処方を受ける率が高めでした。比べた値は、男性で1.49倍、女性で1.12倍でした。

対象: フィンランドの4つの市の自治体職員。18%以上削減された部署に残った4,783人と、そうでない部署の17,599人など。削減は1991〜1993年、1994〜2000年の処方記録 / 限界: 観察研究で、削減そのものが原因とまでは言えない。

Andreeva ら(2017年)[3]

20%以上の解雇があった職場に残った人は、削減のなかった職場の人に比べ、強い疲れ・不安・落ち込みのどれもが多めでした。一方、英国の1社で、解雇をせず、配置換えと学び直しの支援で人を減らした例では、心の不調が増えたという結果は出ませんでした。

対象: フランス・スウェーデン・ハンガリー・英国の1,456人。2009〜2011年の電話調査 / 限界: 1回だけの調査で、因果関係はわからない。症状は自己申告で、医師の診断ではない。

人が減ったあとに変わりやすいこと研究での扱い
体の負担が増える病欠の差を説明する要因の中で、いちばん大きかった [1]
仕事を自分で決める裁量が減る決定に加わる機会・技能を生かす余地の減少が、差の一部を説明 [1]
次は自分かという不安が続く雇用の不安の増加も、差の一部を説明 [1]
配偶者の支えが減る減ってはいたが、病欠の差はほとんど説明しなかった [1]

03 まだわかっていないことAIで人が減った職場でも同じ?

AIの導入による人員削減を、残った人の健康まで追った研究は、まだほとんど見当たりません。上の結果がAIの場合にも当てはまるかは、わかっていません。

  • 紹介した研究は、主に1990年代のフィンランドの公務員と、2009〜2011年の欧州の調査です。今の日本の、AIの導入による人員削減とは条件が違います。
  • AIが仕事の一部を引き受ける場合、残った人の仕事が増えるのか、中身が変わるだけなのかは、職場によって大きく違うと考えられます。
  • Kivimäki らの研究でも、病欠の差の約半分は、測った仕事の変化では説明できませんでした。何が残りを説明するのかは、わかっていません。
  • どんな立て直しの方法が残った人に効くかを、比べて確かめた研究は少ないです。04は、研究で不調と関わっていた要因から考えた工夫です。

04 今日からできること残った職場で、何から立て直す?

研究で不調と関わっていたのは、体の負担、裁量の低下、先の見通しの悪さでした。増えた仕事を見える形にし、順番と進め方を決める場に加わり、先の予定を確かめることから始められます。

1

増えた仕事を、1枚に書き出す

人が減る前と後で、自分の担当がどう変わったかを書き出します。「前は誰がしていたか」「週に何時間か」を添えると、負担の増え方が自分にも上司にも見えるようになります。

目安 15分・1回

2

「全部はできない」ではなく、順番を相談する

書き出したものを持って、「この中で、どれを先にしますか」と上司に聞きます。研究では、決定に加わる機会の減少が不調と関わっていました。順番や進め方を決める場に加わること自体に、意味があると考えられます。

目安 面談15分・月1回

3

わからない「次」を、聞ける形で確かめる

「次は自分かも」という不安は、情報がないほど大きくなりがちです。今後の体制や、AIに任せる仕事の範囲が決まっているかを、面談や職場の説明会で質問します。答えが「未定」でも、未定だとわかるだけでも、考えることを区切りやすくなる場合があります。

目安 質問を3つ用意する・10分

4

体の負担を、先に減らす

研究では、体の負担の増加がいちばん大きな要因でした。休憩が取れているか、残業が続いていないかを、1週間だけ記録します。眠れない日が続くときは、職場の産業医やストレスチェックの面談を使えます(ストレスチェックと社外の相談窓口)。

目安 1日1分・1週間

新しい担当になじめないときはAIの導入で担当が変わったときの研究、休みが必要なほどつらいときは休職と休む間の収入の記事も参考になります。つらさが続くときの相談先は、つらいときの相談先にまとめています。

05よくある質問

人が減った職場に残れたのに、なぜこんなに疲れるの?

人員削減の研究では、残った人に病欠や心の不調が増えやすいことが、くり返し報告されています。フィンランドの研究では、その差の約半分が、体の負担の増加、仕事を自分で決められる度合いの低下、先の見通しの悪さで説明されました。気持ちの弱さだけの問題ではありません。

AIで人が減らされた職場の研究はある?

AIの導入による人員削減を、残った人の健康まで追った研究は、まだほとんど見当たりません。この記事で紹介しているのは、不況や組織の再編による人員削減の研究です。仕事の量や裁量の変化という点では参考になりますが、AIの場合に同じ結果になるかはわかっていません。

上司に仕事の量を相談したら、評価が下がらない?

不安なときは「できません」ではなく、「この3つのうち、どれを先にしますか」と優先順位を聞く形にすると、相談しやすくなります。研究では、仕事を自分で決められる度合いの低下が不調と関わっていたため、順番や進め方を決める場に加わること自体に、意味があると考えられます。

「仕事・キャリア」を順に読む
知る → 備える → 起きたとき → 立て直す(この記事)
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出典

  1. Kivimäki M, Vahtera J, Pentti J, Ferrie JE (2000). Factors underlying the effect of organisational downsizing on health of employees: longitudinal cohort study. BMJ, 320, 971-975. https://doi.org/10.1136/bmj.320.7240.971
  2. Kivimäki M, Honkonen T, Wahlbeck K, et al. (2007). Organisational downsizing and increased use of psychotropic drugs among employees who remain in employment. Journal of Epidemiology and Community Health, 61, 154-158. https://doi.org/10.1136/jech.2006.050955
  3. Andreeva E, Brenner MH, Theorell T, Goldberg M (2017). Risk of psychological ill health and methods of organisational downsizing: a cross-sectional survey in four European countries. BMC Public Health, 17, 758. https://doi.org/10.1186/s12889-017-4789-3