詐欺・なりすまし

AIの声の詐欺にあった親を、責めてしまった。研究では、偽の声は注意していても4回に1回は見逃され、孤独な人ほど被害の回数が多かった

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わかっている度 ★★☆ 中研究5本を整理出典照合済み(2026-10-14)
窓辺に置かれた古い形の電話機と花、レコードプレーヤー
Photo: Emma Frances Logan emmafranceslogan / CC0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

家族の声そっくりの電話で親がお金をだまし取られ、思わず「なんで気づかなかったの」と責めてしまった。その後悔を抱えている人に向けて、研究でわかっていることと、ここから関係を立て直す手順をまとめます。先に結論を言うと、責めた言葉は取り消せなくても、今から伝え直すことはできます。そして研究では、孤独を感じている人ほど被害の回数が多い関連があり(因果まではわかっていません)、親を一人にしない関わりも大切です。

3行でわかる

  1. 偽の声は、注意して聞いても見逃されることがあります。偽物が混じると知らされた実験でも、偽の音声を当てられたのは73%でした。
  2. だまされた人は恥や自分を責める気持ちを抱えやすく、人の目を気にして被害を隠しがちです。米国の高齢の被害者では、孤独な人ほど1年の被害回数が多い関連がありました。
  3. 責めてしまったら、短く謝って「あなたのせいではない」と伝え直し、手続きを分担し、次の電話の決めごとを一緒に作ります。

01 結論から言うと詐欺にあった親を責めてしまった。もう遅い?

遅くはありません。責めた言葉は消せませんが、「だまされたのはあなたのせいではない」と伝え直すことはできます。研究では、恥や人の目が被害を隠す方向に働いていたので、家族の伝え直しには意味があります。

家族が詐欺にあったと知ったとき、怒りや悔しさがわくのは自然なことです。お金を失ったのは家族全体で、驚きと心配が「なんで」という言葉になって出てしまうこともあります。責めてしまった自分を、さらに責める必要はありません。

ただ、研究を見ると、だまされた本人はすでに恥や自分を責める気持ちを抱えていることが多く、周りの目を気にして黙ってしまう傾向がありました[5]。家族の言葉は、その気持ちを強めることも、軽くすることもできます。だからこそ、今から言い直す価値があります。本人が自分を責めているときの考え方は、詐欺にだまされて自分を責めてしまうときの記事にまとめています。

02 研究とデータでわかっていることAIの声の詐欺は、注意していれば見抜ける?

研究では、注意していても見抜けないことがありました。人は偽物を見分ける自分の力を高く見積もりがちで、責める側の「自分なら気づく」も当てにならない可能性があります。

73%偽物が混じると知らされた人が、偽の音声を偽物と当てられた割合(英語・中国語の話者529人、2023年発表)
57.6%本物と偽の動画を見分けた平均の正答率。偶然は50%(主に英国の210人、2021年発表)
21本詐欺の被害後の心の影響を調べた研究をまとめた数。恥や自分を責める気持ちが共通して報告された(2026年発表)

Mai ら(2023)[1]

AIで作った偽の音声と本物の音声を聞かせて偽物を選んでもらったところ、偽物を当てられたのは73%でした。事前に偽の音声の例を聞かせても、成績はわずかしか上がりませんでした。

対象: 英語と中国語の話者529人のオンライン実験 / 限界: 参加者は偽物が混じると知っていたうえ、知らない人の短い音声を聞く課題でした。家族を名乗る実際の電話とは条件が違います。

Köbis ら(2021)[2]

本物とAIで作った偽の動画を見分けてもらうと、平均の正答率は57.6%でした。注意を促しても、正解に報酬を出しても正答率は上がらず、人は自分の見分ける力を実際より高く見積もっていました。

対象: 主に英国の成人210人(平均35歳)のオンライン実験 / 限界: 声ではなく動画の研究で、高齢の人は多くありません。

Ueno ら(2022)[3]

京都府で特殊詐欺の被害を届け出た60歳以上の56人を、被害のない99人と比べると、被害者には女性、一人暮らしの人、外出の少ない人が多くいました。被害の前について「自分はだまされない自信がある」「電話が鳴るとすぐ出る」に当てはまると答えた人も多くいました。

対象: 京都府の60歳以上155人(被害者は平均79歳)/ 限界: 小規模で、被害前のことを振り返って答えています。AIの声に限った研究ではありません。

DeLiema ら(2025)[4]

郵便の詐欺に応じたことがわかっている60歳以上の823人では、孤独を感じている人や、急な出費に備えのない人ほど、過去1年の被害回数が多い関連がありました。だれかと一緒に住むことや人づきあいの多さとは、関連が見られませんでした。

対象: 米国の郵便検査局が特定した世帯の60歳以上823人(平均77.7歳)/ 限界: 一時点の調査で、孤独が被害を増やすという因果まではわかりません。

Bai ら(2026)[5]

詐欺の被害後の心の影響を調べた21本の研究をまとめると、落ち込みや不安に加えて、恥、自分を責める気持ち、人を信じにくくなることが報告されていました。周りの目を気にする気持ちが、隠す・打ち明けるのが遅れる・助けを求めにくくなることにつながると整理されています。家族関係のこじれを報告した研究もありました。

対象: 複数の国の研究21本のまとめ(系統的レビュー)/ 限界: 研究の多くは一時点の調査や聞き取りで、回復の道すじを長く追った研究は少数です。

この5本から言えるのは、だまされたことを本人の不注意だけで説明するのは難しいということです。偽物と知らされた条件でも見逃しがあり、「自分なら気づく」という自信はむしろ当てになりませんでした。そして、だまされた人は恥ずかしさから黙りやすく、孤独は被害の繰り返しと関連していました。

03 まだわかっていないこと家族の声かけで、立ち直りや再被害は変わる?

まだ結論は出ていません。AIの声の詐欺の被害者と家族に限った研究や、家族の関わり方を変えると立ち直りや再被害が変わるかを確かめた研究は、今回の調査では見つかりませんでした。

  • AIの声の詐欺にあった人と、その家族の気持ちや関係の変化を調べた研究は見つかりませんでした。
  • 家族が責めたかどうかで、本人の立ち直りや再被害の起きやすさが変わるかを直接比べた研究は見つかりませんでした。
  • 孤独と被害回数の関連は米国の一時点の調査で、日本の家族にそのまま当てはまるかはわかっていません。
  • 被害後の支援として何が効くかを確かめた介入研究は少なく、レビューでも今後の課題とされています。

04 今日からできること責めてしまった後、何から始めればいい?

短く謝って伝え直す、手続きを一緒に進める、次の電話の決めごとを作る、連絡の回数を少し増やす。この4つは今日から始められ、どれもお金はかかりません。

1

短く謝って、伝え直す

「あのときは責めてごめん。だまされたのはあなたのせいじゃない。悪いのはだました相手」と伝えます。「でも」「次からは」を続けないのがこつです。

目安 1〜2分

2

手続きを分担して、一緒に進める

警察や金融機関への連絡、やりとりの記録の整理を、本人任せにせず手分けします。順番はAIの声の電話で振り込んでしまったときの記事に、暮らしの立て直しは詐欺でお金を失ったあとの家計の記事にまとめています。

目安 当日〜数日

3

次の電話の決めごとを、家族みんなのルールにする

「家族を名乗る電話でお金の話が出たら、いったん切って、登録してある番号にかけ直す」のように1つだけ決めます。親だけの約束にせず、家族全員が同じルールを守ると伝えると、責める話になりません。

目安 10分

4

連絡の回数を少しだけ増やす

週に1回、5分の電話やメッセージを続けます。用件がなくてもかまいません。詐欺の話を毎回持ち出さず、ふだんの話をする時間にします。

目安 週1回・5分

「取り戻します」の連絡に注意
被害にあった人に、お金を取り戻すと持ちかけて費用を求める連絡が来ることがあります。家族で「取り戻すための費用を払う話は、必ず家族に相談してから」と決めておきます。詳しくは自分を責めてしまうときの記事の04を見てください。

05よくある質問

詐欺にあった親を責めてしまった。今から謝っても意味はある?

あります。責めた言葉は消せませんが、「あのときはごめん、だまされたのはあなたのせいではない」と短く伝え直すことはできます。研究では、恥や周りの目が被害を隠す方向に働いていたため、家族が責めない姿勢をはっきり示すことには意味があります。

AIの声の詐欺は、注意していれば見抜ける?

研究では、注意していても見抜けないことがありました。偽物が混じっていると知らされた実験でも、偽の音声を当てられたのは73%で、4回に1回ほどは見逃されていました。見抜けなかったことを本人の不注意だけのせいにはできません。

一緒に住めば、親はもう詐欺にあわない?

そうとは限りません。米国の高齢の被害者823人の研究では、だれかと一緒に住んでいることと、1年の被害回数には関連が見られませんでした。一方、孤独を感じている人ほど被害回数が多い関連がありました。因果まではわかっていませんが、住み方だけでなく、話しやすい関係を保つことにも目を向けたいところです。

親がずっと落ち込んでいて心配。どうすればいい?

詐欺のあとに落ち込みや不安が続くことは、研究でも広く報告されています。眠れない、食べられないなどが続くときは、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口や、かかりつけの医師に相談することを本人に勧めてください。

「詐欺・なりすまし」を順に読む
備える → 起きたとき → 立て直す(この記事)
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出典

  1. Mai, K. T., Bray, S., Davies, T., & Griffin, L. D. (2023). Warning: Humans cannot reliably detect speech deepfakes. PLOS ONE, 18(8), e0285333. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0285333
  2. Köbis, N. C., Doležalová, B., & Soraperra, I. (2021). Fooled twice: People cannot detect deepfakes but think they can. iScience, 24(11), 103364. https://doi.org/10.1016/j.isci.2021.103364
  3. Ueno, D., Arakawa, M., Fujii, Y., Amano, S., Kato, Y., Matsuoka, T., & Narumoto, J. (2022). Psychosocial characteristics of victims of special fraud among Japanese older adults: A cross-sectional study using scam vulnerability scale. Frontiers in Psychology, 13, 960442. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2022.960442
  4. DeLiema, M., Gao, S., Brannock, D., & Langton, L. (2025). The Effects of Risky Behaviors and Social Factors on the Frequency of Fraud Victimization Among Known Victims. Innovation in Aging, 9(2), igae111. https://doi.org/10.1093/geroni/igae111
  5. Bai, J., Ho, M. H., Sung, H. T., Hung, C. S., & Tsai, J. H. (2026). Mental health and psychosocial sequelae of fraud victimization: a systematic review. Frontiers in Psychology, 17, 1805536. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1805536