詳しくない分野ほど、AIの説明を信じすぎてしまう?皮膚の写真の実験では、文章で理由を語るAIが間違えると、一般の人の正解率は約21ポイント下がった

体の症状、お金の制度、契約書の言葉。自分が詳しくない分野でAIに聞くと、理由までていねいに説明してくれるので、つい納得してしまいます。ところが、説明がわかりやすいことと、答えが正しいことは別の話です。2026年に発表された実験では、文章で理由を語るAIの助言に、詳しくない人ほど強く引っぱられていました。何がわかっているのかを、研究から整理します。
3行でわかる
- 皮膚の写真を見分ける実験で、文章で理由を説明するAIの助言を見た一般の人は、AIが正しいと正解率が13.4ポイント上がり、間違っていると21.1ポイント下がりました。
- 同じ研究の医師は、AIが間違えても成績がほとんど下がりませんでした。ただし、別の実験では、決まった方向に偏ったAIを見た病院の医師らの正解率が11.3ポイント下がっています。
- AIにふだんから頼る習慣が強い人ほど、間違った答えにも高い信頼を寄せていました。詳しくない分野では、AIの説明を「下書き」として扱い、決める前に1つ確かめるのが研究と合っています。
01 結論から言うと詳しくない分野だと、AIを信じすぎる?
その傾向を示す実験があります。皮膚の写真を見分ける実験では、文章で理由を説明するAIが間違えたとき、医学の知識がない一般の人の正解率は大きく下がり、医師はほとんど下がりませんでした。
AIの答えをそのまま信じてしまう傾向は、研究では「自動化バイアス」と呼ばれます。機械の判断を信じすぎて、自分で確かめる手間を省いてしまうことです。
新しくわかってきたのは、AIが文章で理由を語ると、詳しくない人ほどその説明に引っぱられやすいという点です。理由が書いてあると、正しく見えます。けれども、その理由が正しいかどうかを判断する知識がないと、AIが間違えたときにも一緒に間違えてしまいます。
一方で、詳しい人なら安心とも言い切れません。AIが一定の方向に偏っていると、病院で働く医師らでも正解率が下がった実験があります。分野の知識は守りになりますが、万能ではありません。
02 研究とデータでわかっていることAIの説明は、どのくらい判断を引っぱる?
一般の人では、文章の説明つきのAIが正しいときは最も役に立ち、間違えたときは最も成績を下げました。説明の文章が判断を強く引っぱる「もろ刃の剣」だったと研究者は述べています。
Xu ら(2026年)[1]
皮膚の写真を見て、ほくろか悪性黒色腫かを見分ける実験です。一般の人が、1枚ごとにAIなしとAIの助言ありの2回答えました(AIを先に見る組と、自分で先に答える組に分けました)。文章で理由を説明する大規模言語モデル(LLM)の助言は、AIが正しいときに正解率を13.4ポイント上げ、間違っているときに21.1ポイント下げました。どちらも、ほかの助言の出し方より大きい変化でした。
研究者は、AIの文章が「縁が不規則」のような特徴を挙げると、見る人がその特徴があるように写真を見直してしまう可能性を指摘しています。また、AIに完全に従った人は、AIを見る前の正解率がもともと低めでした(65.8%と72.5%)。
医師の実験では、AIが間違えても成績はほとんど下がりませんでした。同じ課題で比べた医学生は、医師よりAIに頼る傾向が強く、医師のほうが慎重にAIを使っていました。
対象: 医学の知識がない一般の人623人(平均33歳、オンラインで募集)、プライマリ・ケア医153人、医学生320人 / 限界: 一般の人と医師では課題が違い、直接は比べられない。1人12枚の写真で、年齢などの情報もなく、実際の受診とは違う。
Jabbour ら(2023年)[2]
急性の呼吸不全で入院した患者の事例で、肺炎・心不全・COPDを見分ける実験です。AIなしの正解率は73.0%でした。標準的なAIを見ると2.9ポイント上がった一方、年齢や体格(BMI)などで決まった方向に偏ったAIを見ると11.3ポイント下がりました。
AIがレントゲン写真のどこを見たかを色で示す説明をつけても、偏ったAIによる低下は9.1ポイントで、説明なしとの差(2.3ポイント)ははっきりしたものではありませんでした。
対象: 米国の病院で入院患者を診る医師、ナース・プラクティショナー、医師助手457人(2022年4月〜2023年1月) / 限界: Web上の事例問題で、実際の診療とは違う。説明は文章ではなく画像の色分けだった。
Ahmed ら(2026年)[3]
AIが作った健康情報を、元の文章と並べて読んでもらう実験を2回行いました。どちらでも、正しい情報のほうが信頼されていました。ただ、ふだんから生成AIに頼る習慣が強いと答えた人ほど、AIの答え全体を信頼し、正しいか間違っているかで信頼が変わりにくい関連がありました。
大事な部分に色をつけて目を向けさせる工夫では、この傾向は変わりませんでした。
対象: 大学の授業の学生338人と、米国のオンライン調査の参加者563人 / 限界: 頼る習慣は自己申告で、習慣が原因で見抜けなくなるのかはわからない。
106件の実験をまとめた研究でも、AIが理由の説明や自信度を示すかどうかで、人とAIを組み合わせた成績にはっきりした差は出ていません [4]。組み合わせがうまくいく条件は、AIと一緒に決めれば、間違いは減る?で整理しています。
03 まだわかっていないことChatGPTとの会話でも同じことが起きる?
まだはっきりしていません。主な研究は医療の写真や事例の判断で、AIの説明は1回だけ示されました。質問を重ねる会話の使い方や、お金・法律など医療以外の分野で同じ結果になるかは、確かめられていません。
- Xu らの実験では、AIの説明は1回で作られ、言い直しや追加の質問はできませんでした。研究者自身も、説明の口調が自信ありげになりやすかった可能性を限界に挙げています。
- 医療以外の分野で、分野の知識がどのくらい守りになるのかを比べた研究は少ないままです。
- 「先に自分で答えてからAIを見る」順番にすると頼りすぎが減るかは、はっきりしません。Xu らの実験では、AIを先に見せるとAIに完全に従う人の割合が増える傾向がありましたが、一般の人でははっきりした差ではなく、最後の正解率も順番で変わりませんでした。
- AIに頼る習慣と見抜きにくさの関係は、一度の調査での関連です。頼る習慣を減らせば見抜けるようになるのかは、まだわかっていません。
04 今日からできること詳しくない分野でAIを使うとき、どうする?
詳しくない分野では、AIの答えを結論ではなく「下書き」として扱い、決める前に1つだけ元の情報で確かめます。説明のわかりやすさは、正しさの証拠にしないことが出発点です。
質問の前に「これは専門外か」を決める
体の症状、薬、お金の制度、契約や法律など、自分では答えの正しさを判断できない分野を、前もって書き出しておきます。そこに入る質問では、AIの答えで決めない、と決めておきます。
目安 最初に5分
説明の中の主張を1つ選んで確かめる
「〜だから〜です」の「〜だから」の部分を1つ選び、元の資料や公的な情報で本当にそう書かれているかを開いて確かめます。出典の確かめ方はAIの答えの確かめ方にまとめています。
目安 大事な質問1件につき5分
体のことは、AIの説明で決めない
今回の研究の多くは医療の判断でした。症状の整理にAIを使うのはよくても、受診するか、薬をどうするかは医療機関や薬剤師に確かめます。理由はAIに病気や薬のことを聞いても大丈夫?で詳しく書いています。
目安 決める前に1回
そのまま使った回数を1週間数える
AIの答えをそのまま使った回数と、自分で確かめた回数をメモします。頼る習慣が強い人ほど間違いに鈍くなる関連が報告されているので、自分の頼り方を知る手がかりになります。
目安 1日1分を1週間
検索結果の上に出るAIの要約も、出典で裏づけられた文は約半分という研究があります(AIの要約は信じていい?)。
05よくある質問
AIが理由を説明してくれれば、間違いに気づける?
説明があるだけでは気づきにくいとする研究があります。皮膚の写真の実験では、文章で理由を説明するAIが間違えたとき、医学の知識がない人の正解率は21.1ポイント下がりました。説明が正しいかを判断できる知識がない分野ほど、注意が必要です。
専門家なら、AIの間違いに引っぱられない?
引っぱられにくい傾向はありますが、いつもではありません。皮膚の写真の実験では、医師はAIが間違えても成績がほとんど下がりませんでした。一方、決まった方向に偏ったAIを見た病院の医師らの実験では、正解率が11.3ポイント下がっています。
AIを毎日使っていると、間違いに気づきにくくなる?
そうした関連は報告されていますが、原因かどうかはまだわかりません。2つの実験では、生成AIに頼る習慣が強いと答えた人ほど、間違った答えにも高い信頼を寄せていました。頼る習慣は自己申告で、一度の調査での結果です。
出典
- Xu X, Hu H, Zhang H, et al. (2026). Divergent impacts of explainable AI for dermatological diagnosis on clinicians versus lay people. Nature Medicine, 32, 3000–3009. https://doi.org/10.1038/s41591-026-04553-w
- Jabbour S, Fouhey D, Shepard S, et al. (2023). Measuring the Impact of AI in the Diagnosis of Hospitalized Patients: A Randomized Clinical Vignette Survey Study. JAMA, 330(23), 2275–2284. https://doi.org/10.1001/jama.2023.22295
- Ahmed A, Leroy G, Sachdeva A, et al. (2026). Trust in Generative AI for Health Information Consumption and the Effect of Learned Dependency: Randomized Controlled Experimental Study. Journal of Medical Internet Research, 28, e98326. https://doi.org/10.2196/98326
- Vaccaro M, Almaatouq A, Malone T. (2024). When combinations of humans and AI are useful: A systematic review and meta-analysis. Nature Human Behaviour, 8, 2293–2303. https://doi.org/10.1038/s41562-024-02024-1


