偽情報・ディープフェイク

年配の家族は、AIの偽情報にだまされやすい?研究では、ニュースの真偽を見分ける成績はむしろ年上ほど高く、差が出ていたのは共有の多さで、AIの偽画像の実験は若い人ばかりだった

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わかっている度 ★★☆ 中研究3本・研究のまとめ2本を整理出典照合済み(2026-10-21)
新聞の上に置かれたコーヒーカップ
Photo: tsaiproject from Canada / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

親や祖父母が、家族のグループにAIで作られたような画像を転送してきた。「年をとるとだまされやすくなるのでは」と心配になる人は少なくありません。けれど研究を並べると、話はそれほど単純ではありませんでした。見分ける成績と、広める多さは別もので、AIの偽画像については、年配の人を調べた実験がほとんどないこともわかりました。

3行でわかる

  1. 米国の31の実験・11,561人のデータをまとめた分析では、ニュースの見出しの真偽を見分ける成績は、年齢が上の人ほど高く、偽物と疑う慎重さも強い傾向でした。
  2. 一方、2016年の米国のFacebookの記録では、65歳以上は最も若い年代の約7倍、偽ニュースサイトの記事を共有していました。差が出ていたのは「見分ける力」より「広める多さ」です。
  3. AIの偽の顔や声を見分ける実験は、平均20歳前後の若い人が中心で、若い人でも静止画の顔は偶然並みでした。年齢で決めつけず、家族全員で「出どころ」と「送る前のひと呼吸」を共有するのが現実的です。

01 結論から言うと年配の人ほど、AIの偽情報にだまされやすい?

年齢だけでは決められません。ニュースの真偽を見分ける成績は年上ほど高い一方、偽ニュースを共有した数は65歳以上で多い研究があります。AIの偽画像や偽の声を見分ける力が年齢で違うかは、まだほとんど調べられていません。

「だまされやすい」には、2つの意味が混ざりがちです。1つは、見せられた情報が本物か偽物かを正しく見分けられるか。もう1つは、実際に家族や友人に広めてしまうかです。研究では、この2つが年齢によって違う向きに出ていました [1][2]。

つまり「親はもう見分けられない」と考えるより、「見分けられるのに、送る前に確かめないことがある」と考えるほうが、研究の結果に近いといえます。

02 研究とデータでわかっていること年齢によって、偽情報との付き合い方は違う?

米国の大規模な分析では、年上ほど見出しの真偽を正しく見分け、偽物と疑う慎重さも強い傾向でした。一方で、偽ニュースの共有は65歳以上で多く、健康の偽情報では、家族や友人との関係が見分ける助けにも広める経路にもなっていました。

11,561人米国の31の実験で、ニュースの見出しの真偽を判断した人の数(2024年発表のまとめ)
約7倍65歳以上が最も若い年代と比べて、偽ニュースサイトの記事を共有した数(米国、2016年のFacebook)
8.5%同じ研究で、偽ニュースサイトの記事を1本以上共有した人の割合。9割以上は共有していなかった
平均19.6歳AIの偽の顔写真を見分ける実験に参加した2,203人の平均年齢(静止画では偶然並みの成績)

Sultan ら(2024、研究のまとめ)[1]

31の実験の参加者一人ひとりのデータを合わせて分析すると、年齢が上の人ほど、本物と偽物の見出しを見分ける成績が高かった。年上の人ほど見出しを「偽物」と判断しやすく、慎重な傾向もあった。全体では、本物の見出しの68.5%、偽物の見出しの67.2%を正しく判断できていた。見出しに出どころ(どのメディアか)が添えられた実験ほど、見分ける成績が高かった。

対象: 米国の11,561人、25万件以上の判断 / 限界: すべて米国の、ネットで参加した人の実験。研究者は、ネット調査に参加する年配の人はデジタルに慣れた人が多く、同じ年代を代表していない可能性を指摘している。見出しを判断する課題で、AIの画像や動画は扱っていない。

Guess ら(2019)[2]

調査の回答者のうち、Facebookの共有の記録を見せてもらえた1,191人を調べると、偽ニュースサイトの記事を1本以上共有した人は8.5%だった。65歳以上は、最も若い年代の約7倍、すぐ下の年代の約2.3倍の記事を共有しており、支持政党や考え方、学歴、共有した数の全体をそろえても差は残った。

対象: 2016年の米国大統領選挙のころの米国の成人 / 限界: 生成AIが広まる前の記録で、AIの偽画像は扱っていない。共有した理由や、本当だと信じていたかどうかまではわからない。

Hu ら(2026、研究のまとめ)[3]

年配の人とネットの健康の偽情報を調べた26本の研究を整理すると、だまされやすさには、記憶や注意の衰え、デジタルや健康の知識の差、気持ちの動き、人とのつながりなどが重なって関わっていた。家族や親しい友人は、偽情報を見分ける助けにも、広める経路にもなっていた。

対象: 2000〜2024年に発表された26本の研究 / 限界: 新型コロナの時期の研究に偏り、国や使うサービスの違いも十分に調べられていないと著者が述べている。

Pehlivanoglu ら(2026)[4]

AIで作った顔写真と本物を見分ける実験では、参加者の成績は偶然並みで、本物と思い込みやすい傾向があった。動画の実験では人のほうが判定プログラムより成績がよく、ものごとをじっくり考える傾向が強い人やネットの扱いに慣れた人ほど、よく見分けていた。著者は、年配の人への研究の広げ方を今後の課題に挙げている。

対象: 米国の大学の心理学の学生。顔写真の実験は2,203人(18〜58歳、平均19.6歳)、動画の実験は1,901人(平均20.3歳) / 限界: 参加者のほとんどが若い大人で、年齢による違いは調べられていない。

Ivory ら(2026)[5]

本物とAIの顔・声を見分ける実験では、正しく判断できたのは顔で65.5%、声で54.0%だった。顔が得意な人が声も得意とは限らなかった。声については、自分の自信と実際の正しさが結びついていなかった。

対象: ネットで募集した、英語が流暢な18〜30歳の172人(聞こえの衰えなどの影響を避けるため、年齢をしぼって集めた) / 限界: 若い人だけの実験で、年配の人で同じ結果になるかはわからない。

5本を並べると、「年配の人は見分けられない」という見方は、少なくともニュースの見出しについては研究と合いません。差が出ていたのは共有の多さでした。そしてAIの顔や声については、若い人でも見た目や聞こえだけではかなり難しく、年配の人を調べた実験はほとんどありません。ほかの研究でも、AIの文章か人の文章かを見た目で当てるのは難しいことがわかっています(AIが書いた偽情報は、人が書いたものよりだまされやすい?)。

03 まだわかっていないことAIの偽画像や偽の声でも、年齢の差は同じ?

わかっていません。AIの偽の顔や声を見分ける実験は、若い人を集めたものが中心で、年配の人を十分に含めて年齢の差を調べた研究は見つかりませんでした。日本の年代別のデータも見つかっていません。

  • この記事で見たAIの顔や声の実験は、平均20歳前後の参加者か、18〜30歳にしぼった参加者でした。年配の人の成績が若い人と違うかは、わかっていません。
  • 年上ほど見分ける成績が高いという結果は、米国のネットで参加した人のもので、デジタルに慣れていない人まで含めると変わる可能性があります。
  • 65歳以上が偽ニュースを多く共有していた理由(信じていたのか、話題として送ったのか)は、研究では確かめられていません。
  • 日本で、年代ごとにAIの偽画像や偽ニュースをどのくらい見分け、広めているかを調べた研究は見つかりませんでした。

04 今日からできること家族のAIの偽情報が心配なとき、何をすればいい?

年齢で決めつけず、家族全員で同じ習慣を持ちます。送る前に出どころを見る、画像や声は見た目で判断しない、間違いを伝えるときは年齢に触れない、の3つです。どれもお金はかからず、今日の会話から始められます。

1

「送る前に、出どころを1つ見る」を家族の約束にする

差が出ていたのは共有の多さでした。転送の前に「どこが出した情報か」を見る、わからなければ送らない、を家族全員の約束にします。米国の分析では、出どころが添えられた実験ほど見分ける成績が高い傾向でした。

目安 1回5秒、約束づくりは10分

2

写真や声は「見た目・聞こえ」で判断しない

若い人でもAIの顔写真は偶然並み、声は約54%しか当てられませんでした。「本物に見える」「声が似ている」は確かめた理由になりません。公式の発表や、ふだん使っている連絡先にかけ直して確かめる、と家族で共有します。

目安 気になったとき1回、数分

3

間違いを伝えるときは「年だから」と言わない

年齢を理由にすると、相手は話を聞きにくくなります。送ってくれた本人に、個別に「どこが違うか」と「確かめた先」を短く伝えます。伝え方は家族のグループに流れてくるAIの偽画像や偽ニュース、どう備える?やAIの偽情報を信じた家族と、けんかになったにまとめています。

目安 メッセージ1通、3分

05よくある質問

高齢の親は、AIの偽画像にだまされやすいの?

はっきりとはわかっていません。ニュースの見出しの研究では、年上ほど真偽を見分ける成績が高い結果でした。一方、AIの偽の顔や声を見分ける実験は若い人が中心で、年配の人で調べたものはほとんどありません。年齢で決めつけず、出どころを確かめる習慣を家族全員で持つほうが確かです。

年配の人のほうが、偽ニュースを広めやすいって本当?

そういう結果の研究はあります。2016年の米国のFacebookの記録では、65歳以上は最も若い年代の約7倍、偽ニュースサイトの記事を共有していました。ただし1本でも共有した人は全体の8.5%で、多くの人は共有していませんでした。共有した理由まではわかっていません。

若い人なら、AIの偽画像を見分けられる?

見た目だけでは難しいことがわかっています。平均20歳前後の2,203人の実験では、AIの顔写真を見分ける成績は偶然並みでした。18〜30歳の実験でも、AIの声を正しく判断できたのは約54%でした。年齢に関係なく、出どころや公式の発表で確かめることが大切です。

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出典

  1. Sultan M, Tump AN, Ehmann N, Lorenz-Spreen P, Hertwig R, Gollwitzer A, Kurvers RHJM (2024). Susceptibility to online misinformation: A systematic meta-analysis of demographic and psychological factors. Proceedings of the National Academy of Sciences, 121(47), e2409329121. https://doi.org/10.1073/pnas.2409329121
  2. Guess A, Nagler J, Tucker J (2019). Less than you think: Prevalence and predictors of fake news dissemination on Facebook. Science Advances, 5(1), eaau4586. https://doi.org/10.1126/sciadv.aau4586
  3. Hu H, Jin G, Zhang X (2026). Older adults and online health misinformation: a systematic literature review. BMC Psychology, 14, 954. https://doi.org/10.1186/s40359-026-04714-z
  4. Pehlivanoglu D, Zhu M, Zhen J, Gagnon-Roberge AA, Kern RK, Woodard D, Cahill BS, Ebner NC (2026). Is this real? Susceptibility to deepfakes in machines and humans. Cognitive Research: Principles and Implications, 11, 3. https://doi.org/10.1186/s41235-025-00700-y
  5. Ivory M, McGettigan C, Nuttall HE, Nightingale SJ (2026). Human detection of AI-generated faces and voices is not domain-general. Scientific Reports, 16, 28639. https://doi.org/10.1038/s41598-026-59364-3