仕事・キャリア

AIの導入をきっかけに、望まない形で退職した。スウェーデンの約5,900人の追跡では、退職そのものより「自分で選べなかった」ことが気分の落ち込みと結びついていた

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わかっている度 ★★☆ 中研究5本・公的資料0件を整理出典照合済み(2026-10-15)
草花に囲まれた庭の木のベンチ
Photo: Acabashi / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究をAIが調べて整理しました(商品の紹介や診断はしていません。出典は末尾)。

AIの導入で部署がなくなり、早期退職に応じた。本当はもう少し働くつもりだった。そんなふうに、望まない形で仕事を離れた人は少なくありません。退職後の心の健康を追った研究では、退職そのものより「自分で選べなかった」ことのほうが、気分の落ち込みと結びついていました。この記事では、研究でわかっていることと、これからの暮らしを立て直す手がかりを整理します。

3行でわかる

  1. スウェーデンの60〜74歳の約5,900人を9年にわたって毎年調べた研究では、退職すると平均では心の健康はむしろよくなっていました。自分で選べずに退職した人では改善が小さく、69歳で退職した人では気分の落ち込みが増えていました。
  2. 米国の退職した人の研究では、前の仕事に近い分野で少し働き続けた人ほど、心の健康がよい傾向でした。一方で、米国の50歳以上の働く人の研究では、辞めたいのにお金のために働き続けている人は、気分の落ち込みが多めでした。
  3. 立て直しの手がかりは「選べなかったこと」と「これから選べること」を分け、近い分野の小さな仕事や役割のある活動を、自分で選んで試すことです。

01 結論から言うと望まない退職のあと、心の不調は続く?

続くとは限りません。退職後の追跡研究では、平均すると心の健康はむしろよくなっていました。ただし、自分で選べずに退職した人では改善が小さく、69歳での退職では気分の落ち込みが増えていました。

退職は、それだけで心を壊すできごとではありません。研究で差を分けていた要因の一つは、退職したかどうかより、その決定を自分で選べたと感じられたかどうかでした。

AIの導入をきっかけにした退職は、まさに「選べなかった」と感じやすい形です。だからこそ、これからの暮らしの中で、自分で選べる部分を少しずつ取り戻すことが立て直しの軸になります。

退職や失業の直後の手続きはAIの影響で仕事や契約を失ったときの記事で、仕事がくれていた「時間・人・役割」の補い方はAIで仕事を失ったあとの立て直しの記事で整理しています。

02 研究とデータでわかっていること退職後の心の健康を分けるのは何?

大きな要因の一つは、退職を自分で選べたかどうかでした。選べた人は退職後に生活の満足が上がりやすく、選べなかった人は、とくに60代後半での退職で気分の落ち込みが増えていました。前の仕事に近い分野で少し働くことは、よい心の健康と結びついていました。

約3人に1人退職を完全に、または一部「自分では選べなかった」と答えた人の割合(完全に6.3%、一部28.1%。スウェーデンの60〜74歳、2015〜2023年)
26%退職が自分の意思ではなかったと答えた人の割合。会社からの圧力が理由の人は6%(オランダの高齢の働く人3,735人、2015〜2023年)
1.50倍辞めたいのにお金のために働き続けている人の、のちの気分の落ち込みのオッズ(米国の50歳以上の働く人5,217人、2026年発表)

Hanssonら / European Journal of Ageing(2025)[1]

スウェーデンの60〜74歳を9年にわたって毎年調べると、退職後は平均して生活の満足や生活の質が上がり、気分の落ち込みは減っていました。自分で選んで退職した人は、退職の年齢にかかわらず生活の満足が上がっていました。一方、69歳で選べずに退職した人では、気分の落ち込みが増え、生活の質が下がっていました。

対象: スウェーデンの60〜74歳5,913人(2015〜2023年) / 限界: 定年前後の退職が中心で、50代の早期退職やAIによる退職を調べたものではない。早く退職した人の改善が大きかったのは、退職前の体調が悪かったためと著者らは説明している。

Marabiniら / Journals of Gerontology: Series B(2026)[2]

オランダの退職者の26%が、退職は自分の意思ではなかったと答えました。理由で多かったのは年金の年齢に達したこと(7%)で、会社からの圧力(6%)、体調(5%)が続きました。学び直しを支える職場では、会社からの圧力による退職が少なめでした。

対象: オランダの501の職場の、退職に移った3,735人(2015〜2023年) / 限界: 退職後の心の健康は調べていない。職場の雰囲気は働く人の受け止め方で測っている。

Zhanら / Journal of Occupational Health Psychology(2009)[3]

退職後もつなぎの仕事を続けた人は、完全に仕事を離れた人に比べ、大きな病気や体の不自由が少なめでした。心の健康がよかったのは、前の仕事と同じ分野でつなぎの仕事をした人でした。別の分野の仕事では、心の健康との結びつきは示されませんでした。

対象: 米国の退職した人12,189人(全国の代表的な調査の4回分) / 限界: 観察研究で、もともと元気な人が働き続けている可能性がある。

ChenとMartinez-Cardoso / The Gerontologist(2026)[4]

辞めたいのに、お金や医療保険のために働き続けている人は77%いました。こうした人は、6年あまりの追跡で、気分の落ち込みのオッズが1.50倍、体調を「よくない」と答えるオッズが1.47倍でした。働き続けることが、いつでも心によいわけではありません。

対象: 米国の50歳以上の働く人5,217人 / 限界: 米国の医療保険の事情が大きく関わっており、日本にそのまま当てはまるとは言えない。

Jenkinsonら / BMC Public Health(2013)[5]

ボランティア活動と健康を調べた40本の論文をまとめると、長く追った研究では、ボランティアをする人ほど気分の落ち込みが少なく、生活の満足が高い傾向でした。ただし、くじ引きで分けた実験では、この効果は確かめられていませんでした。

対象: くじ引きで分けた試験5件、長く追った研究17件など / 限界: 退職した人に限った研究ではない。元気な人がボランティアをしているだけの可能性も残る。

03 まだわかっていないことAIによる退職でも、同じことが言える?

AIの導入をきっかけに退職した人を追った研究は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。02の研究は、定年前後の退職や一般の働く人が対象で、日本の50代の早期退職とは条件が違います。

  • 「技術に置き換えられた」という理由での退職が、ほかの理由の退職より心に重く残るのかは、わかっていません。
  • つなぎの仕事やボランティアの研究はほとんどが観察研究で、始めれば心の健康がよくなるという因果までは確かめられていません。
  • 日本の早期退職(希望退職)に応じた人の、その後の心の健康を長く追った研究は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。

04 今日からできること望まない退職のあと、何から立て直す?

まず「選べなかったこと」と「これから選べること」を紙で分けます。そのうえで、前の仕事に近い分野の小さな仕事や、役割のある活動を、自分で選んで試してみます。元の働き方に戻ることを急ぐ必要はありません。

1

「選べなかったこと」と「これから選べること」を分けて書く

紙を2つに分け、左に退職の経緯で選べなかったこと、右にこれから自分で決められること(1日の過ごし方、働くか、どこで誰と会うか)を書きます。研究で差を分けていた要因の一つが、選べたという感覚でした。

目安 1回10分

2

前の仕事に近い分野で、小さく働く道を1つ調べる

週1〜2日の仕事、元の業界の短期の仕事、知り合いからの頼まれごとなど、前の経験が生きる形を1つ調べます。米国の研究では、同じ分野でつなぎの仕事をした人ほど、心の健康がよい傾向でした。

目安 週に1回・30分

3

役割のある活動を、週1回だけ試す

地域の活動やボランティアなど、誰かに頼られる場を1つ選び、まず1回だけ参加してみます。合わなければやめてかまいません。続けるかどうかを自分で決めること自体が、選び直しの練習になります。

目安 週1回・1〜2時間

4

「元どおりに働かなければ」と思い詰めない

辞めたいのにお金のために働き続けている人は、気分の落ち込みが多めでした。家計の見通しを立てたうえで、フルタイムに戻る・少し働く・働かないの3つを並べ、今の自分に合う形を選びます。

目安 月1回・30分の見直し

AIの導入で職場に残った側のつらさは、AIの導入で人が減り、残った職場がつらいで整理しています。

05よくある質問

早期退職したら、心の健康は悪くなる?

悪くなるとは限りません。スウェーデンの60〜74歳を追った研究では、退職後は平均して生活の満足が上がり、気分の落ち込みは減っていました。自分で選べずに退職した人では改善が小さく、69歳で退職した人では気分の落ち込みが増えていました。ただし、50代の早期退職やAIによる退職を調べた研究ではありません。

退職したあと、また働いたほうがいい?

研究では、前の仕事に近い分野で少し働き続けた人ほど、心の健康がよい傾向でした。一方で、辞めたいのにお金のために働き続けている人は、気分の落ち込みが多めでした。働くかどうかより、自分で選んだ形かどうかが大切だと言えます。

AIに仕事を奪われた気がして、悔しさが消えない。どうすればいい?

悔しさは自然な反応です。研究で心の健康と結びついていた要因の一つは、退職を自分で選べたかどうかでした。過去の経緯は変えられませんが、これからの過ごし方や働き方は選べます。選べることを書き出し、小さな選択を1つずつ重ねるのが手がかりになります。

つらい状態が2週間以上続くときや、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの相談窓口に相談できます。

「仕事・キャリア」を順に読む
知る → 備える → 起きたとき → 立て直す(この記事)
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出典

  1. Hansson I, Berg AI, Bjälkebring P, Buratti S, Hassing LB, Thorvaldsson V, Johansson B (2025). Retirement as risk or relief? The role of timing in mental, physical and cognitive health effects of retirement. European Journal of Ageing, 23, 1. https://doi.org/10.1007/s10433-025-00898-2
  2. Marabini C, Henkens K, van Solinge H (2026). Involuntary retirement and organizational climates: a multilevel study of older workers. The Journals of Gerontology: Series B, 81(9), gbag128. https://doi.org/10.1093/geronb/gbag128
  3. Zhan Y, Wang M, Liu S, Shultz KS (2009). Bridge employment and retirees' health: a longitudinal investigation. Journal of Occupational Health Psychology, 14(4), 374-389. https://doi.org/10.1037/a0015285
  4. Chen L, Martinez-Cardoso A (2026). Working out of necessity: how job lock shapes health for older workers. The Gerontologist, 66(9), gnag159. https://doi.org/10.1093/geront/gnag159
  5. Jenkinson CE, Dickens AP, Jones K, Thompson-Coon J, Taylor RS, Rogers M, Bambra CL, Lang I, Richards SH (2013). Is volunteering a public health intervention? A systematic review and meta-analysis of the health and survival of volunteers. BMC Public Health, 13, 773. https://doi.org/10.1186/1471-2458-13-773