AIが入ってから仕事が増えて、残業が続いている。研究では、AIで仕事がきつくなった職場が報告されていて、まず労働時間と増えた作業を記録して相談するのが手がかり

AIが入れば仕事は楽になると聞いていたのに、実際には確認の手間や新しい作業が増え、残業が続いている。そう感じている人は少なくありません。米国とカナダのコールセンターの研究では、AIや自動の案内のつまずきで仕事がきつくなったという声が多く集まっていました。この記事では、何が起きているのかと、残業が続き始めた今やることを、研究から順に整理します。
3行でわかる
- AIの導入で仕事がきつくなった職場は、研究で実際に報告されています。ただし、AIで働く人の健康が悪くなると言い切れる研究はまだありません。
- はっきりしているのは長い労働時間のほうです。WHOとILOのまとめでは、週55時間以上働く人は、週35〜40時間の人より脳卒中のリスクが35%高いとされています。
- 今やることは「労働時間と増えた作業を記録する」「記録を持って業務量を相談する」「仕事のあとに仕事から離れる時間を守る」の3つです。
01 結論から言うとAIが入って仕事が増えるのは、よくあること?
珍しいことではありません。AIや自動の仕組みが簡単な作業を引き受けると、人には確認や例外の対応、AIのつまずきの後始末が残りやすいことが研究で報告されています。仕事が増えたと感じるのは、気のせいとは限りません。
AIの導入は「作業が減る」前提で計画されることが多く、増えた仕事は見えにくくなりがちです。たとえば、AIの出した結果を確かめる、AIが対応できなかった難しい件を引き受ける、新しい使い方を覚える、といった仕事です。
一方で、AIが職場に広がると働く人の健康が悪くなる、とまでは言えません。ドイツで約1万8,500人を追った研究では、はっきりした悪化は見られませんでした(職場にAIが広がると健康は悪くなる?の記事)。だからこそ、AIそのものより「自分の労働時間が今どうなっているか」を見ることが大切です。
02 研究とデータでわかっていることAIで仕事がきつくなると、何が問題になる?
AIの導入で仕事がきつくなった例は研究で報告されています。健康への影響がはっきりしているのは長時間労働で、週55時間以上働く人は脳卒中と心臓の病気のリスクが高いとされています。仕事から心を離せている人ほど疲れが少ない傾向もあります。
O'Bradyら / Work and Occupations(2026)[2]
米国とカナダの通信会社のコールセンターで、AIのチャットや自動音声の案内が入ったあとに何が起きたかを調べました。自動化に否定的な自由回答91件のうち62件(68%)が、案内のつまずきで仕事がきつくなったという内容でした。労働組合が会社と交渉し、仕事の量や進め方をめぐって話し合う場面も記録されています。
対象: 管理職・働く人・労働組合の担当者など106人への聞き取りと、働く人3,277人のアンケート / 限界: 労働組合と協力した調査。割合は自由回答を分類したもので、全員の経験を数えたものではない。
Wang・Li / Behavioral Sciences(2026)[3]
仕事でAIを使う会社員に、1か月の間をあけて2回アンケートをとりました。最初にAIをよく使っていた人ほど、1か月後に燃え尽きの度合いがやや高く、仕事そのものへの意欲がやや低くなっていました。燃え尽きが強い人ほど、その後AIをよく使うという逆向きの結びつきも見られました。
対象: 中国の重慶・浙江・広東・河南の会社で働く313人 / 限界: 結びつきは小さく、AIが原因とまでは言えない。AIの使い方や仕事の量の違いは詳しく調べていない。
Pegaら / Environment International(2021)[4]
WHOとILOが、長い労働時間と病気の関係を調べた研究をまとめました。週55時間以上働く人は、週35〜40時間の人より、脳卒中になるリスクが35%、心臓の血管の病気(虚血性心疾患)で亡くなるリスクが17%高いとされました。週41〜54時間では、はっきりした結論は出ていません。
対象: 世界194か国の推計(脳卒中は7件・16万2,644人分、心臓の病気は22件・33万9,680人分の研究) / 限界: AIとは関係のない研究。リスクは集団の平均で、一人ひとりの将来を示すものではない。
Wendsche・Lohmann-Haislah / Frontiers in Psychology(2017)[5]
仕事のあとに仕事のことを頭から離せている人ほど、疲れきった感じが少なく、よく眠れていて、生活への満足が高い傾向がありました。仕事の量が多い人ほど、仕事から離れにくいこともわかっています。
対象: 86本の論文・91の調査、働く人3万8,124人 / 限界: 多くは本人が答えるアンケートで、相関の研究。AIの導入を扱ったものではない。
03 まだわかっていないことAIのせいで残業が増えた、と言える?
まだはっきりとは言えません。AIと働く人の心身の健康を調べた研究の多くは1回だけのアンケートで、AIが残業を増やしたのかを確かめた研究は、今回調べた範囲ではほとんど見つかりませんでした。
- 2026年に出た研究のまとめ(43件の資料を整理)では、AIやデジタル化に関わるリスクとして仕事のきつさの増加が挙がっていました。一方で、集められた研究の多くは1回だけの調査で、長く追った研究では悪影響がはっきりしなかったものもありました[1]。
- 日本の職場で、AIの導入前後に労働時間がどう変わったかを調べた研究は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。
- どんな導入のしかたなら仕事が増えにくいのかも、まだ研究が足りません。研究のまとめでは、研修や会社の支えがあるときに良い面が出やすいとされていますが、条件ははっきりしていません。
04 今日からできること残業が続き始めたら、何から手をつける?
まず労働時間と、AIで増えた作業を記録します。その記録を持って上司と業務量を相談し、仕事のあとは仕事から離れる時間を守ります。どれもお金はかかりません。
始業・終業の時刻と、増えた作業を記録する
毎日の始業と終業の時刻、休憩、持ち帰った仕事をメモします。あわせて「AIの結果の確認に30分」「AIが対応できなかった件を3件」のように、AIで増えた作業を書き添えます。
目安 1日2〜3分、まず2週間
記録をまとめ、週の労働時間を出す
2週間分を合計し、週に何時間働いているかを出します。週55時間に近づいていないか、増えたのはどの作業かを確かめます。自分の感覚ではなく、数字で話せるようになります。
目安 週1回・10分
記録を持って、業務量と優先順位を相談する
「AIの確認作業が1日1時間増えた。どの仕事を後回しにしてよいか」のように、事実と、決めてほしいことを分けて伝えます。職場に労働組合があれば、仕事の量の問題として相談できます。AIの使い方のルールがない職場は、職場にAIのルールがないときの記事も参考になります。
目安 15分の面談を1回
仕事のあとに、仕事から離れる時間を決める
帰宅後の1時間は仕事の連絡を見ない、通知を切るなど、仕事から頭を離す時間を先に決めます。研究では、仕事から離れられている人ほど疲れや眠りの悪さが少ない傾向がありました。
目安 毎日1時間から
職場の産業医や保健師、社内の相談窓口に、記録を見せて相談できます。会社の外では、各都道府県の労働局にある総合労働相談コーナーで、労働時間や業務量の相談ができます(無料)。職場のストレスチェックの使い方はストレスチェックの記事で、休みたいときの制度は休職と収入の記事で整理しています。
05よくある質問
AIを導入したのに仕事が減らないのはなぜ?
AIが簡単な作業を引き受けるぶん、人には結果の確認、例外の対応、AIのつまずきの後始末などが残りやすいためです。米国とカナダのコールセンターの研究では、自動化に否定的な自由回答91件のうち68%が、AIや自動の案内のつまずきで仕事がきつくなったという内容でした。ただし、すべての職場で仕事が増えるわけではありません。
週に何時間働くと体に悪いの?
WHOとILOが研究をまとめた結果では、週55時間以上働く人は、週35〜40時間の人より脳卒中になるリスクが35%、虚血性心疾患で亡くなるリスクが17%高いとされています。週41〜54時間については、はっきりした結論は出ていません。リスクは集団の平均で、一人ひとりの将来を示すものではありません。
AIで増えた仕事を上司に伝えるとき、何を準備すればいい?
2週間ほど、始業・終業の時刻と、AIの確認作業やAIが対応できなかった件など増えた作業を記録しておきます。週の労働時間を数字で示し、「どの仕事を後回しにしてよいか」のように決めてほしいことを分けて伝えると、話が具体的になります。
AIを使うと燃え尽きやすくなるって本当?
はっきりとは言えません。中国の会社員313人を1か月追った研究では、AIをよく使う人ほど1か月後の燃え尽きの度合いがやや高い結果でしたが、結びつきは小さく、AIが原因とまでは言えません。ドイツで約1万8,500人を20年追った研究では、職場にAIが広がっても健康のはっきりした悪化は見られませんでした。
眠れない、気分の落ち込みが2週間以上続くなど、日常生活に支障があるときは、医療機関や、こころの健康相談統一ダイヤルなどの公的な相談窓口に相談できます。
出典
- Rabasa-Martín Ó, Martínez-Jarreta B (2026). Impact of artificial intelligence and work digitalization on mental health and occupational well-being: a scoping review. Frontiers in Public Health, 14, 1857108. https://doi.org/10.3389/fpubh.2026.1857108
- O'Brady S, Kim J (2026). Contested Automation: Double Indeterminacy, Union Power, and Job Quality in Call Centers. Work and Occupations, 53(4), 902-937. https://doi.org/10.1177/07308884261442149
- Wang K, Li Y (2026). Workplace AI Usage, Intrinsic Motivation, and Job Burnout: Evidence from a Longitudinal Study. Behavioral Sciences, 16(9), 1587. https://doi.org/10.3390/bs16091587
- Pega F, Náfrádi B, Momen NC, et al. (2021). Global, regional, and national burdens of ischemic heart disease and stroke attributable to exposure to long working hours for 194 countries, 2000-2016: A systematic analysis from the WHO/ILO Joint Estimates of the Work-related Burden of Disease and Injury. Environment International, 154, 106595. https://doi.org/10.1016/j.envint.2021.106595
- Wendsche J, Lohmann-Haislah A (2017). A Meta-Analysis on Antecedents and Outcomes of Detachment from Work. Frontiers in Psychology, 7, 2072. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2016.02072


